私の平成。

TVではずっと平成の３０年を振り返っている。
私は今年還暦なので、丁度３０歳から６０歳が平成だったわけだ。

３０歳の頃、社宅を出て家を建てた。
子供は幼稚園に入り、今でいうところのママ友問題にも悩まされた。
私は面倒くさくなって、イチ抜けたと働くことにした。
働くことは意外なことに楽しかった。
それまで私はずっと親から
「あなたはわがままだから、働くことは社会の迷惑だ」と言われてきた。
大学を卒業して就職した先は公務員で
全然なりたくない公務員になって（そこしか受からなかったから仕方ない）
思ったように仕事はつまらなくて、やはり私は働くことは無理なんだと思ってきた。
でも、自分で探した再就職先は活気があって、単純に楽しかった。
そして何よりも私を必要としてくれた。
なんだ、私だって働けるではないか。しかも必要としてくれるではないか。
それを教えてくれた。

子供に対しては、不完全な教育ママだった。
勉強には厳しいのに、心のフォローは出来なかったから「不完全」だった。
きちんと心に向き合うことが出来ていたら
後の息子の問題は起きなかったと今ならわかる。

夫は多忙の極みだった。
朝は７時に出社して帰宅は午前を過ぎているのが普通だった。
土曜も日曜も出勤していた。
当然、イクメンとは程遠い。
今思えば、それでも子供と向き合わせるべきだったと思う。
私は疲れている夫にイヤな顔をされるのがイヤで
全てを一人で処理しようと頑張った。
頑張ったけれど、それは心の底では納得してはいないのだから
私の疲れや不満や不安は澱のように心に溜まっていった。
私はいつもどこか不満だった。

仕事は楽しかった。
が、時代は厳しくなっていった。
営業所が廃止され統合され、私のいる部署はどんどん仕事が増えていった。
やがて他社と吸収合併した。
この時の多忙さは思い出したくもない。
１年くらい時間をかけ吸収される側の会社の人にシステムを教えていたのに
合併して１か月で大半の人が辞めたのだ。
一体、何だったのだと今でもその人達に思う。
他社分の仕事も増えたのに加えて、災害も多発した年で
毎日が崖っぷちでの戦いだった。
私はうつ病になった。
今考えれば、忙しかったのだからもっと自分のルールを緩めればよかったのだ。
それができなかった。
あの年はあらゆる事が私の考えとは違う方向を向いていたような気がする。
自分で自分の首を絞めていたのも事実なんだろう。

やがて、息子の問題が表に出てくる。
大学デビューに失敗してパチンコ三昧、ギャンブル依存になったのだ。
思えば、息子は頭は悪くなかったのだろうが
勉強は嫌いだった。
でも、私は有無を言わせずに中学受験させた。
結果、合格してしまった。
実力以上の学校に入ったから、ずっと落第生だった。
彼も人生を甘く見ていた。
そして、私たち親もそれに気が付かなかった。
４０代後半からは彼との問題解決が大きな課題となった。
余りに大きな課題で、それに東奔西走している間に
私のうつ病は治ったのだから不思議な話だ。

息子の課題は私の課題でもあった。
子供との付き合い方を考えると
どうしても私と親との関係になってしまった。
ずっと誰にも明かしてこなかった気持ち、
自分の気持ちを欺いたまま世間なんて渡り切ってみせると思っていた固い守りを
とうとう私はカウンセラーに話してしまった。
大変でしたね、と言われるのは悔しかった。
慰められたら、私の５０年間は無駄になってしまう。
でも、親から逃げてもいい、卑怯な生き方だっていい、と言われて
驚いた。
もう時間は戻らない。
親から得られなかったものをいつまでもねだるのでもなく
親の人生の謎解きをするのでもなく、
私は自分を受け入れて、自分を生きていけばいいと初めてわかった。

上手くいくときもある。
行かないときもある。
進んだり戻ったりしながら、息子とも付き合う。
私のマイペースさは変わらないけれど、
でも他の人に対する気持ちは変わったと思う。
程よく距離を保つ。無理はしない。
ダメな事は伝える。
ダメな事を伝えるのは今でもなかなか難しいのだけれど
（とにかくイヤな顔をされるのが面倒くさいのだ）
でも伝えてみると、案外と人は怒ってはいないのだなとわかってきた。
とにかく無理しない。
それから、自分は自分で満たす。
なるべく人に左右されずに、楽しいことは自分で探す。
平成の後半は苦しいことが多かった。
でも苦しいことと並行して、学ぶことも、わかったことも多かった。
あの暗闇での苦しさがなければ、私は必死に答えを求めなかっただろう。
だから必然だったのだと思う。

こんな３０年だった。
子供を育て、悩み、仕事で鍛えられ
最後には大きな課題にもぶち当たった濃い時間だった。

さて明日は令和。
早速、友人と令和初ランチに行きます！