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飾釦(かざりぼたん)とは意匠を施されたお洒落な釦。生活に飾釦をと、もがきつつも綴るブログです。

ほとばしる魂@ゴッホNO2・・・テレビ「ゴッホ 炎の絆」(NHKハイビジョン・11/4放送)

2010-12-27 | 美術&工芸とその周辺

ゴッホについてNHKのハイビジョン特別番組で放送されていたものを例によって録画してありそれを見ました。番組の内容はゴッホが弟のテオに宛てた有名な手紙を中心に彼の生涯を追ったもの。それによるとゴッホ美術館ではゴッホの手紙が819点収蔵されているそうで、それらの整理と解読がすすんでいるそうだ。特に近年、テオの手紙が100通ほど公開されて、弟の眼から見たゴッホにも注目があつまっているようです。

 

映像で見る画家の評伝は、絵という静止し言葉では表現されていない受けて側の感性に委ねられるビジュアル的な芸術表現=絵画なるものを理解していくには、とてもわかりやすいものと以前より思っていました。実際前に書いたようにゴッホは一番凄い画家じゃないかと思っていたので、かなりの昔にゴッホの生涯に関する本を読んだことがあるのですが、恥ずかしながらほとんど覚えていないのが現状です。(凄いと思いながら記憶するまでの興味の深さがなかったということか)それを映像という形でみせられるととてもわかりやすく、絵の世界にも入っていきやすいのです。横で一緒に見ていた家内などはピュアで激しく不器用にして孤独なゴッホの生き様をみて涙を流していました。

 

感動の原因はというと、テレビを見ている限りですがゴッホは弱い者に対して限りなく優しかったからです。そしてピュアでありすぎた。それゆえにとても生きづらい運命と天性の感受性を背負ったゴッホの悲劇があるのだと。その優しい視線は初期の頃の農民達を描いた絵からも窺い知れます。有名な「ジャガイモを食べる人々」そこには、ゴッホの暖かい眼差しをボクは感じます。面白いことに番組ではその絵を立体的に再現していました。ジャガイモは茹でてなにもつけずそのまま食べる、コーヒーは高くて飲めないのでチコリという野菜の根っこを煎ったもので代用として飲む、フォークやスプーンを収納するのは使い古した木靴を使っているなどなど。とにかくゴッホの周りはとにかく貧しかった、貧しい彼らを書いた、そこに真正面で純なゴッホの精神も見えてくるのです。

 

ゴッホはこの時代、子持ちの娼婦のシーンと同棲をしていたのですが、彼女と別れ弟のテオのいるパリへと向かい彼のアパートに転がり込みます。印象派などの最先端の画風に触れ色彩も鮮やかな絵を描くようになります。しかし、兄弟ゲンカが絶えなかったようで「彼(=ゴッホ)の中にはまるで二人の人間がいるようだ」といったふうなことを書き残しています。やさしいゴッホと自己中心的なゴッホ、ゴッホはゴッホ自信が敵であったというのです。またこのパリ時代には浮世絵の影響を受けており、兄弟でそれを500枚以上持っていたそうです。ゴッホは浮世絵から日本に興味を持ち、日本のような環境を求めて?とテオと別れアルルへと向かいます。アルルと日本どこでそう繋がるのかボクには実はよくわからないのですが…。

 

アルルでゴッホは理想に燃えて同志としてゴーギャンを迎えようとします。ゴーギャンが来たときのために部屋に飾るためゴッホの代名詞のような<ひまわり>の絵を描いたそうです。しかし、歴史に残る2人の画家の個性と個性のぶつかり合いは、アルルでの生活を2ヶ月で破綻させてしまいます。関係の結末はゴッホが自らの耳を削ぐというという悲惨で異常な出来事で終わりました。この時明らかにゴッホの精神が破綻をきたしていたと感じるのは、耳削ぎもさることながら、削ぎ落とした自分の耳を知り合いの娼婦に届けたという行為です。尋常では考えられない行動で、想像するだけでゾッとしてしまいます。

 

そんなこともありゴッホは精神病院に入るのですが、彼が入院した病院は当時のまま残っているそうです。これって、すごいことですよね。実利を求めて簡単にスクラップ・アンド・ビルドしないところがヨーロッパ文化の奥深さを感じさせるようです。ゴッホは一度退院するもののアルルの住人の反対にあって再び病院へ入ることになります。やはり耳削ぎ事件は登場地域の住人に相当なインパクトを与えたに違いありません。ゴッホは彼等にとって狂人であり危険人物なのです。実際のところ、ゴッホの病気はどの程度であったのかわからないのですが、自分でも制御えきないような強烈な想いが彼の体の中を駆け巡っていたのは、絵を見ていてもわかるような気がします。

 

ところで番組を見ていて知ったことは、この頃描かれた<糸杉>は南仏においては墓を連想させるものということです。ゴッホが住んでいた土地の墓の周りには糸杉が林立しているのです。糸杉はギリシャ神話でも死の象徴として登場するようですから、ヨーロッパにおいて特別な意味があるのかも知れませんね。そしてゴッホは自らの精神が破綻をきたすにつけ迫りくる死を直感し、その死のイメージをこの糸杉に投影していたのかもしれません。やがてゴッホはピストル自殺をはかり、弟テオも彼を追っかけるように一ヶ月後に発狂して死んでしまいます。ゴッホ兄弟は言葉では言い表せないような関係、絆があったんですね。その兄弟の墓は今並んで建っています。

 

映像とともにゴッホの手紙が朗読されドラマチックかつ感動的に仕上がってた番組でした。

 

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