1月29日、坂本からのケーブルにて比叡山に上る。この延暦寺で、西国四十九薬師めぐりも結願となる。無理やりこの時季にねじ込んだかのようだが・・。
受付で国宝殿とのセット券を購入し、中に入る。拝観料は西塔、横川エリアと共通だが、冬季は山内のバスも運休のため移動手段がなく、根本中堂、東塔エリアしか行けないが仕方ない。
係の人が雪をかき集めて、トラックに載せるための作業をしているところ。この日は穏やかな天候だったが、大雪の直後はもっと大変な作業だったことだろう。
根本中堂に向かう。根本中堂は2016年から約10年かけて大改修が行われており(当初は平成の大改修として始まったが、元号はいつしか令和となった)、主に屋根の葺き替えと塗装の塗りなおしが行われる。前に来た時は外側にフェンスが張り巡らされ、屋根に足場が組まれている途中だったが、現在は根本中堂、回廊ともすっぽりと覆われている。
根本中堂の前に納経所がある。混雑を避けるための工夫として、朱印の方は納経帳を先に預けて参詣するようにとの案内がある。もっともこの日は参詣者もほとんどいないため、その場でバインダー式の西国四十九薬師の朱印に日付を入れてもらった。そしてこれで満願となった旨を告げ、満願の証もいただく。
申請書に住所、氏名を書いて渡すが、特に料金はかからず、バインダー式と同じサイズの用紙に名前を書いてもらう。これなら額に入れるよりは納経バインダーと一緒に綴じるのがよさそうだ。
第1番の薬師寺に始まり、ここまでくじ引きとサイコロで次の札所を決めながらやって来た。寄り道が多く長い時間がかかったように思うが、ようやく満願である。近畿2府4県プラス三重県・・さまざまに回ったことを思い出す。
さて、根本中堂である。大改修中ではあるが「不滅の法灯」はやはり不滅で、参詣は可能である。従来なら回廊歩いてから根本中堂に入ったが、現在は仮設の通路をまっすぐ進み、靴を脱いでそのままお堂に入る。ちょうど中庭を横切る形だ。
ろうそくの灯りだけの中、満願のお勤めとする。ちょうどお参りのスペースには電気毛布が敷かれている。
改修工事中、「修学ステージ」というのが設けられていて、参詣者はそこに上がって工事の様子を見学することができる。今回の大改修、参詣を最小限にすれば6年で終わるそうだが、こうしたステージを設けたために期間が10年になったそうだ。ただ延暦寺はあえてそうしたという。多少工事期間が長くなっても、少しでも信徒の方、参詣の方が根本中堂に接することができるように配慮したそうだ。
ちょうど屋根の高さまで上がることができ、工事中ならではの貴重な視線を体感できる。このステージからは写真撮影も可能で、またスマホアプリから工事完了後のイメージ画像をVRで見ることもできる(もっとも、私の手持ちのスマホは最新でないからとかいって却下されたが)。
現在の根本中堂は江戸時代初期に徳川家光の命で再興されたものだが、今回の大改修では、古文書に記された資料や技法をもとに、当時の姿を再現するという。工程でいえば現在は半ばを過ぎたところで、完工後の姿が楽しみである。
開運の鐘を撞き、大講堂に向かう。ここでも僧侶が長靴を履いて雪かきの最中である。大講堂じたいは昭和の建物でもともと丈夫なところ。こちらの本尊は大日如来で、その左右には比叡山で修行した各宗派の祖たちの木像とともに、上部には天台宗やその流れを汲む各宗の名僧たちの肖像画が列伝のように並ぶ。法然、親鸞、栄西、道元、日蓮、一遍など、今に続く仏教各宗派の祖が並ぶ中、ここ比叡山で「いないことになっている」のが弘法大師空海である。まあ、そこは大人の事情ということで・・。
ちょうど僧侶によるお勤めの最中で、大日如来の脇に並ぶ各像を前にして般若心経を早口で唱え、最後に「南無親鸞聖人」のように付け加える。そして隣の像に移って般若心経を唱え、「南無〇〇上人(大師)」と結ぶ。毎日こうしてお勤めしているのだろう。
この後、国宝殿で各時代の薬師如来や不動明王などを拝観し、東塔の阿弥陀堂と法華総持院東塔を拝む。上り坂で凍結しているところもあったが、これで一通りお参りを済ませたとして延暦寺を後にする。
それにしても、くじ引きとサイコロによるものとはいえ、お参り順がばらばらだったなと改めて思う。
1薬師寺~8室生寺~33石薬師寺~34四天王寺(三重)~17国分寺~22鶴林寺~31総持寺~42勝持寺~41正法寺~12禅林寺~2霊山寺~20東光寺~30多祢寺~44神護寺~15家原寺~37浄瑠璃寺~14野中寺~9金剛寺~40雲龍院~13弘川寺~45三千院~3般若寺~4興福寺~5元興寺~6新薬師寺~43神蔵寺~23斑鳩寺~24神積寺~29温泉寺~28大乗寺~21花山院~27天寧寺~26長安寺~25達身寺~32西明寺~46桑實寺~47善水寺~10龍泉院~11高室院~36弥勒寺~35神宮寺~48水観寺~7久米寺~16四天王寺(大阪)~19昆陽寺~38法界寺~39醍醐寺~18久安寺~49延暦寺
12時発のケーブルカーで比叡山を後にする。下りの便もガラガラ。この次に比叡山を訪ねるのはかなり先になると思うが、その時は参詣の人たちで賑わう光景を見たいものだ。
坂本比叡山口駅まで戻り、ちょうど昼時ということで駅前の「鶴喜そば」に入る。札所めぐりに出かけると店に入るのを躊躇して昼食を取り損ねることが多いのだが、この日はこちら一択である。それでも行列ができているならあきらめようと思っていたが、シーズンオフのためか待ち客もなくすぐに入る。
温かいそばで落ち着き、比叡山めぐりも無事に締まった気持ちになる。
さてこの日は夕方の「こだま」で新大阪を出発するとして、時間はまだまだある。坂本比叡山口から京阪大津京まで出て、湖西線に乗り換える。山科で新快速に乗り換えて新大阪に到着し、そのまま天王寺に向かう。