目指せ!映画批評家

時たまネタバレしながら、メジャーな作品からマイナーな作品まで色んな映画を色んな視点で楽しむ力を育みます★

七瀬ふたたび ★★

2010-10-11 22:12:11 | ★★
監督:小中和哉
脚本:伊藤和典
原作:筒井康隆(新潮社刊「七瀬ふたたび」より)
キャスト:芦名星、佐藤江梨子、田中圭、
前田愛、ダンテ・カーヴァー、今井悠貴、平泉成、吉田栄作

というわけで、渋田シアターNでこの映画を観てきました。映画化されることを知ったのは大好きなschool food punishmentの新曲がエンディングタイアップだったから、なのですが、芦名星のビジュアルと予告編の雰囲気に惹かれて映画を見に行きました。

筒井康隆原作の超能力者の女性を主人公に据えたSF小説が原作。原作は3部作構成でその2作目にあたるのが本作「七瀬ふたたび」だそうで。私は原作未読です。何度かテレビドラマ化もされているのですが、そのいずれも未見です。今回、プロローグムービーは中川翔子が監督を務めていてそこに出てくる七瀬の母親役の多岐川裕美が主演版のドラマシリーズもあったそうで、今でもそのドラマシリーズのファンは結構多いそうでそのファンにとっては嬉しい配慮だったようです。ちなみに中川翔子は結構監督の才能あるのでは、という話が一部でちらほら。。。表現が非凡。本筋の監督よりも・・・。

主人公の七瀬はテレパスという人の思考が読める、という超能力を備えた女性でその超能力ゆえに悩み、孤独に生きてきたところで同じように超能力ゆえの苦悩を抱える人たちと生きていく決意を固め正体不明の敵と対峙する、という話。

火田七瀬を演じる芦名星は筒井康隆が褒めているだけあって雰囲気、演技ともにしっかりしてて観ていて画面をもたせるだけの力があるように思いました。これからも期待したい女優さんと思いました。ダンテ・カーヴァーは意外なキャスティングですが、正直この作品には合っていると思いました。やや聞き取りにくい日本語が逆にリアリティを生み出しているし、あまりソフトバンクのCMを思い出さなかったくらいの雰囲気が出ていたのも良かったです。これは演出が効いていたのかな。
超能力者モノではアクションに走る場合と超能力ゆえの苦悩を丹念に描く場合がありますが、この作品は後者に力点を置きつつも映画後半ではアクションもやりたかったんだろうなあ、という意気込みは見え隠れします。ただ、アクションは失敗しています。ちょっと辛い。超能力者ゆえの苦しみ、悩みといったものは描けているだけにこれは勿体無い。

正直言って予算不足をここまで痛感させる映画も中々ないと思います。映画の筋立てとしては結構うまくいっていると思うだけに余計にそれを感じさせるシーンが際立って目立ってしまって、それがダメだからこの映画はいただけない、という世間の論評になってしまっているように思います・・・。特に七瀬の飛翔シーンとヘンリーの念動力発動のシーン、あとタイムトラベル能力の描写、更には終盤の敵との対峙のシーンにはもう少しお金をかけて欲しかった。見せ場なんだし。

音楽は結構いい、と思ったんですけどちょっとテーマの繰り返しがしつこすぎましたね。テーマ自体の旋律は結構好きなんですけど。これは選曲とか曲の付け方にも問題があるのかもしれませんが。。。サントラ試聴してみると意外と何回も違うアプローチでテーマにアプローチしているのですがそれがややしつこすぎたのかなあ。。

賛否両論ある、七瀬のテレパス描写は文字と声とのダブルでの描写だったのですが、個人的には良かったと感じます。ああいう風にごちゃごちゃ聞こえるから辛いのがテレパスでしょ。すっきり聞こえるなら苦労はない、という意味で。

いくつか説明不足の点としては回想シーンで描かれるヘンリーとの出会いの中で自殺させられるあるキャラクターが実は透視能力者である、という点と、ラスボスが発火能力者(パイロキネシス)であるという点が観ている人に多分わからない、という点は非常に問題だなあ、と感じました。特に後者は致命的。ラスボスの能力がろくに発揮されずに倒されるというのはアクションとしてのカタルシスに欠けすぎている。これは残念な点。
あと、他の方の記事でも読みましたが、組織があまりに警察などにその動きをもらしすぎていたり、組織の業容がしょぼそうだったり、途中で殺される組織のキャラの能力(能力者をかぎわける)もあまりきちんと語られることなく死んでいたり、とちょっともう少しうまい描き方が出来なかったのかな、と思わされるシーンは多かったです。


逆に原作からの改変により原作ファンの不興を買っているという結末の変更については私は原作未読ですが、支持派です。こっちの方が希望があっていいじゃないですか。これでバッドエンディングだったら本当に観客は救われないですよね。。。

でも、実は個人的にはこの作品、意外と好きです。

HEROSとか直近だとドラマSPECだとかX-MENだとかマーブルヒーロー系だとか、超能力者ゆえの苦しみだとか悩みだとか孤独っていうテーマは割と普遍的だし、うまくやれば結構いいテーマなんだと思います。もうちょっと予算があれば・・・。


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