手技療法の寺子屋

手技療法の体系化を夢みる、くつぬぎ手技治療院院長のブログ

自立したセラピストを目指して

2017-08-16 18:19:34 | 治療についてのひとりごと
私のセミナーでは、まずはフルスイングで、しっかりと強い刺激を加えて練習するよう指示しています。

それはどのようなスポーツでも、はじめは大きく力強いフォームで練習するところから始めるということと理由は同じです。

大きなフォームでしっかり操作できるようになっておけば、コンパクトなフォームになっても身体を使った操作が行いやすいはず。

同時に手技療法を臨床で用いるなら、どこまでの刺激が限界なのかを身体で知っておく必要がある。

そのように考えています。


刺激については、この業界の中には強い刺激の手技療法に対して否定的な考え方もあります。

「強い刺激は組織を傷める」

「強い刺激はクセになって、さらに強い刺激を求めるようになる」etc

だから「強い刺激はよくない!」


確かに一理あるかもしれませんが、この考え方は私には、

「辛い食べ物は胃腸を傷めるから、身体によくない」

と言っているのに等しく聞こえます。


辛い食べ物を食べればお腹を壊し、翌朝お尻がたいへんなことになる人も確かにいます(私もそう)。

その時に胃腸の粘膜を調べたら、もしかするとタダレている様子が確認できるかもしれません。

そうなると臨床症状と共に、客観的な証拠が示されていることになります。

だからといって、それを根拠にして全面的に「辛い食べ物はよくない」としたら、みなさんは素直に納得されるでしょうか。


きっと「体温をあげて代謝を高める」というような、辛い食べ物のメリットも考えて首を傾げる方も多いと思います。

辛い食べ物が合わない人や、身体が弱っている時には食べないほうがいいけど、体に合う人や健康な時ならいい。

常識的にはそのように、個人差や状況に合わせて判断し使い分けているはず。

そのようなバランスの取れた常識的判断が専門分野になると何故か抜け落ち、一面的な議論になっていることも時にあるように思います。


先ほどとは反対に、強い刺激を良しとする立場でもそれは同じ。

「強い刺激だからこそ効く」

「強い刺激で効かなかったり、クセになるのはセラピストが下手だから」


私も臨床では強い刺激を用いることが多い立場で、その効果は実感しています。

でも強い刺激をいつでもどこでも、誰にでも加えてよいとしているわけではありません。

(個人的には同業の人相手だと、調子に乗ってやり過ぎて失敗することはあります

辛い料理だけが料理のすべてではないことと同じ。

だから「強い刺激だから効く」というのも一面的な考え方です。


以上のような一面的な考え(仮説・理論)に振り回されないようにするには、自分の「目」と「手」で確認したことを学んだ知識に照らし合わせつつ、批判的な思考力で判断できる「頭」を持った、自立したセラピストになる必要があります。

そして「手」で確認できるようになるためには、弱い刺激から強い刺激まで使い分けることが出来る、振り幅の広い技術を身につけておいたほうがよいと私は考えています。


そのために練習では、フルスイングで身体を大きく動かしてしっかり刺激を加えられるようになっておくと共に、これ以上は危険というラインを身体で体験して覚えておく。

その上で、状況に応じた刺激の使い分けやコントロールを行えるようになるように、自分で自分の技術を信頼できるようになるまで練習する。

つまり私がフルスイングで練習するよう指示している意図は、やがては定説ですら疑いを持つような自立したセラピストになるということを目指してのことです。


誰かの話を鵜呑みにするのではなく、自分の拠りどころを自分自身に求められるセラピストになるように。

そんな願いを込めて。

セミナーも治療も「痛いこと」が強調されがちなので、私のやっていることだけ見ていたら、伝わりにくいかもしれませんが