手技療法の寺子屋

手技療法の体系化を夢みる、くつぬぎ手技治療院院長のブログ

「願い」あっての技術

2016-08-21 08:20:15 | 治療についてのひとりごと
「病気の知人に何かできないか、一度でいいから診てもらえないか」


お世話になっている方から連絡をいただきました。

進行性の神経難病で、全介助が必要な状態ということでした。


距離的にも治療院の現状からも往診は難しいのですが、日程を調整して昨日仕事を終えた後、車で向かいました。

久しぶりの大雨で、時おりワイパーも効きません。

高速道路もゆっくりしか走れず、約束の時間ギリギリに到着し、ご自宅へ案内していただきました。


お身体を拝見した私は、筋の委縮や関節の拘縮が随所にみられるなか、できるだけシンプルな方法で行えるよう考えました。

同席されていた、ご家族や身内の方でもできるように。


はじめは、私がある程度行った上でご家族たちに教え、やっていただきながら進めました。

みなさん真剣そのものです。


後半になると、私はやり方を簡単に伝えるだけで、あとはご家族たちで行っていただきました。

受けていてどう感じるのか、患者さんにも伺いながら進めたのですが、たどたどしいながらも言葉で、そして身体で心地よさを表現されています。


そして終了後、ベッドの上にはリラックスして力みなく休まれている患者さんの姿がありました。

限られた範囲ながら、身体の動きも楽そう。

何より表情が穏やかでした。


その変化に私も内心驚きました。

手技療法を専門にしている人ですら、みんながこのような結果を出すことは難しいでしょう。


さいごに、私が手順を話しながらやっているところを動画に撮っていただきました。

一度感覚をつかまれているので、確認用にきっと役立つはず。


雨足も弱まった帰り道、運転しながら高校生だった25年前のことを思い出していました。

病床の祖父を見舞った時、意識のない身体を訳も分からずさすっていたら、険しかった表情が和らいだこと。

この道を志す、自分の原点になった出来事です。


今回の経験から改めて感じました。

「想い」や「願い」あっての技術だと。


かといって精神論を振りかざすつもりはありません。

技術は技術、磨かなければならないものです。


でも「想い」や「願い」がないと、技術は十分に力を発揮できない。

医学としてはふさわしくない考えかもしれないけど、医療としては間違っていない感覚だと思います。


そして、だからこそ人間が人間を診る価値がある。


コンピューターがさらに進歩して、ベテランの医師でも発見が難しいような異常を見つけ出せるようなる。

それまで不可能だった部分の手術も、マイクロロボットで行えるようなる。


そのようになったとしても、人間が人間を診る価値は変わらないでしょう。

むしろそれくらい技術が進歩しても、やはり満たされない何かがあると気づいたとき、その重要性が改めて認識されるのではないでしょうか。


人間が人間を診るということは、病気が治るとか治らないということも越えたところに、その価値があるように思います。






≪セミナーのご案内(東京)≫
下記日程にてセミナー講師を務めさせていただきます。
ご依頼いただきました主催者のみなさま、ありがとうございます。
興味をお持ちの方どうぞご参加下さい。


☆ 東京セミナー
「頚上肢疾患のASTR 手技療法セミナー」
日時 2016年09月04日(日) 13:00~17:00 
主催:OCSセミナーさん

OCSセミナー





寺子屋DVD発売のご案内
手技療法の寺子屋でご紹介しているような手技療法の基本が、医療情報研究所さんよりDVDとして発売されました。
私が大切にしていることを、出来る限りお伝えさせていただきました。
どうぞよろしくお願い致します。
医療情報研究所





☆ブログの目次(PDF)を作りました 2014.01.03☆)
手技療法の寺子屋ブログを始めてから今月でまる6年になり、おかげさまで記事も300を越えました。
これだけの量になると、全体をみたり記事を探すのも手間がかかるかもしれません。
そこで、少しでもタイトルを調べやすくできるように、このお休みを使って目次を作ってみました。
手技療法を学ばれている方、興味を持たれている方にご活用いただき、お役に立てれば幸いです。

手技療法の寺子屋ブログ「目次」



今のところまじめに更新中!
手技療法の寺子屋ブログ読者の方の友達リクエスト、歓迎します!!

(どなたかよくわからないときがありますので、メッセージを添えてください)

コメント
この記事をはてなブックマークに追加

症状の原因というものについて

2016-08-04 23:17:38 | 治療についてのひとりごと
《Face Book の過去記事から》

慢性頭痛でお悩みの方が相談にみえました。

これまであちこち訪ね、さまざまな治療法を試し、言うのも恥ずかしいくらいの量の痛み止めを飲んできたそうです。

それでもここ数年ほぼ毎日頭痛があり、悶々とした日々を送って来られました。



お身体を拝見すると、筋の緊張も強く、動きにも余裕がありません。

ひとことで言えば、息を吸った状態で止まっているような感じです。

まずは、ゆったりと呼吸できる身体となるようにアプローチしていきました。



あお向けで、みぞおちを緩めていたときのこと。

突然、患者さんの目に涙があふれ始めました。

そして最後に頚部から後頭部の緊張を和らげている時、声を上げて泣き出されました。

私はティッシュを差し出して「気持ちが落ち着くまで泣いていていいですよ」とお話しをし、そのまま待っていました。



身体にアプローチしていると感情があふれ出すことが時々ありますが、なかでも悲しみが表現された時はドラマチックです。

悲しみの場合、その感情を出し切ったとき、何をやっても変わらなかった緊張が和らぎ、気持ちも症状も楽になることがあります。



こちらの患者さんも、「よくわからなかったけど、とにかく悲しかった」と後でお話しされたのですが、泣いて目を腫らしているのを恥ずかしそうにしつつも、肩の力が抜けてリラックスし、笑顔になっていました。

頭痛もなくなり、呼吸もよい動きです。

お帰りのときは、来院された時とは違って穏やかな表情でした。



とても印象深いエピソードだと思います。

でも注意しなければいけないのは、これはあくまでエピソードのひとつだということ。

みぞおちや頚部などの筋肉の緊張を和らげた「から」感情の開放が起こり、愁訴も軽快したという原因と結果の関係、因果関係を示す説明はできません。



みぞおちや頚部などの筋肉の緊張と、感情の問題を理屈で結びつけることはできるかもしれません。

でも、みぞおちや首筋などの筋肉をゆるめると、感情の開放が必ず起こるとはいえないでしょう。

身体のバランスが整うことで、心理的な問題が改善することがあっても、すべての心理的問題が、身体のバランスを整えることによってよくなるわけではない。

当たり前のことですよね。



今回のケースも言えるとしたら、筋肉の緊張が和らぐと共に他の条件が重なったことによって、自発的に感情の開放が起こった。

このあたりまででしょうか。



このように、どこまでなら「そうだ」といえるのか、その範囲を限定して示しておくことはとても大切です。

ここを押さえた上で、いろいろ仮説を立てて可能性を考えるのは、今後の発展のためにも必要なこと。



マニュアルセラピーの中でも身体から心に働きかける、体性感情開放やトラウマリリーステクニックというアプローチがあります。

前者はリラックスさせる中で、後者はトラウマを受けた窮屈な肢位を取った状態から、トラウマなどを開放させる方法だそうですが、もしかしたら今回そのパターンにはまったのかもしれません。



また東洋医学では、心と体を分けて考えずにアプローチします。

東洋医学的な臓腑の相互作用や、経絡という気の流れに、何らかの変化が起こったのでしょうか?



ある心の状態が、特定の部位に緊張の変化として現れるという経験的知識もあります。

セラピストと患者の交流によって生じた認知面の変化、あるいは抑圧の開放など、心理学的な解説もできるでしょうか。

最近いろいろ明らかになっている脳科学の知識からも、その一部が説明できるかもしれませんね。



さらには、治療院の中には私と患者さんの2人だけだったという環境要因も、条件から外せないかもしれません。

他にも誰かいたとしたら、果たして同じことが起こったでしょうか?



このように観察者の視点によって、さまざまな解釈が可能です。

視点の数だけ説明があるといえるかもしれません。



そうなってくると、「~だから」という原因を示す言葉は、簡単に使いにくくなってきますね。

使うとしたら「~である時には」とか「~に限ってみると」というように、条件を特定しておく必要があります。



なぜこのようなことをお話しするのかというと、セラピストのなかには、あるポイントに、あるアプローチ法を用いたらよくなったという経験から、そのポイントを原因として一般化し、いつでもどこでも誰にでも当てはまるというような言い方をする方もいるからです。



自分が見つけたことや考えたことには情が移りますから、そのような言い方をしてしまう気持ちも理解できますが、それは勇み足、風呂敷の広げ過ぎというものかもしれません。

良い結果が出たことはもちろん本当でしょうが、そうでないケースもたくさんあるはず。



どのような状況のときに良い結果がでて、反対にどのような状況なら結果が思わしくなかったのか。

冷静に見極めなければいけません。

そうでないと、せっかくの貴重や発見や経験も周囲から眉つばに見られ、もったいないことになりかねないからです。



統計学的な考え方が重視されるようになってきているのは、そのようなことが起こらないためでもあるでしょう。

臨床はオーダーメイドなので、統計的に有意差が認められることだけが全てだと思いませんが、できるだけ慎重でありたいところです。

表現の仕方については特にそう。



マニュアルセラピーは、今の医療の中では決してメジャーな方法ではないかもしれませんが、薬にような副作用もなく、侵襲性も低いもの。

痛みや不定愁訴など、多くの方が日常的に訴える症状の改善に役立つ可能性があると思います。

だからこそ、大切にしていきたいですね。



また、自分は広い範囲をみているつもりでも、実はひとつの視点に囚われていることもあります。

それによって自分の成長も妨げてしまうかもしれません。



条件を特定することは、それに当てはまらないこともあるということを予め認識していることになります。

自分にはわからないところがある、ということをわかっていることは、井の中の蛙になることを避けられます。



はじめは人から直接教わって学びますが、最終的に求められるのは、自分で自分を成長させる力。

安易に結論付けないというのは、そのためにも大切だと思います。



後日、患者さんからお礼の電話が入り、「母もいちど診てほしい」というご相談をいただきました。

頭痛もずいぶん軽くなり、毎日を楽に過ごされているそうです。

このようなお話を伺うと、心底よかったと胸をなで下ろしてホッとします。



それにしても、なぜこのようなことが起こるのでしょうか?

やっぱり不思議ですね。
コメント
この記事をはてなブックマークに追加

触診の大切さ・・・症例を通して

2016-07-11 21:39:11 | 治療についてのひとりごと
今回は体制機能障害の評価において、触診の大切さを教えてくれるエピソードの紹介です。

3年前にFBへ投稿した古い記事ですが、ご参考になれば幸いです。



左手首の痛みでお悩みの方が来院されました。

お話を伺うと約半年前、手の使い過ぎで左母指背側に痛みを感じ始めたので病院を受診したところ、ドケルバン病との診断を受けられました。

その後、ステロイド注射など保存療法を続けたものの改善せず、痛みは手関節の背面に広がったそうです。

回復が思わしくないため、大学病院を受診したら手術を勧められ、他に方法はないものかと探されたところ、知人の方から紹介を受け、来院されたのでした。




お体を拝見すると、左母指の屈曲で橈骨茎状突起付近に痛み、手関節背面全体に圧迫刺激に対する過敏性を訴えられます。

しかし、短母指伸筋腱・長母指外転筋腱は腱鞘をスムーズに滑走し、腫れや熱感など炎症の所見は認められませんでした。

(筋腹は軽度萎縮してたのですが、患者さんが自分でゴリゴリとマッサージしていたらしく、内出血の後がありました(^_^;))

また、5ヶ月も経過しているわりには、腱や腱鞘に線維性の硬さも感じません。



ただ、橈骨茎状突起付近の筋膜の滑走制限を認め、加えて手関節の前方偏位によるアライメントの変化、そして短母指外転筋の緊張を確認しました。

いずれも、機械的ストレスや関連痛により母指の背側に痛みを起こすことがあります。

更に調べるために、上肢を水平外転させて筋筋膜に軽くテンションをかけ、橈骨茎状突起付近に軽く触れて筋膜を横に往復して滑らしながら、反対の手で前腕、上腕へと筋膜の動きを確認していくと、大胸筋筋膜の緊張が手首の筋膜の動きに伴って変化します。

手首の制限に大胸筋が影響を及ぼしている可能性があります。



胸郭は左へサイドシフトし、骨盤は右に重心が移っており、それによる左上肢帯の動きの変化なども考慮しなければいけませんが、ここでは割愛します。

以上の機能的変化から、機能障害による痛みの可能性が高いと判断しました。



私は、急性期のような鋭い痛みの場合は離れたところから、慢性痛の鈍い痛みの場合は近くからアプローチしますが、今回は離れたところにある大胸筋からスタートしました。

大胸筋をリリースすると、母指の屈曲角度が広がり、手背部の過敏性が低下しました。

こうなると患者さんは喜ばれて安心し、こちらを信頼してくださるようになります。



続いて、手関節の関節モビライゼーションを行った後、母指丘の筋を伸張しました。

それぞれのアプローチごとに痛みと可動域が改善し、最後に茎状突起周囲の筋膜の制限をリリースした後には、5ヶ月間続いた痛みは、ほぼなくなった状態になりました。



このエピソードで、大きな役割を果たしたのは触診です。

軟部組織に限れば、皮膚・皮下組織・筋・腱・靭帯・関節包などあらゆる組織が異常を起こす可能性があります。

それなのに例えば仮に、フィンケルシュタインテストが陽性だからドケルバン病と判断するとしたら、それはSLRで下肢痛が出たから腰椎椎間板ヘルニアだとするのと同じくらい乱暴な話しです。

はじめは腱鞘炎によるものかもしれませんが、時間の経過と共に慢性期に入り、線維化やそれに伴う癒着、周囲の筋緊張や筋膜の滑走制限、関節のマルアライメントにより、同様の痛みを出すことがあるからです。

この場合、触診による異常な部位の特定が役に立ちます。



反対に、今回は即時的変化がみられましたが、腱や腱鞘に炎症を伴い、動きと共にギシギシと軋轢感を触知するような場合はそうはいきません。

周囲のアライメントなどを改善させた後、患部は炎症の処置により安静を保っていただくことになります。



また、いくらいろいろアプローチをしても、狭窄が陳旧化している場合は手技療法による回復は難しいでしょう。

私も力及ばず、病院への受診を勧めて手術によって良くなった患者さんもいらっしゃいます。

このような禁忌の場合も、触診による情報が重要な役割を果たします。

ですから筋骨格系の異常を評価する場合、触診はとても大切なのです。



とくに手技療法を用いる場合、最終的な刺激の範囲、強さ、深さ、方向は触診により決定するので尚更のこと。

触診技術、もっと磨いていきたいと思います。
コメント (2)
この記事をはてなブックマークに追加

経営のこと

2016-06-18 10:33:13 | 治療についてのひとりごと
ここのところ、私の周囲でも独立しようとしている人が何名かいらっしゃいます。

経営のスタイルは人それぞれですが、エールを込めて私の体験を。

とりとめもなく、スマートな話ではないけれど、なにかの参考になればと思います。



10年前の2月、開業して半年を迎えた頃、売り上げは最低を更新しました。

今の一日の売り上げが、一か月の売り上げでした。



1週間以上誰も来ないとなると、気持ちもおかしくなります。

今から思えば、地域の人に私のことを知っていただく(マーケティングや集客)という工夫と努力が足りませんでした。



はじめは、自分がどのようなサービスを提供しようとしているのか、とにかく徹底的にPRすべきです。

できるだけコストは抑えて。



なまじ腕に自信があると、これを怠りがち。

とくに私のように他の街から引っ越してきて1年足らず、知っている人も少なく、地盤もないのに開業するなら、なおさらやらなければいけないことでした。



好きな人に「好きだ」と告白もしないでいるなら、何も伝わらず、何も変わりません。

片思いなら心が苦しいだけで済みますが、経営をしたら何をしなくても経費がかかるので通帳まで苦しくなり、生活を直撃します。



けれども当時はどうしようもなく、やがて翌月の家賃が払えないというところまで落ちました。



生活は妻のパート収入頼み。

ありがたいことに赤字が続いた間も、稼ぎが悪いと責められたことは一度もありませんでした。



私のことを信じてくれていました。

今でも妻には頭が上がりません。

所帯を持って起業するなら、家族のサポートは欠かせません。



ブティックを数店舗経営をしていた、新聞奨学生時代の先輩からアドバイスをいただきながら、とにかくコストをかけずに、できることをやれるだけ続けているうちに少しずつ売り上げが上がり、やがて生活できるようになっていきました。



そして先週、およそ10年ぶりにみえた方がいらっしゃいました。

いろいろ調子が悪くなってきたとき、私のことを思い出してくださったそうです。

当時のことをお話ししていたら、「治療院が続いてくれていてよかった」というお言葉をいただきました。

嬉しかった。



10年以上お店を続けて来ましたが、経営が面白いと思ったことは正直ありません。

そのくせ、子どもの頃から自分がどこかの組織に属して誰かの下で働いているという姿は想像できなかったので、いずれは独立することしか頭にありませんでした。

起業したのは、自分のやりたいように仕事がしたかったから。



経営目標もありませんし、前年同月比で売り上げはどうなのかといったことにも関心がありません。

治療院を大きくすることにも、展開していくことにも興味がありません。

現在と将来の生活の見通しがある程度立っていれば、それでいいという感じです。



本当はいけないのですが、今となっては集客の努力はしていないに等しい。

数字は嫌いだし、事務書類なんて見たくもない。

自分だけならいいけど、人を雇うとなったらこれでは済みません。



生活できてしまえば、もともとの性分が顔を出しますね。

だから経営者としてはダメダメです。



ただし、食わず嫌いはいけませんから、独学で簿記三級を取りましたし、ケアマネで事務作業も経験しました。

とにかくやれるだけはやってみて、得られた結論は、自分には向かないということ。



器用ではない私ですが、経営する上でブレないようにしていることが2つだけあります。

ひとつは、本業に徹すること。

もうひとつは、開院後間もない頃、しんどかった頃に来てくださった方がガッカリしない店であろうとすること。



イカダの船長を自負しながら、小さな店には小さな店のやり方があると思ってやってきました。

今回いただいたお言葉は、自分の信じてきたことが間違っていないと認められた気がしました。



治療院は名目上は私のお店ですが、今は自分のものではない気もしています。

これまでやってこれたのは、お店に来てくださる方がいるから。

その方たちの思いが紡がれて、治療院としてのかたちが残っています。

だから私のものであるようで、私のものでない。



これからも紡がれた思いを大切にしつつ、それに支えられながら小さなイカダで旅を続けようと思っています。

独立されるみなさん、よき旅を。

Bon Voyage!







≪セミナーのご案内(札幌・東京)≫
下記日程にてセミナー講師を務めさせていただきます。
ご依頼いただきました主催者のみなさま、ありがとうございます。
興味をお持ちの方どうぞご参加下さい。


☆ 札幌セミナー
セミナー1「身につけておきたい手技療法の基本3~異常を見つけ出す触診技術~(追加開催)」
日時 2016年07月23日(土) 18:30~21:00  

セミナー2「胸郭への徒手的アプローチ(追加開催)」
日時 2016年07月24日(日) 13:30~18:30

手技療法の寺子屋セミナー


☆ 東京セミナー
「頚上肢疾患のASTR 手技療法セミナー」
日時 2016年09月04日(日) 13:00~17:00 
主催:OCSセミナーさん

OCSセミナー



寺子屋DVD発売のご案内
手技療法の寺子屋でご紹介しているような手技療法の基本が、医療情報研究所さんよりDVDとして発売されました。
私が大切にしていることを、出来る限りお伝えさせていただきました。
どうぞよろしくお願い致します。
医療情報研究所





☆ブログの目次(PDF)を作りました 2014.01.03☆)
手技療法の寺子屋ブログを始めてから今月でまる6年になり、おかげさまで記事も300を越えました。
これだけの量になると、全体をみたり記事を探すのも手間がかかるかもしれません。
そこで、少しでもタイトルを調べやすくできるように、このお休みを使って目次を作ってみました。
手技療法を学ばれている方、興味を持たれている方にご活用いただき、お役に立てれば幸いです。

手技療法の寺子屋ブログ「目次」



今のところまじめに更新中!
手技療法の寺子屋ブログ読者の方の友達リクエスト、歓迎します!!

(どなたかよくわからないときがありますので、メッセージを添えてください)

コメント
この記事をはてなブックマークに追加

触れるというのは「あいさつ」するということ

2016-06-04 12:16:38 | 治療についてのひとりごと
触診やテクニックを用いるとき、身体に触れる瞬間に注意を払うということはとても大切です。

無造作に触れるのはいただけません。

これは評価や介入以前の話です。



触れるというのは「あいさつ」のようなもの。

あいさつがいい加減だと、相手の方から信用されないでしょう。



そしてあいさつは、時と場合によって声の出し方を変えるもの。

「明るく元気に」が良い時もあれば、「穏やかに落ち着いて」が良い時もある。

大きな声を出す時もあれば、遠慮がちに小声で話す時もあります。



触れるということも同じように、テキパキとテンポよくという時もあれば、穏やかで緩やかにという時もある。

強めに触れる時もあれば、軽めに触れる時もある。

このように触れ方も時と場合によって変わりますが、決まったパターンとして伝えるのはなかなか難しいものです。



あいさつは、その時にふさわしいものを、幼いころから生活の中で教わり、時に失敗しながらも経験を重ねて覚えていきます。

不幸があった時に元気よくあいさつしてはひんしゅくを買いますし、面接の時に控えめにあいさつしてはマイナスの印象を与えるもの。

ですから、あいさつをするには「空気を読む」ことが求めれます。



「触れる」に求められるのも「空気を読む」ということに似ているかもしれません。

丈夫そうな患者さんだからといって、いつでもしっかり触れて良い訳ではなく、虚弱な患者さんでも常にやさしく触れなければいけないという訳ではありません。

強く触れることでビックリさせて緊張を招くこともありますし、やさしく触れることでイライラさせることもあるかもしれません。

もちろんこれは、セラピストの持つ雰囲気や技量の影響も受けるでしょう。

そうなると、何だか難しくなりますね。



でも、これは押さえておかなければいけない!! というポイントはあります。

挨拶(あいさつ)の挨と拶という字、いずれも直接的な意味は「ぴったりと当たる、すれ合う」ということだそうです。

言葉や態度を通して、状況に合わせながら相手にぴったりと寄り添うものであること。

不快な思いをさせずに、こちらを受け入れてもらえるようにすること。

まずは安心感を与えることが大切なのですね。



触れるということも同じ。

手を通して、相手にぴったりと寄り添うように密着すること。

不快な思いをさせずに刺激を受け入れてもらえるようにするということ。

ここでも安心感を与えることが大切になります。



例えば、手先を固めて鋭く触れるのは望ましくないでしょう。

手先が硬くなっているのは、ガチガチになってあいさつしているようなもの。

相手に余裕がある場合は受け入れてくれますが、身体の不調などによって余裕がない場合はかえって身構えさせることになります。



鋭く触れるのは、素っ気ない、つっけんどんなあいさつと同じです。

臨床では「先生」と呼ばれる立場の人から触れられているので、患者さんは静かにされているかもしれませんが、内心は穏やかではなく落ち着かないこともあるでしょう。

それが信頼関係にも影響するかもしれません。

また、穏やかではない気持ちがわずかな緊張として身体に現れていたとしたら、正確な情報を得ることの妨げになる可能性もあるでしょう。



そうならないよう、手できちんとあいさつするつもりで相手の身体を包み込むように、手掌をピタッと密着させて触れるようにします。


細かい部位でも、できるだけ広い範囲を触れておくようにしたほうがよいでしょう。

はじめは、手から伝わる身体の印象を感じるだけで、何かをしようとする必要はありません。

そこから徐々に浮かせ、指先にコンタクトを移していくという触れ方を意識するとよいでしょう。




母指で触れるときも、母指でズボッと圧すのではなく、手全体で触れてから手根を浮かし、母指は圧迫の形をとり、四指は支えに使うというようにする。





頸椎の関節突起にコンタクトしようとする際も、はじめから関節突起を狙うのではなく、手で広く後頚部を包むようにして触れてから、指先に触れる部位を集め関節突起にコンタクトしていく。



肘を使うときも、いきなり肘頭を当てるのではなく、前腕を広く当ててから肘の方へ移していく。



このようにすれば、相手に安心感を与えやすくなると思います。



触れた後は、力を加えて感じていくことになりますが、それについては次の記事をご参照ください。

《手技療法の基本は握手シリーズ》



そして、手を「離す」という操作もあいさつと同じ。

「ありがとうございました」「お疲れ様でした」「失礼いたします」という意味を持つ大切な操作です。

それについては次の記事をご参照ください。

《触れた手の離し方シリーズ》




時と場合に応じた最適な触れ方を身につけるには、徐々に経験を重ねながら身につけていくしかありません。

このようなお話をしている私もまだまだ試行錯誤の途中で、「今のはよくなかったなぁ」と反省することはしょっちゅうなのですが。



まず今回ご紹介したことだけは、触診をするときもテクニックを用いるときも意識してみてはいかがでしょうか。



触れるという行為は、命と命の最も基本的な交流だと思います。

そこを忘れずにいたいですね。

コメント
この記事をはてなブックマークに追加

関節のあそびとモビライゼーション ~ セラピストの主体性について

2016-05-11 09:15:21 | 治療についてのひとりごと
ブログのコメント欄にいただいたご質問。

感じるところがあったので転載し、セラピストの主体性についてなど雑感を述べました。

まだ経験は浅いけれど熱心にさまざまなアプローチを学んでいる方に、特にご覧いただきたいと思います。



《質問者さん》
こんにちは。

コメントへのご返信ありがとうございました。

くつぬぎさんにご指摘頂いたようにとりあえず、自分で調べるという癖はつけなければいけないと思い反省しております。

ご指摘して頂きありがとうございます。



関節のあそびについて、いろいろな書籍やネット検索で調べました。

様々な用語の理解や、間接法での動揺法なども自分でしっくりくるものを見つけました。

ただ一つだけ、いろいろな物で調べても分からなかったことがあります。



くつぬぎさんにも質問させて頂いた内容なのですが、全ての滑膜関節に遊びがあるというのは理解出来ました。

その遊びの方向についてなのですが前後、側方、回旋、牽引、圧縮があると書かれていましまたが、これは全ての関節にこれらの方向の遊びがあるということなのでしょうか?

ネットや書籍では全ての方向ではなく、各々の関節ごとに各々の方向の遊びの検査法があったのですが、それぞれの関節の遊びの方向は様々で、上記全てが書かれてないのも沢山ありました。



例えば中手骨間関節であれば前後、回旋のみなどです。

これは物理的に他の方向の遊びがないから書かれていないのか、それとも他の方向の遊びもあるけど検査、治療の仕方が無いから書かれていないのか
どちらなのか疑問になりました。

治療の際には、全ての方向の制限を見つけ、治療した方が効果があると思うので、もしよろしければ教えて頂けないでしょうか?

自分で中手骨間関節の遊びを作る際に側方や圧縮の方向も意識しながらやっているのですが実際には、ホントにその方向に遊びがあるのか分かりません。
仮に、意識しながらやっていたとしても前後や回旋の方向での遊びがついただけではないかとも思います。

(くつぬぎ 注)中手骨間関節や中足骨間関節、肩甲胸郭関節は、滑膜関節ではないものの働きとしてはそれに準じるので機能的関節とされています。
そのため厳密な意味での関節のあそび(関節包のゆとり)とはいえないのですが、問題の中心ではないのでひとまず脇に置いておきます。



《私の回答》
こんばんは。

関節のあそびの方向について、側方や圧縮と特定の方向が示されているのはある意味便宜的なものと私は受け止めています。

関節のあそびはあらゆる方向に存在しているというのは、イメージするなら私たちがTシャツを着ているようなもの。



ふつうは動きやすように、ある程度ゆとりのあるシャツを着ると思います。

そのゆとりはあらゆる方向に動きますね。

関節のあそびも、シャツを着た時のゆとりと同じです。



そしてシャツの一部を握れば、その部分の動きが悪くなる。

特定の方向へ関節機能障害が発生した状態です。

握った部位を適切に緩めるのが関節モビライゼーションとなります。



シャツはあらゆる部分を握ることが出来るように、関節機能障害もあらゆる方向に発生する可能性があります。

しかし、やみくもに探しても見つかりにくいし、セラピスト同士が互いに情報を共有しにくいので、教科書的に方向を定めておく必要があるのだろうと思います。



テキストで特定の方向しか紹介していないのは、ページ上の問題か、その関節に特に特徴的な制限を示しているのでしょう。




《質問者さん》

ご返信ありがとうございます。

分かりやすい説明ありがとうございます!


シャツの例えだとイメージしやすいです。

要するに、関節の機能障害はあらゆる方向に起きるので、教科書だけでの方向でなく直接法では、その関節が一番制限がある方向に狙って治療するということですね!

ありがとうございます!



・・・・・・・



今回のような疑問は、比較的学びはじめの熱心な方によくみられるものです。

(何を隠そう、私がそうでした!!

いろいろな情報に目を白黒させてしまうのですね。

これまで知らなかった世界を学ぶのだから、当然といえば当然のことかもしれません。



それにしても、狭い手技療法の世界だけを眺めても情報が多いです。

知識が細分化され、新たな分類がなされるにつれて、新たな治療法として発表され、セミナーが開催され、資格ビジネス化していく。



新たな分類が悪いわけではありません。

さまざまな視点があることで、発見もあるでしょうし、情報も共有できる。

より効率的にもなりえるので必要です。



資格ビジネスが悪いわけではありません。

有効な方法をより早く広く普及させるための手段ですし、新たな雇用を生み出して経済を動かすことは今の世の中に必要なことですから。

もっとも、眉をひそめたくなるようなことをしている団体もあるでしょうが。



問題はセラピスト個人の側にあります。

よくないのは、情報に振り回されて主体性をなくしてしまうこと。

権威のある個人やメソッドに対して無条件に受け入れて信じ込んでしまうこと。

そうかと思ったら、しばらくしてまた幸せの青い鳥を探してさまよっていくこと。

つまり、自分で吟味して判断して取り入れられるものを取り入れるのではなくて、特定のアプローチに自分を同一化させてしまうことです。



そうならないためには、自分で身体の情報を感知でき、それを批判的に検討し、目的にかなった操作をコントロールして行えるようになる必要があります。

自分の臨床の責任はあくまで私たち自身にあるのですから、セラピストひとりひとりが主体性を持つことはとても大切。



関節のあそびについて、細かくいえば各関節ごとに方向によって大きい小さいというものはあるでしょう。

ただ臨床では、あらゆる軟部組織があらゆる方向に異常を起こしえる、という前提でのぞんだほうがよいと思います。



そうすると新たな知見で出会った時、自分が感じたあの感覚はこの組織のトラブルだったのか、と体験と知識を結びつけることができます。

確かな手ごたえを感じながら、情報に対して主体的に向き合うことができ、仕事の面白みもより感じることができる。



そのために私は触診の際、あえてはじめから対象とする組織を特定せず「かたさ」や「緊張の分布」を感じ取るという方法を用いています。

そこから解剖学や運動学に照らし合わせる。



モビライゼーションの段階も、5段階や3段階に分けるのではなく、動かし始めから終わりまでの連続的な変化をよく味わい、身体で覚えるようにする。

その上で、いくつかの段階に分類する意味を考える。



感覚という方向から知識を結びつけていく。

これが万能だとは思いませんが、はじめの第一歩を学ぶときに知識の吸収と並行して、あるいはあまりにも頭でっかちになっているときには有効ではないかと思っています。



すべては主体性を持ったセラピストになるという目的のため。

これが私が最も重視していることです。

コメント
この記事をはてなブックマークに追加

避難生活などでの腰背部痛をやわらげるために~タオル玉を使った背面ほぐし

2016-04-27 06:35:00 | 治療についてのひとりごと
避難生活が長引いて、背中や腰を痛みを訴える方が増えているとニュースで報道されていました。

筋肉などのコリによって背中の痛みが出ている場合、テニスボールの上に体重をのせる方法が用いやすいですが、入手が難しいときはタオルを玉状に縛ることで代用できます。

タオル玉を作るには力も必要なので、難しい方は男性など力のある方にお願いするとよいでしょう。



《タオル玉の作り方》
1.タオルを横長に四つ折りします。


2.グルグルとしっかりねじります。


3.輪を作り、タオルの片端を2回通します。

4.強く縛って、形を丸く整えます。


5.大きめにつくる場合は、さらに両端をねじって互いに強く縛り、丸く整えるとよいでしょう。




《やり方》
1.あお向けになり、両膝を立てます。

2.気になる背中や腰、お尻の片側にタオル玉を入れ、そちらの側に膝を倒して体重をのせます。


3.刺激はイタ気持ちよいていど。時間は1~3分、あるていどスッキリすればよいでしょう。

4.上下に位置を変えたり、反対側も同じように行います。



♪ご高齢の方や虚弱な方は、小さめに作りやさしく体重をのせ、比較的健康な方は大きめに作ってしっかり体重をのせるとよいでしょう。

♪タオル玉がつぶれたら、向きを変えて当てたり、かたちを整え直して使用してください。

♪膝が曲がりにくい方は、可能なていど、もしくは伸ばしたままでも結構です。

♪車中泊の方は、シートをリクライニングしてお使いください。



*以前監修した健康雑誌の記事も、合わせてご参照ください。





≪ご注意≫
・痛みが非常に強い。

・コリをほぐしても、症状が少しも変わらない。

・どのような姿勢をとっても痛みが気になり楽にならない。

以上のような場合は、必ず医師の診察を受けるようになさって下さい。

特に避難生活に伴うストレスによる、心疾患由来の背部痛には注意したいところです。



熊本などで避難生活されている方に届きますように。

コメント
この記事をはてなブックマークに追加

エコノミークラス症候群を予防するために ~ ふくらはぎのほぐし方

2016-04-23 20:59:10 | 治療についてのひとりごと
エコノミークラス症候群を防ぐために、足首の曲げ伸ばしがすすめられています。

けれども、ふくらはぎの筋肉がコッて硬くなると、せっかく動かしても効率がよく循環を促せない可能性があります。

また、手でコリをほぐそうにも、深いところまでは届きにくいもの。



そこで、シンプルで楽にコリをほぐす、4つの方法をご紹介します。

いずれも適度な刺激は、イタ気持ちよいていど。

時間は1~3分、あるていどスッキリすればよいでしょう。

コリをほぐした上で足首を動かせば、より効果的に予防できるはずです。



◆ イスに座って (刺激の強さ 軽~中)

1.イスに座り、ふくらはぎを反対の膝のお皿の上にのせる。

2. 両手を組んで、スネのまん中あたりに当てる。

3.ふくらはぎをお皿に押しつけ、上下左右に動かす。あるいは足首を曲げ伸ばししてコリをほぐす。






◆ 四つばいで (刺激 中~強)

1. 四つばいになり、ふくらはぎの上に反対の膝のお皿をのせる。

2.のせたお皿に、少しずつ体重をかけて押さえる。

3.必要なら、そのまま上下左右に動かしてコリをほぐす。



♪ 比較的健康な方向けです。



◆ あお向けで 1 (刺激 軽)

1.あお向けになって片膝を立て、お皿の上にふくらはぎをのせる。

2.ふくらはぎをお皿に押しつけ、上下左右に動かしてコリをほぐす。



♪ ご年配の方でもやりやすいです。



◆ あお向けで 2 (刺激 軽~中)

1.未開封のペットボトル(丸くてハードなもの)や水筒など、円筒状のものを準備する。

2.あお向けになり、ふくらはぎをペットボトルの上にのせる。

3.さらに刺激が必要なら、反対の脚を交差させてのせる。

4.そのままふくらはぎを上下左右にゆらす。

5.あるいは足首を曲げ伸ばししてコリをほぐす。



♪ 本などで高さをつければ、よりやりやすく、また循環の助けにもなります。

♪ 膝が曲がらない方はこの方法で。



■ ふくらはぎをほぐせば、身体の疲れが和らぐだけでなく、気持ちもリラックスしやすくなります。

このたびの震災で被災された方々の、お役に立つことができれば幸いです。
コメント
この記事をはてなブックマークに追加

テニスボールマッサージは悪いのか? その3《不定期更新のお知らせ》

2016-04-16 14:15:50 | 治療についてのひとりごと
「テニスボールマッサージで、手術が必要なほどだった椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症が劇的に改善

テニスボールに限らず他のツール、手技療法も含めて、劇的な効果をうたった表現はよく見かけるのではないでしょうか。

それには「医者が見放した」とか、「どこに行っても治らなかった」とか、読み手の感情を刺激するような言葉が用いられがち。



しかしこの場合、椎間板ヘルニアや狭窄症そのものが治っているわけではありません。

テニスボールでほぐせば、あるいは手技療法を用いれば、飛び出したヘルニアがあれよあれよと元に戻ったり、狭くなった脊柱管が広がるわけではないのですから。



では何をやっているのかというと、私たち日本人に馴染みのある言葉で表せば「コリをほぐしている」だけです。

トリガーポイントをリリース、あるいは筋膜をリリースしていると言ってもよいでしょう。

可動域を拡大して運動機能を改善したとか、アライメントを修正したでも構いません。

生理的なリズムを回復させるとか、循環を回復させるとか、自然治癒力を高めるとか、結果が強調された表現が使われることもあります。



それぞれの専門からすれば「まったく違う‼」といえるような差はあるでしょう。

けれどもどのような理論的背景があるにせよ、手技療法なりテニスボールマッサージなどでやっていることは、程度の違いこそあれ、動きの悪くなった軟部組織を見つけ出して刺激を加え、より動くようにしているという点で共通しています。

この「共通する」という視点から眺めると、ある評価に基づいて名付けられた対象、この場合ならコリが適切にほぐされた。

はじめはそのような認識でよいのではないか、と私は思っています。



いろいろな考えがありすぎて混乱するという方は、まずはそのように整理されておくとよいのかもしれません。

まずは多少荒削りでも、大まかに全体像をイメージできるようにする。

その上で、いろいろ学んで自分に合ったコンセプトやメソッドを取り入れていけばよいのではないでしょうか。



話を戻して、テニスボールマッサージなどが効いたというのは、仮に椎間板ヘルニアと診断がついていたとしても、患者さんの症状は筋肉などの軟部組織の機能的な異常、一般的な表現ではコリによって起こっていたのだということ。

そのため、筋筋膜のコリをほぐしただけで劇的によくなるケースもあるわけです。



この場合、患者さん自身もヘルニアや狭窄症によって症状が出ていると思いこまれていることが多いので、改善したときのインパクトは強烈です。

セラピストが手技療法を用いて良くなったなら「ゴッドハンド」と感謝されるかもしれません。

治った患者さんは大喜びされてよいのですが、セラピストが勘違いして舞い上がってはいけないでしょう。

患者さんにもよく説明しておかなければいけませんし、何より自分自身が冷静でならないといけません。



冒頭に挙げたようなオーバーな表現がまかり通るのは、裏を返せば体性機能障害によって引き起こされるさまざまな症状が、現代医療の中で未だに認識が不十分であるというのも理由のひとつでしょう。

筋肉や関節の不調があった時、画像や血液検査などでも異常がないなら、細かい運動機能の評価をする。

そんな流れが業界の常識となっているなら、このようなオーバーなことにはならないはず。

ですから筋骨格系の機能異常によって、痛みをはじめ不定愁訴とされているものなど様々な症状がもたらされることを、医療の世界に周知させていくことも私たちセラピストの役目になると思います。



コリをほぐしているだけとお話ししましたが、それだけのことが見落とされたことによって、長年つらい思いをしなければならかったとしたら悲劇でしょう

また、適切にコリをほぐすというのは状態によって簡単ではないこともあります。

だからこそ専門職が必要となり、セラピストは確実にそれを行える知識と技術を身につけておく必要があるわけですね。



それから、機能的障害と器質的障害の間にはグレーゾーンが大きく、どれほど評価してもどちらのほうが影響が大きいか、はじめの段階ではっきり見当がつけられずに悩まされることもあります。

下肢のしびれがひどくて手術適応かと思われたケースが、手技療法とテニスボールマッサージで回復したケースもある。

反対に、手技療法でいけるかと思われたもののなかなか改善せず、最終的に手術で回復したケースも経験しています。

慢性化すればするほど難しい。

ですからそのような場合、緊急性がないことだけ確認すれば、手技療法やセルフケアとしてのテニスボールマッサージを用いながら3回程度様子を見た上で、もう一度検討するように私はしています。

≪「適応と禁忌の鑑別について その9」もご参照ください≫

例によって、とりとめのない話しになってしまいました。



さて、今回のシリーズはテニスボールマッサージを主に取り上げながら、極端な表現やはっきりしない情報に対してどのように考えるのか、ひとつの例として私の意見をお話させていただきました。

たまたまテニスボールでしたが、これを何に置き換えても同じでしょう。



どのようなセルフケアであれ、最終的にはやってみないとわかりません。

みんな個人差があり、その人にとってどうであるかが大切なのですから。



ですから、まずは私たちが自分で試して確認してみましょう。

結果がどうであれ、自分の体験を通して得た知識というは貴重です。



ここで注意したいのは、自分あるいは身近な人々から得られた結果がすべてだとは思わないこと。

それから自分がプラスの結果を経験しているのに、マイナスの声が大きくなると自分の経験を封印してしまうこと。

反対に、自分や周囲にとってマイナスであったのに、プラスの勢いに飲まれてしまうことです。



ひとつひとつの経験が価値あるはず。

それぞれの経験をシェアして意見を交換することで、状況によって使い分けのできる、より多くの方に役立つものが生まれるはずです。

何が本当かはっきりしないこともありますが、少なくとも互いの考えを尊重しながら自由に発言できる雰囲気を、この業界の中で保っておけるようにしたいですね。





《不定期更新のおしらせ》
いつも手技療法の寺子屋ブログをご覧いただきありがとうございます。
ブログを始めて以来これまで定期的な更新を続けて来ましたが、今後は不定期更新とさせていただきます。

私事ですが、この春から大学院に入り新たに勉強をし直すことになりました。
専攻は教育学、研究テーマは「手技療法の基本技術の習得について」です。
このブログでテーマにしてきたことを、学問的な形でまとめたいと思っています。
その前にまずはしっかり教育学を仕込むつもりです。

これまでブログの記事は時間をかけて作り込んできましたが、これからはFacebookにアップしているような、その場で思い立った手技療法の記事を、ブログに掲載していきます。
気軽な形で続けていこうと思っているので、かえって更新の回数が増えるかもしれません。

手技療法の寺子屋セミナーなどのセミナー情報は、その時の最新の記事に紹介するように致しますのでご確認ください。

手技療法の寺子屋は私にとってのライフワークです。
今後ともよろしくお願い致します。
コメント (2)
この記事をはてなブックマークに追加

テニスボールマッサージは悪いのか? その2

2016-04-02 15:18:25 | 治療についてのひとりごと
医療や健康についての情報は、本当かどうかはっきりしないものも少なくありません。

例えば、きちんと手順を踏んだ研究ですら、あるストレッチについて有効だったとする結果もあれば、そうでなかったとする研究もあります。



前回の最後に触れた「テニスボールでほぐすと組織が硬くなる」という話ならなおさらそう。

このような、本当かどうかわからないことについて、どのように考え対応すればよいのでしょうか。



個人的には、臨床でテニスボールを使い始めた10年前からを振り返っても、組織が硬くなったということは自分自身を含めて思い当たるところがありません。

ですから何とも言えないところではあります。

まずは何とも言えないものは、何とも言えないと認めるところからスタートするようにしましょう。



その上で考えてみると、可能性として硬くなることは起こり得ると思います。

それは「ペンだこ」みたいなものといえるでしょう。



私たちが子どものころ、鉛筆の使い方を習い始めてしばらくすると、中指にある爪の下の横側(DIP関節橈側)などが痛くなってきたということはなかったでしょうか。

字を練習しているうちに、何度も鉛筆が当たるためです。

腫れて熱を持ち、軽く炎症を起こすこともあったのではないかと思います。



多少当たると痛くても、勉強があるので使わないといけません。

やがてそこは膨らんで硬くなっていきます。



繰り返し刺激されることで、過酷な状況に耐えられるよう身体が線維を増殖させて「たこ(胼胝)」を作るわけです。

「たこ」ができることで丈夫になって刺激には強くなるものの、その裏返しとして組織が硬くなってしまい、運動性に制限が出るようになります。

ペンだこくらいなら大した影響はないでしょうが



神輿を担ぐお祭り好きの人の肩にできる「神輿だこ」も同じようなもの。


http://yybatabata.blog108.fc2.com/blog-entry-790.htmlより

「たこ」は「ペンだこ」のように軽い力が長期間かかり続けて起こる場合もあれば、「神輿だこ」のように短期間でも強い力がかかりつづけることでできる場合もあります。



場合によっては、色素が沈着して変色することもあります。

尾骨が後ろへ飛び出ている人のなかには、硬いところに腰を丸めて座ると尾骨が床に当たるので、尾骨の周囲が黒ずんでいる方もいます。

現代の生活では少ないかもしれませんが、硬い床に正座をくり返すことで足首の前側に黒ずんだ「たこ」ができている人もいました。



これらは身体の適応的な反応でもあるわけですから、同じところを繰り返し刺激が加わると、同様のことは起きる可能性があるでしょう。

テニスボールや他のツールを使ってもそれは同じ。

とはいえ、ご紹介したのは極端な例であって、テニスボールのように表面に弾力性があって柔らかいものは、鉛筆や神輿のように硬いものと比べて組織は硬くなりにくいとは思います。



もし異常を起こすとしても、先ほどお話ししましたように、硬くなる前に生体の反応として炎症を起こして過敏になる段階があります。

わずかながらも熱を持ってヒリヒリしたり、押さえるとケガをしたところを触っているような感触を持つはず。

そのような反応が出たとしたら、いったん休止して方法を変えましょう。

そうすることで、組織が固まることを未然に防ぐことが出来ると考えます。



炎症を起こしたら刺激しないというのは常識といえば常識なのですが、それをウッカリやってしまうのが人間というもの。

特に、内出血しやすいなど組織そのものが弱い方、感覚が鈍いかもと自覚されている方、何かやり始めたら根をつめて徹底的にやってしまう方というのは注意されるとよいかもしれません。




続いて、テニスボールマッサージの刺激の加え方について。

比較的浅く表面的な部位に行う場合は、軽く体重を乗せたままコロコロ動かしてもよいでしょう。

皮下の循環を直接的に促す目的もあるからです。



しかし、深い筋肉に対して刺激を加えようとする場合は、圧をかけたらそのまま持続させ、あまりゴリゴリ動かさないほうがよいと考えます。

なぜならゴリゴリ動かすと、深く刺激される感覚があるようで実は表面に散ってしまい、思ったほど深部に届かない印象を私は持つからです。



もうひとつは、強い圧を加えたままゴリゴリ動かすと、やり方によっては組織に対してすりつぶすような刺激が入る可能性があり、それがダメージを与え、結果的に硬くなってしまうリスクを高めることになるかもしれません。

全身状態の悪い方に起こる「床ずれ」は、圧迫力と、横方向にずれる剪断力の組み合わせによって生じるとされます。

もっとも床ずれは、ふつうの状態なら起きませんから神経質になる必要なんてありません。

しかし念のため、一般の方が深部に圧を届かせる場合は、20~30秒程度じっくり浸透させるように圧を持続させるとよいでしょう。



ちなみに指圧が治療効果を出しているのは、一定の持続圧によってであるという意見もあります。

持続的な圧迫によって痛みの感覚を抑えたり、反射的な作用によって周囲の血流を改善し、筋の緊張を低下させる効果もあるとされています。



また、トリガーポイント療法でも虚血性圧迫という方法があります。

それは20秒~1分間、持続的に圧迫を加えることで、組織の血流を一時的に低下させることによって血管を拡張させ、圧を緩めたときに抹消まで血液を送り込み、代謝を促すというものです(ややこしくなるので、あえてトリガーポイントの不活化には触れないようにします)。

持続圧も役立つ手段のひとつなのですね。



余談ですが、骨格筋の多くは30分から1時間程度なら血流が止まっても壊死することは通常ないとされています。

ですから手足の動脈を切って大きな出血をした時は、病院に運ばれるまで縛って血流を止めておく(長引くようなら一時的に緩めながら)という方法がとられます。

このことから一分程度、血流が止まるくらいなら問題ないことが多いと考えます。



ところで、コリなどの機能障害によって慢性的に血流不足になると、壊死に至らなくても組織の機能が低下して異常を起こすことになります。

私たちもお腹がすいたからといって、すぐ死ぬわけではないけど、頭が回らなくなったり効率的に動けなくなったりして、よい仕事ができなくなります。

それが細胞や組織レベルで起こると筋の活動や、情報の伝達や分泌など、それぞれの組織が持つ働きが鈍くなって機能を発揮できず結果的に症状をもたらしてしまう。

その状況を改善するために、コリをほぐすわけですね。



以上、まとまりのない話になりましたが、ここからが大切なところ。

今回ご紹介したお話は、テニスボールマッサージ自体の反応を調べて、根拠を示したわけではありません。

私のような個人の開業レベルで、組織に起こる変化を示すことは難しいでしょう。

ですからそれに近いこと、似ていることですでに明らかになっているもの。

あるいは今現在で、一定の同意を得られている知識と結び付け、それを基に予想するという「類推」を行いました。



明確な根拠を示すことができればそれがベスト。

けれども、根拠が示されなければ使わないということだったら患者さんは困ります。

私たちの仕事は目の前の患者さんの苦痛を、どうすれば早くやわらげることができるかを考え実践することですから。

根拠が明らかになるまで待っていられません。



根拠がハッキリしないものでも、運動機能障害に対するアプローチで経験的に有効であることがわかっているものはたくさんあります。

役に立つならとにかく使うという選択をしなければならないケースは、現場ならいくらでもあるでしょう。



だからといって、やみ雲に使うのではありません。

まずは適応と禁忌を判断すること。

運動機能障害であり適応と判断したなら、テニスボールなど用いようとする方法の効果を、他で明らかになっていることから類推して、可能な限り確からしさを高める、

同時にリスクも予想することも大切です。



そのために、肯定的な意見と否定的な意見の両方を吟味して検討しなければならないでしょう。

今回の「床ずれ」や「ぺんだこ」のような極端な例をあげて考えると、分かりやすいかもしれません。

検討したうえで危険性と効果を比較して、効果のほうが大きいと判断したなら実施する。

リスク・ベネフィットの判断ですね。



現場レベルではこのような対応が現実的かと私は考えています。

こうしてまずは仮住まいのようなものを作っていき、この条件で有効という結果がまとまって来たら、研究する能力を持った仲間達の手でエビデンスを構築していく。

このような流れがあればいいなあと思っています。



今回もひとつの考えとして参考にしていただければ幸いです。

次回は「どこに行っても治らなかった痛みが劇的に良くなった!!」という表現について。

これもまた、よくあるお話ですね。


コメント
この記事をはてなブックマークに追加