千の天使がバスケットボールする

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「テレプシコーラ 舞姫 第二部3」山岸凉子

2009-10-30 23:01:46 | Book
待っていた、、、ずっとこの日を待っていた。

ル・シネマで上映中の映画『パリ・オペラ座のすべて』の初回を待つ行列は、予想外に長かった。これまでのル・シネマでの映画では、いつも休日の開演時間ぎりぎりでも良い席に座れたのに・・・。これはドキュメンタリー作家としての監督の看板以上に、扱っている素材が”「バレエ」だから”にあると思われる。長らくバレエを踊る人とバレエを趣味とするほんの一部の人々だけだったマニアックな分野が、一般大衆向けの娯楽や文化に広がった成果と考える。この現象に貢献したバレエ界の方々はとても多いが、漫画家では山岸凉子さんは最大の功労者である。

10月23日、待ちに待った「テレプシコーラ 舞姫」3巻が発売された。いよいよプロのバレエリーナーの登竜門である「ローザンヌ国際バレエコンクール」の審査がすすむ。音楽の分野では、芸術性に点をつけるコンクールの是非について時々疑問を呈されることがあるし、ドロシー・デュレイの優秀な教え子のようにコンクール経験なしで最初からプロとして世界的に活躍している五嶋みどりさんのようなヴァイオリニストもいる。バレエも勿論、芸術性においては点数化して勝ち負けを決められるものではないのだが、辺境のアジア人が欧州で活躍する足がかりは、やはり「ローザンヌ国際バレエコンクール」での入賞である。

このコンクールの特徴は、若い才能の発掘とプロフェッショナルなバレエダンサーへの道を開くことを目的としているとおり、入賞者には16,000スイス・フランの奨学金と世界有数のバレエ学校への一年間の留学やバレエ団の研修生としての参加権利が与えられる。NHK教育テレビで一時間程度、コンクールの録画を放映しているのだが、それを観る限りでは通訳の問題もあるのかもしれないが、審査員の批評は長所と欠点をはっきりと指摘しているものの表現は平板である。そのクールさには、ちょっと日本人にはなじめないものもあるが、「テレプシコーラ」でもそんな審査員の厳しくはっきりと審判をくだす雰囲気が伝わる。六花がジェンツァーノを印象に残るよい踊りをしても審査員の先生の表情は日本人と違ってなかなか硬いのだ。幾日にも渡り、また精神的なプレッシャーや体調を崩したりした場合も想定し、少しでも有利になるよう万全にコンクールに挑めるように、10代の彼、彼女たちをサポートするためにつきそう日本人の先生の存在も読ませられる。この先生は、コンクールというものを知り尽くしている。これまで姉の千花をめぐる感情が前面にでていたが、今回の何よりの収穫は六花の精神面での成長ぶりである。彼女は、他の出場者の踊りや様子を冷静に見ながら学び成長していく。しかも、自分が踊る時はあざとくならない程度に感情豊かに。踊る技術も大事だが、そんな六花が作家の意図する振付家にむいているという伏線になっている。そんなわけで、第3巻は人間描写よりもコンクールというものがわくわくするようなおもしろさになっている。

それから映画『パリ・オペラ座』でも感じたのだが、時代の流れがクラシックからコンテンポラリーへと移りつつあるのもわかる。クラシックでいくら正統派の王子様役(ダンスノーブル)を踊れても、コンテンポラリーを踊れるセンスがないと一流にはなれない。近年、ローザンヌ国際コンクールで男子の参加者が増加している理由も、お姫様を持ち上げたり抱えたりする王子よりもコンテンポラリーの勢いで男性ダンサーが主役で活躍できる場が増えたこととも関係があるのではないだろうか。それにコンテンポラリーは、美形でなくて個性的?な顔でもOKだし。バレエは女の子がやるもの、という偏見がユーモアになった映画と時代は変わりつつある。

ところでローザンヌ国際バレエコンクールでは、毎年のように日本人がスカラシップ賞を受賞している。彼らが最も多く所属しているバレエ団は、吉田都さんが移籍して話題になった「Kカンパニー」である。当バレエ団の芸術監督を務める熊川哲也さんは、振付家としても近年評価が高まっている。熊川さんは、1989年に出場してゴールドメダルをとっているが、このメダルの受賞者は超優秀な人に贈られて過去に数名しかいないとのこと。(現在は、廃止されている)つくづく熊川さんはすごい!ということがわかった。

さてさて、気になるのはなんと言ってもローラ・チャンの存在。彼女は、いったい何者なのだ!?

■アーカイブ
・これまでの「テレプシコーラ 舞姫」
・映画『パリ・オペラ座のすべて』


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