小島教育研究所

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代数幾何分野における、日本人の活躍。

2011-07-29 | 数学研究

筆者の専門は解析学であるので、代数幾何については、明るくはありません。

しかし、ここ日本では、伝統的に代数幾何の研究が盛んです。

フィールズ賞の受賞者をみても、小平邦彦氏、広中平祐氏、森重文氏と、すべて代数幾何のエキスパートです。

広中氏の論文を松下幸之助記念図書館(慶應義塾大学理工学部)にて目にした私は、そのあまりの長大さに驚きましたが、全体を通してアイデアは平明でした。多くの先達の挑戦を跳ね除けてきた難問を解決した広中の大定理。そのときには、この定理が何かの応用に資するなどとは、失礼ながら思いも付かなかった。後年、学習理論において、この広中の大定理が応用されるのを目にして、どこで応用されるか、証明とか、発見した当人は気が付かないのに、後の世代の人は、優れた応用を考えるものだと、感心した次第です。数学にはこうしたことがえてして起こりやすい。他の例では、ガロア理論(有限体理論)を応用して、誤り訂正理論を形成し、CD、DVDのコレクト機能を実現していることが挙げられる。

一方、森重文氏による双有理幾何学の建設に関して、極小プログラムは三次元までは、森氏自身により完成をみた。これを一般次元まで拡張することが長らく試みられてきたが、ようやく2006年ごろ、ショクロフ氏等により、一応の完成をみたとされる。もちろん、森重文先生のお弟子さんの、藤野修氏等の果たされた役割も見逃せず、筆者などは昨年度のインドにおけるICM(国際数学者会議)で、20年ぶりに日本人のフィールズ賞受賞かと、密かに期待していた。それはかなわぬことでしたが、代数幾何の伝統が、広中平祐先生から森重文先生へ、さらに森先生から藤野修先生へと、着実に受け継げられていることに、伝統の重みを見る思いです。

森重文先生は、優れた研究者であるとともに、優れた教育者であると思います。この4月より、RIMSの所長にも就任され、今後のご活躍がまた一段と楽しみです。

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