瀬戸際の暇人

今年も偶に更新します(汗)

あにめぞん感想、ざっくばらん36

2012年06月22日 17時42分02秒 | 漫画&アニメ
昨日は夏至でした。
そんな時季にまさか台風を迎えようとは、近頃天の神すら季節感を失くしたと見える。
なんて前置きしたところで(今夜はMX再放送お休みだが、1週遅れで)前回の続きで御座います。


・第36回「いきなりキスの嵐!朱美さんの失恋物語」 脚本:伊藤和典 コンテ・演出:吉永尚之 作画監督:服部圭子

…冒頭こそ原作の47話「キッスのある情景」をなぞっているものの、ストーリーの大半はアニメオリジナルと言っていい内容。
取敢えず夜霧よ今夜もありがとう。
脚本を担当した伊藤和典氏は実家が映画館だったという生粋の映画マニア。
だからだろう、氏が書くシナリオには映画をパロッている物が多い。
この回もまるで往時の日活映画を観ている様な渋懐かしい雰囲気を漂わせていた。
始めから終いまで流れる挿入歌は赤木圭一郎の「霧笛が俺を呼んでいる」。

渋いぜ流れ者ブルース!!…あれ?でも原作って、こんな話だったっけ??(笑)

原作はあくまで五代と響子さんが主体の話で、しかもこの回2人の初キス話という事も有り、改変への反発は無茶苦茶でかかった。
2人の恋路の1ターニングポイントだってのに、何で変えやがったバカヤロー!!!――ってね。
実際どうして変えたのか、その理由は謎に包まれてるわけですが、原作の話が男女の性欲についてあからさまに触れてるから、かなぁと…。
特に当時は未だタブーとされていた女の性欲を描く事。
原作ではキスで性欲衝かれた響子さんが、三鷹を無意識に誘うとこまで描いてるんだからエロい。
あの時カーラジオから犬の鳴き声が流れなきゃ、響子さんは確実に三鷹とキスしていただろう。
勿論この話は五代と響子さんとのラブストーリーだから、結果キスしたのは五代とだったけど。
女性誌ではめぞん以前に女の性欲について触れる作品が在ったものの、男性が読む少年・青年誌で女の性欲について触れたのは留美子先生が初ではなかろうか?
当時の男性読者は物凄い衝撃を受けたに違いなく、やはり留美子先生は偉大な御方だったんだなぁと。
ただゴールデンタイムに放送するアニメでその内容は時期尚早、あにめぞんの30分前にはお子様大人気のドラゴンボール放送してたし。
そんな理由からこういう改変に至ったのかもしれない、単にシナリオ担当の伊藤氏がこういう話好きじゃなかった可能性も有るが。(笑)
何れにしろそれなら冒頭だけ原作踏襲するんじゃなく、始めから終いまでアニメオリジナル回として作っちまえば良いのにと感じた。
原作の「キッスのある情景」回が好きで、期待してたファンはそりゃ激怒するよ、ショックで冷静に観る事も出来ないだろうよ。
アニメうる星の「ミス友引」回も、同じく伊藤脚本で冒頭のみ原作通り、途中からオリジナル展開だったけど、あれはファンから原作以上と褒められてるが、違いはテンポの速さでしょうねぇ、「ミス友引」回の場合、怒涛のテンポで押し切ったのが見事で、較べるとこちらはテンポがゆったり、思い切った原作改変をするなら、原作以上にパワフルなシナリオじゃないと太刀打ち出来んでしょう。

てゆーか原作を読んでなかった視聴者だって、酔った朱美さんが五代を彼氏と誤解しキスをする、それを目前にしたアニメの響子さんが珍しくも嫉妬を露にする、この後のエピソードの続きを期待したんではなかろうか?
響子さんと五代の間に何らかの進展が有る事を期待した視聴者は多かったと思うよ、珍しくアニメの響子さんが嫉妬を露にしたから。(笑)
ところがキスシーンが終るや2人はフェードアウト、朱美さん主役の恋話に流れてしまい、肩透かし感を味わった視聴者は多かったんじゃね?
朱美さんの話が書きたかったなら、原作を挟まず徹するべきだったと思うのだ。
てゆーかとどのつまり本編じゃなく、楽屋裏のお遊び編だったなと。(笑)
お遊び編として評価するなら、悪い話じゃなかった、自分は結構楽しめたです。
でも原作めぞんの主軸である、五代と響子さんの恋愛を追ってるファンは、観ていてこうツッコミたかったろう――「閑話はいいから早く本題に移れ!!」と。(笑)
そしてヒロシは女連れで待ち合わせの場所に来るなよと。(笑)

しかし伊藤さんはよっぽど四谷さんと朱美さんが好きだったのだなぁ。
原作ではこの2人の過去について一切触れていない。
多分作者である留美子先生は考えてもいなかったろう、あの先生は話の主軸に関らない無駄な設定は作らん御方だから。
伊藤氏はそれ故ミステリアスな2人の自由度に惹かれたわけだ。
四谷さんが色々別名使ってたりの設定、自分は嫌いじゃなかったっすよ。
「山のアケビ」に「朱美」さんをかけて詠むとは洒落ている。
中期のあにめぞんは主役を置いてない。(響子さんは只のシンボルキャラ)
原作以上に舞台を限定しての日常劇に徹しており、原作とは異なる空気がそれはそれで楽しいのだ。
具体的に挙げれば落ち着いた後の一刻館での宴シーン、響子さんが持って来たおでんを皆でつつく所。
茶々丸で五者五様に朱美さんを心配するシーン…マスターも中期ではレギュラーに昇格しました。
黒塗りの車を追っ払ってみせた後、窓から覗いてる一の瀬さんと響子さんに向い、得意気にポーズ付きで知らせる五代のシーンもなんか良かったな。
「これは恐らく私宛のもの」と言って、茶々丸にかかって来た電話を取りながら、「貴方、何方?」と返す四谷さんのシーンには笑ってしまった。
原作以上に四谷さん、朱美さん、一の瀬さん、マスターが活き活きしてる点は、もっと評価されて良いと思うんだけどなぁ。

今回のクオリティの為に前回の絵と演出に皺寄せが来てたのか?――と勘繰りたくなる程、今回は演出も絵の動きも冴えていた。
窓を伝う雨の雫の描写、ビルに反射する日の移ろい、パトカーライトが当り背後で回転する影等、事物の描写の細かさには感心させられた。
楽屋裏話としては申し分無い出来でした、ただ所詮本編じゃないのよねと。(笑)
中期スタッフがファンの抗議にめげず、原作とは別の最終回を描き切っていたなら、この回の評価も変っていたかも。
そしてこれは個人的想像なのだが、原作の終盤での五代と朱美の急接近は、原作者がアニメでのこの回に影響を受けてじゃないかと…原作では終盤まで五代と朱美が接近する事は、ほぼ無かったんでさぁ。
良くも悪くも印象深い回でした。
つか響子さんより朱美さんの方が美しく描かれている、サブキャラだってのに許せませんね。(笑)

(個人的評価)脚本△ 演出○ 作画△ …作監の服部さんはこの回で降板。最後になるこの回、彼女が担当した中では最も絵が美しい。響子さんでなく朱美さんが。(笑)



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