飾釦

飾釦(かざりぼたん)とは意匠を施されたお洒落な釦。生活に飾釦をと、もがきつつも綴るブログです。

映画「空海」(出演:北大路欣也)

2011-09-18 | Weblog

■製作年:1984年

■監督:佐藤純彌

■出演:北大路欣也、加藤剛、小川真由美、西郷輝彦、森繁久弥、他

 

北大路欣也が空海を演じている映画です。テーマが宗教なのでプロパガンダというか布教というか啓蒙というかそうした側面があることは否めない映画です。その映画が公開されたのは1984年、当時私はそれを見に行こうかまよった記憶があります。その時分の私にとってロードショーの料金は高く感じたに違いありません。考えた挙げ句、結局見ずじまいで、その後にビデオ化されたものを見ました。ですから今回この作品を見るのは2回目となります。

 

映画では、空海は富士山が爆発し自然災害に会うという設定になっています。住民は避難場所として洞穴に逃げ込みますが、恐怖に怯え自ら命を絶つ行為に出る者がでてきます。それに連鎖して我もと自殺行為に出てしまう追随する者もいます。そこで空海の連れ合い僧は、男女で抱き合え、そうすれば不安から解放され恐怖がおさまると皆に掛け声をかけます。その抱き合っている男女を見て空海は、チベット密教の図像に出てくる男女が抱き合った歓喜仏をイメージします。空海は富士山から噴き上がり流れるマグマを見て大地は生きているし、人も同様に、生きている、生きたいのだと強く思うのです。それを見ているとそこには自然や宇宙と一体と一体になり<生>を肯定する哲学が流れているように思えました。

 

あるいは、空海が遣唐使船に乗り唐に向かうとき嵐にあいます。船内はパニック、お前も僧侶ならお経でも唱えたらどうだという言葉に対して「そんなことで天は動いてくれるか」と空海はいいます。この嵐の状況は天の激しい息だ、涙だ、と。「この大宇宙は生きている。風も海もそのあかしだ。己が風になれ!己が雨になれ!止めようと思うな」と叫びます。そこにも同じように大自然と一体化することで<生>の力を充溢させる哲学を映画は表現しているようでした。

 

空海は映画の中で、病気に苦しむ人に対して「生きているうちに成仏、幸せにならなくてなんの幸せか」と解いたり、飢饉で苦しむ人達に潅漑事業を推し進めるために「風が吹くように、光りがさすように、心のなかに風を起こせ、光を放て!」と語りかけます。それらを見ていてもやはり自然、宇宙と一体化することにより何か大きな力を得るようなイメージを抱かされます。空海の思想はこの映画を見ている限り、自然、宇宙こそに真理そのものを感じとることができる、だからそれと一体化し感じることが大切であるし、幸せもそこから始まるといった風な世界観、哲学を見てとれるように思いました。

 

「この命、宇宙の根源の大日如来よりいただいたもの。大日如来の元へ帰るだけ」と死期が迫った空海は弟子たちに語りかけます。大日如来=宇宙の根源であるというスケールの大きな世界観、哲学が映画で展開されるなか、私は映画を見る前に司馬遼太郎の「空海の風景」を読んでいましたので、それを追認するような感じで見ることができたので、さしずめ映画「空海」は司馬遼太郎の「空海の風景」の映画版のようにも感じました。

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1 コメント

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お願い (ジョニーA)
2015-02-24 02:21:12
マイブログに、トラバ&リンク&引用、貼らせてもらいました。
不都合あればお知らせください(削除します)
なにとぞ、なにとぞ、宜しくお願いします!

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