たんなるエスノグラファーの日記

エスノグラフィーをつうじて、ふたたび、人間探究の森へと分け入るために

アントロポロギ

2010年04月10日 10時02分35秒 | 文献研究

薄曇のなか今日の桜の美しい林の近辺の桜は少し散りかけている。ところで、わたしが1年間の海外サバティカルから帰国すると桜美林大学に文化人類学専攻なるものができていた。出発前はそういった専攻の名前は案さえ挙っていなかった。文化人類学を専攻する学生が30名(1100人中)というのは多いのか少ないのか、全体としては、いまのところ、33専攻のうち人数的には、半分くらいの位置である。はじめての専門課程の学生(3年生)を出す予定の2009年度の年初めに、専攻の学生を集めて、桜美林大学学生文化人類学研究会(Obirin Student Society for Anthropology:通称OSSCA)を組織し、学生主体で協力し合って活動を開始し、講演会や活動報告のための冊子を作成した。その成果、アントロポロギ』(創刊号2009:写真)の特集は、「恋愛の人類学」である。本田透さんと池田光穂さんをお招きして、2009年12月16日に開催した、講演会「恋愛の人類学~二次元恋愛は現代の恋愛への宣戦布告か?~」の講演会記録と学生によるエッセイが主要記事である。二次元恋愛はオタク文化によって生み出された近年の現象では必ずしもないという論点との関わりで、個人的に、後になって思い出したのは、落語の『幾代餅』という演題である。搗米屋の奉公人・清蔵は、絵草紙を見て吉原の花魁・幾代太夫に恋煩いをする。その落ち込みを見かねた親方は、1年間みっちり働けば、その金でその花魁を買いに連れて行ってやると清蔵をなだめる。清蔵は、1年後、病気治しよりも女郎買いのほうが巧い医者に連れられて、野田の醤油問屋の若旦那とのふれこみで、幾代太夫に会い、思いを果たす。花魁に「今度いつ来てくんなます」と問われた清蔵は、自分は搗米屋の奉公人にすぎないし、1年間金をためてやっとあなたに会いに来れたのであって、もう来れないと正直に言うと、その言葉に打たれた幾代太夫は、来年3月に年季奉公が明けたら訪ねて行くので、女房にしてくれと応えた。舞い上がってしまった清蔵は奉公先で仕事が手につかない様子で、来年の3月のことばかり考えていて、3月と呼ばれても返事をする始末。3月になると、幾代太夫は約束通り搗米屋を訪ねて来て、清蔵と夫婦になる。その後、二人で幾代餅という餅屋を開いて、それがその両国名物の餅の由来だという話(古今亭志ん生)。二次元空間に描かれた存在に感情移入する、恋愛感情を抱くというのは、たしかに人類社会に広がりをもった現象なのかもしれない。清蔵の場合には、二次元を介して、その先にいる三次元の存在にこそ思いを抱いたのであるが。冊子『アントロポロギ』創刊号は、160部ほど印刷して、主に、学生向けに配付する。学生の手作りの感じが、逆に、なかなか新鮮でいいかも。この件についての問い合わせは、次のメールアドレスまで。ossca_obirin@yahoo.co.jp 学生研究会の本年度の活動はすでにスタートしていると聞いている。なんでもテーマは「この世とあの世」(「世界のこちら側とあちら側」)だと聞いている。学内で興味ある学生はぜひ参加してほしい。

志ん生の「幾代餅」はアップされてないので、かわりに「風呂敷」の名演
http://www.youtube.com/watch?v=GsS4B-G04I8&feature=related
OSSCAブログ(更新なし?あちら側と交信中?)
http://ossaobirin.blog11.fc2.com/


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1 コメント

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ああ事務仕事 (たんなるエスノグラファー)
2010-04-10 18:43:29
今日は朝からずっと幾つかの報告書や計画書やらの作成の作業に追われているが締め切りがすでに過ぎているものもあることにいま気づいたものもありそれはそれでよくあることといえばそうなのだがたぶん効率がどうしようもなく悪いのだろうけど一日やってもまだ道半ばだしということはためこんで一気にやろうとするその根性がよくないのかもしれないけど事務仕事が処理能力を越えているとはいえないだろうかまおそらくはいえないだろうななどとグダグダいいつついずれにせよ事務仕事の処理のとてつもない苦しさよ

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