音次郎の夏炉冬扇

思ふこと考えること感じることを、徒然なるままに綴ります。

日ハム金村のレゾンデートル

2006-09-25 23:28:04 | スポーツ
結局、北海道日本ハムの金村投手には、出場選手登録抹消とプレーオフ出場禁止という処分が下りました。監督批判は球界では最大の禁忌であることと、今回の件はファンからも非難囂々の状況から考えると、オフには放出もあるかもしれません。本人の謝罪の弁を読む限りでは、チームへの愛着が残っているようですから、ヒルマン監督と無事に手打ちができるといいですね。「外国人監督だから個人記録なんてどうでもいいんでしょう」と詰った金村も、ドライで後を引かない「外国人」で良かったと、その時に思うかも知れません。(ヒルマン監督の性格は知りませんが)

金村暁は仙台育英高校出身の12年目のピッチャーですが、入団4年目でブレークして最優秀防御率のタイトルをとりました。この98年は、日ハムのビッグバン打線が文字通り大爆発して独走状態、優勝間違いなしと見られながらも、後半に歴史的大失速をして2位に終わったシーズンとして記憶されています。

その後の日ハムは5位→3位→6位→5位→5位→3位→5位と低迷しました。なにしろこのチームは25年も優勝から遠ざかっていますから、美酒の味を知る選手もいなかったでしょう。そんな環境で彼は育ちました。万年下位球団に所属する哀しさか、これまでのプロ野球人生で優勝争いとは殆ど無縁でしたから、「フォアザチーム」が正当に評価され、たしかに年俸に反映するもんだ!という成功体験を持っていないわけです。

彼の年度別成績、特に2けた勝利を続けてきたこの4年間を見ると

02年・・・10勝6敗
03年・・・10勝8敗
04年・・・13勝8敗
05年・・・13勝10敗

たしかに安定しています。このように毎年10勝以上マークして、いずれの年も勝ち越しているというピッチャーは12球団見渡しても何人もいません。弱小球団で投げているためか、大勝ちのシーズンやタイトルがなく、線の細さもあいまって、先輩の岩本勉と同様に、絶対的なエースというよりも、「相対的なエース」(投手陣の中で一番マトモ)という印象がありますが、成績自体は立派なものだと思います。

ただ、いかにも綺麗な数字が並ぶだけに、これが自分の年俸を守るための拠り所となっていたのかなあという感じがしなくもない。実際、球団もそういう評価をしてきたのでしょう。それを今になって、たまたま(失礼)今年、チームがシーズン1位を窺う位置にいるからといって、彼の野球観をいきなり180度変えなさいというのも、ちょっと酷な気がします。そもそも評価軸が曖昧なんですから。島田統括本部長も「今まで個人記録を優先することが多くて優勝できなかったんだ」とエースの身勝手を非難するコメントしているようですが、寅さんではありませんが「それを言っちゃお終いよ」とつぶやきたくなります。一般企業でも、成果主義導入で揉めているのは、まさにこの評価基準や目標管理といったものの不明朗さでないでしょうか。

現代は戦力が均衡し連覇するチームがないので、どの球団も何年かに一度は優勝の果実を味わうことができますが、昔は毎年優勝するチームはほぼ決まっていました。万年最下位だった頃の国鉄の金田などは、登板予定のない日もベンチに陣取り、味方が逆転したり、戦況が有利になりそうだと、監督が命じてもいないのに、勝手にスタスタとマウンドに上がり、勝利投手の権利をもぎとっていたそうです。「金田天皇」の面目躍如ですが、前人未踏の400勝のうち、そうやって積み上げた勝ち星も相当数含まれると聞きます。昔はマスコミも発達していなかったので、誰もそんなことを指摘しないというだけの話なんですね。

今でこそチームプレーを説く中日の落合監督だって、ロッテにいた頃は、誰もいない川崎球場のライトスタンドに、ただひたすらに黙々と放り込んでいたわけで、そうやってのし上がってきたのでしょう。金村を叩くのは簡単ですが、目糞鼻糞を笑うという人たちもたくさん存在するのも事実です。

ただし、今季の金村は9勝しているとはいえ、1試合あたりの平均投球回数は5.8イニングと6回未満です。(ソフトバンクの斉藤や西武の松坂は8回前後)ということは、優秀な中継ぎと抑えに助けられた試合も多く、また負け試合の尻拭いも幾度となくさせているわけです。自らの発言を同僚がどう受け止めるかということへの想像力と、25年ぶりの優勝を期待して応援し、プレーオフに胸を躍らせるファンを大いに失望させたのは、責められても仕方のないところです。ブログではファンに詫びていましたけどね。

本件は、非常にわかりやすい面もあります。下り坂のエースが、新たに台頭してきた若い力の方へ首脳陣の寵愛が移ることに嫉妬するという、古典的な図式です。

「昨日のダルは引っ張って後手後手になったじゃないか、なぜ今日はスパッと代えるんだ。こんな采配はないよ!」

「プレーオフは八木とダルビッシュがいるから別に投げなくてもいいでしょ」

という試合後の発言は、とてもチャイルディッシュです。

ただ拗ねてるだけなんでしょう。

仙台出身だから、来年は楽天に行ってもいいかもしれませんね。


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