『感性創房』kansei-souboh

《修活》は脱TVによる読書を中心に、音楽・映画・SPEECH等動画、ラジオ、囲碁を少々:花雅美秀理 2020.4.7

・的確なキャスティングによる役者・演技/西南学院大学演劇『decoretto』-中

2014年04月17日 00時01分13秒 | ●演劇鑑賞

 

  ◇トータル・カラーコーディネートによる “劇空間・時間表現”の魅力

  では前回述べた「優れた4点」のうち、まず(1)(2)について詳しく見てみましょう。

   [A]  何はともあれ、優れた「トータル・カラーコーディネート」でした。当日渡された「パステルカラー」調の「プログラム」と「案内チラシ」に惹かれました。

   A4変型判2つ折りの「プログラム」は、基調色を「臙脂(えんじ)色」(?!)とし、他を同色系に近いものでまとめていました。「劇名ロゴ」や記述文字の一切をアクセント的な「黒」にするなど、なかなか洒落(しゃれ)たものです。「プログラム」に、トリミングした役者5人(上半身)を紹介しながら、さりげなく「衣装」等の「トータル・カラーコーディネート」を瞥見(べっけん)させたのは巧みです。

  A4判の「チラシ」は、「パステルカラー」を多彩に使ったデザイン。その “優しく穏やかな色調” は、「カタログ」とともに “『decoretto』の世界” すなわち “時空を超えて縦横に行き来する独自の世界” を象徴していたようです。それが意味するものは――、

   「現実」と「夢」……「現在」と「過去」……、そして「真実の空間」と「想像の空間」……という “対極” でした。

   無論、今回の「トータル・カラーコーディネート」は、以上に留まりません。「舞台美術」(舞台背景・大道具)をはじめ、「小道具」、そして「衣裳・小物」等にいたるまで配慮されていました。圧巻は、主役の〈少女デコ〉の衣装、ヘアスタイル、帽子、ショルダーバック、そしてシューズでしょう。現実離れしたメルヘンチックな世界でありながらも、シリアスなリアルティを醸し出したのは、主役の風貌や声、演技や台詞だけでなく、その衣装やお下げ髪をはじめとする全身のビジュアルによるものです。実に巧みな人物創造でした。

   ともあれ、「トータル・カラーコーディネート」された「空間芸術」に、“抑制” された「時間芸術」としての「音響・効果」が加わり、今回の「演劇」全体が非常に “バランス” のとれたものとなっていました。そのため、「役者」とその「台詞・演技」をとても自然に受け入れることができたと思います。“ビジュアル” (視覚効果) の偉大さをあらためて感じたものです。

      

  ◇圧巻の主役・少女役の心意気

    [B]   次に(3)の「キャスティング」ですが、とにかく大変よく考えられていました。そのため、役者俳優5人の個性が発揮されたのは必然です。各人の「役回り」が丁寧に描かれ、誇張に走らず自然体であり、5人それぞれの “豊かな感性” がうまく引き出されていたようです。役者自身に “豊かな感性” がない限り、観客自身にどんなに “豊かな感性” があっても、観客は「その役者」の演技や台詞を受け留めることなどできないでしょう。

   まず「主役」の〈少女デコ〉役の「平川明日香」嬢(他に〈寝たきりの少女〉と〈女の子〉役)――。衣装やヘアメイク、それに帽子やバッグが的確だったとはいえ、その自然で緻密な “役作り” に大変感心しました。〈少女デコ〉の全身と繰り拡げる言動が、「舞台」を所狭しと駆け抜け、「観客の心」の中に溶け込んでいました。そのため、観客はごく自然に、心地よく「活き活きとした物語の世界」へと導かれて行ったのです。このことは、今回の「舞台」の成功を導いた最大のポイントと言えるでしょう。

   とにかく、細かな部分の仕草や台詞回しをとても丁寧に表現していたのが印象的であり、また感動的でした。“頭のてっぺんから足の爪先まで” という表現がありますが、まさにそれを実感することができました。“豊かな感性とクリエイティブなイマジネーション” の持主にして、はじめて可能な演技と言えます。

   平川嬢の〈少女デコ〉役の成功は、他の「2役」に加え、彼女自身が「助演」と「衣裳・メイク」を務めたこともその要因の一つでしょう。「助演」者と言う立場が、或る程度自分なりの「役作り」を可能にしたと思われます。その成果が見事に舞台上で表現されたわけですが、最大のポイントは、彼女自身が「稽古場日記」の中で次のように述べたことに尽きるような気がします。

   『……この役の無邪気さにつられてどんどん演じるのが楽しくなってくる日々でした。この役ができたこと、この物語に出会えたことに感謝。』

   われわれ観客は、平川嬢の “この想い” を、優れた演技や台詞回しとして受け留めることができたのです。

       ☆

   次に〈古書店主〉と〈寝たきり少女の主治医〉役の「小松泰輝」氏(他に〈少年〉役)――。この「役者」については、正直言って “地(素顔)” なのか “役作り” によるものなのかよく判りませんが、“掴みどころのない”ところが、他の「役者」の個性をいっそう引き出すとともに、相手役者と “対峙したシーン(絡みの場面)” をより劇的にしていたようです。言葉では表現することのできない不思議な役者であり、魅力でした。[続く]

 


コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« ・演劇部全体を貫く繊細な感... | トップ | ・役者5人の絶妙な活かし合... »

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

●演劇鑑賞」カテゴリの最新記事