牛コラム

肥育牛と美味しい牛肉のはなし

和牛肉の方向性

2009-08-04 23:54:33 | 牛の改良



写真は、当センターが出荷した鹿児島県産去勢牛で、血統は金幸×神高福×第20平茂、枝肉重量504.8kg、BMS12、芯面積70‡のリブロース6-7間切断面である。
このクラスの枝肉を生産することが、当面の目標であることは否めないが、おいそれとはお目にかかれないのも現状である。
枝肉重量を期待すれば、キメが粗くなるという意見もあるが、それは必ずしも正解ではない。
最近では、但馬系、糸系、勝系とそれぞれの血液が混ざるようになり、大貫物でも、キメの細かいロース芯となることはままある。
写真の牛も、枝肉重量が500kgを越しているが、鳥取系と但馬系からなり、均等な小ザシ状態で芯面積もあり見応えがある。
一般的に、糸系や勝系は粗ザシと言われてきたが、これらも但馬系との交配により、かなり改善されてきている。
そこで、目指すべき肉質となれば、写真のような肉質と言うことになるが、特段この様な肉質を目指すという狙いはない。
肥育経営を行うことは、究極的には、儲かる経営を目指さざるを得ないのが現実的な考え方であり、期待通りの素牛の評価と、その素牛が期待通りに仕上がることが、最終的な狙いである。
社会的な諸条件を考慮にするならば、枝肉の市場性では500kg以内が好まれ、経営的には、BMS7以上でなければならない。
また、将来的な飼料事情を考慮に入れれば大貫物ではない方向性を確立すべきであると認識している。
また一方で、現行ではサシ偏重の格付けが行われているが、消費者が最も食味し易いサシのレベルはどこにあるかを検証すべきであると、常々考えている。
高級とされる写真のような牛肉とBMS7~8程度をあらゆる年代層に食味させれば、最初の一口は、高級肉のジュウシーな不飽和脂肪酸の食感に感動するが、結局完食するのは高級肉ではない事実がある。
この様な現実を受け、真の高級肉とはどのような条件を備えているかを再検討すべき時に来ているような気がしている。
例えば、BMS8程度を高級肉として扱われれば、肥育期間の短縮と肥育飼料の節約が実現しよう。
同時に肥育飼料への穀類偏重も緩和され、言われているところのエコフィードの利用性が高まる可能性も視野の外ではなくなる。
先に開催された全国和牛登録協会の定時総会では、事業計画に和牛の審査標準の改正が提起されている。
それには和牛の将来像を如何なる方向へ改良すべきかが明らかにされるはずである。
和牛生産者の目指す方向性も、それにより有益なヒントが得られるであろうと重視しているところである。