宇宙のこっくり亭

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北京の至宝

2012年01月16日 | こっくり亭日記
 

典雅な北宋皇帝・徽宗の書画

 
東京国立博物館(東博)で、「北京の故宮博物院」展をやっていた。わざわざ北京や台北まで、中国美術を見に行くのは大変だ。なるべく動きたくないので、東京まで持ってきてくれるのはアリガタイ(笑)。

行ってみて、人気ぶりに驚いた。中国美術史上でも屈指の至宝・「清明上河図」を見るために、3時間~4時間待ちの行列ができていた。この作品は、まあ、文学で言えば紫式部の「源氏物語」みたいなものだろう。千年近くも昔の、東洋が生んだ大作。長さが5mもある、超大作の絵巻物。西洋の芸術に比べて、少なくとも「古さ」と「大きさ」では負けていない(笑)。上海で公開されたときも大評判を呼び、数時間待ちの行列ができたという。かつては、東洋美術の展覧会といえば、一部の骨董品マニアしか見に来ないマイナーな分野だったのに。世の中、変われば変わるものだ・・・。
 
北宋の芸術皇帝・徽宗(きそう)の書画には、思わず見とれた。徽宗は、皇帝でありながら、書と画の双方で中国文化の頂点を極めた芸術家でもあるという、世界の歴史にも稀な人。中国四千年の歴史の中でも、この時代(日本でいえば、平安時代)が文化的な最盛期だったという声は多い。でも、芸術におカネがかかりすぎて、民衆に重税を課し、かの有名な「水滸伝」の梁山泊を始めとする、各地の反乱を招いてしまった。結局、北から攻めてきた満州人に首都を攻め落とされ、徽宗は満州の北の果て、シベリアの近くまで連れ去られ、寒いところで悲劇的な晩年を過ごした。まさしく、悲劇の皇帝。
 
ショーペンハウエルの「意志と表象の世界」では、「この世は幻影であり、苦しみの発生源なのである」という話のあと、「芸術によって、その苦しみを紛らわすことができる」と続く。でも、芸術によって現世の苦しみを忘れたとしても、それは一時的な効果でしかない・・・だそうな。
  
徽宗の人生を見ると、芸術の効果は一時的なものにすぎず、問題の解決になるどころか、かえって問題の悪化すら招くということがよく分かる。この地球環境では、「美」を追求するのは難しいのだ。やろうと思えば、できないこともないんだけど、それと現実生活を両立させるのが難しい。史上最高の芸術皇帝は、世の中をメチャクチャにブチ壊してしまった。それでも、徽宗の書画は、端正で美しい・・・。
 
それと並んで歴史的な興味をひいたのは、元代の文人・趙孟頫(ちょうもうふ)の書だった。この人も、宋の皇帝の家柄に生まれた人だけど、モンゴル人に中国が征服された後、モンゴル帝国に仕える家臣になってしまった。このため、「祖国の裏切り者」呼ばわりされ、古来から日本でも評判が良くない。その代わり、この人は「書のルネッサンス」を行なった。大昔の有名な書家・王羲之(おうぎし)の書を徹底的に研究し、伝説の書体をよみがえらせたのだ。「祖国の裏切り者」として生きながら、祖国の古き良き古典文化を再興するという、なんとも皮肉な人生。
  
中国の歴史は、大なり小なり、こんな話ばっかりだ。何もかもが、政治的な問題に巻き込まれてしまう。とかく、この世は生きにくい。
 
古人の人生の難しさをしのびつつ、書画の美に、しばし現世を忘れる。このまま、現世を忘れ去ってしまいそうだ・・・。 
  

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