目指せ!映画批評家

時たまネタバレしながら、メジャーな作品からマイナーな作品まで色んな映画を色んな視点で楽しむ力を育みます★

ただ、君を愛してる ★★★★

2006-10-30 00:44:50 | ★★★★
ここまでタイトルを映画館のチケットカウンターで言うのが恥ずかしかったのは久しぶり。

私は映画を見るときはいつも一人で行くから
「ただ、君を愛してる、大人一枚」という
一言を言うのにとても大きなエネルギーを
使ってしまいました。

しかも、店員には「天子の卵、大人一枚ですね?」と聞き返されて、結局もう一回

「ただ、君を愛してる」ってその店員さんに
言い直さなければならない羽目に…。

まったく、参ってしまいました。

冗談はさておき、宮崎あおい主演作、

「NANA」より前に「ケータイ刑事銭形愛」のころから注目していた宮崎あおいも
なんだかんだで日本を代表する若手女優に
なってきたなあ、という感があります。

この作品でも彼女の秀逸な演技は炸裂しています。
また、玉木宏も大変いい味を出していて
とても見所ある俳優さんだなあ、と感じました。

「恋愛写真」というタイトルをつけなかったのは
正解。
以前広末、松田龍平主演で製作された映画「恋愛写真」に
着想を得て作られたアナザーストーリーでは
あるのでところどころ、役名や設定で
被っている部分があったように思います。
ただ、前作が写真にかなり比重を置いて描かれていたために不自然になってしまっていた後半の
展開は大変惜しかったため、そのあたりの
不満点が見事に解消されているのが今作と
言えるかもしれません。ただ、その分、
写真に関しては芸術的、写真論的な要素は
かなり薄れていって主演二人を描くための
道具に成り下がっているように感じました。

そういう意味では描きたいテーマや
作品の趣旨はかなり変わったように思います。
前作が「才能」や「写真」にかなりフォーカスして描いていたのに対して今作は「二人の関係」や「終盤の展開の不自然さの払拭」などなどの
部分に変わっており、「写真」は付加的な
要素にはなっているものの物語を束縛するほどの
強さはなかったように思います。

ラスト付近の展開にも賛否両論になるかと
思いますが、この映画に関しては
それほど無理はなかったように思います。

全体として、キャンパスライフや美しい緑溢れる湖岸の森などは映像としてもとてもきれいで
宮崎あおいの可愛さもあいまってとても
視覚的にも楽しめる映画になっていたように
思います。

地下鉄(メトロ)に乗って ★★★

2006-10-30 00:14:46 | ★★★
先週土曜日公開の映画見てきましたよ。

いやー大沢たかおさんは本当に芸達者。
若い頃の役から年老いた役まで
同じ人物のさまざまな側面を時代ごとに
見事に演じ分けています。
っていうか、映画映画しているような
気がしてたんだけど途中からはとても劇団的な
場面の見せ方をするようになります。

最後の方のバーのシーンなんて本当に
映画というよりは舞台みたいな
印象を受けました。それくらいに登場人物に
フォーカスした映像を徹底的に見せてくれた
んだなーとは思いますが、映画向けの
題材ではそもそもなかったのかも。

舞台で見たいと思わせる作品でした。
珍しく。

岡本綾はよかった。堤さんもお見事な演技。
ストーリーとしては釈然としないものもあり、
あまり合格点ではないけども
役者、主演クラスの4人の演技が見事だったので
十分払拭できている、という稀有な映画でした。

ストーリーに少し触れると、最後の方の展開は
賛否両論だと思う。作者の浅田次郎さんが
「愛人なんてのは消えてなくなればいいなんて
考えることがあるのが男の性」みたいなことを
おっしゃってたそうですが、それにしたって
ちょっと救いがないよな、あの展開は。

予告を見てタイムスリップものだと思ってたけど
舞台みたいな見せ方がとても多いので
タイムスリップものっていう感じがあまり
せず。そこそこに面白い映画でした。

時をかける少女 ★★★★

2006-10-29 23:46:44 | ★★★★
遅まきながら上小田井のイオンシネマワンダーにて鑑賞。

筒井康隆の同名小説とは違うアニメオリジナルのストーリーで新しい「時をかける少女」が生み出されていました。


夏公開の映画でしたが近場で公開されていなかったので鑑賞出来なかったので見られてとても嬉しかったです。

何せ私の周りで見た人は皆さん口々に褒めるものですから。

というわけでそれなりに高い期待を待ちながら鑑賞に臨むことに。

ストーリーはタイムリープと呼ばれる時間跳躍の術をなぜか得てしまった真琴という女子高生がタイムリープを繰り返すうちに起きていく最初は小さな、それでいて次第に大きくなっていく時間の歪みを巡って起こるドラマ。

アニメなんだけどもアニメ特有な表現もたくさんあったんだけどタイムリープを単なるタイムマシーンとしてではなく、ドラマの構成の柱に据えて映画を一本撮りきった手腕には乾杯。

主人公真琴のキャラクターにも好感大。

タイムリープという時間跳躍をテストや色恋に使いまくる様は女子高生真琴の狭くて浅い世界への興味や価値観を示していて楽しかったです。

彼女にとって時間を越えてでも「なんとかする、なんとかしたい」ものがちっぽけであればあるほど彼女が恵まれていることを認識せざるを得ませんね。

恵まれている、というよりは何て言ったらよいのやら…。

高校生活という二度とリセット出来ない時間を仲良しの友達とずーっと過ごしていたい、そんな刹那主義的な気持ちがラストに向かうに連れてまた別の気持ちに遅くはあるけど移り変わっていく様子はなかなか白眉の出来。


音楽やアニメとしての表現、声優の演技などどれをとっても夏アニメで群を抜く出来栄えでした。

なんだか高校に通う彼女が羨ましくなるような、そんな明朗快活な新しいヒロイン像をくっきりはっきりと示した快作に仕上がっています。


騙されたと思ってぜひ鑑賞してみてください。

涙そうそう ★★★★

2006-10-02 01:19:07 | ★★★★
長澤まさみ主演作、これで何本みたかなあ。

ネタバレしちゃうかもなので見たい人は見てから
読んでくださいね。

「ロボコン」を絶賛して以来、ずーっと
その動向を注視してきた女優「長澤まさみ」は
最近どんどん進化していっている気がします。

この映画は「いま、会いにゆきます」を監督した
土井さん、という監督さんが監督した映画で
前作と同じように良い画をたくさん
撮影できていると思います。

何より主演二人は今最も乗りに乗ってる時期。
二人の役者としてのキャリアの累積もあってか
演技はどちらもとても良い。
「ラフ」や「ローレライ」や「タッチ」や
「ジョゼと虎と魚たち」なんかよりも
見所いっぱいの役柄、お見事!

二人が住んでた家のセットもよかったですね。


序盤のシークエンスは妻夫木の役柄を端的に
説明していますし、メインタイトルまでの
短い間に妻夫木と長澤の間柄をちゃんと
観客に理解させて自然と作劇にもっていくあたりはさすがの手腕。

また沖縄の情緒溢れる風景、とくに
子供時代の2人が歩く海辺は白眉の映り具合。
ああいう風景が日本に恒常的にまだ存在している
沖縄という土地がひどくうらやましく思えます。

この涙そうそうという映画は
夏川りみが歌い上げる例の超長期にわたって
チャートにランクインしたあの曲を
モデルにした映画なわけですが、本当に
よく出来ています。

ラストでもちろん流れるのはその曲ですが
本当にはまっています。

というか、残念なのはラストに至る展開。

そんなんやられたら、誰だって泣いてしまうよ、
という手法で観客の涙腺を解放しちゃうわけですが、この手の手法にそろそろ観客は飽き始めているのではないかなあ。
ただでさえベタベタ路線の
韓流映画やドラマが日本を席巻した後の今の
日本で上映する映画ならば、もうそろそろ
新しい手法で観客の涙を誘っていただきたいですね。

あと、台風の演出はちょっとやりすぎ。
せっかくのリアリティの積み重ねによる
演出もあんなことが起こったら台無しじゃないですかね?汗。


とはいえ、私はこの手の手法にすこぶる弱いわけです。
監督やテレビ局の思惑通りラスト近辺では
涙ぐんでしまっていました。

この妻夫木演じる「にーにー」はとても
いい兄貴です。私にも妹がいるけれど、どうしても
こういう風には振舞えないでしょうね。

劇中、何回か長澤まさみ演じる妹が「にーにー」に「愛してるよ」と伝えるシーンがあります。
普通家族に対してそこまでストレートに愛を
伝えることってありません。そこであくまで
妻夫木演じる「にーにー」はお兄ちゃんとして
振舞い続けます。この無償の愛こそ本当の
家族愛、なんでしょう。端から見ればはっきり
言ってがんばりすぎなにーにーがそれでも
家族のためにがんばる姿は正直涙なしでは
見られないでしょう。
本当の家族でも最近ではここまで暖かい愛情表現ってない気がします。物騒な事件も多いですし。

とても心を暖かくさせてくれる映画だったように思います。
私たちにとっての本当に自分を投げ打ってでも大事にしたい人って誰でしょう?同僚ですか?
後輩ですか?
恋人ですか?
家族ですか?友達ですか?

親がどれだけの愛情をもって自分たちを育ててきてくれたのかなあ、と考えると言葉に詰まります。
ラスト、エンドロールが
終わってからのシークエンスでどうして
にーにーは最後までにーにーだったのかが
なんとなくですがわかります。
席を立った人は残念でした。