鴨が行く ver.BLOG

鴨と師匠(ベルツノガエル似)と志ん鳥のヲタク全開趣味まみれな日々

極北のSF

2011年04月17日 23時02分36秒 | ゲーム・コミック・SF
春爛漫の候、知らないうちに区議会選挙戦が始まっておりました。今日からランニングを始めた鴨ですこんばは。と、ここで宣言して自分を追い込む脱・三日坊主作戦(-。-)ボソッ
春爛漫の候にレビューする作品じゃないよなぁ。と思いつつ、でもすごく面白かったのでレビューする。

ゴルディアスの結び目/小松左京(ハルキ文庫)


これはね、スゴかったです。圧倒されました。
日本SFの泰斗・小松左京の連作短編集。60~70年代あたりの近代科学文明バリバリ・筋立てもガジェットもきっちり論理的に練り上げられた欧米SFを読み漁ってきたSF者(それはかつての鴨でもあるヽ( ´ー`)ノ)がこの作品に出くわしたら、「なんだこれは!?」と面食らうと思います。第一印象はSFというより私小説、それも個人の精神にグッと深く切り込んだ哲学書のような、あるいは生を達観した者が脳裏に浮かんだ風景をそのまま書き連ねた散文のような、「魂の次元が違う」としかいいようのない独特の広漠とした世界観が全ての作品に通低しています。でも、バックボーンはちゃんとSF、"Sence of wonder"なんですよ。

鴨が一番衝撃を受けたのは、表題作「ゴルディアスの結び目」。外界と隔絶された精神病院で日夜恐ろしいポルターガイスト現象を起こし続ける昏睡状態の美少女と、彼女を巡る男たちの物語。筋立ては完全にオカルト・ホラーです。が、ポルターガイスト現象で発生する膨大なエネルギーは「エネルギー保存の法則」を超越しているのではないか?という実にSF的な着眼点を基にとことんまで思考実験を突き詰めると、ここまで壮絶なSF的ビジョンが広がってしまうのかと驚愕する結末です。想像力の極北とも言うべき大傑作ではないかと。

日本SFを読むようになって、我が国には欧米のジャンルSFとはまた違う土俵での傑作が結構多いんじゃないの、ということに気づき始めました。翻訳して欧米のSF者にも読んで欲しいとは思いつつも、日本語の美しい響きや行間に含まれるメタファーを正確に伝え切ることは難しいだろうなぁとの忸怩たる想いもありヽ( ´ー`)ノ
これからもどしどし読んでいきたいと思いますっ(-_☆
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