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黄耆建中湯(おうぎけんちゅうとう)1.  子供のアトピー、アレルギー疾患

2011-06-11 10:26:47 | 東洋医学全般
今回は、黄耆建中湯(おうぎけんちゅうとう)のお話です。

この漢方方剤の、その作用が期待できる病名を主に並べてみますと、胃腸虚弱者の疲労回復、関節痛、浮腫、手足の倦怠感、湿疹、腰痛、下痢、そして子供のアトピー性皮膚炎、子供の中耳炎などとなっています。

これらの病名をみると、一見お互いに関係がないような病気が同じ漢方方剤の効能として挙げられていますね。

子供さんは、母体で育って生まれてくるまでは「先天の気」といわれる父母や大自然から授かった気の作用が大きく関係しています。これは東洋的な意味合いでの肝、心、脾、肺、腎の五臓の内の腎が大きく関与しています。
腎は驚き恐れの感情にも関連していて、乳幼児が大変な恐怖を感じたり脅かされたりすると、高熱を出したりするのもそこからきています。
この状態を「先天の気(腎の気)が飛んでしまった」と考えます。

私がミャンマーで診療をしているときに、近所で乳幼児の葬儀がありました。聞くところによると、その乳幼児がその従兄弟のいたずらで、急に顔の前に大声で泣き叫ぶ子豚を差し出され、眼が裏返るほどおどろいてしまい、その後に高熱を出して翌日に死んでしまった例がありした。

こういうときにスプーンで経絡をこする乳幼児治療をしてあげられていたら、この子はどうなっていただろうかなどと、時々思い出します。

もちろんこれは大変極端な例であって、子供さんは少しくらい脅かしても死んでしまうことはまずありませんので、どうぞご安心ください。あまり子供を過保護にしすぎると、ろくでもないガキに育ちますので。。。。。。

去年でしたか、いつもめちゃめちゃスポイルされた二人のお子様をつれてくるご両親がいて、その子らもその親も、うちの診療所でびっくりするほど傍若無人に振舞って、他の患者さんも困っていました。その子供が何か悪さをしても、おかあさまは、その子らの頭を撫でながら「うちのXXちゃん、かぁーわぁーいいでしょう~!!」とまったく悪びれていませんでした。ダンナさんはその間何もせずにずーーーーーっと一人でゲーム機をいじっています。
何度もこのようなことがあり、さすがの私も「まあ、普通ですね。小さい子は誰もが可愛いものですよ、おかあさん!」といってしまいました。お母さんは目を白黒させていました。かっかっか。。。

さて、生まれた後は「後天の気」が子供の成長を促してゆきます。これは上記の五臓の内の「脾の作用」が司ります。

西洋医学での脾臓は120日ほどたって老化して不要になった赤血球を取り込んで処理する臓器でしかありません。
しかし、東洋医学での脾は胃腸の働きを司るコントロールタワーで、気、血、津液(しんえき、体内の液体成分全般)を作り出す大変重要な器官ということになっております。

この脾の位置(胃腸を含む)は、からだを上中下に三分した場合、中部にあるので今回の黄耆建中湯の「中」はこれを指しているのです。
建中の「建」は作り上げる、建て直すということで、特に胃腸および後天的な力を補い育むという意味がこめられています。

そのようなわけで、建中湯類ということで、大建中湯(だいけんちゅうとう)、小建中湯(しょうけんちゅうとう)、当帰建中湯 (とうきけんちゅうとう)、黄耆建中湯(おうぎけんちゅうとう)などが存在し、どれも胃腸及び後天的な力をはぐくみながら各々の疾病を治してゆくという漢方方剤です。

建中湯に黄耆(おうぎ)が加わると、脾・肺・腎の経絡に作用します。
この場合、東洋医学的な意味合いでの肺は皮膚と呼吸器を整える作用があります。よって、特にお子様のアトピー性皮膚炎、頑固な汗泡、喘息に体の中心から効いてゆきます。

また、黄耆建中湯は何の病がなくとも、お子様の健康保全のために常用することができる漢方薬です。変なサプリなどよりも、よっぽどよいと思います。

また、消風散(しょうふうさん)もアトピー性皮膚炎に大変よろしい漢方方剤です。しかし、小児の体質からの改善には黄耆建中湯をお勧めする場合が多いです。

次回はこの黄耆建中湯の別の使い方のお話です。

漢方アメリカOnlineをよろしくお願い申し上げます。

私の記事が載っている月刊誌「はつらつ元気」です。ご参考になさってください。
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