日々是好日

身辺雑記です。今昔あれこれ思い出の記も。ご用とお急ぎでない方はどうぞ・・・。

Stieg Larssonの「The Girl with the Dragon Tattoo」を読了

2010-02-28 18:39:53 | 読書
「ミレニアム」本が先か映画が先かと悩み映画より先に本を選んだ、今日ようやく530ページ余りの本を読み終わった。期待裏切られずであったが、映画の上映はもう終わってしまっていた。小説では主人公の雑誌記者が自分の書いた記事のせいで名誉毀損の有罪判決を受けたところから始まり、そのことにかかわるストーリーと、主人公が雑誌記者としての仕事から一時離れた間に40年前の実業家一族の一人の少女失踪事件を解決するストーリーとがある関わりを持って進行する。もし二つのストーリーの展開を映画で忠実に描くとすると、少女失踪事件の謎が解明されただけでも大きなことなのに、そのあとでまた名誉毀損問題の成り行きが引き続き出てくることになって、観る方は疲れてしまうし、少女失踪事件解明のインパクトが弱められてしまうように思った。映画ではどのような扱いになっているのかが気になるところである。

少女失踪事件の謎が解き明かされていく間に、きわめておどろおどろしい家族内での人間関係と犯罪が暴露されてきて、実は読んでいて気持ちの良いものでは無かった。映画でどのように描かれているのかは興味はあるものの、仲の良い男女が連れ立って観に行くようなものではなさそうである。ただ、実業家一族の住んでいた小島の風景とか、家屋や小屋のたたずまいは覗き込みたいような気がした。映画が再上映されるようになったらどうするか考えることとしよう。

ところでペーパーバックを読んでいつも感心することがある。本の背を接着剤で表紙にくっつけただけだろうに、ふつうの読み方をしている限り背が折れることがないのである。日本製の辞書などで背折れをよく経験しているだけに、この製本技術に感心する。そういえば同じような作りの500ページを超えるような日本の文庫本、新書本でも丈夫なのが嬉しい。思ったことを書き留めておく。



Smith 夫妻のLexus 350 ESの今?

2010-02-28 11:39:50 | Weblog
Smith 夫妻の2007Lexus 350 ESは今どこに?の最後に、Smith夫妻がその後この車を売り払っていて、次の持ち主が2万7千マイルをすでに何の問題もなく走っていたこと、さらにその車をUSトヨタが入手との記事(Date: 25 February 2010)のあったことを述べた。ところがその後ロイターの次のような報道が現れた。

U.S. to test Lexus model cited in Toyota hearings
2010-02-27 00:36:12 GMT (Reuters)  By John Crawley

WASHINGTON, Feb 26 (Reuters) - U.S. regulators have purchased and will test the Lexus ES 350 once owned by a Tennessee woman whose testimony this week in Congress personalized allegations of unintended acceleration in Toyota Motor Corp vehicles.

The Transportation Department said on Friday the National Highway Traffic Safety Administration would conduct the evaluation at its research center in Ohio, but seek outside expertise, if necessary.

この車を買ったのは政府側で、USトヨタではなかったようである。

"NHTSA will thoroughly examine the Smith's car as we work to get to the bottom of possible causes for sudden acceleration," Transportation Secretary Ray LaHood said in a statement.

と言うことなのである。二番目の所有者が2万7千マイルもトラブルなしに走らせたという事実の持つ意味は大きいが、専門家の透徹した眼でこの車が引き起こした過去の暴走の原因としてSmith夫妻が主張しているような電子制御の問題点が果たして特定できるのかどうか、これは見守ることとしよう。

一方、暴走へのフロアマットの関わりについて、私にとっては新しい事実がこの報道に含まれていたのでその部分を引用する。

An investigator from the National Highway Traffic Safety Administration (NHTSA) examined the vehicle and suspected the problem was related to floor mats that can jam the accelerator, according to a 2007 NHTSA report on the incident.

The report said that the unsecured heavy rubber all-weather mat rested atop the factory installed carpet mat, a point NHTSA said later could cause it to move forward unintentionally.

The NHTSA report also said a follow-up demonstration at a service bay showed how the loose all-weather mat could jam a fully depressed accelerator when placed just 2 inches forward of its intended location.

Smith it would have taken a "magic trick" for the heavy mat to slide forward enough to jam the pedal, and said she and her husband were not shown that the mat could slide forward accidentally.


A follow up test drive found no problems with drive systems, NHTSA said.

これによるとSmith夫妻の車をそのあとNHTSA担当者が修理工場で調べ、フロアマットが本来の位置から2インチ前方に動いただけで一杯に踏み込まれたアクセルは、そのまま押し込まれた状態になることを確認したようであるが、この記述だけでは本質的なことが分からない。運転中にアクセルが踏み込まれるということは、アクセルを(靴を履いた)足で踏み込んだからであろう。すでに足で踏み込まれているアクセルの上にどのようにしてフロアマットが乗るのだろう。この点だけでも修理工場でのテストが走行中の状況を再現しているとは私には思えない。その当時のフロアマットを敷き、その当時のRhondeさんの履いていた靴、服装で車を運転し、それでもフロアマットがずれてアクセルを押し込む状況が再現できるのか、それがテストに求められることであろう。

この記事によるとテストは修理工場で行われたと言うことなので、Smith夫妻がその場に立ち会ってNHTSAの報告内容を確認したとは想像しがたい。ましてやNHTSA担当者が手でアクセルを押し込み、そのアクセルの上に手でフロアマットをずらして置いたというのがテストの内容であれば、Smith夫妻ならずともNHTSAの報告に真っ向から反対するだろう。

「Dragon Tattoo」はあと20ページで終わるが、車のミステリーは深まるばかりである。

Smith夫妻の2007Lexus 350 ESは今どこに?

2010-02-26 17:08:15 | Weblog
Stieg Larssonの「The Girl with the Dragon Tattoo」も余すところ100ページを切ってしまった。大きな山場を一つ超えてこれから終息に向かうのだろうが、まだまだ先に二転三転が待ち構えているような気がする。この週末で読み終えるだろうがなんだか惜しいような気がする。少し先延ばしするのもいいなと思っているところに生のミステリー材料が転がり込んできたものだから、ついそちらに目を向けてしまった。米議会で行われたトヨタ公聴会で、自分の運転している2007Lexus 350 ESが暴走したというRhonda Smithさんの証言である。その一部をトヨタ 米公聴会で浮かび上がった問題点 日本では大丈夫?で取り上げたが、ポイントを私なりに次のように要約した。

要点はこうである。高速を走行中に速度を上げるためのキック・ダウンをすることなくレーンを変えたところコントロールが効かなくなり、①勝手にギアがシフト・ダウンしてクルーズ・ライトが点灯した。ガス・ペダルは踏んでいないのに速度が増すのはクルーズ制御のためだと思い、②クルーズ制御を外したのに速度は増え続け80 mphに達した。③ブレーキを踏んでも速度は下がらない。終に85‐90 mphになり、④シフトレバーをニュートラルに入れるとエンジンの回転数がさらに上がった。そして100 mphになる。⑤緊急ブレーキをオンにしたままシフトレバーをパーク以外のすべての位置、そしてほとんどは後退に入れていたが効果はなかった。そういう事態から9分ほど経って、⑥とくに何もしないのに車がゆっくりではあるが速度が下がり始めたので車を左の中央分離帯に寄せた。エンジンの回転数は上がったり下がったりで、33 mphになってはじめてエンジンを切ることが出来た。でもラジオは点いたままだった。
(強調と①②③④⑤⑥の追加は変更部分)

この部分だけでも私には素直に理解できないことが多いので、それだけでもミステリアスなのである。またその反面、いろいろと憶測を加えることも出来る。まず①は簡単で、フロアマットが急にずれたかなにかでガス・ペダルを押し込んだ可能性が考えられる。②ではクルーズ制御を外したとしてシフトレバーがどの位置にあったのかが分からない。ドライブ位置だと加速が続いたとしても不思議ではない。問題は③である。なぜブレーキがきかないのか。トヨタの説明では電子スロットル制御システムに安全装置が施されており、決して加速の方向には動かないとしているので、ここでの食い違いは疑問として残る。いずれにせよ駆動力が制動力を上回ったことが推測される。④でガス・ペダルが押されているままシフトレバーをニュートラルに入れるとエンジンの回転数が上がるのは分かるが、この状態でもブレーキが効いたようではないので説明がつかない。⑤にあるように走行状態でシフトレバーを後退位置に入れるなんて、なにかのギアが壊れそうな気がするので私なんかは恐ろしくて出来ないが、Lexusだから出来たことなのだろうか。⑥では正確に証言をたどると、これまで行ってきたいろんな操作ととくに異なる操作をしたわけではないが速度が下がり始めた、となるが、ガス欠になりはじめたのか、それともフロアマットがガス・ペダルから外れてきたのか、そして車が停まったときにシフトレバーの位置はどこだったのか、この証言からは分からない。この証言部分に限ってもこのような疑問が答えられないまま残るのである。

証言の後の方で、車が停まってから夫のEddieさんが現場に駆けつけて様子を見たが、このような事態を引き起こしたような異常なことはなかったし、アクセルについても異常はなく、またアクセルを押さえつけたままににしたような物は何もなかったと述べている。Eddieさんがレッカー車を呼んで車を牽引して貰うためにキー(key fob)を運転手に渡したが、牽引のための作業中、運転手に頼まれてEddieさんが車に乗り込みシフトレバーをパークからニュートラルに入れたところ、エンジンが何回も回転して車が動き出しそうになった、と言うのである。元来key fobが車中にあって起動ボタンを押してエンジンが動き出すとのことであるから、起こりえないことがまた起こったことになる。これにはEddieさんも運転手もあぜんとし、このことが事実であることを運転手が記した公正書類があると述べている。その後、再現したのだろうか。

Smith夫妻とトヨタ、およびNHTSAとの交渉がなかなか進展しなかったが、2007年4月11日になって(NHTSAの?)Safety Defects EngineerであるMr. D. Scott Yonががやってきて、Seviervilleのカーディーラーに保管していた車を検査することになった。この辺りの証言は次のようである。

He seemed to arrive with the preconceived idea to sell to us, that it was a floor mat problem. We continually insisted that it was not the mats, but instead somewhere in the electronics. Mr. Yon, along with my husband, took the vehicle on a short test drive. Mr. Yon performed several tests at a speed of 50 mph or less. These tests included placing the car in neutral while accelerating, and trying to stop the vehicle with the accelerator engaged and the foot brake fully applied. The transmission did disengage when put in neutral, but the car would not come to a complete stop with the foot brake engaged. Upon returning to the car lot, Mr. Yon and my husband placed the vehicle on a hydraulic lift and removed the wheels and tires. All of the brake pads were totally burnt up and the rotors and drums were ruined. Eventually this was something we had to pay to repair ourselves.

After insisting it was “probably” floor mats, Mr. Yon issued his final report and put the blame on the floor mats. These floor mats were a heavy gauge rubber mat placed on top of the summer mats by the dealer. It would have taken a magic trick for this mat to turn up enough or slide forward enough to cause this SUA. The report was issued on May 2, 2007. In it Mr. Yon claimed to have performed a test with the floor mat in our presence that would show cause for the floor mat to be blamed. This was never demonstrated to us or shown to us that it could ever happen accidently. Once again we advised NHTSA and Mr. Yon that this SUA problem was going to eventually cause the loss of life and serious injury.

All of the brake pads were totally burnt up and the rotors and drums were ruined.ということで、車のブレーキがきわめて異常な状態になっていたことは事実として残ったが、このブレーキが疲労していなかったら、シフトレバーをニュートラルにして、アクセルとブレーキを両方同時に踏み込めば車は停止したことが示唆されるので、このテストの時点で電子制御系の異常が確認されなかったことになる。その一方、These floor mats were a heavy gauge rubber mat placed on top of the summer mats by the dealer. It would have taken a magic trick for this mat to turn up enough or slide forward enough to cause this SUA.という部分で、heavy gaugeというからかなり丈夫な、ということは厚めのフロアマットがsummer matsの上に敷かれていたことが浮かび上がった。さらにこのフロアマットが動くはずがないと思い込んでいるSmith夫妻に対して、検査官はフロアマットが動いた可能性を指摘することで双方の見解が真っ向から対立していることが分かる。それなら運転最中にフロアマットをガス・ペダルの上に乗るように動かして、Rhondaさんが経験したようにガス・ペダルを踏まないのに加速するなど異常が発生するかどうか、験せばいいじゃないかと私は思う。それを検査官はSmith夫妻の立ち会いの下で行ったと言い、夫妻はそんなことは一切知らないと突っぱねる。水掛け論である。それならそれで改めてフロアマットの実験をやればいいではないか。

Rhondaさんはおそらくパニック状態になっていただろう。後になってあの時はこうしたと思い出したとしても、その客観性を証明するのはきわめて難しいと思う。だからこそ、異常事態が再現できるかどうかが真相解明の大きな手がかりになるわけだから、考えられるあらゆるテストを躊躇するべきではない。その意味では検査官がフロアマットのテストを行ったとする報告の方が私には受け入れやすい。私が検査官の上司で、そのようなテストをしていない報告書を持ってきたら、即刻フロアマットテストを行うよう間違い無く指示するだろう。それが分からない検査官ではないと思うからである。

ところで私の最大の疑問は異常走行したSmith夫妻のLexusという物的証拠が完全な?形で残されているのに、何故それを徹底的に調べなかったのかということである。飛行機が海中に墜落した場合に、もし機体が回収できなれば事故原因の解明がかなりやりやすくなることだろう。とくに電子機器の不具合は技術者が見守っている時に都合良く現れてくれるとは限らず、長期間の観測が必要になることだろう。このLexusを使ってトヨタなりもしくは第三機関が異常走行の状態を再現できれば、おのずから原因が限られた範囲に絞られることであろう。それを行うのに法律的な問題があるのかも知れないが、技術的科学的には多くの人を納得させられる結論が出てくることはまず間違い無かろう。今からでも遅くないと思いSmith夫妻のLexusが今どうなっているのだろう考え出したところ、なんとも思いがけないニュースにぶち当たった。

急加速したトヨタ車、その後はトラブルなし
2010年 2月 24日 16:50 JST

 【ワシントン】米下院エネルギー・商業委員会が23日開いたトヨタ自動車の大量リコール(回収・無償修理)問題をめぐる公聴会で、急加速を経験したとして証言したロンダ・スミスさんのトヨタの「レクサスES350セダン」が、現在も使用されており、何のトラブルも起こしていないことが分かった。米高速道路交通安全局(NHTSA)の広報担当者が24日明らかにした。

 同スポークスマンによれば、NHTSAが先週、同車の新しいオーナーに聞いたところ、「走行距離3000マイル弱のところで購入し、何のトラブルも経験せずに走行距離は2万7000マイルになった」と答えたという。スミスさんは証言で、2006年にテネシー州のハイウェーで制御不能の急加速に見舞われ、時速100マイル(約160キロ)になった恐怖の経験を涙ながらに語った。その後、スミスさん夫妻は同車を売却した。

 報告を受けたNHTSAの検査官は、フロアーマットがアクセルペダルに引っかかったことが原因と判断した。しかしスミスさん夫妻は、フロアーマットのせいではないと主張。スミス夫人は、車が速度を上げる前にクルーズ・コントロール・ライトが点滅したことから、電子制御系の問題と考えている。

記者: Kate Linebaugh
(The Wall Street Journal)

これが事実だとすればなにをか言わんや、である。Smith夫妻の証言と同時にこの事実を明らかにしていない米議会の公聴会の公正性はどう判断すべきなのだろうか。さらにはこのような報道が現れた。

US: Toyota acquires Lexus cited in congressional hearing
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Summary: Toyota Motor has taken possession of the Lexus sedan driven by Rhonda Smith, who testified at a congressional hearing on Tuesday about an incident of sudden acceleration.

Word count: 272

Date: 25 February 2010

Source: just-auto.com editorial team

今頃(Date: 25 February 2010)になってUS: ToyotaがこのLexusを手に入れたというのである。これ以上の詳しい内容は私の手が届かないので分からないが、あまりにも遅すぎたトヨタの対応である。

事実は小説よりも奇を思いがけず味わってしまったところで、またDragon Tattooの本に戻ることにしよう。

トヨタ 米公聴会で浮かび上がった問題点 日本では大丈夫?

2010-02-24 15:07:08 | Weblog
米議会下院で行われた公聴会のオープニングをThe New York Timesのライブビデオで見た。エネルギー商業委員会のWaxman委員長はなかなか紳士的な態度ではあったが、トヨタの対応を厳しく指摘した。それはトヨタが「unintended sudden acceleration」を最初はドライバーのせいにし、次はフロアマットのせいにして、さらにはガス・ペダルのせいにしてきたことへの批判である。さらにトヨタおよびNHYSA(米運輸省高速道路交通安全局)から提出された10万ページを超える文書の中に、ペダルの電子制御システムが導入されてから暴走事故が増加してすでに数千件の報告が寄せられているのにもかかわらず、電子制御の欠陥が問題を引き起こした可能性を真剣に考えたことをうかがわせるいかなる証拠もこれらの文書に見出されない事実こそきわめて重要であると述べた。そしてトヨタが電子制御系の欠陥についての調査を開始したのはほんの2ヶ月前であると指摘している。

トヨタの現地法人、米トヨタ自動車販売会社のJames E. Lentz IIIの証言内容はあらかじめpdfファイルで公表されており、ほぼ同じ内容が公聴会でも述べられたが、その要点は次の通りで、フロアマットと動きにくくなったペダルの二点を依然として強調している。

Our engineers have identified two specific, mechanical causes of unintended acceleration covered by the recalls and we are currently addressing these through the open recalls. One involves floor mats that when loose or improperly fitted can entrap the accelerator pedal. The other concerns accelerator pedals that can, over time, grow “sticky” with wear. The solutions we have developed are both effective and durable.

そしてこの時点では

We are confident that no problems exist with the electronic throttle control system in our vehicles.

と言いきっている。しかし、である。私は以前の記事プリウスのリコール届け出 そしてアメ車の暴走とフロアマットのことで、

アメリカでレクサスが暴走して交差点に入り他車と衝突して大破炎上し、4人が亡くなったという痛ましい事故で私が疑問に思ったのは、ブレーキを踏んでも利かないのならなぜシフトレバーをニュートラルに戻さなかったのだろうということであった。見逃しているのかも知れないが、この時のドライバーがブレーキを踏む以外にどのような操作をしたのか詳細は不明である。事故車のシフトレバーの位置がどこにあったのか、どこかに報告があるのなら見たいものである。

と疑問を記したが、それには暴走に巻き込まれたドライバーの生々しい証言が答えてくれたのである。それはRhonda and Eddie Smith夫妻の記録である。

Rhonda Smith(38)さんが2006年10月12日に2007Lexus 350 ES(2728 miles走行)を運転してテネシー州のハイウエイ66を走っていたときのことである。

Upon entering I‐40 I accelerated with everyone else, into the flow of traffic. At this point, I merged over into the second lane, NOT going into passing gear.

It is at this time I lost all control of the acceleration of the vehicle. The car goes into passing gear and the cruise light comes on. At this time, I am thinking that maybe the cruise is what has caused the car to accelerate, as my foot is NOT on the gas pedal. I take off the cruise control. The car continues to accelerate. The car is now up to 80 mph. The brakes do not slow the car at all. Now I am at 85‐90 mph. I push the car into NEUTAL and it makes a revving noise. I push the emergency brake on… nothing helps. I continue hitting and slamming the brakes. Now I am at 85‐90 mph. I look at the traffic ahead to see if I can maneuver in and out of the upcoming cars and trucks, or if I am going to need to put the car into the guardrail and into the trees. The last time I looked at the speedometer it read 100 mph. At this time, I had the emergency brake on while frantically shifting between ALL the gears (besides park) but mainly had it in REVERSE and with the emergency brake on. I finally figured the car was going to go to its maximum speed and was praying to God to please help me. After about 3 miles had passed, I thought it was my time to die, and I called my husband (on bluetooth). I knew he couldn’t help me in this particular situation, but I just needed to hear his voice. What an awful 911 call he received at work.

At almost exactly 6 miles God intervened. I had not tried anything different that I had frantically tried before to slow the vehicle, yet the car began to slow down ever so slowly. It slowed enough for me to pull to the left median, with the motor still revving up and down. At 35 mph it would not shut off. Finally, at 33 mph I was able to turn the engine off. However, the radio remained on and I was not about to touch ANY button on that car, or ever again.”

要点はこうである。高速を走行中に速度を上げるためのキック・ダウンをすることなくレーンを変えたところコントロールが効かなくなり、勝手にギアがシフト・ダウンしてクルーズ・ライトが点灯した。ガス・ペダルは踏んでいないのに速度が増すのはクルーズ制御のためだと思い、クルーズ制御を外したのに速度は増え続け80 mphに達した。ブレーキを踏んでも速度は下がらない。終に85‐90 mphになり、シフトレバーをニュートラルに入れるとエンジンの回転数がさらに上がった。そして100 mphになる。緊急ブレーキをオンにしたままシフトレバーをパーク以外のすべての位置、そしてほとんどは後退に入れていたが効果はなかった。そういう事態から9分ほど経って、とくに何もしないのに車がゆっくりではあるが速度が下がり始めたので車を左の中央分離帯に寄せた。エンジンの回転数は上がったり下がったりで、33 mphになってはじめてエンジンを切ることが出来た。でもラジオは点いたままだった。

この証言のどこにも暴走がフロアマットのせいであることを窺わせるものはない。ガス・ペダルが踏み込まれたままで元に戻らなかった可能性は残るが、シフトレバーをニュートラルが入ったのにもかかわらずブレーキが利かなかったことは理解できない。信じられないことの連発であるが、それだけにガス・ペダルの電子制御システムの異常の可能性を少なくとも考慮に入れるべきであるのに、トヨタがWaxman委員長の言葉にもあるようにその可能性すら考えていなかったのが事実であるなら、これは常識で理解できる対応とは到底思えない。

しかしここに至ってトヨタの側にも微妙な変化が生じたようである。The New York Timesは

Toyota Official Says Recall May Not Fully Solve Safety Problem

In the first of many Congressional hearings into Toyota’s extensive recalls, a senior company executive told the House Energy and Commerce Committee on Tuesday that the repairs prescribed by the company might “not totally” solve the problem of unintended sudden acceleration in its vehicles.
「a senior company executive」とはLentz社長のことなのだろう。そのLentz社長が

But in response to a question Tuesday by the House energy committee chairman, Henry A. Waxman, Mr. Lentz said that Toyota was still examining the sudden acceleration problem, including the possibility that the electronics system might be at fault ― something the company had previously denied was the case.

と、最初の証言とは異なり、電子制御システムの欠陥の可能性を排除しないことを公言したのである。次の逃げともとられる証言と関係があるのかも知れない。「He」というのはLentz社長のことである。

He also emphasized frequently that the final authority for deciding actions on defects and other safety matters resided with Toyota officials in Japan.

Lentz社長の次の証言でもう一つ重要なことが浮かび上がった。

Mr. Lentz also told the committee that Toyota was installing a new brake system that can override a surging gas pedal on almost all its new vehicles and most of those already on the road.
(The New York Times)

すなわち「ブレーキ優先装置」または「ブレーキ・オーバーライド・システム」をこれから製造する新しい車に取り付けるだけではなくて、すでに現在走行中の車のほとんどにも取り付けると述べているのである。その内容はLentz社長の証言のプリテキストに明らかである。

And, we will install advanced brake override systems in all our new models – making us one of the first full‐line manufacturers to offer this customer confidence feature as standard equipment. Additionally, we are announcing that we will install this system on an expanded range of vehicles – including the Tacoma, Venza and Sequoia models – that are capable of accepting the new software. We had previously announced that the system would be installed onto the Camry, Avalon and Lexus ES 350, IS 350 and IS 250 models.

何故かこの部分は今のところ日本の新聞には報じられていない。米国では問題が大きくなったのでトヨタは「ブレーキ優先装置」をリコールでも取り付けるが、暴走問題が生じていない日本では黙っておこうということなのだろうか。ところがここにいたって大きな疑惑が頭をもたげてきた。

電子制御システムの欠陥による「暴走」が事実であるのなら、その発生が米国だけに限られるとは常識では理解できない。実は日本でもすでに発生しているのに、それが隠蔽されている恐れはないのだろうか。モヤモヤが消えそうもない。こういうときにこそマスメディアが独自の取材能力を発揮して真相を明らかにし、不安感を鎮めて欲しいものである。


猫よけネットの設置

2010-02-23 22:41:32 | Weblog
とくに最近、猫の被害が増えてきた。一匹だけなのだが花壇とか菜園など腐葉土や堆肥などをたっぷり使って土が軟らかくしたところがお好みとみえて、掘り返しては糞を残していく。猫にとっては豪華トイレなのだろう。近所をねぐらにしているようで、日が昇るとご出勤なさる。首輪をしていないので飼い猫か野良猫なのかわからない。言って聞かせても分かってくれる相手ではないので防護策に腰を上げることにした。

裏庭に一箇所フェンスの途切れたところがある。敷地の外になるが地蔵堂があって、その周辺の形状からフェンスが2、30センチほどやむを得ず途切れているが、そこが猫の通路になって裏庭に侵入してくるのである。その隙間に猫よけネットを張ることにしてホームセンターで材料を仕入れてきた。1メートル50のポール2本、穴が一つしかない変形ブロックを2個、それに合成繊維でできた幅1メートルのネットである。ポールをブロックの穴に差し込みセメントで固定して、隙間の両端に立ててその間にネットを張ることにした。ただちに効き目が現れるのかどうかやってみないと分からないが、しばらくはいたちごっこが続くかも知れない。

居住地にそれぞれ衛生監視事務所というのがあって、地元の事務所は次のような案内を出している。

平成14年5月に環境省より家庭動物等の飼養及び保管に関する基準が告知されました。動物愛護と適正管理を推進するために,猫については特に「屋内飼育」「避妊去勢手術」「所有の明示」などが推奨されています。周辺環境に応じた適切な飼養を行なうことにより他人や地域に迷惑をかけない飼い方を心がけてください。

なお,迷惑をうけている犬や猫の飼い主が特定できる場合には,個別に指導も行っていますので,お住まいの各衛生監視事務所にご相談ください。

これでは首輪など「所有の明示」がなければ野良猫として扱って問題はないようである。野良猫をどう扱えばよいのか実はなんの指針も見つからないが、いざとなれば首輪なしの猫を捕まえて保健所に持っていけば引き取ってくれるのだろう。今はそんな事態に至らないよう念じることにしよう。

瀬戸大橋 讃岐うどん 大鳴門橋 明石海峡大橋

2010-02-21 17:00:12 | 旅行・ぶらぶら歩き
橋が出来てからはじめて四国に行ったのは瀬戸内しまなみ海道を通ってであった。道後温泉、松山、砥部焼の町などを回って、中学校の修学旅行以来となる高松を訪れ、港でフェリーを見ているうちに船に乗りたくなってフェリーで神戸に戻ってきた。明石海峡大橋を渡り淡路島を縦断して大鳴門橋を通り徳島を訪れたのは1000円ドライブが可能になってからだから比較的最近のことである。ところが本州四国連絡橋3ルートの最初に出来た瀬戸大橋だけはまだ通ったことがなかったので、昨日急に思い立って久しぶりに1000円ドライブに出かけた。

家を出たのが9時20分頃で、六甲北道路を通り神戸北ICで山陽道に入り、倉敷Jctで瀬戸中央自動車道に移りいよいよ瀬戸大橋に差し掛かった。家を出てから2時間少々である。瀬戸大橋としか私の頭にはなかったが、地図をよく見るといくつかの島を結ぶいくつかの橋からなっていて、橋の名前が下津井瀬戸大橋、櫃石島橋、岩黒島橋、与島橋、北備後瀬戸大橋、南備後瀬戸大橋と次々と変わっていく。海峡のなかほどにある与島PAでしばらく休み周辺の風景を楽しんだあと坂出に向かう。それにしてもこれらの橋は巨大である。上下二層で片道3車線、合計6車線の車道の下には鉄道が走っている。人間が造ったものだと思うと素晴らしい技術力となによりもそのエネルギーの凄まじさに感動を覚えた。日本の誇る技術者魂が脈々と世代を超えて続いて欲しいと願った。

橋を渡りきるころ左手に工場地帯がひろがり、川崎造船の文字が大きく目に入る。今は本社で勤務している甥が若い頃この工場で働いていたことがあって、休みに霊場巡りをして四国八十八箇所をすべて回り終えたという話を思い出した。若いときからそういう世界に触れて達観したのだろうか、両親の切なる願いをよそに独身を貫き通している。坂出北ICで出る。料金は2000円也。橋を渡るのと高速道路を通ったのがそれぞれ1000円ということなのだろうか、計算の仕組みがもう一つ飲み込めない。

坂出北ICを出て33号線を西に向かい、予讃線の下をくぐり小さな川を越えてしばらく行くとあらかじめ調べておいた讃岐うどんの店「おか泉」が右手に現れた。10人以上はお客さんが店の前に並んでいる。店の裏側にある第二駐車場に車を駐め行列に加わる。メニューが回ってきて店に入る前に登録商標にもなっている評判の「ひや天おろし」の注文を済ませる。正直なところこれほど衝撃的なうどんをこれまで味わったことはなかった。うどんの味わわせ方が中途半端でない。芸の極みを感じてしまった。器が砥部焼だったのも私の好みにぴったりであった。食事を終えた頃はもう1時を遙かに過ぎていた。


坂出ICから高松自動車道に入り西に向かい、川之江Jctで徳島道に入って脇町ICで出る。一般道をとことこ行くよりこの方が行きやすく思えたからであるが思いの外距離があった。この間1000円也。うだつの町並みで知られたこの町は阿波藍の集散地として江戸から明治時代に栄えて、その名残を随所に残しているユニークな町である。タイムスリップするような感覚で4時過ぎまでぶらぶら歩き、今度は一般道の撫養街道を通り鳴門ICを目指す。



撫養街道12号線が途中から14号線に変わるが、道沿いにショッピングセンターが目立つようになり、そこへの車の出入りに車の流れが滞るので1時間以上もかかってようやく神戸淡路鳴門自動車道に通じる11号線に入った。ところがおかしい。北上するのだから左手にあるべき太陽が右手に見える。11号線へ入るときの道路標識がはっきりしなくて反対方向の車線に入ったようで、しばらく走ると室戸岬の表示が現れた。間違い無く南に向いている。そこでUターンで方向転換をしてあとは走るのみである。日が落ちてヘッドライトで皆が走っていると動きがはっきりと分かって日中より走りやすい。追い越し追い越し大鳴門橋、淡路島、明石海峡大橋を1000円で通り抜け、7時前にはわが家に辿り着いた。全行程ほぼ500キロほどの手頃のドライブだったが、考えてみると橋を渡って四国まで讃岐うどんを食べに行っただけのようなもの、贅沢を味わったような気分になった。


「ブレーキ優先装置」または「ブレーキ・オーバーライド・システム」とは何のこと?

2010-02-18 18:13:20 | Weblog

朝日朝刊一面のトップの見出しである。「ブレーキ優先装置」とはなんのことかピンとこなかったが、次のような説明があった。


「ブレーキが踏み込まれた場合、電子制御により、アクセルがどんな状態であっても解除する非常停止装置」といわれても、もうひとつピンと来ない。そこで「brake override」をGoogleで検索してみると沢山の記事が出てきたが、私の目を引いたのはWashington Postの記事(2010年1月29日)である。

The brake override systems allow a driver to stop a car with the footbrake even if the accelerator is depressed and the vehicle is running at full throttle. The systems are an outgrowth of new electronics in cars, specifically in engine control.

ときわめて分かりやすい。ここで「ブレーキとアクセルが競い合うときはブレーキが勝つシステムだ」と米国のChrysler社のスポークスマンが説明しているが、Chrysler社では2003年からこの装置を装着し始めたとのことである。またVolkswagen、Audi、BMW やMercedes-Benzなどのドイツ車もすべてではないが装着車を生産しているとのことであり、General Motorsでもアクセルを踏んでスロットルを全開したときの力がブレーキの力を上回る車にはすでに10年前からこの装置をつけているとのことである。ところがトヨタにはトヨタなりの信念があって「ブレーキ優先装置」に重きを置いていなかったようである。「Car Watch」は次のように伝えている。

 佐々木副社長によれば、トヨタの電子スロットルシステムは「2系統のコンピューターがお互いを監視しあい、片方が加速の指令を出し、もう片方がそのような指令を出していないときは、減速するようになっている。要するにグーとパーだけのじゃんけん。チョキがないので、パーが必ず勝つ仕組み。パーのときは減速で、グーが加速」「アクセルペダルが踏まれたかどうかを検出するセンサーも2つある。ペダルが踏まれた信号と、踏まれていない信号があったら、これも踏まれていないほうが勝つようになっている」ので誤作動の確率は極めて低いとした。

これも分かりにくい説明ではあるが、トヨタにしてみるとアクセルペダルが「意志」によって(?)踏まれたのでなければ、ペダルが踏まれたような状態になっていても、ペダルを踏んだことにはならないようになっている(従ってスロットルは開かない)、と言いたいのだろうか。しかし現実にそのような事故が起こってしまっている以上これでは説得力に欠ける。佐々木副社長の説明がかりに正しいとすると、フロアマットが引っかかっても本来は大丈夫だったことになるし、そうならば問題はフロアマットではなく電子制御システムにあったことになるのではなかろうか。この辺りの事情が報道を突き合わせてもなかなか浮かび上がってこないので隔靴掻痒の思いがする。

Washington Postが上の記事を次のような書き出しで始まっていた。

Toyota Motor began facing complaints of runaway cars years ago, but the company did not install "brake override" systems in those vehicles, even as several other automakers deployed the technology to address such malfunctions.

主張の要点はよくわかる。トヨタ車で走行中にアクセルペダルが戻らなくなる事例が何年も前から報告されているのに「ブレーキ優先装置」を装着しようとはしなかった。その対応の遅れが指摘されているのである。エンジンの電子制御のレベルでトヨタが対応することを米国側は期待していたのに、トヨタがアクセルペダルに引っかかる恐れのあるフロアマットの交換だけで済まそうとしたのであれば、両者の思惑の食い違いがきわめて大きいことになるが、このような問題点を日本のマスメディアはちゃんと報じていたのだろうか。少なくとも私は気がつかなかった。

それにしても「ブレーキ優先装置」がそれほど暴走防止に役立つのなら、日本車もそれを備えていたらよいと思うのに、日本のメーカーがどのように考えているのだろう。その様子が今のところ報道からは伝わってこない。日本車には「ブレーキ優先装置」のような発想がなかったのだろうか。そう言えば昔のことであるが、マニュアルトランズミッションの頃に坂道発進でブレーキを踏みながらアクセルを踏んで回転数を上げたところでブレーキを緩めるなんてことを私自身がしていたことを思いだした。教習所で教えて貰う標準的な運転法ではないが、なにか本でも読んで会得したのだろう。運転技術の一つにスポーツ車などでアクセルとブレーキを同時に踏むやりかたがあるようにも聞いた。マニアックな運転法なのかもしれないが、そういう人たちの意見を日本のメーカー気にしすぎたことでもあったのだろうか。それでは簡単に「ブレーキ優先装置」の導入に踏み切れないのかも知れない。

「ブレーキ優先装置」をかりに装着したとしても、またそれはそれなりに新しい問題を引き起こすような気がする。少なくとも「ブレーキ優先装置」の報道に関して日本と外国、米国で温度差があるようなので、私たちにも問題点が分かるようにメーカー側からの懇切な説明が欲しいものである。

「Millennium」には地図がないが・・・

2010-02-15 23:19:38 | 読書
先日述べたスウェーデンのミステリー小説「ミレニアム」の英語版を読んでいて不便に感じたことがあった。大企業グループの創始者一族を中心に住人が今や二十数人しか住んでいない孤島で、40年ほど前に女の子が失踪する事件が起こった。その謎を解き明かすべくこの大物に依頼された主人公がその島に住み込んで未だに姿を見せないその少女の謎を解き明かすべく探索を始めるが、まずはその島に住んでいる一族のそれぞれの家がどこにあるかなどの説明がことこまかく出てくる。ふつうこのような場合は地図がついていて、言葉で説明されるよりも位置関係がすぐに分かるようになっているだろうに、一族の系図は出ているものの地図が出てこない。これなら説明に従って自分で地図を作るべきかなと思いつつも、Google地図で調べてみた。するとこの孤島は見つからないが、孤島が属している町Hedestadに関係するのであろうか、ストックホルムの西方にある場所のスウェーデン語による説明にこの小説の作家Stieg Larssonsの名前などが出てくるのである。

Gnesta blir Hedestad - i filmatiseringen av Stieg Larssons trilogi
Filmatisering av Stieg Larssons deckarroman i Gnesta

Gnesta blir Hedestad i en filmatisering av Stieg Larssons deckarroman Män som hatar kvinnor. Filminspelningen börjar redan under våren och kommer av och till att pågå under 2008.

小説に出てくる架空の場所と同じ名前、とか記されているのであろうか。いずれにせよこれで孤島の名前はまったく架空であることが分かった。ところが、である。日本語版の「ミレニアム」を読んだという人から、日本語版にはちゃんと地図が出ていると聞いたのである。こんな片手落ちが許されるのかとブログを探してみると、原書であるスウェーデン語版には拡大図を含めて2枚の地図がついていることが分かった。しかしなぜか英語版、スペイン語版、オランダ語版にはこの地図が出ていないということで、それぞれの読者は地図があったらいいのにと託っているのである。ところが有難いことに今年の1月10日に投稿されたメッセージで、英語版の翻訳者が読者の便宜のために準備した英語版の地図がダウンロード可能であることが分かりそれを早速手に入れた。また日本語版をお持ちの方から地図のコピーをメールで送って頂いたので、これで読みやすくなった。

それにしても英語版、スペイン語版、オランダ語版ではなぜ地図が省かれたのだろう。ひょっとしたらこれらの言語を使う人たちは、文章の説明に基づいて地図のような図形を頭の中に描く能力が優れているので、わざわざ地図をつけるまでもないとでも思われたのだろうか。どなたか説明していただきたいものである。それはともかく、ますます「Millennium」から離れられなくなっているのが現状である。

前奏なしで歌を歌い始めるとき

2010-02-14 23:24:10 | 音楽・美術
先週日曜日の午後、NHK教育テレビがエディト・マティスのソプラノ・リサイタル(伴奏 小林道夫)を放映していた。といっても1986年の来日公演の録画だからもう24年前のもので、1938年にスイスで生まれた彼女は当時48才、まさに脂ののりきったときの演奏である。私自身今年はドイツ歌曲をと意気込んでいるだけに、ベートーベン、モーツアルト、ブラームス、R.シュトラウスのドイツ歌曲、それにブラームス編曲のドイツ民謡という1時間を超える盛り沢山なプログラムにすっかり引き込まれて、彼女ならではの端正な歌い方に心を奪われていた。ところが歌を楽しんでいるうちにあることが気になりだしたのである。

ふつうは前奏があって歌を歌い始める。歌い始めのタイミングの取り方が難しくて、私なんぞ苦労する曲も多いが、少なくとも音程を狂わすことは避けられる。ちゃんとピアノが音をくれるからである。ところが前奏がなくて伴奏のピアノと歌が同時に始まる歌曲も多い。その際に歌手が歌い出しの音をどう取るかが問題になる。無伴奏の合唱などでは、ピアノを叩くか音叉などでぞれのパートが歌い出しの音をつかむのが普通であろう。ところがエディト・マティスのリサイタルで、前奏のない歌曲が続いて、しかもピアノがあらかじめ音を与えるわけでもないのに、歌い出しの音程がピアノとピタリと合うのである。さすがプロともなると絶対音感がしっかりしているんだなと、まずは素直に感心してしまった。

アンコールに入ってその何曲目かである。舞台にエディト・マティスとピアノの小林道夫さんが出てきて、小林さんの指が鍵盤に当たったのかポロンと音が出た。小林さんは慌てずにおもむろにピアノの前に坐り、アンコール用の楽譜を探し始めた。なかなか楽譜が出てこないがやっと見つかったようである。そして歌い始めの緊張感が高まったその時、私にピンと来るものがあってそれが正しかったのである。前奏なしで歌い始めた彼女の最初の音がピアノのあのポロンであった。小林さんがさりげない形で彼女に音を与えていたのである。歌い始めの直前に音はこれですよとばかりにポロンとピアノを鳴らされたら、興を削がれたことは間違い無い。さすがプロの技、と独り合点したのであった。

前奏なしの歌が続いたのはR.シュトラウスの歌曲集であったと思う。しかしこの時はピアノのポロンは一切ないのに正確な音程で歌が始まっていた。絶対音感が働いているのかも知れないが、それよりも前の曲の歌い終わりで次の曲の音取りをしたのではなかろうかと私は推測した。その程度のことなら私にも出来そうである。そう言えばこの演奏会の観客は一曲ごとに拍手して歌の流れを中断させるようなことはしなかった。だから私の想像する音取りが拍手に邪魔されることなくちゃんと働いたのであろう。この勝手な推理が当を得たものかどうか、専門家にお聞きしたいものである。


秀逸しかし悲惨! 「平成の脱税王」とは

2010-02-12 21:45:24 | Weblog
久しぶりに衆議院の予算委員会で些か品位にかけるが面白いやり取りがあった。自民党の与謝野馨・元財務相が鳩山首相を「平成の脱税王」と決めつけたのである。国民の大勢が心で思っていることを元財務相が「平成の脱税王」とやっつけたのである。徴税を行う国税庁の上部組織である財務省、与謝野氏はかってその長であっただけに、この発言はきわめて重い。


私が小学生ならただただ面白がって一国の総理大臣を「平成の脱税王」とはやし立てることだろう。そう思うと溜飲が下がる。しかし、である。自分自身の政治活動にかかわるお金の出入りに、「知らなかった」ですべての責任を逃れようとする卑しい人間性に、若い世代が毒されはしないかとそれが気に掛かる。