★★★★ 正論を振りかざすことの虚しさを知る作品
おんぼろ家で 仲よく楽しげに暮らしている家族
しかしある冬の夜 虐待され放置されている少女を保護した時から
この家族に感じる違和感の正体が・・・徐々に明らかになっていく---
ネタバレは避けたいところですが
多くの人の察する通り・・
彼らは本当の家族ではない
やさしい祖母:初枝
万引きを教えるとんでもないが愉快な父:治
ぶっきらぼうだけど心優しき母:信代
しっかりものの息子祥大
風俗に務めるも明るく元気な亜紀
親から虐待され保護された少女
彼らがいったいどんな心の傷を抱え 日々何を思い、
なぜともに暮らすことになったのか・・・
監督は何も語らない。
それは 息子と楽しそうに万引きを繰り返す様子の中に
たわいもない会話の中に
怪我した娘の傷に 薬を塗る、その子をぎゅっと抱きしめる・・
家からわずかに見える空を見上げ
見えない花火を楽しむ・・みんなの笑顔の中に
皆ででかけた海の風景の中に----。
時々そっと見えるだけだ
そして私たちはしる。
彼らはけして一人じゃない。孤独じゃないのだと----。
そこには確かにそう思わせる
深く強い愛情と絆が見えたのでした
しかし--彼らの生活は祖母の死により少しずつ綻び・・・
遂には祥大の裏切り?によって・・・
バラバラになってしまう。
彼らの生活を年金で?支えていた祖母
でもそのお金の中には亜紀の両親(愛人の子)を脅して得ていた金もあった
働いてはいたが治や信子は子供に万引きをさせ
そして大きな罪を背負い生きていたことも判明する。
司法によれば
虐待されていたとしても 勝手に子を保護したことは誘拐で
万引きは泥棒で 学校に通わせていないことは大罪で・・・
彼らの行動は確かに間違っていた---。
彼らは あるはずのない家族だった
でも・・ソコに私が見たものは
確かに 「愛情だった」と・・・・心から思う。
「拾ったの。 人が捨てたものを 拾っただけ----」
信代の涙に 涙がこぼれたくろねこなのでした。
エンデイングは唐突に訪れちょっとびっくり。
彼らのその後が---何も語られなかったからだ。
天涯孤独だった初代にとって皆と過ごせた日々はきっと幸せだったことだろう
罪を犯した信代と治。でもいいひとだった・・だからきっと 幸せになれるよね・・
祥大は彼らの中のスイミー。
彼の行動は裏切りなんかじゃない・・彼が見ていたものは正しい道だったのだ。
学校に行けるようになって本当によかった。彼はきっと大丈夫だろう。
しかし亜紀はどうしただろう・・親となかなおりできるのか・?
そしてあの子は大丈夫なのか---?
いや大丈夫なわけはないよね・・涙
正論を振りかざしたところで救えないものもあるんじゃないのか--。
なんだか虚しい。 悲しい。
ばらくはぼ~~っと思いを果ててしまいましたわ。 ----。