「思慮あるしつけ」についてまとめるうえで、
何度も取りあげている精神科医のダン・シーゲル氏が
「ひといちばい敏感な子」について話しているクリップの紹介です。
("Dan Siegel - Use Mind Sight to Nurture a Shy Child")
「ひといちばい敏感な子」への接し方の基本が、
「脳の働き」をからめ、すっきりとまとまってます。
人口の10%ほどに見られるという「高反応な子=ひといちばい敏感な子」。
以前こちらに紹介しましたが、
・ハイリーセンシティブな気質というのは生まれつきらしい、刺激に「高反応」な赤ちゃん
心理学者のジェローム・ケーガン氏によると、
こうした生後数か月後にはみられる特徴から、
その子が、将来、控えめで、シャイで、引きこもりがちになると分かるといいます。
それでも、明らかにこの「10%近くの脳の特徴」を持ちながらも、
成長するにつれ、
「シャイ」さを見せることがない子もいると分かっています。
なぜこうした違いが生まれるのか?
それには、周りの接し方が大きいといいます。
「ひといちばい敏感さ」を助長するNG接し方
例えば、次の2例のような接し方は、
その子が、ますますシャイで引きこもりがちになることを助長するといいます。
「泳ぎたくない・・・」という子に対し、
1.「甘えないの!」と無理やり「プールに投げ込む」。
2.「あら泳ぎたくないなら、一生泳がなくていいのよ、
ママがずっとそばにいてあげるから。何も心配することはないの」
と一切泳ぐ機会を与えない。
健やかな「ひといちば敏感な子」を育てる鍵は「慣らす」
この社会で比較的大胆にのびのびと生きていく「ひといちば敏感な子」を育てる鍵は、
突き飛ばすのでもなく、
両手で抱え込んで体験の機会を与えないのでもなく、
少しずつでも、その子の様子を見ながら「慣れさす」こと。
シーゲル氏は、以前こちらに書いたことのある、
・宿題は手伝わない方がいい?! その子のためになる宿題の手伝い方
社会心理学者ヴィゴツキー氏の「足場づくり理論」をあげています。
”「足場作り(Scaffolding)」とは、建築現場などで見られる「足場」をイメージすると分かり易いです。建築物が完成すれば、全て取り払われます。
子供に関わる大人の大切な役割とは、こうしていずれは必要でなくなる「仮の足場」を作ってやること。子供の代わりに建築物を作ってやるのではなく、
子供自身が建築物を完成するための足場を用意してやること” 『ユア子育てスタジオ』より
「ひといちばい敏感な子」を慣らしていくためには、
この「足場」が大活躍するということですね。
その子のペースに合わせ、少しずつ少しずつ足場を取り払っていくイメージです。
プールでの誕生日会へ「行きたくない!」という「ひといちばい敏感な男の子」の例
クリップの中での、
「プールでの誕生日会」に行きたくないという5歳の男の子を例にした、
舞台上のシーゲル氏と女性司会者とのやりとりが、絶妙です。
誕生会のプールにて。
ママにしがみつき、辺りの様子をじっと見つめる「ひといちばい敏感な男の子」。
男の子の脳では、不安や恐れを司る、
「右の階下部分」がフル稼働。
さて、ママの頭の中では何が起こっているかというと:
右脳:男の子の背中をさすり、肩を抱いて、男の子の不安な気持ちに寄り添おう。
左脳:周りの子はみんな初めからあんなにはしゃいで楽しそう。なんで家の子だけ。
ああ、周りの親たちも、私が甘やかしすぎたとか、過保護にし過ぎだとか、育て方がまずいと思っているんだろうな。
この子も、皆と同じようにすべきなのよ。なんでこの子は!
右脳と左脳のせめぎあい。
ここで、
右脳のみに従うなら、
「いいのよいいのよプールに入らなくても」と誕生日のケーキだけ食べて帰宅。
左脳のみに従うなら、
男の子の手を無理やり放し、プールへと引っ張り込む。
となり、まさしく先にあげた、シャイさ引きこもりを助長する接し方になるわけです。
そうではなく、
脳の「階上部分(長い目で見て適切な対応を選ぶ)」をフル回転させ、
「足場づくり」を用いて「慣れさす」ようにします。
周りの子たちは、
もう遊び疲れてケーキを食べ始めるころですが、
ママも一緒にプールに入ります。← 足場作り
恐る恐る水をかく男の子、
「あ、目に入った鼻に入った」とその都度騒ぐ子に、
「大丈夫よ」と声をかけながら、少しずつ水に「慣らして」いきます。
こうした「対応」を続けるうちに、脳をスキャンしてみれば、
構造的には何ら「高反応」のまま変わらずとも、
「おじけづくことなく、人前に立つどんな職業だって、
ロックスターにだってなんだってなるでしょう」とシーゲル氏。
我が家を振り返り、よく分ります。
プレスクール時代からどうしても学校に慣れなかった次男、
キンダーでは、私も毎日ランチタイムに学校へ行き、手を握って隣に座っていたあの日々。
どんなにか「過保護な親」にうつっていたでしょうね。
「周りとは違うんだ」と腹をくくってしまうのも手です。
そばで過ごす親だからこそ、見えるものってありますから。
周りより時間がかかります。
周りより、何段もの足場が必要かもしれません。
でも、「慣れさす」を続けるうちに、必ず、楽になっていきます。
次男も今では、毎朝学校へと飛び出していきます。
「いや~!」「したくな~い」「やりたくな~い」という不安いっぱいの表情に、
扉をバタンと閉めきってしまうのではなく、
少しずつでも、「あれ、大丈夫なんだ」「え、結構楽しいかも」と感じられる、
そんな体験を重ねてやりたいですね。
(なお、右脳左脳という概念については、シーゲル氏自身、極度に簡易化し過ぎと認めつつ、より分かりやすくイメージするために用いているとのことです。)
ところで、この「慣らす」というの、
大きくなっても、大人になっても、HSP系の人に有効だと思いませんか?
「自分はこの場やこの仕事に慣れるのに周りより時間がかかる」と自覚する。
すると、ひとまずこれだけは確実にできるようにしようと整理できたり、
人より時間をかけて準備しようなど、
現実的具体的な対策も立てられるようになります。
それではみなさん、今日も良い日を!
こちらの記事、いままでのわが家の試行錯誤の末にたどりついたやり方に一致しています。
「見てたの?」って感じです。
コメントで書こうとしたのですが長くなりそうなので近日自分のブログで紹介がてら感想書かせてくださいね。
今、読ませていただきました。
「」は、tamakiさんのブログ記事から引用です。
「少しずつ成功体験を積み重ねる」というの、本当ですね。この「できた!」の喜びに、足を前へ前へと踏み出すようになっていきますね。
「外からはあまり内気にみえない」という娘ちゃんたち、我が家も、大きくなるほどそうなので、姿が重なるようです。
「わたしは直感と経験だけなので、なんとかはなるのですが、他人に説明するのが難しくて。」
ああ、私もよーく分かります。私自身、実は、上の子たちの子育て時代には、育児関連の情報というものをほとんど読むことがありませんでした。余裕が全然なかったのもあります、また興味が子育てに以外のことばかりにあったということもあります。
今では、育児関連の情報を日々読み漁っているわけですが、はじまりはまさに「これだ!」と思うものを「他者に説明する」ためだったんですよね。
そうするうちに、今の自分自身の子育てにも役立つ情報が随分あることにも気づいたわけですが。
tamakiさん家の子育ての様子、娘ちゃんの成長を楽しみに、これからも読ませていただきますね。