団体交渉 には①複数組合主義と②中立保持義務という二つの基本原則があります。
① 複数組合主義は,使用者は,自らが雇用する労働者を代表している労働組合のすべてと団体交渉を行わなければならないというものです。
例えば,労働者が企業内組合と地域合同労組等に重複加入している場合も,当該団交事項について二重交渉になるおそれがある等の特段の事情がない限り,使用者は団体交渉に応じる必要があります。
この点,アメリカでは交渉単位における過半数代表組合にのみ団体交渉権が認められる(排他的交渉代表制)仕組みになっているのとは対照的です。
② 中立保持義務は,使用者に,複数の労働組合に対し当該労使関係の具体的状況に応じて中立的な態度をとるよう義務づけているというものです。
中立保持義務が問題となりうる場面としては,労働条件に関する場面,施設利用に関する場面があります。
中立的な態度の結果,一方の労働組合とは合意し,他方とは合意に至らなくても結果の差異は不当労働行為にはあたりません。
ただし,ある組合が受け入れられないような条件(さし違え条件)をあえて提示し,当該組合が条件を受け入れられず不利益を被ることになった場合には,意図的な組合弱体化行為として不当労働行為(支配介入)になります。
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