飾釦

飾釦(かざりぼたん)とは意匠を施されたお洒落な釦。生活に飾釦をと、もがきつつも綴るブログです。

鋤田正義写真展(東京都写真美術館&渋谷PARCO)を見た

2012-08-31 | 美術&工芸とその周辺

美術館で見かけたデヴィット・ボウイの写真をデザインした写真展のチラシ、よくそのチラシを見ると、どこかで見たなあという馴染みの写真が多い。というか怱々たるアーティストの写真を撮っているではないか。そしてその写真はあの時のあの写真とはっきり指摘できるものが多いときた。鋤田正義というカメラマン、恥ずかしながら私は知りませんでした。いや、これほど時代に影響をあたえたエポックな写真を撮影しているんだから、どこかでその名前を必ずや見ているんだけど私の記憶とならなかった、見落としていたというか…。

 

広告・商業ベースの分野で作家性を存分に出し、カメラマンとして数々のアーティストの写真を撮ってきた鋤田正義というカメラマンの写真展に行きました(東京都写真美術館と渋谷PARCOの2会場で開催)。その鋤田正義の仕事を見直せば、必ずどこかで見た写真に行き当たる。特にデヴィッド・ボウイやYMO(イエロー・マジック・オーケストラ)のレコード・ジャケットは一斉を風靡したものではないのか?実はあのデヴィッド・ボウイのレコード・ジャケットの写真は鋤田さんが撮っていたの?テクノ・カットなる髪型が流行し社会現象にまでなったYMOのレコード・ジャケット写真、それも鋤田さんが撮っていたの?高校時代いかにも洒落た感じのイメージを持った高中正義のジャケットもそうなの?てな具合なのです。CDとは違ってレコード・ジャケットは、今程気軽に音楽が聴けなかったことや、そのサイズがCDとは違い数倍大きくそれをたけかけておくだけでインテリア・デザインになったこと、ミュージシャンの音楽性・世界観に合わるかのようなそれを具現化した斬新なデザインが多かったことなど、一つのアート作品として成立し得ていためそうしたインパクトは大きい。当時の若者はレコード・ジャケットからその感性を磨いていたと言っても過言ではないのだ。そしてそこには鋤田正義というカメラマンがいたという事実。

 

それと驚いたのがなんと寺山修司の映画「書を捨てよ町へ出よよう」の撮影も担当していたこと。前衛映画として当時の新宿などにカメラを持ち込みゲリラ的に撮影しているのです。「あしたのジョー」の力石の葬式を実行したリングの上に立つ寺山修司の肖像写真も彼によるものだった。かとおもうと、ジム・ジャームッシュ監督も撮影していたりする。私はカメラマンとして鋤田正義の活動を今回の写真展で初めて知ったわけだから何とも言えないのですが、コマーシャル・フォトからアバンギャルド・ムービーまでというのがすごいの一言。それ以外にも、あのアーティストのあの写真も?というのが一杯あってキリがない。それだけ幅広くアーティストから信頼を受けた活動をしていたってことです。

 

確かに今から30年前の10代から20代にかけての多感なあの時代、一枚の写真を穴の開くほど見て、その向こうにある世界を夢想していたわけで、その仕掛人が鋤田正義なるカメラマンだったとは無意識に彼から大きな影響を私たちは受けているのだと言えるのだろう。程よくメディアが社会に対して影響を与えていた時代を、懐かしく、うらやましく、私を思わせた。展覧会場で彼の写真を見ていた若者たちはどんな印象と影響を受けたのだろうか?

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