鴨が行く ver.BLOG

鴨と師匠(ベルツノガエル似)と志ん鳥のヲタク全開趣味まみれな日々

幻想の終末

2009年11月01日 22時45分14秒 | ゲーム・コミック・SF
風邪続行中のため、週末も自宅でちんまりしております(-_-)
そんなわけで、通勤電車の中で読んでいるSFを自宅で読了。相手が相手だけに手こずるかと思いきや、意外とすんなり読み進めました。そうか、この人は短編向けの作家なんだな。

時の声/J・G・バラード、吉田誠一訳(創元SF文庫)


クールです。背筋が寒くなるぐらいクールです。
60年代にSF界を席巻したニューウェーブ運動の第一人者、バラードの第一短編集。外的環境としての科学文明よりも内的環境としての人間精神に着目したニューウェーブSFは、鴨的には「自己完結的で難解」というイメージが強くてあまり食指が伸びないジャンルではあります(^_^;そんなわけで、バラードの作品は若い頃に勢いで読んだもの(正直全然わからなかった・・・(-_-;)以外はアンソロジーに収録されている短編をちらほら、といった程度なんですが、この歳になって短編を纏め読みすると、実に面白いですね。いや、面白いというのは語弊があるか・・・感性の奥底までひんやりと染み渡る、といった感じでしょうか。

バラードは「破滅を描く作家」と呼ばれています。代表作「結晶世界」を初めとして、扱われているテーマは一貫して世界の終末、そして終末を間近にした人間たちのあり様です。今回読んだ「時の声」も、スケール感の違いはありつつもやはり描かれているのは何らかの「破滅」に他なりません。
滅亡テーマというのは、SFでは定番の古典的テーマの一つです。しかし、バラードがユニークなのは、彼が描きたいのは滅亡する世界そのものというよりも、破滅を目の前にしてなす術もない人間(敢えて「人類」とは言いません)の精神の変容であるということ。だから、バラードの世界では滅亡の瞬間それ自体が描かれることは稀です。滅亡に向けて追いつめられ、歪み、消滅し、あるいは昇華していく人の心が丹念にかつ冷徹に、鋭い刃物のような文体で淡々と描かれているのみです。とても静謐な、狂おしさに満ちた世界です。
バラードの作品を読み通せるかどうかは、ひとえにその異質極まりない世界観に「美」を感じるか否か、に尽きるんじゃないですかねぇヽ( ´ー`)ノ鴨の持論、良いSFとは「絵になる」SFだと思うんですが、バラードの作品は絵と言っても派手に動き回るハリウッド映画ではなくヨーロッパのアート系映画のような美しさを感じます。物語のどの断片を切り取っても、とにかく絵になるんですよ。その最たるものが表題作です。是非どなたかに映像化して欲しいもんです。

いやー、バリントン・ベイリーの次に読んじゃったもんで、余計インパクトあったなバラードはヽ( ´ー`)ノ
次は何を読もうかな~ふふふん
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