唯物論者

唯物論の再構築

ヘーゲル大論理学 概念論 (1.存在論・本質論・概念論の各第二章の対応)

2022-08-29 07:50:17 | ヘーゲル大論理学概念論

 以下に大論理学の第一巻存在論の第二篇「量」論と第二巻本質論第二篇「現象」論、および第三巻概念論第二篇「客観」論の各章の論理展開における異名同内容をまとめる。


・無限定者

 存在から抽出された本質は、質料から遊離した形式である。これに対して概念は、さしあたり存在と本質の単なる総和である。この単純な概念における根拠は、全体としての自己である。そしてその自己自身は、部分の総和としての全体である。原因である自己と結果である自己自身は、見え方の異なる同じ存在にすぎない。そしてその限りでその全体はただの主観の塊である。しかしこの主観から本質を抽出するなら、それは主観ではない。その主観と異なる何かは、要するに客観である。当然ながらその概念は、さしあたり主観と客観の総和となる。存在論の場合、質から遊離した形式は量である。その質からの分離は、単純に質料における質の廃棄である。この場合に無内容な質料は、そのまま質料の形式である。すなわち量は質料の形式である。この無内容な量は質を持たないので、限界を持たない無限定者である。本質論の場合、似たような事情が本質からさらに遊離した形式を実存にする。それは根拠を廃棄した自己原因の仕事であり、無限定者の物体である。さらに概念論でこの無限定者は、概念の諸限定を全網羅した完全な概念として現れる。それは主観を脱した客観である。しかし無限定者の対自において、その自己の客観は既に主観の自己自身にすぎない。その自己自身となった客観は、客観において自立した物体の外面的相関にすぎない。


・機械観

 量自身は質を廃棄した無である。しかしこの限定は、無に対して限定存在を与える。その存在化した無の彼岸には、再び無が現れる。それゆえに量の外延には量が無限に拡がる。一方で存在化した無は、明らかにその限定存在の内側に無を含む。そしてその内側の無も同様に、その限定存在の内側に無を含む。それゆえに量は自己の内包に、縮まった量を無限に内包する。この質に無関心な量の外延と内包が数である。この量の限定存在と似たような事情は、本質の実存に該当する。実存は本質と非本質が結合した物体である。しかしその対自は物体に自己同一を与える一方で、自己同一ではない非本質を再び分裂する。物体の本質は自己同一な自己自身であり、外延の物体を非本質と扱うことで、次々にその全体的自己を実存とする。また自己分裂する物体は、自己同一な自己自身をそれぞれ実存にし、さらに自己分裂する。実存は自己の外延に無限に広がり、自己の内側にも無限に実存を内包する。ここでの実存の自己同一な本質は、自己同一ではない特性を格納する自己同一な入れ物になっている。他方で実存の非本質な特性も、物体を構成する物質または元素として自立する。その原因と結果の区別が消失した全体が、現象である。それでもこのような物体の総体は、一つの客観である。しかしその全体相関は外面的であり、それゆえにその客観は単なる機械観に留まる。


・化合観

 形式的機械観では原因と結果に差異は無く、因果は消失している。しかし機械観を構成する仕事の運動は、原因を廃棄して結果を擁立する対自過程を含む。さしあたりここでの原因と結果は、それぞれ具体と普遍である。したがってその仕事の運動は、具体の廃棄と普遍の擁立である。そしてその単純な姿は「具体は普遍」である。このような形式的機械観は、一方で原因と結果を区別せず、他方で原因と結果を区別する。この矛盾は両者の中間に特殊を擁立し、その特殊に両者を区別させる。ここでの特殊は区別そのものであり、具体と普遍の共通項であり、原因と結果の中間辞である。それゆえにその全体も、形式的推論「具体-特殊-普遍」として現れる。しかしそれでも原因と結果に区別が無いと、仕事の運動は擁立すべき普遍を見失う。そこで仕事の運動は、中間辞の特殊を普遍とする。それは推論第一格「具体-特殊-普遍」の第三格「具体-普遍-特殊」への遷移である。ただしもっぱら推論は、直接に第一格から第三格に遷移しない。あるいは第三格が擁立した特殊を原因に据える。それは区別を前提にした普遍の擁立である。したがってそれは、推論第一格「具体-特殊-普遍」の第二格「特殊-具体-普遍」への遷移である。それは区別の原因化であり、対自の自立である。ただし第二格は、前提を加えた「具体は普遍」にすぎない。すなわちそれはただの仮言である。そしてこの条件を加えただけの機械観が化合観である。しかし化合観は、条件を加えることで「具体は普遍」の仕事を容易にする。また前提があるからこそ仕事は容易になる。その擁立される前提は、無限定な量における比率または単位であり、無限定な実存における法則である。しかし第二格で特殊と普遍を限定するのは、具体である。それゆえにその全体相関は、無限定な現実世界とも超感覚的世界とも異なる現象世界に留まる。


・目的観

 独断の根拠を求めるために現れた推論の形式的三段論法は、もともとその分裂した判断を前提に含む。したがって推論の第一格の第二格への遷移は、既に推論の前提である。そしてその遷移の前提に第三格が既に現れるのも、上記に示した通りである。しかし第二格の化合観は、具体が特殊と普遍を限定する点で機械観の延長にすぎない。これに対して第三格「具体-普遍-特殊」は、普遍が具体と特殊を限定する。言い換えるとこの限定は、目的による原因と媒介の限定である。そして目的と原因から区別された媒介は、目的実現のための手段となる。仕事は原因に応じて生まれるが、その運動は手段を通じた目的実現となる。それゆえにその客観も、化合観と異なる目的観となる。一方で仕事における原因と結果の同格は、第三格における結果の特殊を中間辞の普遍に応じて普遍化する。そして逆に中間辞の普遍を特殊化する。したがって第三格における中間辞の普遍化は、手段を目的に応じて目的化し、逆に目的を手段化する。つまりその中間辞の普遍化は、手段の目的化ではない。これに対して第二格「特殊-具体-普遍」は、結果の普遍を中間辞の具体に応じて具体化する。そして逆に中間辞の具体を普遍化する。したがって第二格における中間辞の普遍化は、手段を原因に応じて原因化し、逆に原因を目的化する。それゆえにその中間辞の普遍化は、原因を原因のままに留め、目的を実現しない。しかもその手段の原因化は、手段を目的化させる。目的を実現しない手段の目的化は、仕事に悪無限をもたらす。その手段は目的に対して外面的であり、第三格の目的に準じた内的手段と区別される。


・理念

 機械観における数は、化合観において比率または単位に転じ、目的観において自己自身を自己の変数にして冪比例に転じる。その質から量を経た本質の生成は、現実認識を現象世界を経て超感覚的世界に導く。超感覚的世界では存在も実存も抽象的量に過ぎず、その運動も単に力の移動として現象する。それは観念化した現実世界であるが、現実認識はむしろこの観念化した超感覚的世界において現実的である。したがってカントにおいて彼岸化して不可能となった現実認識も、超感覚的世界において実現する。なぜならその対象は思惟の彼岸にあるのではなく、思惟の此岸にあるからである。それは感性による対象認識ではなく、理性による対象認識である。すなわちこの思惟は、眼や耳の五感を放棄し、理性により対象を見ている。当然ながら仕事における原因も、物体の空虚を前提に立てて直接に目的に向かう。なぜなら思惟の目的は、現実世界の非本質な現実相関ではなく、本質的相関だからである。これにより目的は自己原因となる。この自己原因化した目的は、思惟において最初に主観的衝動として現れる。そしてそれは原因として作用因と目的因に分解し、さらにそのそれぞれを手段と目的に再び分解する。目的は主観的衝動の分解の最後に抽出されるが、もともとその始まりにおいて作用因と手段に癒合している。それゆえに目的を抽出して認識するために、理性の推論が現れる。なお理性の推論は、さらに目的論の主観的恣意を廃棄する。なぜなら仕事において目的因が物体側を手段にするのに対し、作用因は思惟側を手段にするからである。すなわちこの目的因と作用因の交互運動は、区別された二者の間の相互作用に過ぎない。そこでこの仕事の対自は、思惟の主観的目的論を廃し、それを客観的理念に替える。

(2022/08/30) 続く⇒(存在論・本質論・概念論の各第三章の対応) 前の記事⇒(存在論・本質論・概念論の各第一章の対応)


ヘーゲル大論理学 概念論 解題
  1.存在論・本質論・概念論の各章の対応
    (1)第一章 即自的質
    (2)第二章 対自的量
    (3)第三章 復帰した質
  2.民主主義の哲学的規定
    (1)独断と対話
    (2)カント不可知論と弁証法

  3.独断と媒介
    (1)媒介的真の弁証法
    (2)目的論的価値
    (3)ヘーゲル的真の瓦解
    (4)唯物論の反撃
    (5)自由の生成

ヘーゲル大論理学 概念論 要約  ・・・ 概念論の論理展開全体 第一篇 主観性 第二篇 客観性 第三篇 理念
  冒頭部位   前半    ・・・ 本質論第三篇の概括

         後半    ・・・ 概念論の必然性
  1編 主観性 1章A・B ・・・ 普遍概念・特殊概念
           B注・C・・・ 特殊概念注釈・具体
         2章A   ・・・ 限定存在の判断
           B   ・・・ 反省の判断
           C   ・・・ 無条件判断
           D   ・・・ 概念の判断
         3章A   ・・・ 限定存在の推論
           B   ・・・ 反省の推論
           C   ・・・ 必然の推論
  2編 客観性 1章    ・・・ 機械観
         2章    ・・・ 化合観
         3章    ・・・ 目的観
  3編 理念  1章    ・・・ 生命
         2章Aa  ・・・ 分析
         2章Ab  ・・・ 綜合
         2章B   ・・・ 
         3章    ・・・ 絶対理念


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