
『オールド・ボーイ』『復讐者に憐れみを』のパク・チャヌク監督による復讐三部作の完結作。主演は国民的美人女優と言われるイ・ヨンエ。『オールド・ボーイ』のチェ・ミンシクも共演者に名を連ねる。13年、無実の罪で服役したクムジャが刑務所で囚人たちのカリスマ的存在になっていく過程に本作品の怖さが潜む。美しいイ・ヨンエの悪女ぶりは一見の価値あり。[もっと詳しく]
イ・ヨンエはきわめて貪欲に、クムジャを呑み込んだ。
NHKで放映中の「チャングムの誓い」が、モニタに映し出されている。アジアで驚異的な視聴率をあげたこの番組を、話題がわりにと第1回目から観ている。ヘタクソな吹き替えに卒倒しそうになりながら、また、おおげさな宮廷描写に辟易しながら、けれど、見ることを止められない。
やはり、ちょっと、壇ふみの若い頃にも似たイ・ヨンエの魅力であろう。
「チャングムの誓い」はクセになる(笑)
イ・ヨンエは、14歳でCMの世界でデヴューした。
「酸素のような女性」とのキャッチフレーズで多くのCMモデルに指名された。
僕も、韓国にいくたびに、道路脇の巨大な看板で、彼女が笑顔をふりまくのを、何度も目にした。美しい人だ、という印象しかなかったが・・・。 韓国最新のTVコマーシャル
僕がその認識を改めたのは、2000年「JSA」(パク・チャヌク監督)によってである。
韓国人であるが、中立地帯を監視するスイス軍将校として、颯爽とした軍服姿で理知的に登場した。
国境線の男たちの怒号と憎しみと恐怖と同郷心が入り混じった重苦しい空気にあって、彼女は必死に健気に威厳を保とうとしながら、産み起こす「悲劇」に肩を震わしていた。僕は、一遍で、ファンになった。 凛々しくも、ラストは哀しい。
次いで2001年「ラスト・プレゼント」(オギ・ファンド監督)。
芸人を目指す夫を励ましながら、自分の不治の病については隠し通そうとする妻を、ユーモラスかつ哀切に演技していた。
どこにでもいる清楚で温かな新妻。平凡な中の、希望と不幸。こういう役もできるのかと、感心した。 笑い、そしてやっぱり泣かされた。
同年「春の日は過ぎ行く」(ホ・ジノ監督)。
こちらは、まじめで繊細な年下の音響技師を翻弄するような、ラジオのDJの役柄であった。
孤独感と我儘さを併せ持つあたらしい都会型のキャリアウーマンを演じていた。
情緒不安定で、どちらかというと、同性からは嫌われそうな雰囲気といえなくもない。 ちょっと、小悪魔なところをみせた。
そして、4年ぶりのスクリーンが、「JSA」で組んだパク・チャヌク監督の「復讐3部作」のラスト。
監督は、前作「オールドボーイ」でカンヌグランプリを受賞しており、映画界からは、大きく注目されていた最終章である。
復讐者は、女性、名前はクムジャ、そして指名されたのが、イ・ヨンエである。
女優というのは本来、「貪欲な性(サガ)」を競い合う職業ではないか、と思うことがある。イ・ヨンエはこの映画でも、過去の自分を裏切るような役回りに、果敢に挑戦している。
際立って批評的であり個性的である、パク・チャヌク監督をも題材として、イ・ヨンエは「復讐3部作」というコンセプト自体も、呑み込むべき迫力で、この作品にまるで舌なめずりするように、対峙している。
もちろん、連続ドラマの「チャンヌグ」に心を寄せたファンの多くを、唖然とさせるかのように。きわめて「貪欲に」。
これこそ、名女優としての必至の「資質」であり、本領発揮と、いえなくもない。もう、現世を超越している!
「親切なクムジャさん」。
映画の中身に関しては、多く、語られているので、今回は言及しないでおこう。
僕は、ひたすらイ・ヨンエを追いかけた。
この映画では、脚本も、美術も、衣装も、音楽も、メーキャップも、照明も、僕にはひたすらイ・ヨンエ演じるクムジャさんという「聖」と「邪気」、「善」と「悪」、「計算」と「本能」、「自信」と「怯え」・・・そうした相反する極をもつ、複雑な人格を演出するために、動員されているように思えたからだ。
登場するおなじみの役者さんたちもそうだ。もちろん、監督も。 双面のようなクムジャさんの世界
イ・ヨンエ=クムジャさんは、双面のように演じられる。
隣にいる親切な娘さん。天使のような無垢な笑顔に、明るい黄色の囚人服。ストレートで凛としたヘアースタイル、周辺への自己犠牲にもみえるような献身、ケーキも真心こめてつくる。それがクムジャさん。
獄中の13年間復讐を誓い、かたときも忘れずすべてを計算して布石を打ち、一直線に怯むことなく、目的を完遂する。非情にも見える真っ赤なアイシャドウーと太いウェーブの髪と真冬のサングラスにハードボイルドないでたち。それも、クムジャさん。
クムジャさんは、論理的に復讐を計画する。迷いはない。それが、贖罪であることを、確信しているから。
無実の罪で、罵倒されながら、刑務所に入った日から、クムジャさんは動じない。
大きな罪には大きな罰を。小さな罪には小さな罰を。
その決定に際しても、クムジャさんは躊躇しない。
倫理は、彼女のなかに、存在している。だから、彼女の額には、光が差している! 「余計なお世話よ!」
僕の一番、好きなシーン。
13年の服役を終えて、クムジャさんは刑務所を出る。
待ち構えるのは、サンタのような格好をした聖楽隊。彼女を支援してきた(と思い込んでいる)人物は、彼女のために皿に盛られた豆腐を、はしゃぎながら、差し出す。
「豆腐のように、白い心で、これからを生きなさい」
「余計なお世話よ!」
クムジャさんは、無表情に皿を払いのける。
クムジャさんは、冬の出所にもかかわらず、投獄されたときの夏用の水玉ワンピースを着ている。13年前を、忘れないために。
イ・ヨンエ=クムジャさん。天晴れである。
清楚な美しさの彼女のイメチェンですが、ほんとに似合ってました
この役を演じることにした勇気にも拍手を贈りたいです(^0^* )
韓国の女優さんは、美人揃いだけど、この人は、年をとっても、美しくあると思えますね。
イ・ヨンエは本当に美しい人ですね。欠点が無い分とっつきにくくて酸素のようなと言われたのかな~とその譬えに納得してます。
彼女の作品では「チャングム・・・」「パパ」「春の日は過ぎ行く」「クムジャさん」をみました。
「ラスト・プレゼント」も良さそうですね。見てみようかな。
随分と写真が豊富で、美しい記事ですね。
だいぶ前に劇場でみたので、忘れてしまいましたが、イ・ヨンエの豹変ぶりには驚いた記憶があります。
イ・ヨンエさん、綺麗ですよねー。
上で話題に出されていらっしゃる映画は、私も全部見ています。
チャングムも凄くはまって見ました(私はリアルタイムに、KNTVという韓国チャンネルで週に2回連続放送で見ていました)
私はJSAのヨンエさんは、正直、鉄仮面美女の様で、あまり好きではなかったんですよ・・・
チャングムですっかり好きになりました。
クムジャさんも凄く良かったです
イ・ヨンエ嬢の美しさがふんだんに盛り込まれた作品でしたね。
あまり韓流作品、見ない私ですが しっかりと彼女の
顔は脳裏に刻み込まれました!
こちらからもTRBさせていただきました♪
イ・ヨンエは『JSA』の時はきれいな人だな程度だったんですが、『プレゼント』での夫思いの役は印象に残りました。だから今回のクムジャさんには、驚かされっぱなしでしたよ(^^)本当によい女優さんですね。
イ・ヨンエは美しいですね~。
あまり性的な魅力というのは無い気もするのですが、とにかく綺麗だと思います。
「JSA」ではキレイなオネエチャンでしたが「チャングム」で日本での人気は不動になったことでしょう!
チャングムの面影を求めて「クムジャさん」を見に来ていた年配の方々はちょっとビックリされていたようです。
最後のケーキに顔を突っ込むシーンはどうなんですかね、あれ?って思いましたけどw。
「酸素のような人ねぇ」
清涼感とかみずみずしさとか、そういうことかしらね。化粧品には、起用されそうですね。
>ケントさんへ
僕は劇場では観なかったんです。
忘れたころに、TBしました(笑)
ただただ、イ・ヨンエに注目して、映画を、観ました。
>latifaさん
「JSA」の制服姿には、男性には、ちょっと、倒錯した魅力にみえるんですね(笑)
>soratukiさん
はは。女性が、韓国四天王などに、はまる気持ちが、わかってきました(笑)
>カヌさん
「プレゼント」はできすぎた新妻でね。いじらしかった。今回で、また、役どころを拡張しましたね。
>ミチさん
そうですね。でも、彼女のことだから、そのうち、激しい肉体的な体当たり演技に挑むかもしれませんね。
>gomaさん
この映画に関しては、いろんなシーンの意味を、とりあえず「解読」することは、僕はお預けしました。そういう観点からみれば、たくさん興味深いシーンが発見できますね。