牛コラム

肥育牛と美味しい牛肉のはなし

売れ無さそうで売れてる店舗

2012-04-19 00:35:44 | 牛肉

食肉流通関係者らで結成された若いリーダーの研修見学会に参加させて貰った。
直販と飲食店を営む和牛専用の直販店の2牧場を見学したが、その最初の直販店での印象である。
この店舗は県内で最も牛肉が売れる店と聞いた。
周囲に商業施設などはなく、高速道や地方道が交差する車道に面した一角に店舗はあった。
こんなところで売れているのかな!が第一印象であった。

店舗から2~3分の所に50台程度の駐車場があり、平日の昼時であったが、駐車場には買い物目当ての10数台の車が留まっていた。
明るい店舗に入ると奥の窓越しに食肉処理場が透けて見え、左方にはメスの枝肉が数本ぶら下がっていて、昔ながらのお肉屋のイメージである。
昔と異なるのは施設が近代的なこととショーウインドウの向こう側に5~6名の若い女性店員が忙しそうに動き回っていることであった。
店内にはいると写真の中央にある執筆台が目に入った。
台の上に置かれたかごの中に注文書が積まれ、お客は注文書に記入した用紙をカウンターの上のかごの中に入れて待つ。
暫しの待ち時間には、店内の右方に飾られたラップ詰めの焼肉やホルモン、同店オリジナル商品を物色できるようになっている。
ショーケースの精肉も全てパック詰めではないために、新鮮さが目に映る。
お客らは、呼ばれて精算して笑顔でグッバイサンキューである。
数人のお客らに聞いたら、異口同音「安くて美味しい」であり、この店舗へ1時間くらいかけて買い物に来ているケースも多々あるという。
「安くて美味しい」は産直の強みである。
周りを見渡せば、著明なキャスターが来店とか、テレビに取り上げられたと言うチラシが貼られている。マスコミを旨く利用しているのも客寄せに功を奏し遠方からの来店に繋がっていようと思われる。
その言葉をお客に信じさせた店舗側の狙いもさすがである。
明るい店舗の雰囲気、商品の斬新さ、清潔感、新鮮と安価(産直)、知名度とマスコミ人気、広い駐車場、便利な交通網など、なるほど売れてる要素があった。

切り落とし

2011-02-17 22:02:22 | 牛肉





お買い得ですよ! と言って並べられているのに「切り落とし」(写真)や「細切れ」がある。
「切り落とし」は、すき焼き肉用にスライスする過程で、整形からはみ出されたもので、すき焼き肉と差ほどの差はなく、1枚の肉片がやや分厚かったり、薄かったり、形が一定していないが、すき焼きにするには何ら支障はない。
むしろ、単価1,000円のすき焼き肉クラスが切り落としされたものであれば600~800円程度である。
この「切り落とし」は、いわばすき焼き肉の副産物であって、10%にも満たない量しか出てこないため、満足いくほどの販売量はない。
だから、著明な店舗などでは、これを求めるのに朝から行列が出来るようである。



牛肉の年末消費の一例

2011-01-07 19:46:09 | 牛肉






写真の表は昨年末に、あるお肉屋が年末セールとして売り出した販売結果を表したものである。
年末特有のご馳走的な消費者の雰囲気の中での結果であり、これが一般的な傾向であるとは責任は取れないが、販売傾向の一例として貼り付けたものである。
上の表は、時節柄すき焼き肉の消費が総重量及び総価格ともに最も高く、いずれも全体の30%以上となっている。
意外であったのは、重量比で2番目に内臓・すじが24.3%と21.2%の焼き肉用を上回ったことと、ステーキが僅か3.2%と低調であったことである。
内臓等の割合が高いことは、このところの牛肉消費が今一であったことを裏付けるもので、消費者は安価な部位を選択したことが伺える。
本来の精肉部位(すき焼き肉・しゃぶしゃぶ・焼き肉用・ステーキ)は、全体の64.3%であった。
また、下の表ではすき焼き肉と同部位であるしゃぶしゃぶを加算したものを販売単価(100g当たり)別の販売重量及び販売価格の割合を示したものであるが、重量比では単価500円(写真)が32%で最も高く、次いで700円、900円と続いている。
お肉屋によると前年度より10数%の売り上げ増になったが、従来正月用には高級牛肉の消費がこの数字より2~3倍はあったが、その分価格帯の安いものになっているとのことであった。
その安価な部位としては、全国的に人気の高い内臓肉に表れている。
肥育生産者のサイドからの要望としては、枝肉基準値のAランクである72%以上の精肉の消費が実現してくれることである。


最近の消費者のニーズ

2010-12-07 18:05:16 | 牛肉


依然として牛肉の消費が伸び悩んでいる。
行列は出来ても、切り落としだの細切れなどの売れ行きが好調のようである。
切り落としはロースだったり肩ロースなどからも取れるために、これまでも意外と人気はあった。
だから100g1,000円してもすぐ売れるそうだ。
今時になれば、すじ肉もよく売れている。
用途は大根などと煮込んだり、おでんの具とされている。
関東のすじ肉は今一だから関西のすじ肉を届けてほしいという話も聞く。
今冬はこのような端肉の消費が多くなりそうである。
その傾向にあるのが内臓肉である。
ここ数年異常な人気ぶりである。
ホルモンうどんなるブランドで人気を得ている地方もあるようだ。
以前はこ内臓肉がすき焼き肉や焼き肉用と並べられることは滅多になかったが、最近では同列となっている。
消費者のニーズに応えた現象のようだ。
いよいよ年末商戦に入ったが、本来の精肉が主役とならなければ、生産意欲に係わる。
消費者の堅い財布のひもを如何に解かせるかは、冷たいイメージのショーウインドーではなく、柔らかさと美味しさをアピールする笑顔でのコミュニケーションしかない。
昔はそのような風景があった。

サシはどのランクが美味しい?

2010-07-31 00:46:23 | 牛肉















リブロースの切断面をBMS no.12(写真①) 10(同②) 8(同③) 6(同④) 4(同⑤)に格付けされた写真を並べたが、これらのランクでは写真①が品質が良く高価に流通していることは、周知の事実である。
黒毛和種を肥育している生産者は、究極的にはこのランクの枝肉に仕上げたいとしている。
それは、究極的な目標であるとともに、高価で競り落とされるからでもある。
これらは生産者サイドだけではなく、枝肉流通関係者も同様である。
一方、消費者サイドに最も好まれているランクも生産者同様であろうか。
事実はそうでは無いようである。
食通はサシだけをターゲットにせず、見た目を重視する傾向があり、例えば、写真③程度の筋肉とサシの分布割合がバランスが良くて、味も良いとのことである。
実際にこれらを食味してみると、写真④が差ほど油濃くなく、肉の味もシビアに感じられるような気がする。
これらのサシの写真は、見る人により見方は千差万別であろうが、牛の審査と同様でその数を加えることにより、その実際が理解できる。

最近は、高級牛肉について、食味する年代層の嗜好感覚が以前より差が無くなりつつあり、すき焼用であれば、ステーキほど油濃さは感じられないが、ステーキではA5ランクは老いも若きも油濃いとし、写真④⑤レベルをどちらかと言えば多目に摂れている傾向がある。
生産する側も、高級志向があり、それをものにするために高価な素牛を導入し、高価な配合飼料を多量に食い込ませて、必要以上の生産費を掛けようとしている。
消費者サイドに最も好まれるランクを上位とする格付けが実現した場合、それがBMS no.7~8程度であれば、生産者の肥育法にも低コスト生産が実現するものと常々考えている次第である。

依然!牛肉消費は低迷を続けている

2009-11-16 22:16:18 | 牛肉



今日、ある会合で大手の食肉卸会社の社長と会う機会があった。
相変わらず、牛肉の消費が低迷し、回復の傾向が見られないとのことである。
ミートフェアーなどのイベントでも、人は数千人集まるが、その殆どが焼き肉が食べられることを楽しみに出掛けていて、展示品の即売は完売することはないそうである。
とくに、これまで人気のあった高級肉は、かなり売れ残ったそうである。
イベントでなくても人気のあるのは、細切れや切り落としのようである。
このところ人気の内臓肉も、安価なてっちゃんなどに集中し、上ミノなどやや値の張る物は、出にくいと言う。
この状態を乗り越えるために、様々な趣向を凝らして年末商戦にかけていることであろう。
食肉業界が活気付かなければ、枝肉相場の低迷を受け、肥育や子牛繁殖者らも大きな打撃を諸に受けることになる。
一般市民は、景気回復を新政権に賭けたが、未だその目処さえ見えてこない。
和牛関係者は、丑年に景気回復を祈願したが、その結果は未曾有の消費減の年となってしまった。
政府は、こうした不況の要因が、サブプライム関連なのか、政治の方向性のミスなのかなど、正確に分析して対策を立てる必要がある。
片方で食料自給率を改善すべきと云われているが、このままの状態では農業者の係る意欲を削ぎ、益々自給率の低下を来すは火を見るより明らかな状況である。


上物牛肉が売れない

2009-03-22 00:31:48 | 牛肉


昨今の経済不況は、牛肉生産に深刻な影響を与えている。
とくに、上物にランクされた牛肉の消費が前年比二桁台に落ち込んでいて、一層深刻な状態のようである。
枝肉の卸や店舗などでは、呑気に手を拱いていてはらちがあかないとして、進物用や通販などの新たなセットものを開発するなど、あの手この手の戦術をこらしていると聞く。
政府が支給する定額給付金などが、牛肉の消費に廻ることを深刻に期待しているとも聞く。
一方、この様な状況が枝肉相場の低迷をもたらしているが、肥育センターなどでは、これまで子牛市場の上位を占める子牛を購買していたにも拘わらず、最近は1頭20万円以下のみを購買する購買者も現れた。
経営の赤字を最小限に抑えるための苦肉の策であろうことが伺える。
子牛生産とは異なり、肥育では、この様な柔軟な思考で、経営の安定を目指すための一つの取り組みであろうと考えられる。
関係者として、消費の動向が上向きになってくれることを願わずにはおられない昨今である。

未曾有の不景気

2009-03-02 21:48:44 | 牛肉


昔から2&8は物が動かない月とされてきた。
今年の2月も、その商売語句は残念ながら例外なく当たったと聞いた。
和牛肉を取り扱う小売店では、その実質的な販売数量の前年比は、二桁を超すマイナス割合であって、これは過去にない数字であるという。
ショウウインドウからは、高級肉が売れず、売れるのは安価な牛肉であるという。
高級肉の売れ筋は、すき焼きやステーキ屋などの料理屋のようである。
百年に一度の経済危機と位置づけされていることが、牛肉の消費に諸に悪影響と成っているようである。
BMS no.10の枝肉単価が2,400円であった。
一月以前なら、2,700~2,800円であり、400円前後の下落である。
BMS値の低い枝肉は、それ以上に影響を受けている。
枝肉1頭当たり平均20万円の赤字である云々と前述したが、それどころではなさそうな気配である。
この状況は、物が動かないとされる2月だからではなく、今月も続きそうな状況である。
正しく、経済不況がらみであるからには、政治の党利党略の現状から、実質的な政府の経済対策が生かされるような施策が不可欠である。
消費者が動かなければ、生産がストップする。
究極の危機感を意識せずにはいられないが、素牛生産者の生産意欲の低下や肥育センター等の経営破綻に至らねば良いがと、願うのみである。

最高級牛肉ア・ラ・カルト

2008-12-18 00:59:46 | 牛肉



最高級和牛すき焼き肉であるが、よくよく見ると素晴らしい芸術品である。
実に美しい霜降り様斑紋である。
この様な芸術品は、なかなかお目にかからない。
この芸術品の含有脂肪量は年々増加傾向にあると言われている。
またこの芸術品は、年間数十万頭の出荷牛の中で、数百頭しか出現しない。
これくらいの出現率だから、希少価値として珍重がられる。
これは黒毛和種だけがその能力を有し、世界に類を見ない希有な能力であるとされている。
この芸術品の発現を期待して、購買者は法外な価格で子牛を落札する。
この夏だったか、鹿児島では、去勢牛で104万円が出た。
現在の市況平均であれば、2.5頭分に相当する。
おそらく、著明な枝肉共進会をターゲットとしての目算があってのことであろう。
その牛が、目論見通りに芸術品となることを願うが、結果は肥育が終了し出荷してみないと判らないのが、肥育の世界である。
子牛価格が50万円クラスでも芸術品は発現している。
現況では5等級、少なくともBMS値7以上で、枝肉重量が500kgを目指すことで、赤字からは逃れる。
それ以下ではほぼ赤字を免れない。
去勢牛の若齢肥育が普及し始めてから、およそ45年になる。
以来、国内外の産業界も研究機関も脂肪交雑に関する研究を持続している。
しかしながら、その成果が肥育現場で実用化されるまでには至っていない。
脂肪交雑に関するBMS値などの平均数値が年々上昇していることは事実である。
それらは、アニマルモデルなどの育種の手法が生かされて、経年的に優秀な種雄牛が作出され、その結果、年々優秀な産肉能力を有するそれらの産子が出現していることによろう。
希少価値的な芸術品であるが、様々に好転してこれが、仮に全体の数十%の割合までを占めるようになれば、その価値自体が下がる可能性が高い。
そうなれば、そこで問題となるのは、芸術品は単なる食材なのか、最高の食材なのかである。
それにしても芸術品は、柔らかく、肉汁が多く、これぞ霜降り肉の伝統の味で、最高級の美味しさや風味を持ち合わせていることだけは確かである。

年末・牛肉の消費

2008-12-15 23:59:51 | 牛肉



近年にない不景気だと言い、牛肉の消費が落ち込んでいる。
すじやホルモンが売れているそうだ。
年末の注文を取っても牛肉そこそこに豚肉が増えているとも聞く。
このままでは、肥育にしても、子牛価格にしても低迷からの脱出は当分時間がかかりそうである。
この様な状況下では、何れの経営でも、良いものを低コストで効率よく生産する経営努力を実現することで、損益が改善されるはずである。
とくに、肥育経営は規模が大きいだけに、また規模が大きいほど現在の経営は、かなり厳しい状況にある。
地産地消が各地で叫ばれているが、牛肉の場合は、馴染めない生産消費動向である。
ところが、コンビニ弁当などでは、それを謳い文句に県内産牛肉を利用するという。
また牛肉消費は、必ずしも都会消費だけではない。
生産者を含めて、地域での消費拡大を強化する取り組みに、生産者もその一端を担うことも一考であろう。
当センターでは、農村地域にあるが、食肉店と提携し年末セールとして自家生産牛肉の注文を取り販売している。
すき焼き肉としゃぶしゃぶ肉、焼き肉用を100g当たり400~1,800円を段階的に設定して販売しているが、例年1,800円クラスも結構出ている。
お客の反応は、なじみの牧場産だから信頼して買えるそうである。
因みにチラシは食肉店が調達し、牛肉は注文に添って、食肉店がパック詰めし、当方で、食肉に触れることは一切無い。
注文を受けるだけである。