『感性創房』kansei-souboh

《修活》は脱TVによる読書を中心に、音楽・映画・SPEECH等動画、ラジオ、囲碁を少々:花雅美秀理 2020.4.7

・演劇部全体を貫く繊細な感性/西南学院大学演劇『decoretto』-上

2014年04月15日 00時12分24秒 | ●演劇鑑賞

 

  ◇「舞台演劇」の「時間・空間」の「総合芸術性」を再確認

   4月5日土曜日、「西南学院大学演劇部・新入生歓迎公演」の『decoretto』を観ました。同大演劇部全体の強い情熱と意気込みを感じさせる公演であり、何よりも非常に細かな部分まで丁寧な配慮がなされていたと思います。

   今回の公演は、筆者の12年半に及ぶ観劇体験の中でも、一、二を争う優れた舞台といえるでしょう。原稿を綴っている今も、「これはと想う場面」が何度も脳裡をよぎります。「役者の声」をはじめ、「全身の動き」や「仕草」は言うに及ばず、「指先」や「眼の表情」にいたるまで、その演出・演技の高い質を感じた舞台です。

   そこでまず「優れた4点」として、次の(1)(2)(3)(4)を挙げたいと思います。

 

(1) 「役者」をはじめ、舞台背景等の「舞台美術」、「小道具」、「衣裳」、「照明」、「音響効果」等にいたる「舞台演劇」の構成要素全体が、非常にバランスのとれたものであった。言いかえば、ある「特定の構成要素」だけが突出して “良い” とか “悪い” ということはなかった。

(2) 「舞台美術」から「小道具」「衣裳・小物」、そして「案内チラシ」や「当日プログラム」にいたるまで、「トータル・カラーコーディネート」が行き届いていた。

(3)キャスティング」が非常によく考えられていたため、「5人の役者それぞれの個性がとても活き活き” と描かれていた。

(4) 細心の注意による抑え目のBGM」が素晴らしいため、今でも役者個々の〈声〉が鮮明に残っている。「役者」の〈声〉がいかに魅力的なものであるかをあらためて教えられた。

       ☆

   以上「4点」を〈ひとこと〉でまとめると、次のようになるでしょう。

 「舞台演劇」が「総合芸術」であることを、高いレベルで再確認させてくれた。

       ☆

   「総合芸術」とは、本ブログの『 “美” を狩る憧憬』(※註1)でも採り上げたように、「文学・音楽」などの「時間芸術」と、「絵画・彫刻・工芸建築」などの「空間芸術」を総合したものです。

  一般的に 《舞台演劇》 は、「総合芸術」と言われるわけですが、細かく見て行けば、次のような構成であることが判ります。まず、舞台「演劇」における「役者の台詞」や「台詞の際に役者が発する声」、「効果音」や「BGM」などは、総て「時間芸術」です。一方、舞台「美術」つまり「大道具」や「小道具」、「衣装・化粧・ヘアメイク」そして「照明」などは「空間芸術」となります。つまりは、〈時間の経過〉に伴って変化していくものが〈時間芸術〉であり、〈時間の経過〉に左右されないものは〈空間芸術〉ということです。

   「今回の舞台」は、以上のことをあらためて再確認させてくれるとともに、それらのことを “感動を伴う形として表現する=創造する(クリエイト)” ためには、高いレベルの感性をベースとした “豊かな想像力(イマジネーション)” が不可欠であるということです。

   無論、それは「演出家」や「主役」の一人、二人の問題ではなく、当該「キャスト・スタッフ」全員、否「演劇部・演劇部員」全体というレベルにおいて初めて論じることができるでしょう。今回の公演は、そのことを改めて教えてくれるとともに、このことが」いかに重要であるかを再認識させてくれたのです。

           ☆   ☆   ☆

  それでは詳細を見て行くわけですが、(1)に関することを特に感じるようになったのは、実は今回が初めてではありません。実は、本ブログ――、

  ◆西南学院大学演劇部の総合力/学生演劇の課題:番外編1

   において――、

   “優れた総合力とチームワークによる舞台でした。なによりも「丁寧で緻密な舞台演出」であり、また「演技・演出」でした。

   と述べていました。さらに以下においても――、

  ◆芝居『Under the Rose』(西南大)/学生演劇の課題:番外編2

   1.キャスト、スタッフ全員に「自分たちにしかできない舞台を創り上げる」というひたむきさ強く熱く感じられた

   とも……。

  今回の「公演舞台」は、そこから一歩も二歩も前進した跡を感じることができます。そう想うとき、同大演劇部の昨年12月の『クロノス』と、今年2月の「卒業公演」を観逃したことを残念に思います。(続く)

 

  ◆『“美”を狩る憧憬』

 


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