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Q504.2021年(令和3年)4月施行の改正高年齢者雇用安定法の概要と会社経営者が今後考えて…

2021年08月25日 | 事務所のご案内

代表弁護士藤田進太郎が,労働問題FAQを更新しました。

 

Q504. 2021年(令和3年)4月施行の改正高年齢者雇用安定法の概要と会社経営者が今後考えて行かなければならないことを教えて下さい。

 

 高年齢者雇用安定法では,従来から60歳未満の定年禁止,65歳までの雇用確保措置などが定められていましたが,2021年(令和3年)4月施行の改正高年齢者雇用安定法では,70歳までの就業機会の確保が努力義務として新設されました。改正後の高年齢者雇用安定法の概要は次のとおりです(3が改正部分)。
1 60歳未満の定年禁止(義務)
2 65歳までの雇用確保措置(義務)
 ① 65歳までの定年引き上げ
 ② 定年制の廃止
 ③ 65歳までの継続雇用制度(再雇用制度等)
3 70歳までの高年齢者就業確保措置(努力義務)→2021年(令和3年)4月施行
 ① 70歳までの定年引き上げ
 ② 定年制の廃止
 ③ 70歳までの継続雇用制度(再雇用制度等)
 ④ 70歳まで継続的に業務委託契約を締結する制度
 ⑤ 70歳まで継続的に以下の事業に従事できる制度の導入
   ・事業主自ら実施する社会貢献事業
   ・事業主が委託,出資等する団体が行う社会貢献事業

 60歳から70歳までは10年もあります。生活保障(「雇用と年金の接続」)のためだけに定年後の高年齢者全員を雇用したり,就業を確保しなければならないと考えるには,長過ぎる期間といえます。会社経営者としては,高年齢者の能力(健康状態を含みます。)や意欲に応じて活躍する機会を与えられるよう,高年齢者の活用法について本腰を入れて考えなければならない時期に来ていると思います。

 

弁護士法人四谷麹町法律事務所
代表弁護士 藤田 進太郎


Q503最近読んだ本に「社員を信じて仕事を任せれば上手く行く」と書かれていたのですが,仕事を任せるのが不安な社員にまで仕事を任せていいものでしょうか。

2021年08月20日 | 事務所のご案内

代表弁護士藤田進太郎が,労働問題FAQを更新しました。

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Q503最近読んだ本に「社員を信じて仕事を任せれば上手く行く」と書かれていたのですが,仕事を任せるのが不安な社員にまで仕事を任せていいものでしょうか。

 「社員を信じて仕事を任せたのに裏切られた。」と嘆いている会社経営者は,珍しくありません。それほど能力が高いわけでもなく,信頼しているわけでもない社員に仕事を任せていることがことのほか多いのも,そういった事案の特徴です。「どうして,大して能力が高くないことも,信頼できるわけでもないことも分かっていたのに,そんなに大事な仕事を任せたのですか?」と質問すると,最初は「性善説で考えていました。」といった抽象的な説明が多いのですが,じっくり話し合っているうちに,本当の理由が判明してきます。会社経営者が自分の頭で考えてから結論を出していれば,上手く行っても,上手く行かなくても,結果が想定の範囲内に収まっていたはずの事例がほとんどです。
 物事にはプラスの面とマイナスの面があります。「~をすれば上手く行く」といった単純化した提案は,手軽に「コツ」をマスターしたい読者に本をできるだけたくさん売るためのキャッチコピーとしては優れていますが,読者の思考停止につながりかねない側面があり,読者の利益ために書かれた本というより,出版社と著者の利益のために書かれた本なのではないかと疑いたくなることすらあります。会社経営者は会社経営の重要な責任を負っているのですから,本に書いてあることをそのまま真に受けるのではなく,自分の頭で考えてから結論を出すのが,会社経営者に相応しい態度だと思います。
 言うまでもないことですが,「社員を信じて仕事を任せれば上手く行く」とは限りません。仕事を任せるかどうかは,基本的には,その社員を一定程度フォローするなどすれば上手く行く仕事かどうかを判断して決めて下さい。上手く行く可能性が低くても仕事を任せるのは,社員に経験を積ませることを目的しているような場合や,他に選択肢がない場合などに限定されると思います。
 「仕事を任せるのが不安な社員」とのことですが,どうして仕事を任せるのが不安なのでしょうか。その仕事を任せるには,能力が不十分なのでしょうか。それとも,他に何か理由があるのでしょうか。まずは,仕事を任せるのが不安な理由を分析して下さい。その上で,仕事を任せていいかどうか,判断することになります。
 重要なのは,仕事を任せるかどうかを判断するのは,会社経営者又は会社経営者から判断を委ねられている管理職の「仕事」だということです。「仕事」なのですから,しっかり行わなければなりません。判断が正しかったのかどうかは,事後的にも検証して,絶えずマネジメント能力のレベルアップを図りましょう。会社経営者や管理職が,部下を信じて任せたのだから自分に責任はないといった発想を持つようになると,トラブルが起きるのは時間の問題です。

弁護士法人四谷麹町法律事務所
代表弁護士 藤田 進太郎