手技療法の寺子屋

手技療法の体系化を夢みる、くつぬぎ手技治療院院長のブログ

関節のあそびとモビライゼーション 〜 セラピストの主体性について

2016-05-11 09:15:21 | 治療についてのひとりごと
ブログのコメント欄にいただいたご質問。

感じるところがあったので転載し、セラピストの主体性についてなど雑感を述べました。

まだ経験は浅いけれど熱心にさまざまなアプローチを学んでいる方に、特にご覧いただきたいと思います。



《質問者さん》
こんにちは。

コメントへのご返信ありがとうございました。

くつぬぎさんにご指摘頂いたようにとりあえず、自分で調べるという癖はつけなければいけないと思い反省しております。

ご指摘して頂きありがとうございます。



関節のあそびについて、いろいろな書籍やネット検索で調べました。

様々な用語の理解や、間接法での動揺法なども自分でしっくりくるものを見つけました。

ただ一つだけ、いろいろな物で調べても分からなかったことがあります。



くつぬぎさんにも質問させて頂いた内容なのですが、全ての滑膜関節に遊びがあるというのは理解出来ました。

その遊びの方向についてなのですが前後、側方、回旋、牽引、圧縮があると書かれていましまたが、これは全ての関節にこれらの方向の遊びがあるということなのでしょうか?

ネットや書籍では全ての方向ではなく、各々の関節ごとに各々の方向の遊びの検査法があったのですが、それぞれの関節の遊びの方向は様々で、上記全てが書かれてないのも沢山ありました。



例えば中手骨間関節であれば前後、回旋のみなどです。

これは物理的に他の方向の遊びがないから書かれていないのか、それとも他の方向の遊びもあるけど検査、治療の仕方が無いから書かれていないのか
どちらなのか疑問になりました。

治療の際には、全ての方向の制限を見つけ、治療した方が効果があると思うので、もしよろしければ教えて頂けないでしょうか?

自分で中手骨間関節の遊びを作る際に側方や圧縮の方向も意識しながらやっているのですが実際には、ホントにその方向に遊びがあるのか分かりません。
仮に、意識しながらやっていたとしても前後や回旋の方向での遊びがついただけではないかとも思います。

(くつぬぎ 注)中手骨間関節や中足骨間関節、肩甲胸郭関節は、滑膜関節ではないものの働きとしてはそれに準じるので機能的関節とされています。
そのため厳密な意味での関節のあそび(関節包のゆとり)とはいえないのですが、問題の中心ではないのでひとまず脇に置いておきます。



《私の回答》
こんばんは。

関節のあそびの方向について、側方や圧縮と特定の方向が示されているのはある意味便宜的なものと私は受け止めています。

関節のあそびはあらゆる方向に存在しているというのは、イメージするなら私たちがTシャツを着ているようなもの。



ふつうは動きやすように、ある程度ゆとりのあるシャツを着ると思います。

そのゆとりはあらゆる方向に動きますね。

関節のあそびも、シャツを着た時のゆとりと同じです。



そしてシャツの一部を握れば、その部分の動きが悪くなる。

特定の方向へ関節機能障害が発生した状態です。

握った部位を適切に緩めるのが関節モビライゼーションとなります。



シャツはあらゆる部分を握ることが出来るように、関節機能障害もあらゆる方向に発生する可能性があります。

しかし、やみくもに探しても見つかりにくいし、セラピスト同士が互いに情報を共有しにくいので、教科書的に方向を定めておく必要があるのだろうと思います。



テキストで特定の方向しか紹介していないのは、ページ上の問題か、その関節に特に特徴的な制限を示しているのでしょう。




《質問者さん》

ご返信ありがとうございます。

分かりやすい説明ありがとうございます!


シャツの例えだとイメージしやすいです。

要するに、関節の機能障害はあらゆる方向に起きるので、教科書だけでの方向でなく直接法では、その関節が一番制限がある方向に狙って治療するということですね!

ありがとうございます!



・・・・・・・



今回のような疑問は、比較的学びはじめの熱心な方によくみられるものです。

(何を隠そう、私がそうでした!!

いろいろな情報に目を白黒させてしまうのですね。

これまで知らなかった世界を学ぶのだから、当然といえば当然のことかもしれません。



それにしても、狭い手技療法の世界だけを眺めても情報が多いです。

知識が細分化され、新たな分類がなされるにつれて、新たな治療法として発表され、セミナーが開催され、資格ビジネス化していく。



新たな分類が悪いわけではありません。

さまざまな視点があることで、発見もあるでしょうし、情報も共有できる。

より効率的にもなりえるので必要です。



資格ビジネスが悪いわけではありません。

有効な方法をより早く広く普及させるための手段ですし、新たな雇用を生み出して経済を動かすことは今の世の中に必要なことですから。

もっとも、眉をひそめたくなるようなことをしている団体もあるでしょうが。



問題はセラピスト個人の側にあります。

よくないのは、情報に振り回されて主体性をなくしてしまうこと。

権威のある個人やメソッドに対して無条件に受け入れて信じ込んでしまうこと。

そうかと思ったら、しばらくしてまた幸せの青い鳥を探してさまよっていくこと。

つまり、自分で吟味して判断して取り入れられるものを取り入れるのではなくて、特定のアプローチに自分を同一化させてしまうことです。



そうならないためには、自分で身体の情報を感知でき、それを批判的に検討し、目的にかなった操作をコントロールして行えるようになる必要があります。

自分の臨床の責任はあくまで私たち自身にあるのですから、セラピストひとりひとりが主体性を持つことはとても大切。



関節のあそびについて、細かくいえば各関節ごとに方向によって大きい小さいというものはあるでしょう。

ただ臨床では、あらゆる軟部組織があらゆる方向に異常を起こしえる、という前提でのぞんだほうがよいと思います。



そうすると新たな知見で出会った時、自分が感じたあの感覚はこの組織のトラブルだったのか、と体験と知識を結びつけることができます。

確かな手ごたえを感じながら、情報に対して主体的に向き合うことができ、仕事の面白みもより感じることができる。



そのために私は触診の際、あえてはじめから対象とする組織を特定せず「かたさ」や「緊張の分布」を感じ取るという方法を用いています。

そこから解剖学や運動学に照らし合わせる。



モビライゼーションの段階も、5段階や3段階に分けるのではなく、動かし始めから終わりまでの連続的な変化をよく味わい、身体で覚えるようにする。

その上で、いくつかの段階に分類する意味を考える。



感覚という方向から知識を結びつけていく。

これが万能だとは思いませんが、はじめの第一歩を学ぶときに知識の吸収と並行して、あるいはあまりにも頭でっかちになっているときには有効ではないかと思っています。



すべては主体性を持ったセラピストになるという目的のため。

これが私が最も重視していることです。






≪セミナーのご案内(札幌・福岡・東京)≫
下記日程にてセミナー講師を務めさせていただきます。
ご依頼いただきました主催者のみなさま、ありがとうございます。
興味をお持ちの方どうぞご参加下さい。


☆ 札幌セミナー
セミナー1「身につけておきたい手技療法の基本3〜異常を見つけ出す触診技術〜(追加開催)」
日時 2016年05月21日(土) 18:30〜21:00  

セミナー2「胸郭・胸椎への徒手的アプローチ(追加開催)」
日時 2016年05月22日(日) 13:30〜18:30

手技療法の寺子屋セミナー



☆ 福岡セミナー
「肩関節:軟部組織と関節へのアプローチ」
日時 2016年06月19日(日) 10:00〜18:00 
主催:relifeグループさん

relifeグループセミナー



☆ 東京セミナー
「頚上肢疾患のASTR 手技療法セミナー」
日時 2016年09月04日(日) 13:00〜17:00 
主催:OCSセミナーさん

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☆ブログの目次(PDF)を作りました 2014.01.03☆)
手技療法の寺子屋ブログを始めてから今月でまる6年になり、おかげさまで記事も300を越えました。
これだけの量になると、全体をみたり記事を探すのも手間がかかるかもしれません。
そこで、少しでもタイトルを調べやすくできるように、このお休みを使って目次を作ってみました。
手技療法を学ばれている方、興味を持たれている方にご活用いただき、お役に立てれば幸いです。

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避難生活などでの腰背部痛をやわらげるために〜タオル玉を使った背面ほぐし

2016-04-27 06:35:00 | 治療についてのひとりごと
避難生活が長引いて、背中や腰を痛みを訴える方が増えているとニュースで報道されていました。

筋肉などのコリによって背中の痛みが出ている場合、テニスボールの上に体重をのせる方法が用いやすいですが、入手が難しいときはタオルを玉状に縛ることで代用できます。

タオル玉を作るには力も必要なので、難しい方は男性など力のある方にお願いするとよいでしょう。



《タオル玉の作り方》
1.タオルを横長に四つ折りします。


2.グルグルとしっかりねじります。


3.輪を作り、タオルの片端を2回通します。

4.強く縛って、形を丸く整えます。


5.大きめにつくる場合は、さらに両端をねじって互いに強く縛り、丸く整えるとよいでしょう。




《やり方》
1.あお向けになり、両膝を立てます。

2.気になる背中や腰、お尻の片側にタオル玉を入れ、そちらの側に膝を倒して体重をのせます。


3.刺激はイタ気持ちよいていど。時間は1〜3分、あるていどスッキリすればよいでしょう。

4.上下に位置を変えたり、反対側も同じように行います。



♪ご高齢の方や虚弱な方は、小さめに作りやさしく体重をのせ、比較的健康な方は大きめに作ってしっかり体重をのせるとよいでしょう。

♪タオル玉がつぶれたら、向きを変えて当てたり、かたちを整え直して使用してください。

♪膝が曲がりにくい方は、可能なていど、もしくは伸ばしたままでも結構です。

♪車中泊の方は、シートをリクライニングしてお使いください。



*以前監修した健康雑誌の記事も、合わせてご参照ください。





≪ご注意≫
・痛みが非常に強い。

・コリをほぐしても、症状が少しも変わらない。

・どのような姿勢をとっても痛みが気になり楽にならない。

以上のような場合は、必ず医師の診察を受けるようになさって下さい。

特に避難生活に伴うストレスによる、心疾患由来の背部痛には注意したいところです。



熊本などで避難生活されている方に届きますように。

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エコノミークラス症候群を予防するために 〜 ふくらはぎのほぐし方

2016-04-23 20:59:10 | 治療についてのひとりごと
エコノミークラス症候群を防ぐために、足首の曲げ伸ばしがすすめられています。

けれども、ふくらはぎの筋肉がコッて硬くなると、せっかく動かしても効率がよく循環を促せない可能性があります。

また、手でコリをほぐそうにも、深いところまでは届きにくいもの。



そこで、シンプルで楽にコリをほぐす、4つの方法をご紹介します。

いずれも適度な刺激は、イタ気持ちよいていど。

時間は1〜3分、あるていどスッキリすればよいでしょう。

コリをほぐした上で足首を動かせば、より効果的に予防できるはずです。



◆ イスに座って (刺激の強さ 軽〜中)

1.イスに座り、ふくらはぎを反対の膝のお皿の上にのせる。

2. 両手を組んで、スネのまん中あたりに当てる。

3.ふくらはぎをお皿に押しつけ、上下左右に動かす。あるいは足首を曲げ伸ばししてコリをほぐす。






◆ 四つばいで (刺激 中〜強)

1. 四つばいになり、ふくらはぎの上に反対の膝のお皿をのせる。

2.のせたお皿に、少しずつ体重をかけて押さえる。

3.必要なら、そのまま上下左右に動かしてコリをほぐす。



♪ 比較的健康な方向けです。



◆ あお向けで 1 (刺激 軽)

1.あお向けになって片膝を立て、お皿の上にふくらはぎをのせる。

2.ふくらはぎをお皿に押しつけ、上下左右に動かしてコリをほぐす。



♪ ご年配の方でもやりやすいです。



◆ あお向けで 2 (刺激 軽〜中)

1.未開封のペットボトル(丸くてハードなもの)や水筒など、円筒状のものを準備する。

2.あお向けになり、ふくらはぎをペットボトルの上にのせる。

3.さらに刺激が必要なら、反対の脚を交差させてのせる。

4.そのままふくらはぎを上下左右にゆらす。

5.あるいは足首を曲げ伸ばししてコリをほぐす。



♪ 本などで高さをつければ、よりやりやすく、また循環の助けにもなります。

♪ 膝が曲がらない方はこの方法で。



■ ふくらはぎをほぐせば、身体の疲れが和らぐだけでなく、気持ちもリラックスしやすくなります。

このたびの震災で被災された方々の、お役に立つことができれば幸いです。
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テニスボールマッサージは悪いのか? その3《不定期更新のお知らせ》

2016-04-16 14:15:50 | 治療についてのひとりごと
「テニスボールマッサージで、手術が必要なほどだった椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症が劇的に改善

テニスボールに限らず他のツール、手技療法も含めて、劇的な効果をうたった表現はよく見かけるのではないでしょうか。

それには「医者が見放した」とか、「どこに行っても治らなかった」とか、読み手の感情を刺激するような言葉が用いられがち。



しかしこの場合、椎間板ヘルニアや狭窄症そのものが治っているわけではありません。

テニスボールでほぐせば、あるいは手技療法を用いれば、飛び出したヘルニアがあれよあれよと元に戻ったり、狭くなった脊柱管が広がるわけではないのですから。



では何をやっているのかというと、私たち日本人に馴染みのある言葉で表せば「コリをほぐしている」だけです。

トリガーポイントをリリース、あるいは筋膜をリリースしていると言ってもよいでしょう。

可動域を拡大して運動機能を改善したとか、アライメントを修正したでも構いません。

生理的なリズムを回復させるとか、循環を回復させるとか、自然治癒力を高めるとか、結果が強調された表現が使われることもあります。



それぞれの専門からすれば「まったく違う‼」といえるような差はあるでしょう。

けれどもどのような理論的背景があるにせよ、手技療法なりテニスボールマッサージなどでやっていることは、程度の違いこそあれ、動きの悪くなった軟部組織を見つけ出して刺激を加え、より動くようにしているという点で共通しています。

この「共通する」という視点から眺めると、ある評価に基づいて名付けられた対象、この場合ならコリが適切にほぐされた。

はじめはそのような認識でよいのではないか、と私は思っています。



いろいろな考えがありすぎて混乱するという方は、まずはそのように整理されておくとよいのかもしれません。

まずは多少荒削りでも、大まかに全体像をイメージできるようにする。

その上で、いろいろ学んで自分に合ったコンセプトやメソッドを取り入れていけばよいのではないでしょうか。



話を戻して、テニスボールマッサージなどが効いたというのは、仮に椎間板ヘルニアと診断がついていたとしても、患者さんの症状は筋肉などの軟部組織の機能的な異常、一般的な表現ではコリによって起こっていたのだということ。

そのため、筋筋膜のコリをほぐしただけで劇的によくなるケースもあるわけです。



この場合、患者さん自身もヘルニアや狭窄症によって症状が出ていると思いこまれていることが多いので、改善したときのインパクトは強烈です。

セラピストが手技療法を用いて良くなったなら「ゴッドハンド」と感謝されるかもしれません。

治った患者さんは大喜びされてよいのですが、セラピストが勘違いして舞い上がってはいけないでしょう。

患者さんにもよく説明しておかなければいけませんし、何より自分自身が冷静でならないといけません。



冒頭に挙げたようなオーバーな表現がまかり通るのは、裏を返せば体性機能障害によって引き起こされるさまざまな症状が、現代医療の中で未だに認識が不十分であるというのも理由のひとつでしょう。

筋肉や関節の不調があった時、画像や血液検査などでも異常がないなら、細かい運動機能の評価をする。

そんな流れが業界の常識となっているなら、このようなオーバーなことにはならないはず。

ですから筋骨格系の機能異常によって、痛みをはじめ不定愁訴とされているものなど様々な症状がもたらされることを、医療の世界に周知させていくことも私たちセラピストの役目になると思います。



コリをほぐしているだけとお話ししましたが、それだけのことが見落とされたことによって、長年つらい思いをしなければならかったとしたら悲劇でしょう

また、適切にコリをほぐすというのは状態によって簡単ではないこともあります。

だからこそ専門職が必要となり、セラピストは確実にそれを行える知識と技術を身につけておく必要があるわけですね。



それから、機能的障害と器質的障害の間にはグレーゾーンが大きく、どれほど評価してもどちらのほうが影響が大きいか、はじめの段階ではっきり見当がつけられずに悩まされることもあります。

下肢のしびれがひどくて手術適応かと思われたケースが、手技療法とテニスボールマッサージで回復したケースもある。

反対に、手技療法でいけるかと思われたもののなかなか改善せず、最終的に手術で回復したケースも経験しています。

慢性化すればするほど難しい。

ですからそのような場合、緊急性がないことだけ確認すれば、手技療法やセルフケアとしてのテニスボールマッサージを用いながら3回程度様子を見た上で、もう一度検討するように私はしています。

≪「適応と禁忌の鑑別について その9」もご参照ください≫

例によって、とりとめのない話しになってしまいました。



さて、今回のシリーズはテニスボールマッサージを主に取り上げながら、極端な表現やはっきりしない情報に対してどのように考えるのか、ひとつの例として私の意見をお話させていただきました。

たまたまテニスボールでしたが、これを何に置き換えても同じでしょう。



どのようなセルフケアであれ、最終的にはやってみないとわかりません。

みんな個人差があり、その人にとってどうであるかが大切なのですから。



ですから、まずは私たちが自分で試して確認してみましょう。

結果がどうであれ、自分の体験を通して得た知識というは貴重です。



ここで注意したいのは、自分あるいは身近な人々から得られた結果がすべてだとは思わないこと。

それから自分がプラスの結果を経験しているのに、マイナスの声が大きくなると自分の経験を封印してしまうこと。

反対に、自分や周囲にとってマイナスであったのに、プラスの勢いに飲まれてしまうことです。



ひとつひとつの経験が価値あるはず。

それぞれの経験をシェアして意見を交換することで、状況によって使い分けのできる、より多くの方に役立つものが生まれるはずです。

何が本当かはっきりしないこともありますが、少なくとも互いの考えを尊重しながら自由に発言できる雰囲気を、この業界の中で保っておけるようにしたいですね。





《不定期更新のおしらせ》
いつも手技療法の寺子屋ブログをご覧いただきありがとうございます。
ブログを始めて以来これまで定期的な更新を続けて来ましたが、今後は不定期更新とさせていただきます。

私事ですが、この春から大学院に入り新たに勉強をし直すことになりました。
専攻は教育学、研究テーマは「手技療法の基本技術の習得について」です。
このブログでテーマにしてきたことを、学問的な形でまとめたいと思っています。
その前にまずはしっかり教育学を仕込むつもりです。

これまでブログの記事は時間をかけて作り込んできましたが、これからはFacebookにアップしているような、その場で思い立った手技療法の記事を、ブログに掲載していきます。
気軽な形で続けていこうと思っているので、かえって更新の回数が増えるかもしれません。

手技療法の寺子屋セミナーなどのセミナー情報は、その時の最新の記事に紹介するように致しますのでご確認ください。

手技療法の寺子屋は私にとってのライフワークです。
今後ともよろしくお願い致します。
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テニスボールマッサージは悪いのか? その2

2016-04-02 15:18:25 | 治療についてのひとりごと
医療や健康についての情報は、本当かどうかはっきりしないものも少なくありません。

例えば、きちんと手順を踏んだ研究ですら、あるストレッチについて有効だったとする結果もあれば、そうでなかったとする研究もあります。



前回の最後に触れた「テニスボールでほぐすと組織が硬くなる」という話ならなおさらそう。

このような、本当かどうかわからないことについて、どのように考え対応すればよいのでしょうか。



個人的には、臨床でテニスボールを使い始めた10年前からを振り返っても、組織が硬くなったということは自分自身を含めて思い当たるところがありません。

ですから何とも言えないところではあります。

まずは何とも言えないものは、何とも言えないと認めるところからスタートするようにしましょう。



その上で考えてみると、可能性として硬くなることは起こり得ると思います。

それは「ペンだこ」みたいなものといえるでしょう。



私たちが子どものころ、鉛筆の使い方を習い始めてしばらくすると、中指にある爪の下の横側(DIP関節橈側)などが痛くなってきたということはなかったでしょうか。

字を練習しているうちに、何度も鉛筆が当たるためです。

腫れて熱を持ち、軽く炎症を起こすこともあったのではないかと思います。



多少当たると痛くても、勉強があるので使わないといけません。

やがてそこは膨らんで硬くなっていきます。



繰り返し刺激されることで、過酷な状況に耐えられるよう身体が線維を増殖させて「たこ(胼胝)」を作るわけです。

「たこ」ができることで丈夫になって刺激には強くなるものの、その裏返しとして組織が硬くなってしまい、運動性に制限が出るようになります。

ペンだこくらいなら大した影響はないでしょうが



神輿を担ぐお祭り好きの人の肩にできる「神輿だこ」も同じようなもの。


http://yybatabata.blog108.fc2.com/blog-entry-790.htmlより

「たこ」は「ペンだこ」のように軽い力が長期間かかり続けて起こる場合もあれば、「神輿だこ」のように短期間でも強い力がかかりつづけることでできる場合もあります。



場合によっては、色素が沈着して変色することもあります。

尾骨が後ろへ飛び出ている人のなかには、硬いところに腰を丸めて座ると尾骨が床に当たるので、尾骨の周囲が黒ずんでいる方もいます。

現代の生活では少ないかもしれませんが、硬い床に正座をくり返すことで足首の前側に黒ずんだ「たこ」ができている人もいました。



これらは身体の適応的な反応でもあるわけですから、同じところを繰り返し刺激が加わると、同様のことは起きる可能性があるでしょう。

テニスボールや他のツールを使ってもそれは同じ。

とはいえ、ご紹介したのは極端な例であって、テニスボールのように表面に弾力性があって柔らかいものは、鉛筆や神輿のように硬いものと比べて組織は硬くなりにくいとは思います。



もし異常を起こすとしても、先ほどお話ししましたように、硬くなる前に生体の反応として炎症を起こして過敏になる段階があります。

わずかながらも熱を持ってヒリヒリしたり、押さえるとケガをしたところを触っているような感触を持つはず。

そのような反応が出たとしたら、いったん休止して方法を変えましょう。

そうすることで、組織が固まることを未然に防ぐことが出来ると考えます。



炎症を起こしたら刺激しないというのは常識といえば常識なのですが、それをウッカリやってしまうのが人間というもの。

特に、内出血しやすいなど組織そのものが弱い方、感覚が鈍いかもと自覚されている方、何かやり始めたら根をつめて徹底的にやってしまう方というのは注意されるとよいかもしれません。




続いて、テニスボールマッサージの刺激の加え方について。

比較的浅く表面的な部位に行う場合は、軽く体重を乗せたままコロコロ動かしてもよいでしょう。

皮下の循環を直接的に促す目的もあるからです。



しかし、深い筋肉に対して刺激を加えようとする場合は、圧をかけたらそのまま持続させ、あまりゴリゴリ動かさないほうがよいと考えます。

なぜならゴリゴリ動かすと、深く刺激される感覚があるようで実は表面に散ってしまい、思ったほど深部に届かない印象を私は持つからです。



もうひとつは、強い圧を加えたままゴリゴリ動かすと、やり方によっては組織に対してすりつぶすような刺激が入る可能性があり、それがダメージを与え、結果的に硬くなってしまうリスクを高めることになるかもしれません。

全身状態の悪い方に起こる「床ずれ」は、圧迫力と、横方向にずれる剪断力の組み合わせによって生じるとされます。

もっとも床ずれは、ふつうの状態なら起きませんから神経質になる必要なんてありません。

しかし念のため、一般の方が深部に圧を届かせる場合は、20〜30秒程度じっくり浸透させるように圧を持続させるとよいでしょう。



ちなみに指圧が治療効果を出しているのは、一定の持続圧によってであるという意見もあります。

持続的な圧迫によって痛みの感覚を抑えたり、反射的な作用によって周囲の血流を改善し、筋の緊張を低下させる効果もあるとされています。



また、トリガーポイント療法でも虚血性圧迫という方法があります。

それは20秒〜1分間、持続的に圧迫を加えることで、組織の血流を一時的に低下させることによって血管を拡張させ、圧を緩めたときに抹消まで血液を送り込み、代謝を促すというものです(ややこしくなるので、あえてトリガーポイントの不活化には触れないようにします)。

持続圧も役立つ手段のひとつなのですね。



余談ですが、骨格筋の多くは30分から1時間程度なら血流が止まっても壊死することは通常ないとされています。

ですから手足の動脈を切って大きな出血をした時は、病院に運ばれるまで縛って血流を止めておく(長引くようなら一時的に緩めながら)という方法がとられます。

このことから一分程度、血流が止まるくらいなら問題ないことが多いと考えます。



ところで、コリなどの機能障害によって慢性的に血流不足になると、壊死に至らなくても組織の機能が低下して異常を起こすことになります。

私たちもお腹がすいたからといって、すぐ死ぬわけではないけど、頭が回らなくなったり効率的に動けなくなったりして、よい仕事ができなくなります。

それが細胞や組織レベルで起こると筋の活動や、情報の伝達や分泌など、それぞれの組織が持つ働きが鈍くなって機能を発揮できず結果的に症状をもたらしてしまう。

その状況を改善するために、コリをほぐすわけですね。



以上、まとまりのない話になりましたが、ここからが大切なところ。

今回ご紹介したお話は、テニスボールマッサージ自体の反応を調べて、根拠を示したわけではありません。

私のような個人の開業レベルで、組織に起こる変化を示すことは難しいでしょう。

ですからそれに近いこと、似ていることですでに明らかになっているもの。

あるいは今現在で、一定の同意を得られている知識と結び付け、それを基に予想するという「類推」を行いました。



明確な根拠を示すことができればそれがベスト。

けれども、根拠が示されなければ使わないということだったら患者さんは困ります。

私たちの仕事は目の前の患者さんの苦痛を、どうすれば早くやわらげることができるかを考え実践することですから。

根拠が明らかになるまで待っていられません。



根拠がハッキリしないものでも、運動機能障害に対するアプローチで経験的に有効であることがわかっているものはたくさんあります。

役に立つならとにかく使うという選択をしなければならないケースは、現場ならいくらでもあるでしょう。



だからといって、やみ雲に使うのではありません。

まずは適応と禁忌を判断すること。

運動機能障害であり適応と判断したなら、テニスボールなど用いようとする方法の効果を、他で明らかになっていることから類推して、可能な限り確からしさを高める、

同時にリスクも予想することも大切です。



そのために、肯定的な意見と否定的な意見の両方を吟味して検討しなければならないでしょう。

今回の「床ずれ」や「ぺんだこ」のような極端な例をあげて考えると、分かりやすいかもしれません。

検討したうえで危険性と効果を比較して、効果のほうが大きいと判断したなら実施する。

リスク・ベネフィットの判断ですね。



現場レベルではこのような対応が現実的かと私は考えています。

こうしてまずは仮住まいのようなものを作っていき、この条件で有効という結果がまとまって来たら、研究する能力を持った仲間達の手でエビデンスを構築していく。

このような流れがあればいいなあと思っています。



今回もひとつの考えとして参考にしていただければ幸いです。

次回は「どこに行っても治らなかった痛みが劇的に良くなった!!」という表現について。

これもまた、よくあるお話ですね。






☆ブログの目次(PDF)を更新しました。 2016.02.20☆)
寺子屋ブログを開設して8年が過ぎました。
この機会に目次を追加更新し、記事を整理しました。

・手技療法に共通する基本とは何か?
・技術という感覚的なものを、いかに身近な言葉で表現するか?
・治療の考え方を、日常の常識的判断になぞらえてどう示すか?
そのようなことを問いながら続けてきました。

「はじめに」でも述べているのですが、セラピストとして目指すスタイルは人それぞれぞれ。
ただ、今いる場所から歩みを進めようとした時、このブログが足元を照らす「灯」になれることを願っています。

手技療法の寺子屋ブログ「目次」




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私が大切にしていることを、出来る限りお伝えさせていただきました。
どうぞよろしくお願い致します。
医療情報研究所






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テニスボールマッサージは悪いのか? その1

2016-03-19 14:09:57 | 治療についてのひとりごと
「テニスボールを使ったセルフケアは良くないのでしょうか?

かえって悪くなったり、身体を硬くするという話を聞いたのですが

先日、若いセラピストの方から尋ねられました。



最近ではテニスボールをはじめ、商品化されたボールや筒状のツールを使い、セルフケアとしてマッサージをする方法が、一般でもよく用いられるようになってきました。



それらは古典的には「コリをほぐす」、ちょっと前では「トリガーポイントをリリースする」、最近のトレンドでは「筋膜をリリースする」と表現されていますが、理論的な背景は異なっていても実際にやっていることは似ています。



私も10年ほど前から、臨床でもテニスボールマッサージを好んで紹介するようになりました。

結果はおおむね良好で、なかには劇的な改善をみせたこともあり、私自身のセルフケアとしても気に入ってよく使っています。



身体の背面の手が届きにくいところでも、自分の体重を使ってコントロールをしながら簡単に刺激することができる。

トゲのある言い方かもしれませんが、下手なマッサージを受けるよりよっぽどいいと思っています。



たくさんのセラピストによってその方法が紹介されるなか、私もご縁があって健康雑誌でお伝えする機会を何度かいただきました。

「困っている方々に役立てていただければ」というのはもちろんのこと。

それに加えて一般のレベルを上げることで、業界の底上げを図ろうとするのも狙いのひとつでした。

一般の方がきめ細かいケアができるようになれば、セラピストはさらにその上をいかなければ行かなくなります。

テニスボールに負けてなんていられないわけですね。



何はともあれテニスボールは、安く手軽に入手できて使い勝手もよく、自分で調整しながらできる。

万能ではもちろんないけれど、経験上とても役立つアイテムです。



ただ、「よくない」という話も、最近チラホラ耳にするようになりました。

私も記憶に残る失敗が、これまでで2例あります。

ひとつは、患者さんが腰の下に入れたまま眠ってしまい、4時間ほどして目が覚めたら腰痛を起こしていたということ。

幸い数時間で痛みはなくなりました。



もうひとつは、腕の下に入れたまま寝てしまい、目が覚めたら腕の神経がマヒしていて手首がダラリと垂れ下がっていたという患者さんです(橈骨神経麻痺)。

このケースは回復に2〜3週間かかったのですが、患者さんが看護師さんだったこともあって理解があり、不安にならずに過ごしていただけたのがせめてもの救いでした。



以上のケースから言えるのは、テニスボールを入れたまま寝てはいけないということ。

寝返りを打っているうちに外れてしまうことも多いのですが、先ほどのケースのようなことも起こり得るので避けたほうがよいでしょう。

寝るまでいかなくても、1カ所につき2〜3分も刺激すれば、日々のケアとしては十分です。



何ごともやりすぎはよくありません。

食べすぎ、飲みすぎ、使い過ぎはよくないということと同じ。

常識的なことですね。



他には、炎症を起こしている部位、過敏になって触れると飛び上がるような部位、テニスボールを使うことに不安を覚えるときは控えるべきです。

また、首や腰が反りすぎている場合(過前弯)、首や腰がさらに反るような当て方はしないように注意も必要でしょう。



あらゆる治療法や健康法、トレーニングには長所と短所、身体の状態に対する適応と禁忌があります。

それらを見極め、使い分けることが大切なのですね。

テニスボールマッサージもそれは同じこと。



冒頭の質問に戻りますが、もしテニスボールマッサージが誰にとっても良くないことなら、果たしてこれほど普及するでしょうか?



仮に「テニスボールでマッサージをすれば身体が硬くなる」 という表現が、みんなに当てはまるようなニュアンスで使われているとしたら。

それは 「定年退職をしたらボケる」 ということと同じくらい、いささか乱暴な話ではないかという印象を持ってしまいます。

反対に「コレさえあればすべてOK!」という通販のCMのようなことを言われても、うさんくささを感じます。

残念ながらこの業界には、良きにつれ悪きにつれ、極端な表現が用いられることが時々ありますが、本当のところはその間にあるはず。



妥当な話の中に飛躍した話がまぜこぜになることで、もっともらしく聞こえるようになるもの。

さらに感情に訴えかけ、共感を誘う表現に飲み込まれると、コロッといってしまうかも。

冷静に批判的にみて、よく考えなければいけません。



今回のシリーズは、私にも馴染みのあるテニスボールマッサージを取り上げながら、それに対する個人的な経験と考えをお話しすることで、みなさんにとって考え方の参考になればと思います。



まずは「やりすぎると硬くなる」ということについて。

次回に続きます。





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この機会に目次を追加更新し、記事を整理しました。

・手技療法に共通する基本とは何か?
・技術という感覚的なものを、いかに身近な言葉で表現するか?
・治療の考え方を、日常の常識的判断になぞらえてどう示すか?
そのようなことを問いながら続けてきました。

「はじめに」でも述べているのですが、セラピストとして目指すスタイルは人それぞれぞれ。
ただ、今いる場所から歩みを進めようとした時、このブログが足元を照らす「灯」になれることを願っています。

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慰安的マッサージは悪いのか? その2 《目次が新しくなりました》

2016-03-05 15:23:59 | 治療についてのひとりごと
一部のセラピストから何かとやり玉に挙げられる慰安的マッサージ。

では、慰安的マッサージの何が問題とされているのでしょうか。



よくよく話を伺うと、実は慰安的そのものではなく、決められた手順に従って、ただ漫然とマッサージをしていることにダメ出ししているようです。

フムフム、それなら納得できるかな。



慰め安らぎを与える「慰安的マッサージ」が悪いのではない。

「機械的・流れ作業的マッサージ」がよくないということですね。



女優の故・森光子さんが、ある日の舞台を終えた後、途中のセリフが言えていたか思い出せなかったことがありました。

仲間の俳優にそれをたずねて「きちんと演技していたよ」と言われた時、ゾーッとしたそうです。



何を考えなくても、機械的に演技は出来ている。

でもそこには、心が込められていない。

心の伴わない演技は演技ではないと反省し、以後、気持ちを改めて舞台に立たれたと述懐されています。



手技療法の場合なら、心が伴わないというのは相手を見ないで行うということです。

相手の状態を見ず、ただ機械的に刺激するだけでは効果としてもそれなりでしょうし、場合によってはかえってダメージを与えてしまう可能性もあるでしょう。



また評価をせず、小手先に頼るようになれば技術は堕落します。

ちょうど伝統的に評価と治療の体系であった古法按摩が、江戸時代に小手先だけの「曲手」が普及したことで衰退したように。

≪こちらの記事もご参照ください。知っておきたい!東洋の手技療法の歴史 その3



もちろん機械的なマッサージも、初学者の方がある程度の形や流れを覚えるまでは必要な道です。

技術をスムーズに覚えるには、手順が決まっていたほうがわかりやすいでしょう。



また現実問題として、現場で均一なサービスを提供できることを求められているなら、手順を覚えてその通り行っていく必要があります。

リラクゼーションを目的としてチェーン展開しているお店はなどは、この手法を取らざるを得ないでしょう。



そのようなリラクゼーションのイメージと、機械的なマッサージが混同されて入れ替わり、一部のセラピストから慰安的マッサージは良くないという指摘されるようになったのかもしれません。

もしそうだとしたら慰安的マッサージは、とんだ濡れ衣を着せられていることになりますね。



機械的なマッサージは整骨院や病院でも、とにかく数をこなさないといけない(良くない表現ですが)ときに用いられることがあります。

忙しくて忙しくて、どんどん済ませていかないと現場が回らなくなる。



でもそのような現場であっても、プロのセラピストとして自立してやっていくつもりなら、かたちを覚えたら状態や個体差をみながら進めていけるようにステップアップしなければいけません。

機械的に流されず、またパターンを無理やり当てはめるのでなく、相手に合わせて部位や方法を変えていけるようになることが求められます。



だから、まずは勤めている施設や、学んでいるメソッドで決められている手順をきちんと覚える。

手順を覚えたらその流れの中で、わかる範囲でかまわないので、異常を見つけるように意識しながら行う。

相手をみることの第一歩です。



やがて、その手順に収まりきれない異常が気になり出したら、枠を広げて他の方法を学んだり、自分で工夫を重ねていく。

いわゆる「守・破・離」ですね。

このように進めれば、身の丈に応じながらステップアップできるでしょう。



「慰安的なマッサージは良くない!!」と見聞きしたら。

それはプロとしてやっていく上で、ある段階まで来たら「機械的・流れ作業的なマッサージ」をやっていてはいけないよ。

そのような意味に受け止めるとよいと思います。

できれば表現を改められたらいいですね。






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慰安的マッサージは悪いのか? その1《目次が新しくなりました》

2016-02-20 17:00:00 | 治療についてのひとりごと
手技療法に携わっていると、慰安的マッサージについて否定的な話を見聞きすることがあります。

「慰安的なマッサージは依存的になる
「その時はよくても、すぐにもどる」
「やっても意味がない
などなど。

場合によっては、治療よりも技術的に低く見た表現が用いられることもあります。

「あんなものは誰にでもできる」
「プロとしてやることではない」
という感じでしょうか。



私もかつてそうでした。

「慰安」どころか「マッサージ」という言葉も避けるところがありました。

「私のやっていることは、マッサージではなくて治療です」という感じで。

よりグレードの高いことをやっているとアピールしたかったのですね。

≪こちらの記事もご参照ください。「時間が短いから、ただもんでいるだけ」とボヤく前に その1



自分のことはマッサージ師ではなく「治療家です」とも言っていました。

今振り返れば、恥ずかしいことをしていたと思います。

あん摩マッサージ指圧師の資格を持って仕事をしているのに、笑ってしまいますね。

好意的に見るなら、成長しようとして必死だった証なのかもしれませんが、反抗期の中学生みたいなもの。



「マッサージ師」や「治療家」という名称の使い分けは、営業的に特徴を持たせるための手段として必要にはなるでしょう。

でも、ここで問題にしているのは心の内面です。

自信のなさの裏返しが、変に肩肘張らせていたように思います。

そんな状態ですから自分のやりたいこと、「こうあるべき!」という気持ちが先に出て、患者さんにきちんと寄り添うことができていなかったかもしれません。



慰安的なマッサージは、言葉から読み取ればそんな簡単なものではないことがわかります。

慰安は「慰める」「安らぐ」と書きます。

どうすれば慰められ、安らぐのかは人によって異なるもの。



たとえば、緊張して食いしばり、頭の筋肉が硬くなっているのか。

悲しみのあまり、胸が締め付けられているのか。

思い煩って、みぞおちがつかえているのか。

それらの状態に対して、技術的にもひとりひとり個別のアプローチが必要になります。



大きく振り分けるなら、眠りを誘うようにリラックスさせるのか。

あるいは、しっかりした刺激を加えて発散させたほうがよいのか、という分け方もできるでしょう。

東洋医学でいうなら虚実補瀉ですね。

このようにしてみると、慰安という意味からやるべきことを考えたとき、私たちが治療として行っているものに近くなるのではないでしょうか。



「いやいや、治療は治療、慰安は慰安でしょ」という考えの方もいらっしゃるかもしれません。

でも、どれほど私たちが治療という言葉にこだわろうと、慰安的な方法を必要としている方々はいます。



学級崩壊のクラスに悩まされている学校の先生。

大きなプロジェクトに必要以上のプレッシャーを感じているサラリーマン。

育児疲れで消耗したお母さん。

相続のトラブルで体調を崩した方。

ガンで末期の方など。



それらの問題を背景として症状が出ている方たちにも、手技療法を使ったら原因からきれいに解決した。

なんてことは、あまりないのではないでしょうか。



筋骨格系や頭蓋、内臓などへ徒手的にアプローチして華々しい結果を出したケースは聞いたことはあります。

でも少なくとも私には、そうそう起こせるものではありません。



確かに、手技療法を用いたこときっかけとなって、気持ちが切り替わり、具体的な対処法が見つかって状況が好転したこともありました。

また、身体的な異常によって症状が引き起こされている割合が強い場合は、持続的な改善をみることもあるでしょう。

けれども、すべての人に当てはまるわけではありません。

ひとつのエピソードを広く一般化できるかのような、華やかな表現は慎重であるべきだと思います。



対人関係など心理社会的な問題を抱えている人たちは、一時的な改善をみたとしても状況によってすぐに悪化することもあります。

だから良い結果を出しても油断せず、常に観察し続けなければなりません。

そのためには、慰め安らぎを与える行為を継続することで悪化を防ぐという発想が求められる場合もある。

だから慰安的なアプローチも必要だと思います。



では、慰安的マッサージを否定的にみている方たちは何を問題としているのでしょうか。

よくよく話を聞くと「慰安」と言いながらも、「慰安」とは違うところにダメ出しされているように感じます。


次回に続きます。




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感覚を磨くということは

2016-02-06 17:00:00 | 治療についてのひとりごと
スポーツや芸術、調理、多くの仕事ではその内容に応じた感覚を磨いていくことが求められます。

手技療法もそれは同じ。



感覚を磨くことによってわずかな変化に気づき、よりきめ細やかで質の高い働きをすることができます。

そしてそれだけに止まりません。



私の経験ですが、わずかな変化に気づくようになると、日常で退屈するということが少なくなります。

身の回りで常に起こっている変化に気づけば、それを面白く感じ、興味を持って観察できるようになるからです。



やがて、毎日の同じような出来事が決して同じではないとわかるようになると、当たり前という感覚がなくなっていきます。

頭で理解するのではなく感覚的にです。



当たり前という感覚はマンネリ化を生み出し、ただボンヤリ過ごしたり、つまらないという感覚を持ちやすくなります。

それがなくなる。



すると何だか落ち着いた気分になり、大げさかもしれませんが満ち足りた気分になります。

これは幸せな感覚です。



ですから『感覚を磨くということは、幸せを感じる心を磨くということ』にも通じる。



昔からいう「足るを知る」や「小欲知足」というのは、ムリに節制をして自分を抑え込むことで禁欲的になるのではなく、感覚が磨かれることから生まれてくる心の豊かさではないか。

そのように思います。



ポイントは、磨いた感覚を自分の専門の範囲に止めないで、日常の世界まで広げるようにするということ。



専門の範囲に止めておいても感覚は磨かれ、どんどん繊細にはなっていくでしょう。

けれども一歩誤れば変にこだわりが強くなり、気持ちがとらわれやすくなるかもしれません。

ひと頃の私がそうでした。



あまりにとらわれが強くなると、穏やかな気持ちで過ごしにくくなります。

それは決して幸せな感覚とはいえませんでした。



そのくせ自分は何かを極めるべく道を進んでいるつもりになっていて、変に気位が高くなります。

外見上はそう見えなかったとしても、鼻持ちならない自分がそこにいたように思います。



こうなると自分の世界からしか物事を見なくなり、始末に負えません。

まさに「井の中の蛙 大海を知らず」でした。



道を進むほど、心が寛容になっていく人と偏屈になっていく人の違いは、もともとの性格もさることながら、磨いた感覚をどの範囲まで広げているかという違いでもあるのかもしれません。



私たち自身が穏やかで幸せな気持ちで過ごせるようになるには、感覚を磨くこと。

そして磨いた感覚を生活に広げていくこと。

この2つの実践が大切なのではないか。

そのように思っています。





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☆ブログの目次(PDF)を作りました 2014.01.03☆)
手技療法の寺子屋ブログを始めてから今月でまる6年になり、おかげさまで記事も300を越えました。
これだけの量になると、全体をみたり記事を探すのも手間がかかるかもしれません。
そこで、少しでもタイトルを調べやすくできるように、このお休みを使って目次を作ってみました。
手技療法を学ばれている方、興味を持たれている方にご活用いただき、お役に立てれば幸いです。

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ひとりできる!クラニアル・リズミック・インパルス(CRI)触診練習法 その7

2016-01-23 17:00:00 | 学生さん・研修中の方のために
前回は、CRIに同調したらその動きを誇張するアプローチを練習しました。

今回は持続的に伸張するテクニックを、前頭骨と頭頂骨で紹介します。

いずれも骨を持ち上げるように操作するので、前頭骨リフト・頭頂骨リフトと呼ばれています。



まずは前頭骨リフトから。

仰臥位で、両四指で前頭骨外側をおおうように軽く触れます。


リフトアップするからといって急に持ち上げようとせず、しばらく手を頭に馴染ませるようにしてCRIに同調させます。



手が前頭骨にフィットしたような感覚が得られたら、人差し指で内方へごく軽く圧を加えます。

そのまま前頭骨を持ち上げるようなイメージで、天井方向へごくわずかに引き上げます。

ほんのごくわずか、皮一枚持ち上げるようなイメージでよいでしょう。



リフトアップする時は手や指の力で行うのではなく、肘を天井方向へ出すように、つまり肩甲骨を動かして体幹寄りの大きな筋肉を用いて操作します。

「小さな操作は大きな動作で」ですね。

しつこいですが、大切なことなので何度もお話しします。



わずかながらでも持ち上げていると、前頭部がビヨ〜ンと伸びていくような感覚を覚えるかもしれません。

頭の中のどのあたりが伸びているのか、よく感じ取るようにしてみてください。

テキストでは大脳鎌など頭蓋内のどこが、などと書かれていることがありますが、ここでは自分で体験している感覚を味わいましょう。



伸びている感覚が少なくなって来たら、ゆっくり手を戻してCRIを再評価します。

練習を終えてから、その感覚を持った位置が解剖学的に何であったのか調べてみてください。

このように感覚をつかんで意味を知るという流れも、とても勉強になります。



続いて頭頂骨リフト。

側頭部の頭方に四指の指紋部でコンタクトして、CRIに同調して評価しながら手に馴染ませ、そのまま頭方へ皮一枚のイメージで持ち上げます。


ここでも手先ではなく、肩甲骨を挙上させるようにして操作します。



頭の中のどこが伸びているか感じ取りましょう。

先ほどの前頭骨リフトの場合とは異なるはずです。

伸びている感覚が少なくなって来たら、ゆっくり手を戻してCRIを再評価します。

頭をはじめ、身体の感じる印象はいかがでしょうか?



ところで、これまでCRIは5gごく軽くふれるとわかるとお話してきました。

多くのテキストにもそのように書かれています。

でも慣れてくると、通常の圧迫をしている時でもわかるようになります。

ごく軽く触れないとわからないというのも、一種の固定観念なのかもしれません。

ただ、それには身体の力を使って楽に操作できる必要があります。

すべての手技療法に共通する基本ですね。



このシリーズでは、CRIの触診についてその練習法をご紹介してきました。

頭蓋仙骨療法のような細やかなテクニックは、セラピストにとっても向き不向きや、あるいは好みの分かれるものかもしれません。

結果的に合わないならそれでよいのですが、手技療法をしっかり学ぼうとしている方は、自分自身の幅を広げる意味でも一度は触れてみてよいのではないかと思います。



私も臨床で頭蓋仙骨療法を使う頻度は、そんなに高くはありません。

それはいくら練習をしても、得意な人ほどに結果を出せなかったという、自分とテクニックとの相性もあるかもしれません。



もしくは、受けていてわかりやすい臨床を目指しているという、個人的スタンスが理由になっているからかもしれません。

頭蓋仙骨療法は受けている人の感覚が鋭いとわかるのですが、そうでない方にとっては何をされているのかわからないということも少なくありませんから。



白状すると、頭蓋仙骨療法をやっていると私自身がどうしようもなく眠たくなるという個人的な欠点もあります。

これがいちばん大きい理由かもしれません。



でも、頭蓋仙骨療法が非常に役に立ったケースもいくつか経験してきましたし、何よりCRIを感じる練習をしてきたことは、触診力そのものを鍛えることにとても役立っています。

このシリーズのはじめにお話ししましたが、今でも夜布団に入った時は頭に触れながらそのまま寝ていることがあり、このような練習はずっと続けていくと思います。



あっ、もしかしたらこの練習のせいで、臨床でもすぐに眠たくなるのかも!!



≪シリーズ完:次回は2月6日更新です≫
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