まてぃの徒然映画+雑記

中華系アジア映画が好きで、映画の感想メインです。
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KANO 1931海の向こうの甲子園

2015-03-07 22:07:30 | 台湾映画(あ~な行)

セデック・バレ』の魏徳聖ウェイ・ダーション監督が、当時の記録を調べていたときにたまたまこの事実を知り映画にしたい、と思ったそう。『セデック・バレ』の霧社事件が1930年(昭和5年)、嘉農の甲子園準優勝が1931年(昭和6年)と、ほぼ同じ時期に台湾関係で対照的な出来事が起きたのが不思議です。

嘉義農林学校の弱小野球部はこれまでろくに勝ったことがなかったが、日本の強豪、四国の松山商業で監督経験があり嘉義に仕事で来ていた近藤(永瀬正敏)を監督に迎え入れる。近藤は「お前たちを甲子園へ連れていく」と宣言し、脚の速い蕃人(台湾原住民)、打撃力のある漢人、守備に長けた日本人の混成チームを作り鍛え上げていく。

野球の技術や基礎体力はもちろんのこと、一つの蝋燭の炎をじっと見つめたりグランドには一礼をしてから入るなど心の鍛錬を重視し、エースで4番の呉明捷(日本名アキラ)を擁して初めて全島大会を制して台湾代表となり、甲子園に出場する。甲子園でも全く無名のダークホースながら、破竹の快進撃を続けてついに決勝に進出する。アキラは連日の熱投で指に怪我をしていたが、チームメイトにも近藤監督にも怪我を隠して決勝戦のマウンドに登る。。。

全編ほぼ日本語で、登場人物も日本人に漢人、蕃人と、その映画の作り方にまず驚きです。日本統治の50年、その後の国民党の苛烈な支配による親日度合いの高まりの影響もあるのでしょうが、台湾での興行も大成功だったというから「日本統治時代を美化しすぎている」という批判もあるようですが、概ね台湾人に抵抗はないのでしょう。

ただ上映時間3時間は長いなあ。後半は殆ど野球の試合だし、でも甲子園での快進撃や決勝戦の激闘が描かれているからこそ映画は成り立っているんだろうし、なかなか難しい問題ですな。3時間ということで心構えを持って観たから、力を抜いて後半は野球観戦の気分でリラックスして観てたけど。

怪我で本来の実力を発揮できない中、エースで4番、キャプテンの責任感なのか使命感なのか意地なのか、アキラがマウンドに立ち続ける姿は、チームスポーツにおける永遠の命題の一つです。チーム全体のパフォーマンスを考えると、たとえ怪我をしていてもエースがいいのか、それとも万全な控え投手に任せるべきなのか、チームワークや戦術、志気にも関わる難しい問題です。また、本人にとっても怪我が悪化して、怪我の状況によってはここで競技人生を終えてしまうかもしれないというリスクがあります。フィギュアスケートの羽生君の衝突事件でもそうですが、ぜひ安全を最優先に措置を取ってもらいたいものです。

八田與一役で大沢たかおも出演していますが、説明もなくいきなり出てくるので八田與一の功績を何も知らない人にはかなり唐突で「誰だ、あの人は?」となったのではないでしょうか。台湾人にとっては、もしかしたら日本人にとって戦国時代の織田信長のように常識の範疇なのかもしれません。

当時の甲子園は、台湾代表のほかにも、朝鮮代表らしい京城中や満州代表らしい大連中も出ていたようで、大日本帝国の版図全域が甲子園に出ていたことは歴史の一つとはいえ感慨深いものがあります。新天地へ旅立った日本人の郷愁なのか、それとも新たな支配地を手っ取り早く同化させるための一手段なのか。大英帝国の植民地におけるクリケットやラグビーと似た構図で興味深いです。

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