音次郎の夏炉冬扇

思ふこと考えること感じることを、徒然なるままに綴ります。

桑田真澄よ何処へ行く

2006-09-26 23:56:32 | スポーツ
巨人の桑田が退団を決意したようです。引退であれば、東京ドームで球団が用意してくれたであろうセレモニーを蹴って、勝手に「巨人サヨナラ試合」を演出したのは、健在を外にアピールするデモンストレーションに他ならず、他球団での現役続行を希望しているといいます。

桑田は02年の原1次政権初年度で12勝をマーク、防御率のタイトルも獲得して見事な復活をとげました。しかしこれが蝋燭の炎が消える前の最後の光芒だったかのように、翌年から5勝、3勝、0勝と下降線を辿り、今季も一軍での登板機会は巡ってきませんでした。素人目にはとっくに限界だと思われるのですが、本人は「まだやれる!」と意気軒昂です。

現役に固執するのは、入団時からの目標である通算200勝到達に未練を残しているというのが大方の見方ですが、これからあと28勝を積み上げるのは、ほとんど不可能のようにも思えます。

私は、桑田の魂が未だ成仏できないでいるのは、長嶋元監督へのルサンチマンに起因するものだと見ています。球界では長嶋茂雄への批判は最大のタブーとされています。それこそヒルマン監督に噛みつくのとは比べものにならないほどのリアクションを覚悟しなければなりませんから、クレバーな彼はそのことを胸に秘めています。

かの小関順二センセイが著書で再三指摘していることですが、高卒選手は「記録」へのこだわりがことのほか強い。早くから一線に出て名をなした高卒選手は、実働期間が長い故に、晩年は収穫期です。工藤や清原を見てもわかるように、黙っていてもある時点から通算記録ラッシュを迎えることになります。積み上げてきた数字こそが彼らのアイデンティティーですから(今後は、実力あるプレーヤーはメジャーに行きますから、日本プロ野球に終身雇用された結果数字や、名球会などという幻想は消滅していくでしょうが)執着が尋常ではないのです。日ハム金村も高卒ですから、同様のメンタリティーを持っていると思われます。

さらに核心となるのは、これは本人も公言していますが、「自分はスターターなのだ」という強烈な自負です。

桑田はここ数年、堀内や原に干されていたと見られがちですが、決してそうではありませんでした。先発機会の回数は以下の通りです。

2002年 23試合中 先発20度(12勝)

2003年 14試合中 先発13度(5勝)

2004年 16試合中 先発16度(3勝)

2005年 12試合中 先発12度(0勝)

このように、堀内と原は彼の先発ローテーション投手としてのこだわりを、きちんと尊重していました。残念ながら結果が出なかっただけです。

そこへいくと、高卒のエリート投手が持つ記録や先発への思いに対して、まるで無頓着だったのが長嶋監督(この方はこの種のデリカシーは外国人監督以上に稀薄)で、抑えのスペシャリストを作らなかった自らの怠慢のツケを、槙原や桑田に押しつけたのです。当時のピッチングスタッフの中で、名前と球威があるというだけの短絡的な理由で、プライドの高いエースを抑えにまわしたわけですが、その結果は芳しいものではありませんでした。

これも小関順二氏の説ですが、リリーフ・抑えは大卒選手に適性があるという傾向があります。たしかに大魔神佐々木、高津、小林雅、古くは太洋の斎藤明夫など、歴史に名を残すクローザーは総じて大卒が多いです。他人の勝利をアシストする役回りは、プライドの高い高卒ドラフト1位のピッチャーには不向きだという説には、頷けるものがあります。

1999年  32試合中 先発20度

2000年  30試合中 先発10度

2001年  16試合中 先発 8度

長嶋監督の勇退前に、抑え・中継ぎ・先発と中途半端な起用をされたおかげで、3年間で正味15勝くらい損したと、本人がとらえていても不思議ではありません。タラレバを言っても詮ないのですが、仮にそうだとすると200勝まであと10勝ちょっとで射程圏内に入っていたことになります。そこで、この失われた数年間を取り戻そうというのが、桑田が現役続行を希望する理由ではないかと思うのです。

小野俊哉さんのコラムが、桑田の行き先について分析していて興味深いのですが、各チームのニーズは別として、彼にはロッテの小宮山や中日の川相のような献身性はありませんから、ボロボロになるまでやるというのも、あくまで先発機会の確保が前提となります。そう考えると、ヤクルトと楽天が有力ではないかと。現時点での積極性からいえば楽天ですが、岩隅・一場・有銘・田中・桑田の陣容はいとをかしですね。(二宮清純氏は田中将大のクローザーを推していますが)



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2 コメント

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応援 (VEM)
2006-09-29 21:29:31
桑田さんと小野さん。

お2人の活躍を強く祈っています。

野球について詳しくないのですが、以前強力な応援をいただきました。

当然お2人はそんなこと知りもしないでしょうが、そのお2人の名が一つのエントリにありましたので少し嬉しくなりました。
コメントありがとうございます。 (音次郎)
2006-10-01 23:15:36
>VEMさん、いつもありがとうございます。

桑田にもらった強力な応援が何だったのか興味深いですね。

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