「のだめカンタビーレ」の中で忘れられない名場面。
実技の試験に挑むヴァイオリン科の峰くんが、ベートーヴェンの「スプリング・ソナタ」を弾いている。ピアノ伴奏者は予定していたのだめが高熱でダウンしたため、あの”俺様”千秋。
「好きに弾け。どんな弾き方をしてもあわせてやる。」
千秋の胸のつぶやきなど峰くんには届かない。奴は、いつだって思いっきり自分の音楽観を表現しているのだ。だから前の留学帰りの優等生が、Vittorio Montiの「チャルダッシュ」を巧みに披露するが、彼が選んだのはスプリング・ソナタだったのだ。切れ味鋭いあの弾き方は、まるでロックのようだ。まだまだ未熟だが、ナイジェル・ケネディ路線でおもしろい。
「この曲は、青春の喜びと稲妻だ。」
峰くんのこの言葉には、ドラマの中の彼ら音大生の青春が凝縮している。(映画侍さんは、この曲をいやらしいと評したが、その鋭い感覚に敬意を表したい。)そして峰くんの音楽観から、テーマー曲がベートーヴェンの「交響曲弟7番」であることも理解した。やはりドラマの選曲が素晴らしいのだ。ベートーヴェンの後期の弦楽四重奏は哲学的な雰囲気もあり、「第九」は荘厳でもあり、「クロイツェル・ソナタ」はほの暗い浪漫と苦悩もあり。しかし、ベートーヴェンの音楽の魅力は、この”青春の喜びと稲妻”にあるのかもしれない。彼の音楽は勿論複雑に練られているのだが、その人間性は実はけっこう単純な男だったのではないかと、私はかねてより思っていた。たとえば金髪逆毛にして威勢よく、ナルシストで高邁な千秋とはタイプが異なる女好きの峰くん。案外こんなタイプに”才能”と”変人”をミックスしたタイプが、ベートーヴェンだったのかもしれない。
そんなベートーヴェンがもうじきやってくる。しかも日本国内「第九」でにぎわうシーズンに。
12月9日より公開予定の映画「敬愛なるベートーヴェン」(原題:Copying Beethoven)だ!
「1824年ウィーン。"第九"の初演を4日後に控えたベートーヴェン(エド・ハリス)のアトリエに、作曲家を志す若き女性アンナ(ダイアン・クルーガー)が、コピスト(写譜師:作曲家が書いた楽譜を清書する職業)として訪れた。期待に反し、女性のコピストが来た事に激怒するベートーヴェンだったが、徐々に彼女の才能を認め、"第九"の作曲を支える存在となる。(公式サイトより)」
ベートーヴェンは、生涯独身を貫いた。よく言われるこの表現は、ふさわしくない。主義あって、独身を貫いたわけではない。多くの女性をその「スプリング・ソナタ」の音楽のように熱愛したのだが、恋を成就することができなかったのだ。短身で、強面のルックスやその特異な性格も災いしたのかもしれない。しかし、同じくベートーヴェンを主人公にしたバーナード・ローズ監督の映画『不滅の恋』の最後の結末は、ベートーヴェンの遺書にあった自分のすべての作品と財産を譲りたい”永遠に愛する人”とは違うというのが定説だが、彼がどんなに自分の音楽を理解できる女性を恋しても、そのような教養のある女性は身分違いで結婚できなかったという内容は的をえていると思う。G・オールドマンがベートーヴェン役を演じたこの映画は、素晴らしかった。イザベラ・ロッシリーニの親友アンナ・マリー役も雰囲気にあっていて素適だ。ただ人形のように美しいだけではないこの女優は、好きだ。映画の中で永遠の恋人が誰だったかは、さして重要ではない。全編ベートヴェンの音楽が流れて彼の生涯をたどる映像に、まばたきもせず魅入った記憶が今でも鮮明だ。
そしてまた、もうひとつのベートーヴェン映画がやってくる。
『太陽と月に背いて』『秘密の花園』の監督アニエスカ・ホランドが撮ったベートヴェンは、期待できる。製作は英国とハンガリー。舞台は、ウィーン。観るっきゃない。
実技の試験に挑むヴァイオリン科の峰くんが、ベートーヴェンの「スプリング・ソナタ」を弾いている。ピアノ伴奏者は予定していたのだめが高熱でダウンしたため、あの”俺様”千秋。
「好きに弾け。どんな弾き方をしてもあわせてやる。」
千秋の胸のつぶやきなど峰くんには届かない。奴は、いつだって思いっきり自分の音楽観を表現しているのだ。だから前の留学帰りの優等生が、Vittorio Montiの「チャルダッシュ」を巧みに披露するが、彼が選んだのはスプリング・ソナタだったのだ。切れ味鋭いあの弾き方は、まるでロックのようだ。まだまだ未熟だが、ナイジェル・ケネディ路線でおもしろい。
「この曲は、青春の喜びと稲妻だ。」
峰くんのこの言葉には、ドラマの中の彼ら音大生の青春が凝縮している。(映画侍さんは、この曲をいやらしいと評したが、その鋭い感覚に敬意を表したい。)そして峰くんの音楽観から、テーマー曲がベートーヴェンの「交響曲弟7番」であることも理解した。やはりドラマの選曲が素晴らしいのだ。ベートーヴェンの後期の弦楽四重奏は哲学的な雰囲気もあり、「第九」は荘厳でもあり、「クロイツェル・ソナタ」はほの暗い浪漫と苦悩もあり。しかし、ベートーヴェンの音楽の魅力は、この”青春の喜びと稲妻”にあるのかもしれない。彼の音楽は勿論複雑に練られているのだが、その人間性は実はけっこう単純な男だったのではないかと、私はかねてより思っていた。たとえば金髪逆毛にして威勢よく、ナルシストで高邁な千秋とはタイプが異なる女好きの峰くん。案外こんなタイプに”才能”と”変人”をミックスしたタイプが、ベートーヴェンだったのかもしれない。
そんなベートーヴェンがもうじきやってくる。しかも日本国内「第九」でにぎわうシーズンに。
12月9日より公開予定の映画「敬愛なるベートーヴェン」(原題:Copying Beethoven)だ!
「1824年ウィーン。"第九"の初演を4日後に控えたベートーヴェン(エド・ハリス)のアトリエに、作曲家を志す若き女性アンナ(ダイアン・クルーガー)が、コピスト(写譜師:作曲家が書いた楽譜を清書する職業)として訪れた。期待に反し、女性のコピストが来た事に激怒するベートーヴェンだったが、徐々に彼女の才能を認め、"第九"の作曲を支える存在となる。(公式サイトより)」
ベートーヴェンは、生涯独身を貫いた。よく言われるこの表現は、ふさわしくない。主義あって、独身を貫いたわけではない。多くの女性をその「スプリング・ソナタ」の音楽のように熱愛したのだが、恋を成就することができなかったのだ。短身で、強面のルックスやその特異な性格も災いしたのかもしれない。しかし、同じくベートーヴェンを主人公にしたバーナード・ローズ監督の映画『不滅の恋』の最後の結末は、ベートーヴェンの遺書にあった自分のすべての作品と財産を譲りたい”永遠に愛する人”とは違うというのが定説だが、彼がどんなに自分の音楽を理解できる女性を恋しても、そのような教養のある女性は身分違いで結婚できなかったという内容は的をえていると思う。G・オールドマンがベートーヴェン役を演じたこの映画は、素晴らしかった。イザベラ・ロッシリーニの親友アンナ・マリー役も雰囲気にあっていて素適だ。ただ人形のように美しいだけではないこの女優は、好きだ。映画の中で永遠の恋人が誰だったかは、さして重要ではない。全編ベートヴェンの音楽が流れて彼の生涯をたどる映像に、まばたきもせず魅入った記憶が今でも鮮明だ。
そしてまた、もうひとつのベートーヴェン映画がやってくる。
『太陽と月に背いて』『秘密の花園』の監督アニエスカ・ホランドが撮ったベートヴェンは、期待できる。製作は英国とハンガリー。舞台は、ウィーン。観るっきゃない。
ありがとうございます!
「日比谷シャンテ」「新宿武蔵野観」で上映されます。私は、シャンテで『カポーティ』を観た帰りに、早速前売り券を購入したのですが、映画の中のオケの模様が入ったメモパッドをいただきました♪
納得のCDは、ところさまの心の中にしか鳴っていないのではないでしょうか。楽譜をいっさい見なければ、そういう現象もなかったかもしれませんが。
私のバッハの無伴奏ヴァイオリン・ソナタがそうです。納得のいくCDがないのです。多分、この曲に関しては、単なる愛好家レベルを超えて、思い入れ強いあまり気持ちは殆どヴァイオリニストになっているのでしょう。ところさまは、千秋のような指揮者に?(笑)
体調も悪くなり、不運と不幸が続く中、
>聴いた後の幸福感を余韻として味わう曲
ベートーヴェン好き人間としては、こうした状況でこのような曲を創造した背景にせまりたい気持ちもします。
>このような男には近寄らないよう
ところさまの忠告しっかりと拝読しました。でもね、、、ブログでも度々声を大にして言っているのですが、ベートーヴェンの音楽を聴いていると彼が実は非常にロマンチストだったということを感じます。女性は、単純でロマンチスト、でも優秀な男には弱いものなのですよ。^^
コンサートの感想も是非お聴かせください★
11/6日の放送で、のだめがピアノで弾いたBeethoven の七番!ぞくぞくしました。のだめ、うまいじゃん!!メルヘンのようなフルート・ソロの第一主題に低弦セクション・ユニゾンで、エコーを入れるところ!Beethovenの特異さが際立つその箇所に「いかづち!!」と言うセンス!!ブラボー、のだめ!!
あのような低音セクションがいきなり語り出す瞬間がBeethovenの作品によく出てきます。俺は、あれはBeethoven自身の「声」だと思っています。怒鳴り声だったり、朗々とした演説だったり、優しい慰めだったり・・・。第九ではついに歌詞をつけて歌手に歌わせていますね。やることが常に過剰で、実にBeethovenらしいやり方に微笑みがもれます。
>のだめ、うまいじゃん
映画侍さん的には、合格なんですね。
>あのような低音セクションがいきなり語り出す瞬間がBeethovenの作品によく出てきます。俺は、あれはBeethoven自身の「声」だと思っています。
なるほど・・・、作品は人を語るというわけですね。ビデオを再生する時には、その点に気をつけて?(耳と心を全開にして)観ますね♪
「のだめ」に関しては、涙もろい?映画侍さんのお姿をそっと見守るべきかと思っていますが、後ほどTBもさせてください。。。