■日時:2012年11月3日(土)、19:00?
■劇場:東京芸術劇場シアターウェスト
■原作:寺山修司
■構成・美術:宇野亜喜良
■演出:金守珍
■出演:毬谷友子、蘭妖子、中山ラビ、フラワー・メグ、吉田日出子、他
寺山修司原作の「上海異人娼館」を見ました。この作品を上演したProject Nyxは一番最初は下北沢の小さな劇場(今は無くなったミニ・シアター)だったのですが、以来そこが寺山演劇を上演する際は足を運ぶようにしており、東京芸術劇場で上演するまで大きくなったということはその過程を私は見ているということになります。今回の「上海異人娼館」は寺山修司の映画作品であり、Project Nyxはそれと同じく中国を舞台とした「中国の不思議な役人」とゲストで登場する吉田日出子に「上海バンスキング」を歌わせるためアンデルセン「夜鳴き鶯」を持ってきて再構成したものとなっています。
そのことについて全く予備知識なく私はこの舞台を見たわけですが、上記のような構成になっているため、あれ?これ別の寺山作品である「中国の不思議な役人」のパーツじゃない?と必然的に思わされることになります。また、操り人形を毎度のように取り入れているProject Nyx 同じく「夜鳴き鶯」をベースとしたものを挿入し、吉田日出子に名曲「上海バンスキング」を舞台で歌わせることになるのですが、その曲を聴けたのはよかったな、と思ったのですが、はたしてお芝居全体として見た場合、それらはよかったのかどうなのか、私は少し疑問が残りました。
寺山修司の演劇が6~70年代の空気として従来の物語性を観念的に解体することによって成り立っているのに対して、さらにそこに複数の作品を組み込むことにより、この「上海異人娼館」はまるでコラージュされた一種のショーのような演劇を見ているような感覚にさせられました。つまり中国、上海といったキーワードで羅列された異種なるものの出会い、しかしそこに娼館という華やかなでありながら人生の吹き溜まった場所を意識し過ぎるが故のまるでおもちゃ箱をひっくり返したようなイメージが展開される。そうであれば私は洗練されたエンターテイメントのミュージカルを見ればいいとなるのです。別の何物か突き動かされるものを求めて私は寺山修司という現代では古典ともされてしまうようなアンダーグラウンドなキーワードを選択しているのだから。確かに の美術は毎回そのセンスのよさに感心させられるし、憧れののような感覚にさせられます。そしてその世界を具現化する女優陣も目を見張るものがあります。ただ、何かが足りなかった…。Project Nyxはもしかしたら脱皮への転機にきているのかも知れません。辛辣なことを書いてしまいましたが、そんなことをこの舞台を見て思いました(正直な感想です)。
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