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「iPS細胞 ヒトはどこまで再生できるか?」①田中幹人著

2008-10-08 23:18:09 | Book
友人の夫君が、当時はまだ単なるBF格だった歯学部の学生時代、私が「虫歯予防の薬を開発しないのは、歯科医の怠慢だっ」という異見すると、
「それよりも、歯が生えてくる種を作ればいいんだよ。」という迷答がかえってきた。
は~~っ??。何たる珍答、、、と眉間に皺を寄せたのだが、今にして思えば、その発想はiPS細胞による再生医学に近いと感心している。
2年前の8月11日、京都大学再生医科学研究所の山中伸弥教授が、卵子や受精卵を使わずに、マウス皮膚細胞から多能性幹細胞の誘導に成功したというニュースを新聞の片隅で拾った時には、心底驚いた。これが本物だったら、彼らはまさしく金の鉱脈を発見した。

今では、その名前をアップル社のipotとともに広く認知されたiPS細胞(人工多能性幹細胞)。多能性幹細胞とES細胞の違いにはじまり、iPS細胞誕生のドラマから今後予測される再生医療の展開と、その成功のための課題と問題点をジャーナリストの視点で書かれた格好のiPS入門書である。とにかく、字も大きいがわかりやすく、この分野に関しては広範囲をもれなくカバーしている。

そもそもトカゲのしっぽは切れても再生できるのに、ヒトの指は何故再生しないのか。
というよりも、私の場合は何故、トカゲのしっぱは再生するのか、こどもの頃、理科の時間でこんな疑問をもった記憶がある。その生命の神秘を追求していけば、次のようになる。ヒトの受精卵は「最初の細胞」であり、分裂を繰り返して3日くらいで桑実胚という全能性の胚になり、翌日には多能性の胚盤胞ができる。更に細胞分裂を繰り返し、異なった機能をもつ3つの細胞系統に道がわかれていく。ここの”異なった”機能というのがポイントである。
トカゲとヒトの再生能力の差は、分化能力のある肝細胞の差とも言える。トカゲは成体になっても分化の初期段階に留まって様々な種類の細胞になる能力のある「多能性幹細胞」をもっているが、ヒトは後戻りできないもっと先の「体性幹細胞」しかもっていないからである。
したがって能力の高い人工的に多能性幹細胞の作成の成功は、一気に再生医学のはずみをつけた。

本書によると山中氏の成功は、ご自身、宝籤に当たったようなものと笑ったそうだが、それも頷けるような成功の裏には努力と運を彩どる数々のドラマとターニングポイントがあり、一番読ませる部分だった。山中氏の経歴にもなかなか感じるものがあるのだが、彼は神戸大学医学部出身。国立大学医学部に合格するには、ただの秀才よりももうちょっと上のかなりの頭脳が必要。しかし、東大・京大の最高偏差値レベルの医学部に進学してしまうと、ひとりの目の前にいる患者の治療よりも研究者を希望する学生が多いと聞くので、山中氏は、そういう意味では平均的な医学生として整形外科の臨床医となった。ここでの臨床の経験があったことも、最初から研究の世界に没頭することなく、多様な人と接することで人間としての幅を広げたのではないだろうかと想像される。ある重症リウマチの患者を担当し、臨床の限界を感じて研究の世界に飛び込んだ。6年医学部で学んで、大阪市立大学医学研究科で更に5年間学んで博士を取得。なんと長い学生生活。そして青年は、研究員を募集している学術雑誌に手当たり次第応募してグラッドストーン研究所の研究員として採用され渡米。3年間の米国での研究生活がその後の山中氏に影響を与える
続く・・・今回は自分のための覚書き)


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