牛コラム

肥育牛と美味しい牛肉のはなし

口蹄疫

2010-04-22 19:11:51 | 牛の病気






4月20日の早朝、宮崎中央市場より子牛が1車到着した。
荷降ろしして間もなく、宮崎にて口蹄疫らしき患畜の発生があったらしいという衝撃的な情報がもたらされた。
間髪を入れず、宮崎中央市場の担当者に電話した。
担当者はすこぶる冷静に対応し、口蹄疫の疑いがあり、午前11時30分に公式発表が予定されているという。
担当者によれば発生地は、同市場管内ではなく、同県児湯家畜市場管内の都農町で、宮崎中央市場とは、50km移動制限内に入るかどうか微妙な距離にあるとのことであった。
その後10時30分頃、プレスリリースのプリントがFAXにて家畜保健所から送信され、口蹄疫に関するPCR検査で陽性反応が出たとし、該当牛は殺処分の対象となる疑似患畜と判断したとある。
その後、21日、22日には、第2~3例目の発生が報道されている。
一方、その他の情報によれば、当初の発生は今月9日であり、その後家畜保健所に連絡され、17日には国への報告がなされている。
その翌日18日から宮崎中央市場では2日間の市場が開設された。
本来、疑似患畜が判明されても、県内での家畜移動は自粛すべきである。
とくに、問題は、県内の家畜保健所が口蹄疫を疑って1週間間を置いたことである。
県内では、同ウイルスを拡散の可能性のある和牛関係者は家畜市場への出入りが皆無ではないはずであり、予測できうる状況にあったはずである。
国も、その情報を受けたなら、検査以前に市場開設の延期処置を執るべきであった。
それらの対応の後手が国内広範囲の購買者を介して同疫の拡散に繋がりかねない。
その後も、21日までの2日間同県小林市場では子牛市が開設されるなど、対応の無神経さに驚くばかりである。
鹿児島県では、既に曽於中央を初め県内での家畜市場の延期を決定いている。
また半径10km云々との対応が取られているようであるが、口蹄疫の高い感染力を理解されているとは判断しにくい。
3例目は肥育関係者であり、管轄以外の市場への人や運搬業者などの出入りは十分考えられる。
今回の対応について、和牛に口蹄疫感染を経験し、新たな発症には他県よりも神経質であるべき宮崎県の危機管理能力が問われてもやむを得ない状況である。
生産者に神経質で、購買者に無神経であった感は否めない事実である。
当方では、管内家畜保健所の指導により、場内への車や人の出入りの制限や消毒の徹底を実施するとともに、家畜の異常等の観察記録を家畜保健所に報告することを依頼されている。
今年になって、韓国に同疫が発症したリリースを受け、当方では消毒用のソーダを入手していたことで、今回手早く対応できた。

写真は、人及び車の出入り制限中の様子と獣医師の車も場外に駐車して頂いた。


お詫び
目下、パソコンの起動トラブル中で、ブログをさぼっています。
後1週間程度で再開できそうです。よろしくお願いします。

中国産稲わらの品質

2010-04-14 23:34:22 | 飼料
                中国産カットわら



導入している中国産稲わらの品質に、このところ問題が生じている。
これまでも、中国稲わらの納入業者を替えた形跡がある程、品質が一定しないことがままあった。
最近になり再び劣悪な稲わらが数回に亘り納入され、その都度交換した。
品質に問題のない稲わらは、色もまずまずで、カットわらのため結束ひもを解くとぱらぱらと扱いやすい。
品質の悪いわらは、黒っぽく変色していたり、かび臭さや異臭がする。
通常稲わらの品質を判断するのに、先ず色を見て判断することが一般的であるが、色だけでは信用出来ないことが起きた。
見た目では通常と全く変わらない品質であったが、牛等の食いが極端に止まったのである。通常の1/3程度しか食い込まない。
異臭がすることもないのに食い込まないため、とりあえず、同時納入の1車全てを交換した途端、以前の食い込みに戻ったのである。
稲わらを牛らが食い込んだ時に、口内で刺激を感じたのであろうと急遽対応した。
通常16梱包一括りを黒いロープで括られてコンテナなどで納入されるが、今回はその一括りの4梱包に1梱包が過熱状態で腐敗臭がするものが混ざっていた。
納入業者によれば、中国からそのままの状態で入ってくるので、その原因がわからないと言い、とりあえず再び交換することとなった。
通常なら、考えられないことであるが、中国から出国までに、湿ったわらとそうでないわらを混ぜ合わせたであろうことが想像できる。
このようなことは、以前にもよくあり、カットわらをビニール製のネットでくるんであるが、そのビニールネットの色がとりどりに混ざってきたことも数回あった。
加熱処理を開始した頃は農水省の関係者が中国に常駐していると報告があったが、現在はどうであろうか。
このようないい加減な品質管理を徹底して指導出来ないものであろうか。
日本への輸出条件が整備されていないためのいい加減さである。

すき焼き屋は外人で賑わっている

2010-04-08 22:08:51 | 予防治療


国内外における経済状態の浮沈の証みたいな現象が高級すき焼き店などにも現れているという。
お店はまずまず繁盛しているが、客の言語が国際化し、ロシア語有り、中国語有りで日本語のシェアは1割り程度と言うことも少なくないという。
とくに目立つのは中国人観光客だそうである。
団体客などは、通訳が同行しているので商売には支障ないようだが、個々の客とのやりとりが出来ず店員との意思疎通に問題があるようである。
これまで、その多くは英語だけはと言うことで対応してきたが、その英語圏からの客は日本人以下の割合だと言う。
経済大国化する中国を見据えた取り組みが欠かせない状況である。
幸いにして、日本に滞在している中国人は最大で、店舗や飲食街で就労している中国人をよく見かける。
彼らが活躍する職場が今後はさらに増加しそうである。
外国人は、日本にしかないご馳走としてのすき焼きを日本での記憶に残したいというお客達である。
美味しい牛肉と優れた料理に加えて、流ちょうな会話の中でサービスして頂きたいものである。

放牧肥育の効果について

2010-04-07 20:39:38 | 肥育技術


導入牛の初期育成を運動場に放した方が良いか、舎飼いのみの方が良いかは、一長一短有ある。
当方では一マス8×15mの屋内に付随している運動場15×50mがあり、約20頭を凡そ3~4ヶ月間群飼いしている。
やや運動過多であるが、粗飼料や前期飼料の食い込みは抜群であり、その後の舎飼いでの増体成績も抜群である。
運動量の効果のために、強健で足腰の強さも当初から舎飼いの群より明らかに優れている。
しかし、運動量が多い分飼料の摂取量は多い。
そこで、最近はその育成舎での群飼いを中止している。

これらの飼い方の判断に窮していたところ、興味深い新聞記事が目に入った。
日本産肉研究会での研究報告の記事である。
和牛を放牧肥育した研究報告で、放牧により筋繊維の一つ赤色筋繊維が太くなり、6ヵ月間の放牧が終了し舎飼いでの本格的な肥育期間中にも同筋繊維の太さは衰えることなく維持され、結果的に増体結果が見られたというものである。
この結果を受けて、過去5年間の去勢出荷牛2025頭について、6箇所ある育成舎毎の肥育成績を集計比較した結果、上記育成舎(680頭)の場合、増体(枝肉量)は2番目、肉質(BMS)は1番目であった。
単純に判断すれば、運動効果があったことになる。

只、記事にあった研究報告では、運動場付きの肥育ではなく、放牧肥育と有り、牛は運動とともに生草を摂取していることになる。
研究の結果が、生草によるものか運動効果であるかは説明されていない。
敢えて言えば、おそらく、研究発表では供用数の詳細や大方の採食量や草種などは説明があったであろうが、新聞ではそれらが掲載されていなかった。
今後、同様の研究を継続され、効果の要因をさらに追求して頂きたいと願っている。
筋繊維は運動を行う、つまり人でもスポーツの効果により増強することは知られており、それに栄養を必要以上に加えれば、さらに筋肉量が増加するは予想できる。
研究者のコメントのように、放牧と筋肉の関係を明らかにしたいとあり、研究成果に期待している次第である。
これらの研究が肥育育成技術に活かせることをも期待しているところである。