監督 アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ
キャスト マイケル・キートン、ザック・ガリフィナーキス、エドワード・ノートン、アンドレア・ライズブロー、エイミー・ライアン、エマ・ストーン、ナオミ・ワッツ、リンゼイ・ダンカン、クラーク・ミドルトン
2014年 アメリカ、カナダ
ジャンル:ドラマ、コメディ
【あらすじ】
今も世界中で愛されるスーパーヒーロー、バードマン。だが映画シリーズ終了から20年、バードマン役でスターになったリーガンはその後、仕事も私生活にも恵まれず失意の日々を送っていた。彼はレイモンド・カーヴァーの「愛について語るときに我々の語ること」を自ら脚色し、演出・主演も兼ねてブロードウェイの舞台で再起することを目論む。だが起用した実力派俳優マイクばかりが注目され、リーガンは精神的に追い込まれてゆく。
【感想】
出来はいいけど、面白くないという感想が多いみたいですけど、一度騙されたと思って観てくれればと思います。まあ確かに面白くはないでしょう。実際に7割は面白くないと感じるのではないかと思います。
なので玄人の向けの映画であることは否定しないが、完成された映画で自分には面白さが理解できました。見事にツボに入りました。やはりイニャリトゥ監督は実力者である。「バベル 」はクソ映画だったが見直しました。
往年のスーパーヒーロー役で映画スターだった男の過去の栄光からくる葛藤が全面的に描かれています。本来これをストレートに表現すると重苦しくなってしまうのでブラックコメディ風に仕上げている。役者の落ちぶれ具合を描いた作品はいくつもあります。「その男ヴァン・ダム」であるとか「レスラー」も類似作品でしょう。その中でも本作は非常に鋭く切り込んでいるという印象を受けました。
過去の栄光を引きずっていることを表現する手段として主人公が超能力を使っているシーンが何度も登場する。(もちろん実際には超能力など使えない。)自分が演じたキャラ「バードマン」が話しかけてくるのである。この超能力を使うシーンは控えめなのでいいアクセントになっていたと思います。
最初の30分くらいは登場人物間でやたらと攻撃的な会話が繰り広げられます。私はこの会話が楽しかったですね。私生活だと絶対にしないような乱暴な会話なので言ってみたいと思ってしまいました。確かにこの30分に及ぶ会話は大した内容ではなく、後半になって効いてくるものなのでここで退屈だと思ってしまう人が多いのかもしれません。必要なものであることは間違いないでしょう。
またドラムの音が印象的で主人公の心理状態を上手に表現していました。ラストの実際に演奏している場面につなげるシーンはあまり重要度は高くなくてもセンスの良さを感じました。
無知がもたらす予期せぬ奇跡 (The Unexpected Virtue of Ignorance)というのは、ネットを使わない時代遅れの主人公が動画サイトから人気が拡散していくことからはじまり、ラストでも意図しないところから全米中の注目を浴びる存在になります。批判的だった評論家も手のひら返しをしてしまう。葛藤や劣等感だらけででも、その世界に残って活動し続けていれば、もしかしたら運よく成功してしまうこともあるかもしれないというメッセージでしょうか。
ラストで過去の栄光への葛藤から解放され「バードマン」逃げ出してしまった主人公がビルから飛び降りたらどうなってしまうのか?そこで話は終わるので余韻としてもスッキリはしませんが、娘もビルに座って飛び降りようとするシーンがあるあたり上手だなと感じます。
役者ではエドワード・ノートンがキレていました。やっぱりこういう作品が合いますね。ここ数年手を抜いているんじゃないかと思っていました。
主人公の内面を鋭く、えぐるように表現することにこだわった作品ということで高く評価したい。
お薦め度:★★★★★★★★☆☆
バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡) [Blu-ray] | |
クリエーター情報なし | |
20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン |