牛コラム

肥育牛と美味しい牛肉のはなし

系統の予測が難しい

2009-08-02 17:45:07 | 素牛


以前は、主要な種雄牛が集中して交配されていたため、子牛を見れば、その大方の血統を判断出来たものである。
最近は但馬系とか、藤良系(糸系)、気高系(勝系)などは余程の特徴がない限り見誤ることが多々ある。
それは、兵庫産を除けば、導入先が鹿児島県が主体であり、同県産の導入牛は、3代祖または4代祖の中に必ずと言っていいほど、但馬牛、糸系、勝系がそれぞれに交配されているためである。
ただ、3代祖の組み合わせの中に勝系が交配されていれば、体幅などや増体能力が強力に現れている。
但馬系の場合は、体格部位や角や蹄や骨味などは輪郭鮮明で締まりが良く、つまり品位資質が良く、勝系や糸系との特徴の差が明らかに異なっている。
糸系は、発育の良さに特徴があり、毛色が濃いことも特徴であったが、代々交配を重ねるうちに、他系との差が認められなくなった。
また、個々の種雄牛の特徴が子牛に現れることもある。
例えば金幸の場合は、瞼の周囲に特徴があり、若者たちと言い当てしたものであるが、最近はその産子が少なくなりつつある。
牛の特徴で素牛を選択する時代では無くなった感がある。
それは、繁殖雌牛も種雄牛も優れた親同士から生産され、和牛の能力は質量ともにレベルアップされてきたためである。
ただ、問題点がない訳ではなく、レベルアップしたとは言え、種雄牛の乱立で繁殖サイドでは、今後進めるべき和牛の将来像が確立されていて、その上での交配計画が進められているかである。
有名牛だからと、衝動的に人工授精するケースが未だに行われている。
写真は8月1日に貼り付けた同じ4頭の牛であるが、父親から3代祖に交配されている血液割合は、右端は但馬系44.4%-勝系33.3%-糸系22.3%、2番目は但馬系50%-勝系50%、3番目は但馬系44.4%-勝系11.2%-糸系44.4%、左端は但馬系66.7%-勝系33.3%の血液割合で、4頭とも但馬系と勝系の血が、右端と3番目には糸系がそれぞれ入っている。
 一見、全てに勝系の特徴が見られるが、このうち但馬系の血液割合が最も多いのは、左端の牛で、次いで多いのが右から2番目であり、左端は最も勝系の特徴が出ていて、牛を見ただけでは系統を言い当て難い。
但馬系50%の右から2番目は、辛うじて但馬系の特徴が見られる。

こちらでは、系統にこだわって素牛を導入していない。
以前は、兵庫県産など様々な産地の素牛の導入を行っていたが、写真の肥育牛のように、主立った血統がある程度バランス良く入っているものを揃えることの方が、肥育し易いことと係る技術や飼料設定上効率が高いと睨んでいるからである。
但し、これまで宮崎産を肥育したことが無く、子牛相場を考慮して最近2度ほど導入した。
従前のように安平を主軸とした但馬系であれば、但馬系特有の肥育法を考慮しなければならないが、現在、宮崎で主翼を担っている忠富士は平茂勝の産子、福之国は北国7の8であり、当方が導入している鹿児島県の市場では、安平系の繁殖雌牛がかなりを占めているために、宮崎産とほぼ同様な血統の素牛で占められている。