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浮力の説明の謎 (10)
初等物理の気まぐれ考究,物理教育放談
/
2007-09-19 08:13:48
本稿は、以下からの続きである。
・
07-03-27 浮力の説明の謎
・
07-04-03 浮力の説明の謎 (2)
・
07-04-11 浮力の説明の謎 (3)
・
07-04-23 浮力の説明の謎 (4)
・
07-05-05 浮力の説明の謎 (5)
・
07-05-17 浮力の説明の謎 (6)
・
07-05-17 浮力の説明の謎 (7)
・
07-06-05 浮力の説明の謎 (7-b)
・
07-07-08 浮力の説明の謎 (8)
・
07-08-27 浮力の説明の謎 (9)
-----
前回の
稿
で「浮力」を基礎づけるための新たな考え方を提案した。これを見て、従来の圧力による説明よりも難解になっただけだと感じる人もいるかも知れない。しかし、それは、適用の対象がより一般化されたことに伴う(避けられない)抽象化の影響であり、考え方も計算法も、実は至ってシンプルである。もちろん、高校生でも十分扱える。
一番簡単な基本パターンの計算例を示してみよう。密度ρIの流体(水)中に、任意の固定形状をもつ密度ρIIの物体が浸っている場合を考える。圧縮による密度の変化は考えない。そこで物体が上方(z方向)にΔzだけ移動したときの重力の位置エネルギーの変化分を考える。位置エネルギーだけを考えるのだから、水や物体を構成する微小部分の実際の流れを追跡する必要はなく、Δzの変位の前後で結果的に位置エネルギーが変化する部分・状況だけを見つけてやればいい。
先ず、物体を、鉛直方向に立つ細長い柱状物体に分割しよう。分割を細かくすれば、任意形状の物体の全体積が、長さの異なる柱状領域の集合として過不足なく表現される。(図を描けばこの様子をイメージしやすいのだが、、画像をつくるのがちょっと大変、、)
そこで、分割されたある一個の柱状物体について考える。この柱状物体の高さをL、底面積をSとする。すると、柱状物体直上のΔV=SΔzの体積部分では水が物体に置き換わり(すなわち密度がρIからρIIに変わり)、物体底部に位置する同体積ΔVの部分では、物体が水に置き換わる(すなわち密度がρIIからρIに変わる)。両部分の上下の隔たりはLだ。この状況を、「物体直上のΔVの水がLだけ下降し、同体積の物体がLだけ上昇した.」ものと(便宜的に)考えれば、計算が分かりやすくなる。したがって、この柱状物体が上方にΔzだけ移動したときのエネルギー増加分は以下のように書ける。
ΔU=(ρII-ρI)gLSΔz
=(ρII-ρI)gVΔz
二番目の式では、柱状物体の体積LSをVとおいた。
そこで柱状物体に働く上方への力は以下のように求まる。
-dU/dz=(ρI-ρII)gV
ここで ρI=0 とするならば上式は -ρIIgV になるから、この場合からの差額分である浮力は以下となる。
gρIV
これは一個の柱状領域に対するアルキメデスの原理に相当する。
任意形状の物体に戻して考えるのは簡単だ。
この柱状領域を全部寄せ集めれば、もとの任意形状の物体となる。それぞれの柱状領域の体積の総和が任意形状の物体の全体積Vtotalだ。ここまで考えれば、積分の式など書くまでもなく、任意形状の物体全体が受ける浮力は次式になることが分かる。
浮力 = g×ρI×Vtotal = [物体の体積分の水の重量]
おなじみの、任意形状の物体に対する
アルキメデスの原理
(
Wikipediaによる辞書的説明
)が出てきた。
<続く>
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