とね日記

理数系ネタ、パソコン、フランス語の話が中心。
量子テレポーテーションや超弦理論の理解を目指して勉強を続けています!

感想:NHK宇宙白熱教室:第1回:宇宙のスケールを体感する! ~空間・時間・物質~

2014年06月21日 15時24分23秒 | 天文、宇宙


先日「番組告知:NHK宇宙白熱教室(ローレンス・クラウス教授)」という記事で告知した4回シリーズ番組の1回目が昨夜放送された。

動画を再生:1回 2回 3回 4回

知識としては知っていたけど、やっぱりすごかった。陽子の中の世界から観測可能な宇宙の果てまでズームアップ、ズームダウンしてみるのは誰にとても楽しい体験だ。放送は金曜の深夜。一週間の勉強や仕事を終えて非日常の世界に思いをはせるのには良いタイミング。

本講座の関連本「宇宙が始まる前には何があったのか?:ローレンス・クラウス」(Kindle版)の紹介記事は昨日投稿したばかりだが、昨夜の講義の内容はこの本には書かれていない。

「主な内容」、「印象に残った画像」、「良かった点、素晴らしいと思ったこと」、「改善したほうがよいと思ったこと」、「その他、気がついたこと」というくくりで感想をまとめておこう。


主な内容

全体の流れを箇条書きしてみた。

- 宇宙論におけるフィールドは空間、時間、物質
- 10の累乗のスケールで世界(空間)を見る。10のマイナス28乗メートルから10の28乗メートルまで段階的に表示。番組に使われた「Powers of Ten(10の累乗)」という短編映画(再生時間9分)はYouTubeで見ることができる。この映画は製作された1977年までの科学で解明された範囲なので紹介されているスケールは10のマイナス15乗メートルから10の24乗メートルまでだ。



- タイムマシンの話、過去にタイムトラベルしても地球はそこにはない。
- 木星表面に見える彗星の衝突痕、木星による恩恵、彗星を捕獲してくれた、恐竜は絶滅したが人間は生き残った、
- カッシーニから撮影された土星による皆既日食の写真、小さい地球
- 恒星の世界、惑星系、生命の存在する惑星がある可能性
- 銀河系の渦巻き構造
- 銀河系とアンドロメダ銀河の衝突。50億年後。衝突する動画はすごかった。
- 銀河系の形を知る方法、マイクロ波による。COBE衛星(1989年打ち上げ)
- 銀河系の中心部の写真(1990)に感動、中心部の星の重力による運動によりブラックホールの発見、ブラックホールの存在を示す恒星の運動のシミュレーション動画が面白い
- 1000万光年、局部銀河群(Local Group of galaxies)、銀河団(clusters of galaxies)、超銀河団(Supercluster)。超銀河団より大きなものは構成されない。
- ハッブル望遠鏡による深宇宙、100億光年の距離の銀河団
- 銀河団の分布は大規模なフィラメント構造(網目構造)CGがすごい
- 宇宙の晴れ上がりを示す球形、その外は光や電波がない、物質も中性でないプラズマ状態なので見えない、観測できる宇宙の限界
- 次は小さいスケール
- 細胞、細胞の表面、DNAの二重らせん、分子、原子、
- 原子核、机が硬い理由
- 陽子、中性子(100兆分の1)
- クォーク、色と名づけただけ
- 量子力学、相対性理論、波動性と粒子性
- 陽子の中のもやもや、仮想フィールド、質量の起源、原子核を安定に保つ
- LHCによって陽子の中を探る、陽子の1000分の1のスケールまで調べられる
- ヒッグス粒子の発見、ミステリー、ヒッグス場の誕生、これがなければ何も生まれない
- なぜ私たちはスケールの中心にいるのかは謎
- 重力は人間スケールから宇宙スケールまで
- 電磁気力はそれより小さいスケールで働く
- 弱い力と強い力はもっと小さいスケールで働く
- 40年前に見つかっていたのは2つだけ(重力と電磁気力)
- 3つの力は量子力学によって理解できた(電磁気力、弱い力、強い力)
- 4つの力の強さの比較(重力、電磁気力、弱い力、強い力)
- ファインマンによる説明、ビルから地上に飛び降りても地面にめり込まないのは電磁気力が重力よりもはるかに強いため
- 電磁気力は10の40乗倍も重力より強い
- 強い力と弱い力は、到達距離が小さいから日常には観測されない
- 力を伝える素粒子により力が伝わること、そのレンジのこと
- 次は物質について、レプトン(電子とニュートリノ)とクォーク(陽子と中性子)
- 時間の尺度で見た宇宙の進化、原子誕生は本当に後のほう
- 大統一時代の終了?
- 人間活動は科学の壮大さにくらべればつまらない


印象に残った画像


- 土星による皆既日食の写真

かなり驚かされたのが探査機カッシーニが土星の向こう側に回りこんで撮影した土星本体による皆既日食の写真。2006年に撮影された。そこにはたまたま地球が写っていた。土星から見た地球のなんと小さいこと!日頃ニュースを見ながら憤ったり、残念に思ったりしていることはすべて(もちろんそれぞれ大切なことなのだけど)こんなにちっぽけな場所でおきているのだなぁ、と今週一週間のことを振り返りながら見ていた。



上の写真をクリックして拡大すると、地球はここに見える。




- 銀河系の中心にあるブラックホール

ブラックホールの重力は非常に強いため、光さえもそこから出ることはできない。したがってブラックホールを見ることはできないが、周囲の天体が万有引力の影響を受けることで運動の方向を変えるために、その存在は間接的に知ることができる。番組で紹介されたのは以下の図の動画である。ニュートンの力学法則が正確に成り立っていること、多体問題の複雑さ(多数の天体が万有引力によって複雑な運動をすること)、人間が生きているわずか数十年の間に恒星の運動を観測できるということなどに感動させられた。



この画像は次のページから拝借させていただいた。他にも画像があるのでぜひご覧いただきたい。

Zeroing in on Black Holes
http://cosmicmatters.keckobservatory.org/2007/dec/07dec_1.htm


- ハッブル宇宙望遠鏡による「深宇宙」の写真(2004年)

137億年前のビッグバンから数億年後の“宇宙の夜明け”に誕生した7つの銀河の姿が映し出された。


写真はこのページでどうぞ。

http://www.astroarts.co.jp/news/2012/09/27hxdf/index-j.shtml

http://www.aritearu.com/Life/Sky/Hubble/120Billion.htm


- 宇宙の大規模構造

100億光年のスケールになって表れる宇宙の大規模構造。無数の銀河団がこのようなフィラメント構造を形作っている。これを初めて見たとき僕は驚愕した。宇宙スケールから見ればほんの一瞬に過ぎない人生で、こういうスケールのでかいものが見れたのだ。




- 宇宙の果て

「宇宙の果てを見てみたい。」という誰でも一度は抱く願いがかなえられた。WMAPによる宇宙マイクロ波背景放射の画像を球形に加工した画像のことである。「いちばん遠い場所」とは「いちばん昔」ということなので、この画像は宇宙誕生から30万年たった頃の様子を映し出していることになる。これより昔(外側)になると宇宙には原子さえ存在せず、プラズマ状態になっているので光や電波で観測することができない。つまり、ここが観測可能な宇宙の果てなのだ。しかも、その場所を外側から見ているように画像を表示してくれている。




- 陽子の中の仮想フィールド

陽子の中にはクォークが3つ入っている。しかし、それだけではない。番組で紹介されたこの「仮想フィールド」の動画は、クォークのレベルの物理法則 - 量子色力学によって予想されている波動の動きである。陽子の中にこのように「もよもよ」とうごめいている何かがあり、それをコンピュータ・シミュレーションによる動画で見たのは初めてのことだった。この仮想フィールドは「エネルギー」であり、陽子が質量をもって安定しているのもそのおかげなのである。私たちの体の質量、身の回りの物、地球や星の質量のほとんどはこの「もよもよ」動いている仮想フィールドがあるおかげなのだ。

動画GIFファイルなのでスマートフォンでは静止画として表示されます。動きを見たいときはパソコンで表示させてください。


この動画ファイルは次のページから拝借させていただいた。ほかにも動画があるのでぜひご覧いただきたい。

Visualizations of Quantum Chromodynamics(量子色力学の視覚化)
http://www.physics.adelaide.edu.au/theory/staff/leinweber/VisualQCD/Nobel/


- 「時間」で見た宇宙の進化

知識としては知っていたが、こうして見ると銀河や太陽が形成されたのは、本当に最近のことなのだなと思ってしまう。地球の歴史を1年にたとえると、人類が誕生したのが大晦日の午前11時半頃だという話を思い出した。




良かった点、素晴らしいと思ったこと


- 対数目盛という言葉を使わず、10の○乗という言い方をしたこと

難しい言葉は使わないに越したことはない。10の○乗という言い方をしたことで、数学が苦手な人にもスケールの違いがよくわかるように配慮されていた。


- 1光年というスケールに驚き

太陽からいちばん近い恒星までの距離は4.3光年であるが、スケールダウンしていく写真の中で1光年の物差しを見たとき、光って早いなと感動したのは僕だけだろうか?


改善したほうがよいと思ったこと


- 物質と時間にあてた講義時間が短かった

大半の時間が空間のスケールアップとダウンに費やされ、物質と時間のことにあてられた時間が短かった。けれども空間の話で見ていたのはすべて物質なのだから、大半の時間は物質の説明にもなっていたわけだ。


一般視聴者には分かりにくかったこと


- 素粒子、量子力学、相対性理論の話

素粒子物理学や超弦理論(超ひも理論)の世界を紹介するために昨年放送されたNHK「神の数式」を見ていなかった人にはわかりにくかったと思う。特にレプトンとクォーク、4つの力、原子のように電気的に中性なものを物質と呼ぶことなど。また量子力学によって説明される素粒子の波動性と粒子性の話もそうだ。このあたりは詳しく説明すると番組10回分くらいになりそうなので仕方がない。「難しい」とツイートされていた方がそう思ったのはこのあたりのことだと僕は想像している。

LHCでのヒッグス粒子の発見やヒッグス粒子による質量の獲得についても触れらてていた。しかし説明はとても短かったので、理解できない方が多かったのは仕方のないことだ。

難しいこのあたりのことを補足するために4つの力(重力、電磁気力、弱い力、強い力)について詳しく知りたい方は、次の2冊をお読みになったり、「E=mc^2 ~アインシュタインと世界一美しい方程式~(ドラマ仕立て)」や「美しき大宇宙」、「超ひも理論の世界」などの動画をご覧になるとよい。

重力とは何か アインシュタインから超弦理論へ、宇宙の謎に迫る:大栗博司
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/f63cdcd45ec542fa62d535b4cc715d69

強い力と弱い力:大栗博司
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/06c3fdc3ed4e0908c75e3d7f20dd7177

E=mc^2 ~アインシュタインと世界一美しい方程式~(ドラマ仕立て)
電磁気学、質量保存則(m)、エネルギー保存則(E)、光の速度(c)、特殊相対性理論、放射線、核分裂まで



続き:   

美しき大宇宙:ニュートン力学、相対性理論、電磁気学、量子力学、素粒子物理学、超ひも理論、M理論



第1回:超ひも理論以前の物理学。一般相対論や量子力学、統一理論など。
第2回:超ひも理論誕生から「第1次超ひも理論革命」までの解説。
第3回:90年代半ば以後、「第2次超ひも理論革命」 以降の超ひも理論。M理論やブレーン・ユニバース、パラレル・ワールドなど。

続きはこちら。
第1回:     
第2回:     
第3回:     

超ひも理論の世界(4つの力とその統一、超対称性):「美しき大宇宙」を改訂して再編集したダイジェスト版




その他、気がついたこと、生じた疑問


- アメリカはインチ、マイルなのにメートル法で説明していた。

アメリカの日常生活で使われる長さや重さの単位は、インチやマイル、ポンドなのだが、科学を勉強するときはメートル、キログラムだ。一般の人も2つの単位を知っていて、メートル法でもちゃんと長さを実感できていることに気がつかされた。日本はメートルとキログラムに統一されていてよかったと思う。


- 少年の質問はあらかじめ決めていたように思える。

最前列にいた赤いシャツの少年が2回質問していた。的を得た質問と堂々とした態度にちょっとびっくり。あらかじめ彼が質問することや質問内容は決められていたのだと思う。


- 陽子の誕生はわかったけど電子の誕生はいつ?

陽子が生まれた時期は示されていたが、電子については示されていなかった。調べたところ次のような記述をネットで見つけた。

ビッグバン宇宙論によると宇宙誕生から (10の-33乗)秒後には宇宙は急激な膨張(インフレーション)を終了し密度が薄まるとともに温度のわずかに下がり素粒子であるクォーク 、反クォーク 、 電子、 反電子等が誕生したと考えられていますが、放射(エネルギー)と物質は消滅と生成を繰り返していて、電子が安定して存在できるようになるのは(10の-6乗)秒後であると考えられています。


- なぜ銀河系は渦を巻いているのか?

番組を見ている最中、このような疑問を僕は思いついた。渦巻は排水溝の周りの水流や、竜巻や台風にも見られるが、銀河系に渦巻ができる理由はそれらとは違っているはずだ。なぜ渦巻きができるのだろう?ウィキペディアで調べたところ、次のように説明されていた。

1964年、C. C. リンとフランク・シューがこの問題を解決する理論を初めて提案した。彼らは渦状腕はディスクに生じた螺旋状の密度波が目に見えているものだと指摘した。彼らはディスク内の星の軌道がわずかに楕円軌道を描いており、その楕円軌道の向きが星同士互いに相関を持っていて、銀河中心からの距離に応じて滑らかに少しずつ変化していると仮定した。星の軌道がこのような条件に従っていると、ディスク内に星の密度の高い部分が螺旋状にできることを彼らは示した。 従って、ディスク内の星は現在我々が観測した位置にいつまでもとどまっているわけではなく、軌道運動によって腕の部分を定期的に通り抜けていることになる。

これはよく、所々に渋滞が発生している高速道路に喩えられる。渋滞が発生している箇所が銀河の渦状腕に相当する。渋滞の中にいる自動車はそこにとどまっているのではなく低速ながらも走っており、いずれ渋滞部分を抜け出す。これと同様に、渦状腕を構成している星は常に同じではなく常に入れ替わっているが、腕自体は星の密度が高い部分として同じ位置に存在し続けているのである。


- 宇宙のスケールアップとダウンを楽しんでみよう

今回の放送を見て思い出したのが「Mitaka」というWindows用の無料ソフトだ。地球レベルの世界から宇宙の大規模構造まで段階的にサイズを変えながら宇宙旅行を楽しむことができる。自分の位置を移動させ視点を変えることも自由にできるので星座の形も変わってくる。書籍とホームページを紹介しよう。書籍にはDVDがついているが、ソフトはその後更新されているのでホームページからダウンロードしたほうがよい。

Mitakaホームページ
http://4d2u.nao.ac.jp/html/program/mitaka/




4次元デジタル宇宙紀行Mitaka―地球から宇宙の果てへ




番組関連書籍:

宇宙が始まる前には何があったのか?:ローレンス・クラウス」(Kindle版)(紹介記事
A Universe from Nothing: Lawrence M. Krauss」(Kindle版

 

クラウス教授の著書をAmazonで検索する: 単行本(日本語) 単行本(英語) Kindle版(英語)


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参考書籍:

インフレーション宇宙論―ビッグバンの前に何が起こったのか:佐藤勝彦
宇宙,無からの創生―138億年の仮説はほんとうか(Newton別冊)

 


関連記事:

番組告知:NHK宇宙白熱教室(ローレンス・クラウス教授)
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/fdcf3a5173e9f55fc37c9b8d85f4128b

感想:NHK宇宙白熱教室:第2回:物理学者の秘密のお仕事 ~物事を大ざっぱに捉える!~
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/cd01a502be3d5f87057790cc558c9d9a

感想:NHK宇宙白熱教室:第3回:宇宙膨張 驚異の発見 ~ダークマターへの道のり~
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/e79bfbeaacfd441d3634a11ce49858d8

感想:NHK宇宙白熱教室:第4回:そしてダークエネルギーの発見 ~私たちのみじめな最後~
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/7d6f85eb55a4c69f3b126e300ad1e1b3

宇宙が始まる前には何があったのか?: ローレンス・クラウス
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/b6f36e8eedba5ee63a4f919d30a2cb20

番組告知:MIT白熱教室(物理学編)、これが物理学だ!
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/66d25e29fc2c514f453a6b110150b811

番組告知:バークレー白熱教室~大統領を目指す君のためのサイエンス
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/36bb14b19b9ca57d17fe60655a704615

ファインマンさんの流儀:ローレンス M.クラウス著、吉田三知世訳
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/9ec9faa4bd78881bd1986bf7773cc390

超ひも理論を疑う:ローレンス M.クラウス
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/d5aefd0f455c43b62365954cd2ae601c
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14 コメント

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映像を見せられると (T_NAKA)
2014-06-21 20:27:32
言葉で理解していたときとは違う感動と深い理解が得られますね。特に土星の輪越しの地球の小ささは驚かされます。いくらなんでも小さすぎるだろうと。ミクロに向かうときは、原理的に仕方がないのですが、あるスケールからイラストになってしまい、一般視聴者には難しかったんじゃないかと思います。まあ量子力学を知らない人に場の量子論や量子色力学での結果を説明しているのですから無理といえば無理なんでしょう。
実は、この番組の前に見ていた映画があまりにも下らなかったので、いっそう感動した次第です。
返信する
10のぺき乗 (hirota)
2014-06-21 20:53:17
「ぺ」を拡大したらホントに「PE」だった!
返信する
夏の夜の夢想 (はやぶさ)
2014-06-21 21:17:21
とねさん、こんばんは。今日は夏至ですね。これから夏の盛りに入っていきますが、地球が遠日点を通過するのは、今年はおよそ2週間後の7月4日午前だそうです。近日点と遠日点の差はおよそ500万kmあるそうですが、暑さにとっては距離より角度の違いの方が重要なのですね。驚きの事実です。南半球では、夏至(南半球にとっての)と近日点が約2週間の差で一致しますが、二重効果があまりひどくならないのは、南半球は海の面積の比率が大きいからだそうです。

いよいよクラウス博士の講義が始まりましたね。10のべき乗で世界を見せてくれるところは本当に面白かった。指数が1ずつ増えていく度に脳内スケールを10倍にしていかなければならないのには慣れが必要ですが、要は毎回10倍ずつカメラを引いて行っているということですね。でも、視聴者の中には直線的な(比例的な)縮尺のまま映像やグラフを見て誤解してしまっている方もいるかもしれません。番組の最後に宇宙の歴史を展開した部分は、特に誤解しやすいかも。そのときは、太陽系の歴史は46億年あり、我々の宇宙の歴史138億年のちょうど3分の1に達していることを思い出した方がいいような気がします。地球や我らが太陽の歴史も意外に長いのですね。というより、我々は、これから長くなるであろう宇宙の歴史の、未だ黎明期にいるといった方がいいのかも(これから起きる変化はビッグバン直後に起きた変化より遥かに小さな変化でしょうが)。

ところで、宇宙マイクロ波背景放射の画像は、ビッグバンから30億年経過後ではなく、確か37万~38万年ほど経過した頃のものではないでしょうか? この頃までに、電子と原子核が結合して原子になり、プラズマ状態が解消されたので、光子が遠距離を進めるようになった(宇宙が晴れ上がった)ということだったと思います。私の方が間違っていたらごめんなさい。

銀河(一般)の渦巻き形成のメカニズムは、NHKの『コズミックフロント』が取り上げていました。2012年9月6日放送の「見えた! 銀河系の全貌」と、2014年5月8日放送の「スパイラル・ミステリー 5つの渦がひもとく宇宙の謎」の2回で解説していました(http://www.nhk.or.jp/space/program/cosmic.html)。もし観ていらっしゃらなければ、オンデマンドや再放送の機会に是非とも。番組は概ね、とねさんの解説どおりだったと思いますが、ある科学者は、太陽系が銀河系の「腕」の部分に差し掛かると、地球は氷河期になるとの説を主張しているそうです(腕では物質が密になり、放射線量が多くなるため)。まだ説の段階だそうですが、説得力がありそうで、大変興味深い説です。

とねさんの「少年はサクラである説」は笑ってしまいました。私も番組を観ながら同じ想像をしましたが、あの少年はどちらにせよ大変賢そうです。

クラウス先生の残りの講義も大変楽しみです。1週間が待ち遠しいです。
返信する
Re: 映像を見せられると (とね)
2014-06-22 00:19:55
T_NAKAさん

コメントありがとうございます。
映像の威力を見せ付けられた気がしました。これまで小さい世界のことばかり勉強してきたので、久しぶりにスケールの大きい世界を堪能できました。

量子力学や量子色力学の話は、あの時間内で説明するのは無理です。次回以降の話、特に宇宙背景放射の量子揺らぎのあたりの話につながるのだと思います。

次回の放送も楽しみにしています。
返信する
Re: 10のぺき乗 (とね)
2014-06-22 00:22:27
hirotaさん

タイプミスのご指摘ありがとうございました。よく気がつかれましたね。
なぜミスしてしまったのか、どう手元が狂ったのかはわかりませんが、老眼が進んでいるため後からだと僕にはとても見つけられません。
返信する
Re: 夏の夜の夢想 (とね)
2014-06-22 00:36:56
はやぶささん

長文のコメントありがとうございます。

宇宙マイクロ波背景放射の画像はビッグバンから30万年後でした。誤りのご指摘ありがとうございます。37~38万年後という説もありますが、ひとつ前の記事のこの画像に「30万年後」と書いてあるので、こちらにつじつまが合うようにしておきます。

http://blogimg.goo.ne.jp/user_image/02/88/84db4099ba6dc433d9197361329a7275.png

今日は比較的涼しかったので夜のウォーキングも楽でした。この番組の4回目が終わるころには梅雨が明けて、本当に暑くなっているのかもしれませんね。

銀河の渦巻き形成のメカニズムなどについて放送された番組を教えていただきありがとうございます。単品購入で見てみます。

あと、赤シャツの少年ですが、彼は絶対にサクラですね。僕は朝日カルチャーセンターで物理学の講座を何度も受講していますが、質問の時間にはいつもたくさんの人が手を上げます。不公平にならないように指名するのが原則ですから、この番組で彼が2回も質問するうのはあり得ないと思いました。

そういえば大栗博司先生の超弦理論講座のときも最前列にこのアメリカ人少年のように利発そうな少年が受講していたことを思い出しました。200人の受講生の中で少年はただ一人だったので、大栗先生も印象に残っていると思います。
返信する
Unknown (胡桃)
2014-06-29 21:00:51
1回目、2回目とても面白くて感動しました。こんな番組もっと放送してほしいです。あれこれ批判されても、さすがNHK !といった感じです。
こんな先生に学生時代(テレビでも)出会っていたら、人生変わったかも、です。科学には興味があっても、数学が苦手で、その方面は断念しました。40台のおばちゃんですが、未だに読み続けているNewtonのおかげで、全くの素人よりは、少し理解できたのかな?
丁寧な長文の解説ありがとうございます。分かりにくい所の理解が深まりました。
返信する
NHK『コズミックフロント』 (はやぶさ)
2014-07-02 21:01:54
とねさん、こんばんは。

銀河系の渦巻き形成について、以前ご紹介したNHK『コズミックフロント』の2番組ですが、古い方の「見えた!銀河系の全貌」が七夕の夜に再放送されるようです。

NHK『コズミックフロント』「見えた! 銀河系の全貌」(再)
2014年7月7日(月) 午後11:45~午前0:45
NHK BSプレミアム
番組概要 http://www.nhk.or.jp/space/program/cosmic_120906.html

既にご覧になられたかもしれませんが、念のための業務連絡でした。
返信する
Re: NHK『コズミックフロント』 (とね)
2014-07-02 22:23:11
はやぶささん

ありがとうございます。録画予約しました!
これで見逃すことはありませんね。
返信する
宇宙白熱教室好きです。 (サトシ)
2015-09-04 20:27:38
わたしは、コズミックフロントもいいですが、この宇宙白熱教室ぐらいの考えさせられるレベルの高い番組が好きですね。ローレンスクラウス教授の本が読んでみたいと思いました。
今再放送を録画したのをなんども繰り返し見ているのですが、それでも飽きないのでこの番組が好きですね。第1回は予備知識が問われているので、比較的簡単でした。どこもムズカシイとは思いませんでした。宇宙はやっぱり好きですね。
返信する

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