「うつろ庵」の近くには、桜や銀杏・欅などの大木が沢山植えられた公園があって、子供達も住民も四季それぞれの風情を堪能している。公園脇の道路の両側の歩道には、「もちの木」の粋な並木が連なり、この季節には赤い実が住民のご自慢だ。
小粒の赤い実は、小鳥たちの恰好なご馳走だが、皮肉なことに「もちの木」の樹皮が、鳥を捉える「鳥黐(とりもち)」の原料だと知ったのはこの頃だ。ゴム状の「鳥黐」は粘着力が強力で、かつては野山の小鳥を捕えるのによく使われたものだ。
最近では野鳥保護の観点から、古来からの「鳥黐」も、近代的なカスミ網も使用禁止だと聞き及んでいるが、虚庵居士の子供の頃の原始的なお遊びが、懐かしく想い出される。
「とりもち」を塗った竹竿を手に持ち、トンボやセミなどが簡単に捕れた。
時には近くの雀を狙って、息をころして棹先をそっと近づけるのだが・・・。 間一髪のところで、「パッ」と雀に逃げられるのが常だった。子供の頃のことゆえ、「もちの木」の存在そのものも、「とりもち」は「もちの木」の樹皮から造ること等も、知らなかったのは云うまでもないことだが。
粋な「もちの木」の赤い実のご紹介が、「とりもち」のご紹介になり、遠い昔の子供のお遊びの話に切り替わったが、「遊びをせんとや生れけむ」とは、子供の頃から変わらぬ虚庵じじの姿そのものである。
お散歩の初めは何時ものゴアイサツ
「もちの並木」の紅の実に
植木屋の大胆極まる剪定に
赤い実房は 諦めにしが
逞しき「もちの並木」ぞ枝葉伸ばし
たわわの実房で期待に応えぬ
紅の実は小鳥たちのおゴチソウよ
やがて賑やかな並木にならむか
竹竿に「鳥もち」塗ってのお遊びを
懐かしむかな「もちの木」見上げて
鳥達が好んで啄ばむ「もちの木」ゆ
小鳥を捕える「鳥もち」造るとは