刑務所や留置場が失業者や行き場のない高齢者の収容所となっているとすれば・・・

2011-11-27 | 後藤昌弘弁護士

中日新聞を読んで 「高齢失業者と留置場」後藤昌弘(弁護士)
2011/11/27 Sun.
 最近の紙面は不景気な記事ばかりである。円高で、企業の海外移転がさらに進むとも云われている。
 先日、久しぶりに国選弁護事件を担当した。数年前までは義務として定期的に割り当てられていたのだが、最近名古屋でも弁護士が激増し、名簿に登録していても割り当てられることがほとんどないのである。
 罪名は窃盗。中年男性の被告人がコンビニでおにぎりとカップ麺各1個を万引きした事件である。被害金額は238円、同種前科もない。被告人は数年前に解雇され、失業保険の期間も切れ、求職中だった。独身で被害弁償をする親族もない。
 求刑は「罰金20万円」。被告人には実刑と同じだと思ったが、裁判所は拘留期間のうち40日分について刑に服したと計算し、かつ1日5千円に換算し、判決当日被告人は釈放された。なんのことはない、逮捕されてから裁判が終わるまで留置場や拘置所にいただけである。これまでなら起訴猶予とされた事案であるが、窃盗に罰金刑ができてから、こうした処理が増えているそうである。
 被告人質問で、きちんと生活保護を受けるようにと説教して裁判は終わったが、どうも釈然としない。仕事が見つからない状況では再犯を防ぐには生活保護を受けさせるしかないが、健康で働く意欲もあるのに、生活保護を受けなさいと言うことが正しいのだろうか。必要なことは被告人に仕事を与えることである。2か月間3食付で留置場に入れ、形式的な裁判だけする、そんなことに費用をかけるなら、一昔前にあった失業対策事業に予算を回し、被告人に仕事を与えた方が本人も喜ぶと思う。
 最近刑務所の受刑者が高齢化していると聞く。刑務所や留置場が失業者や行き場のない高齢者の収容所となっているとすれば、これほどの不幸はない。国費の無駄でもある。早く失業問題に本腰を入れてもらいたいと痛感する。

 ◎上記事は[中日新聞]からの書き写し(=来栖)
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山本譲司著『累犯障害者』 獄の中の不条理 新潮社刊


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