手技療法の寺子屋

手技療法の体系化を夢みる、くつぬぎ手技治療院院長のブログ

ひとりでできる!! 触診練習法 その2

2008-05-31 19:15:09 | 学生さん・研修中の方のために
さて、今回も触診の練習です。


頚椎と胸椎の境目は「頚胸移行部」と呼ばれています。


目印になるのは頚椎7番、別名「隆椎」と呼ばれているとことで、その名のとおり、棘突起が他よりも大きく発達しているのでわかりやすい・・・、と教科書的には書かれています





ところが、





実際は、その上下にある頚椎6番や胸椎1番の棘突起のほうが大きい人もいたり、特に大きく出ているところが見あたらない人もいたりしてハッキリしないこともよくあります


レントゲンなどに頼らないで、頚椎7番をみつけるにはどうすればよいのでしょうか?


そんなときに役に立つのが動的触診(モーションパルペーション)です





さっそくはじめてみましょう





まず、このあたりが頚椎7番の棘突起かな?、と思うところにふれてみてください。


このとき下の写真のように、人差し指と中指で棘突起をはさむようにしたほうが、わかりやすいかもしれません。







つづいて、頭部を左右に回旋させてみてください。棘突起も左右に動いていますか?



この棘突起が動いている幅を覚えておいて、もうひとつ下の椎骨でも同じことをしてみてください。





上の椎骨と比べて、棘突起の動きの幅はどうでしょう?





比較して動きがあきらかに少なくなっているようなら、そこが胸椎1番で、最初にふれたところは頚椎7番で合っています






胸椎では肋骨によって回旋運動が制限されるので、頚椎7番と比べて胸椎1番の動きは少なくなるわけです。


ですからこの可動域の変化は、生理的な構造による正常なもので異常ではありません。


上も下も同じ程度の動きなら、両方とも頚椎、または胸椎だったということになるので、さらに上下を比較して、動きの幅が変わるところを探してみてください。





四肢の可動性検査では、左右の上下肢で可動域の差を比較しますが、脊柱の場合はこのように上下の椎骨で比較します。





頚椎1番の回旋は大きいとか、胸椎の回旋は小さいなど、生理的な場合を除いて上下の椎骨と比較して動きが明らかに異なる場合、機能障害を起こしている可能性があります。





今回紹介した隆椎もそうですが、実際の臨床では教科書に書かれていることとのギャップを感じることが多々あります


そのとき頼りにできるのは、自分で評価する力です


しっかり練習しておきたいところです

ひとりでできる!! 触診練習法 その1

2008-05-24 19:08:55 | 学生さん・研修中の方のために
前回は手技療法は触診が「命」と書きましたが、その触診の感覚をいかに鍛えていくのかというのが今回のテーマです。



触診 によって、腫れや熱感、圧痛や硬結など大切な情報をとらえることができますが、その中のひとつに、関節がうまく動いていないという 「可動制限」 があります。



肩や肘などの大きな関節なら、視診である程度わかりますが、脊椎のような小さな関節が連続しているものではどうでしょう?



一部の椎間関節が動かなくたって、脊柱の他の部分でカバーするだけの余裕がありますから、部分的な可動制限は目立たないこともあります。



でも、この一部が動かないために不快な症状を出したり、他の部位にムリをかけることもになります。



脊柱のモビライゼーションは、このような分節的な可動制限に対して有効なテクニックですが、どこにどのような制限があるのか分からなければ使うことはできません






そこで、脊椎の分節的な可動性を感じとる感覚を磨く必要があるわけです





まずは、頚椎からはじめましょう。触れる指は人差し指や中指など、使いやすい指でかまいません。







後頭部に触れて、指を下方にすべらせると第2頚椎の棘突起に触れます。これは大きいからわかりやすいですね。



さらに下にすべらせると第3・4頚椎と続くはずですが、これらは棘突起が小さいのでなかなか分かりにくいと思います







頚椎を屈曲させることで触れやすくなる方もいらっしゃいます。このときのコツは、顎を引くようにして頚椎の前弯をとるように屈曲させること。頭部を前に倒すと起立筋が緊張してかえってわかりにくくなります。






続いて第5・6・7頚椎、これは触れやすいですね






それでは、この第5・6頚椎の棘突起間で動的触診(モーションパルペーション)の練習をしてみましょう



まず指を棘突起間に当てて、それから頭部を前屈してみてください。



典型的頚椎は、関節面が斜め45°で前上方に向かっているので、第5頚椎の棘突起が前上方にすべっていくのが感じられるはずです。






いかがですか?





では次に頭部を後屈しましょう。今度は第5頚椎の棘突起が、後下方にすべりおりてくるように感じられると思います。





これが動いているという感覚です



この「すべり」が起こっていない状態が脊椎可動制限の状態です。



「動いていない」という可動制限を感じとるためには、「動いている」という感覚をたくさん経験する必要があります



多くの椎間関節の正常可動域は10°以内、だいたい5°前後なので、動いているといってもほんのわずかですから、はじめのうちは???と思うかもしれません。



根気が必要です



「動いている」という感覚を養ったうえで、「動いていない」関節に出会うと、『アレッ、何か変だぞ』という違和感を覚えます。



臨床では、この違和感が大切なんですね



そこから違和感の中身がいったい何なのか、より詳しく調べていきます。ここで、解剖学をはじめとした医学的知識がより生きてきます



とにかく、「おかしい」ところをまず見つけられないと、時間が限られる現実の臨床ではとても間に合いません



ですから学生さんは、まず下部頚椎で「動いている」という感覚をしっかり身につけて練習しましょう





次回以降は、頚胸移行部、そして腰椎に入っていきます。





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手技療法の寺子屋でご紹介しているような手技療法の基本が、医療情報研究所さんよりDVDとして発売されました。
私が大切にしていることを、出来る限りお伝えさせていただきました。
どうぞよろしくお願い致します。
医療情報研究所





☆ブログの目次(PDF)を作りました 2014.01.03☆)
手技療法の寺子屋ブログを始めてから今月でまる6年になり、おかげさまで記事も300を越えました。
これだけの量になると、全体をみたり記事を探すのも手間がかかるかもしれません。
そこで、少しでもタイトルを調べやすくできるように、このお休みを使って目次を作ってみました。
手技療法を学ばれている方、興味を持たれている方にご活用いただき、お役に立てれば幸いです。

手技療法の寺子屋ブログ「目次」


手技療法は触診が「命」

2008-05-16 22:27:57 | 学生さん・研修中の方のために
突然ですが、手技療法は触診が「命」です。





そこで学生のみなさん、触診の練習はしていますか?





学生さん『ハ~イ、実技の授業中にしていま~す



私「ん~っ、そら足らんわ!! そんなんやったら、ぜんぜんアカンんよ!!



『エエッ!!



「あんなぁ、触診の感覚を鍛えるっちゅうことは、料理人なら舌、音楽家なら耳、ボクサーなら目を鍛えることと同じやでェ



「週に何時間かの練習やったら、やらんよりマシッちゅうだけで、とてもやないけど追いつかんよ



「学校の部活でも、もっと練習時間は長かったやろ



『ハイ



「君はプロになるわけやんなぁ、プロに



『ハイ



「この仕事でメシ食っていこうっちゅうのに、そないなことでドないすんのォ、ホンマにぃ~



『ダッテー、みんなも同じですけど



「ダッテもソッテもあれへんがな



(↑これは母が私を叱るときによく使っていたセリフです。この後には 「みんなが死んだら、お前も死ぬんカッ」 と怒鳴りつけられました。)



「現場に出たら、君が担当する患者は、君に責任があるんやで



「いざ現場に出て、身体触ってもようワカランで、お粗末な仕事しかでけへんかったら、患者さんに申し訳が立たんやろ



『ハイ



「それやったら、練習、練習。今のうちからとにかく練習せなあかんよ。がんばりや






ふだんの私は温厚なほうだと思うので、ここまで一方的な言い方はしませんから、これは半分フィクションですが、近い話をしたことはあります。





身体のどこに手技療法を使うかという判断は、問診・視診を通して、最終的には触診によって決められます





テクニックも触診の延長上にあって、再評価も触診によって判断します。


軟部組織の機能障害が起こるところもイロイロあって、たとえば筋肉なら、起始側・筋腹・停止側、あるいは隣りの筋との境い目に見つかることもあります


これらを見わけることができるのは触診だけですから、触診の能力を高めておくことはとっても大切になります。






ところが、学校のカリキュラムはどちらかというと知識をつめ込むほうに力が注がれがちです


もちろん、医学の知識を身につけておくことはプロとしても当然です。



でも、野球のルールブックを覚えても、野球が上手くなることはありません。



私たちは、評論家ではなくプレイヤーになるわけです

頭と手がバラバラだったら、目もあてられません






しかも、少ない実技の時間のなかでも、「押し方」や「もみ方」などテクニック的なことが中心で、触れてみてそれが何であるか感じるという、いちばん大切な「触診」には意外と時間が使われません。


テクニックを通して、触診もあるていど身につくのでしょうが、やはり私は、触診は触診で練習する必要があると思います



カリキュラムの中でそれが組み込まれていない以上、学生さんは自分達で練習しなければなりません。





筋肉の起始・停止や骨などは、触診の練習をとおして覚えたほうが、知識と触れた感覚が関連づけられるのでずっと記憶しやすいですよ


ちょうど、歌の歌詞を思い出そうとしてなかなか出てこなくても、曲が流れるとすんなり思い出すということと同じですね


解剖学のテスト中に、身体をあっちこっち触ってもカンニングにはなりませんから、一石二鳥です


さいわい、最近は触診のことを詳しく紹介した書籍も出版されていますから、ひとりでも学ぶことができます。






私は今でも、仕事が暇なとき (これはあまり自慢できたことではありません) 、お風呂に入っているとき、布団に入って寝つくまでの間など、暇があったら自分の身体を触って練習しています。


その日の体調によっても、身体の緊張状態はちがっているのでとても勉強になります。






次回は、そんな私が日ごろ行っている、オススメの触診練習法を紹介したいと思います






ASTRセミナー(札幌)のおしらせ
今年の5月中か6月中には、くつぬぎ手技治療院のなかでASTRのセミナーを開く予定をしています。
東京ではすでに定期開催されていますが、札幌でも少しづつASTRを伝えていきたいと思っています。
治療院の中で行うので少人数しか入りませんが ( 多くて8~10人でいっぱいでしょうか ) 、そのぶん、きめ細かいレクチャーができると思います。
もう少しで治療院ホームページにアップしますので、興味のある方はどうぞご参加下さい。


練習は大きく動かす

2008-05-09 22:30:40 | 学生さん・研修中の方のために
手技療法を学ぶとき、早く身につけたいばかりにアセる方がいらっしゃいます


どういうことかというと、いきなり慣れた人がするような動きをマネしようとするんです





例えば、脊柱の関節モビライゼーションを行うとき、慣れた人はムダのない最小限の動きでテクニックを行います。


それでも、ポイントを外さないから効果をあげます


ところが慣れていないのに、いきなり最小限の動きでしようとすると、ポイントが外れて刺激がぼやけ、効果をあげることがなかなかできません


( なかにはとてもカンのいい人もいらっしゃいますが…。不器用で時間のかかった私からすれば、ウラヤマシイかぎりです





手技療法を身につけることは、野球などのスポーツを習うことと同じです。





野球でボールの投げ方を覚えるとき、はじめから牽制球を投げるようにコンパクトな投球フォームを練習しませんよね


バットを振る練習も、いきなり流し打ちからはじめることはないはずです。


はじめのうちは大きなモーションでボールを投げたり、バットを振ったりするでしょう。


こうして身体のつかい方、いい方を変えたら、どのようにして上手く力をボールやバットに伝えるのかということを身につけてから、はじめてコンパクトな動きでも力強い投球や打撃ができるようになるわけです





手技療法の練習のときも、はじめはオーバーなくらい大きく動いてみてください。





練習のときの大切なポイントは、自分の身体がどういうふうに動いているのか、ということをきちんと意識するということです


これを意識しないと、ついついパートナー ( 練習相手 ) を動かすことだけに気持ちが奪われがちです。


もちろんこちらも大切なことですが、あまりにかたよるとおかしなクセがついて、小手先だけのテクニックを覚えたり、ムリな体勢で動かそうとするので腰を傷めやすくなったりします


いざ臨床にのぞんでも体力のロスが大きいので、仕事として長時間続けるのは不向きですし、効果も現れにくいので 「このテクニックはつかえないヤッ」 と投げ出しやすくなります。





これはもったいない





そのようなことにならないためにも、練習の時は、どのように身体の中を力が伝わっていっているのか、あるいはどこにムリな力が入っているのか、それをどうすれば楽に行えるようになるのかをよく感じ取って、工夫を重ねなければなりません。


とことん練習して身体にしみこませ、いざ臨床になったら自分のことは忘れて患者さんのことだけ考えていても、身体はきちんと動いている。


自分の身体にムリがかかったら、それを改めるよう自然と調整している。





こうなるまで練習しなければなりません





とはいっても、いきなり自分とパートナーの両方を意識するというのは難しいですよね





そんなときは、今回は自分の身体の動きを、次はパートナーの身体をコントロールすることを、という具合に交互に意識して練習するといいでしょう。





野球やサッカーなどのスポーツは、トレーニングや指導する方法がまとまっていますが、手技療法の場合はまだまだです。


ですから、習っている人自身がよっぽど意識して練習する必要があります。


がんばりましょう。応援しています


くつろぎ手抜治療院???

2008-05-03 22:06:58 | よもやま話
私の治療院は 「くつぬぎ手技治療院」 という名前です。


「 手技(しゅぎ) 」 は、マッサージや指圧、整体やカイロなど、手を使って治療する方法をまとめた手技療法のことを指しています。


『 指圧や整体などのテクニックをむりやり患者さんに当てはめるのではなく、身体の状態をよく診て、その人に合った方法で治療する治療院にしたい!!』


という、私なりの思いを込めて名付けました





ところが…





いくら自分に思い入れがあるとはいえ、 「~マッサージ」 や 「~整体」 というものと比べると、当然ながら一般の方にはあまり耳慣れません。

そのためか、開業してからもなかなかPRが上手くいかず、 「あぁ、なかなか患者さんが来てくれへん。どないしよう」 と、悶々とした毎日を送っていました。





そんなある日…





買い物をしたときに書いてもらった領収書の宛て名をみて、私はガクゼンとしたのでした。





『くつぬぎ手抜治療院』





『くつぬぎ手抜治療院』




『くつぬぎ手抜治療院』





手抜(てぬき)やて~っ!!






そらアカン。「手技」やのに「手抜」と読まれたら誰も来るわけないわ…




当時はせっぱつまっていたので、けっこう落ち込みました。


それからしばらくたって、別のお店で領収書を書いてもらったら、今度は、




くつろぎ手技治療院』





くつろぎ…か


まぁ これはこれで悪くないかも…








ア~ァ、もうエエヮ。何とでも勝手に呼んでちょうだい


いや、ちょっと待てよ。こうなったらいっそのこと「くつろぎ手抜治療院」に名前を変えてみよか


どんな治療院やと思われるやろか


それはそれでオモロイかもしれんなぁ








などと、一人で考えて笑っていました。


経営に波風はつきものです。


時にはこんなユーモアも、しんどい時を乗り越えるために必要かもしれません。








今ではおかげさまで、たくさんの方に利用していただける治療院になり…つつあります

これからもしっかり治療して、ほんとに「手抜」治療院なんて言われないように頑張りたいと思います





ところで「くつぬぎ」ですが、私の本名ですからね。


時々、芸名か何かだと思う方もいらっしゃるのであしからず。





そういえば、「くつ」を「ぬぐ」から、『足裏マッサージ』の店かと思った方もいたっけなあ





変わった名前というのは、それだけでいろいろなドラマがあるものですね