【橋下氏慰安婦発言】石原慎太郎共同代表が「謝れ」「大迷惑」「終わったね…この人」参院選次第で進退も

2013-06-19 | 政治/石原慎太郎

【橋下氏慰安婦発言】石原共同代表が「大迷惑」と批判 参院選次第で進退も
2013.6.18 21:47 [westセレクト]
 日本維新の会の石原慎太郎共同代表は18日、共同通信のインタビューで、共同代表の橋下徹大阪市長による従軍慰安婦発言が党勢低迷を招いたことについて「大迷惑だ」と批判した。同時に、参院選の結果次第では橋下氏の進退判断もあり得るとの認識を示した。
 石原氏は、橋下氏の責任に関し「(参院選の)結果を見て、その素因をつくった橋下氏がどう理解するかの問題だ」と指摘。「私が、どうしろこうしろとは言えない」として、自身で判断すべきとの考えを示した。
 橋下氏には電話で「仲間に『申し訳なかった』とのメッセージを出したらどうだ」と求めたと説明。会話で橋下氏が「辞めろと言われれば、いつでも辞める」としたため、「そういう居直り方はしない方がいい」と忠告したことも明かした。
 *上記事の著作権は[産経新聞]に帰属します
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石原氏、橋下氏に「謝れ」 慰安婦発言めぐり釈明要求
朝日新聞デジタル2013年6月19日6時42分
 日本維新の会の石原慎太郎共同代表は18日の党国会議員団の役員会で、従軍慰安婦をめぐる発言で党への逆風を招いた橋下徹共同代表に対し、「責任者が招いた事態だから仲間に謝るべきだ」と謝罪を要求した。
 役員会では橋下氏が「釈明の場」を設けるよう調整することで一致。石原氏が役員会後に橋下氏に電話し、テレビカメラの前で釈明することを求めたが、橋下氏は「では、代表を辞めれば良いんですか」と反発。「(6月末の)執行役員会やツイッターで説明する」と拒否したという。
 石原氏は最近、橋下氏の発言を「橋下問題」として公然と批判。橋下氏が米軍輸送機オスプレイの飛行訓練の一部を八尾空港(大阪府八尾市)で引き受ける考えを示したことにも「地元の市長が聞いていないようなことは言わない方がいい」と不満を漏らしていた。橋下氏が謝罪に応じなければ、両共同代表の亀裂は深まる可能性がある。
 *上記事の著作権は[朝日新聞]に帰属します
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慎太郎氏が橋下市長に「終わったね…この人」
(2013年6月19日06時02分  スポーツ報知)
  日本維新の会の石原慎太郎共同代表(80)は18日、スポーツ報知の取材に応え、共同代表の橋下徹大阪市長(43)について「終わったね…、この人」と“三行半”を突きつけた。昨年11月の太陽の党の維新合流以来、蜜月関係だったはずの2人。参院選を前に絶縁危機に陥っていることを明かした。
  さらに「徹底的に違うことはあいつが『あの戦争は侵略戦争だ』と言っていること」と明言。「俺は『侵略じゃない。マッカーサーも防衛の戦争だって言ってるじゃないか。君、そういうのどう思う』って聞いたら、それでも『侵略です』と。もう埋まらない。根本が違う。こんだけズレちゃうと困っちゃうよね」と苦笑い。将来的に価値観を共有できる可能性について「ないね」と言い切った。
  石原氏は、昨年12月の衆院選以来、常に「橋下氏を首相にしたい」と言い続けてきた。だが、この日は「そういう歴史観持ってる人間だと(首相は)ダメだね」と、自らの言葉までも撤回した。
  問題の根本となった橋下氏の慰安婦発言については「(発言直後の5月に)名古屋でお説教したんだ。するとね、おれが3分話すと、10分ぐらい答弁するんだよ(笑い)。やっぱり弁護士だね」とあきらめの表情。「発言に理屈は通ってるんだけどさ、言っていいこといけないことあるじゃない。『どの国も軍隊は慰安婦やってた、なんで日本だけとがめられるんだ』というのは、それはそれで彼の意見だけど、それを言えば…ねぇ」と苦笑いするしかなかった。
  今までは橋下氏を擁護してきた石原氏だが、7月の参院選への影響は避けられない情勢となった。
 *上記事の著作権は[スポーツ報知]に帰属します
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石原氏キレた 橋下氏発言「大迷惑」
日刊スポーツ[2013年6月19日8時17分 紙面から]
 日本維新の会の石原慎太郎共同代表(80)が18日、橋下徹大阪市長の従軍慰安婦発言が、党の支持低落につながったことについて「大迷惑だ」と、批判した。2人の関係を、勧進帳の「義経&武蔵坊弁慶」に例え信頼関係を築いてきたが、党勢拡大が見込めず、堪忍袋の緒が切れたとみられる。参院選の結果次第で、橋下氏の進退にも踏み込んだ。昨年11月、「数合わせ」といわれながらも合体したツートップ体制は、都議選、参院選を前に崩壊危機を迎えた。
 石原氏は共同通信のインタビューで、橋下氏の従軍慰安婦発言について「大迷惑だ」「言わなくてもいいことを言って、タブーに触れたわけだから、いまさら強弁してもしょうがない。弁護士の限界だ」と、指摘した。「素晴らしい情熱のある人で、それを見込んでいるが残念だ。うっかり失投して、満塁ホームランを打たれたような感じだ」とも述べ、失望感を示した。
 石原氏は昨年の衆院選直前、第3極結集を目指し、本来カラーが違う旧太陽の党と、橋下氏の日本維新の会との合流に踏み込んだ。歌舞伎の「勧進帳」で、源義経に尽くす武蔵坊弁慶に自らを例えて、「私は義経にほれた弁慶。彼を義経に終わらせず、頼朝にしなければ」と、橋下氏を手放しで評価、絶対的な信頼関係を強調していた。
 橋下氏の発言後も、「軍と売春婦はつきもの」と擁護するようなコメントもしたが、今月の共同通信世論調査で、維新の支持率は4・2%と、発足後初めて4位に転落。やめるよう勧めたツイッターも止まらず、今月4日、出馬会見したアントニオ猪木氏には「ビンタはいいから(橋下氏の)口をふさいでくれ」。我慢の限界を超えたようだ。
 電話で「『仲間に申し訳なかった』とメッセージを出したらどうだ」と求めると、橋下氏は「辞めろと言われればいつでも辞める」と応じ、「そういう居直り方はしないほうがいい」と忠告したという。「結果を見て、その素因をつくった橋下氏がどう理解するか。私が、どうしろこうしろとは言えない」と述べ、参院選の結果次第で進退を自身で判断するよう求めた。
 石原氏が、選挙戦が始まった東京都議選や参院選を前に、橋下氏批判を“解禁”し、もともと路線が違う旧太陽グループと大阪維新との対立激化は必至だ。太陽側が橋下氏人気に乗る形で、衆院選前に「数合わせ」で合流したため、選挙後も対立はくすぶっていた。参院選後の党分裂の可能性も強まった。選挙戦への影響は避けられず、維新への期待は急速にしぼみそうだ。
 *上記事の著作権は[日刊スポーツ]に帰属します
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〈来栖の独白 2013/6/19 Wed. 〉
 石原さんの悲願である「憲法改正」(石原さんの信念は「改正」ではなく「破棄」であるが、これも橋下氏に譲歩し「改正」)を見せてあげたかったが、橋下氏のトンデモ発言と国家観欠如の知識人、左翼メディアのプロパガンダにより、夢と潰えた。「早くに世に出た」石原慎太郎氏だが、氏の持てるすべてを結集してなお、憲法は変えられなかった。「慰安婦」問題で足をとられた。年齢とは無残なものだ。
 先の戦争は、断じて侵略ではない。けれども、日本は負けた。敗戦国に「正義」はついてこない。国連憲章には依然として「敵国条項」が消されずにあるではないか。
 国際社会においては、力が「正義」である。(力が正義であると北朝鮮は知っているから、世にも貧しい生活を国民に強いながら、核保有する。「核保有国であると認めろ」とプロパガンダする) これが国際社会、周辺諸国の実態である。それを平和憲法は「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して」と謳う。
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「憲法改正はエベレストより難しい」と石原慎太郎氏 / 最高齢80歳でエベレスト登頂 三浦雄一郎さん 2013-05-24 | 石原慎太郎 
 「憲法改正はエベレストより難しい」と石原慎太郎氏
 朝日新聞デジタル2013年5月23日22時26分
 日本維新の会の石原慎太郎共同代表は23日、冒険家の三浦雄一郎さん(80)のエベレスト登頂について「俺はこんなところでくすぶっているけど、彼は世界中の高齢者の希望の星だよ」と喜んだ。国会内で記者団に語った。
 石原氏は三浦氏と同い年で親交もある。「人間の本当の生き様をあの年で明かしてくれた。参院選に出ないかな」。記者団から「かなえたい夢は」と聞かれると「憲法を変えること。そのために暴走しているんだ」と即答。ただ「憲法改正はエベレストより難しい」と本音も漏らした。
 *上記事の著作権は[朝日新聞]に帰属します
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〈来栖の独白 2013/5/24 Fri. 〉
>俺はこんなところでくすぶっているけど
 石原さんの嘆息が聴こえるようだ。「こんなところ」とは、行く手を遮られたような安倍政権と「維新の会」を取り巻く現状だろう。
 “憲法改正したいがために都知事の職をなげうち、一兵卒となって国政へ帰ってきた。安倍政権は成立したが、頑是ない輩の反対で96条改正すらままならぬ。先の戦争は「侵略」ではなかったが、「侵略」と考える政治家が依然多い。何より憲法改正への念願から(個々人の思想は自由だと自分に言い聞かせて)袂を分かつことはしなかったが。そもそも憲法「改正」ではなく、「破棄」が妥当だと考えるが、それも、新憲法創設したいがために「改正」に譲歩した。それ(譲歩)は、あの青年(橋下)にもわかっている。隠忍自重、我慢しても、なお「夢」は達せられず、「こんなところ」(憲法改正に遥か遠いところ)でくすぶっている。”
 そんな石原さんの嘆きが、痛く伝わってくる。「(憲法)前文の醜さは、どうだ」。
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「正義」は勝ってから語るべきもの 次の戦争で戦勝国になってしまえば「歴史認識」の案件は決着がつく 2013-06-06 | 政治〈領土/防衛/安全保障/憲法/歴史認識〉 
 【正論】東洋学園大学教授・櫻田淳 平成の「富国強兵」路線に専念を
 産経新聞2013.6.3 03:07
 「歴史認識」に絡む橋下徹大阪市長の一連の発言が投げ掛けた波紋の後、韓国紙、中央日報が「原爆投下は神の懲罰である」と言い放った論評を掲載したことは、日韓両国における「ナショナリズム言説」の応酬の風景を出現させたようである。
 ≪正義語れる官軍になってこそ
 古来、「歴史認識」は大概、「戦争で勝った側」のものが世に流布する。「勝てば官軍、敗(ま)ければ賊軍」という言葉は、「敗れた側」にとって、どれほど理不尽にして悔しいものであっても、一つの真理を表している。故に、端的にいえば、「次の戦争」で「戦勝国」になってしまえば、「歴史認識」の案件は決着がつく。
 ここでいう「次の戦争」とは、武力行使を伴う文字通りの「戦争」という意味にとどまらず、経済、産業、技術上の優位の維持、さらには対外広報・文化・芸術・スポーツなどを通じた対外影響力の確保という意味の「競争」を含むものである。こうした「戦争」や「競争」に際して、いかに「勝ち組」に回るか。筆者は、そうしたことにこそ何よりの関心を抱いているし、そのことこそ、真剣な議論に値するものであろう。
 筆者は、突き放した物の言い方をさせてもらえれば、第二次世界大戦という「近代以降、偶々(たまたま)、敗れた一度だけの対外戦争」に係る弁明には大した意義を感じていないし、その弁明に日本の政治家が精力を尽瘁(じんすい)するのは、率直に無益なことであると考えている。
 故に、筆者が安倍晋三首相の再度の執政に期待するのは結局のところは、「次の戦争」で「戦勝国」としての立場を確実に得るために必要な態勢の整備である。
 「アベノミクス」と総称される経済再生施策から、憲法改正を含む安全保障に係る態勢の拡充、さらには安倍首相が就任直後に披露した「アジアの民主主義的な安全保障ダイヤモンド」構想に示された対外政策方針に至るまで、安倍首相が推し進める平成版「富国強兵」路線は、こうした考慮に裏付けられてこそ、意義を持つものであろう。
 ≪橋下発言は「必然性」が薄弱≫
 逆にいえば、こうした平成版「富国強兵」路線の貫徹に具体的に寄与しない政策対応は、「歴史認識」の扱いを含めて、全て棚上げにしても何ら支障はない。国際政治で問題とされるのは、結局は「力」である。安倍首相には、日本の「力」の復活に専念してもらえれば、宰相の仕事としては十分である。
 翻って、橋下市長の一連の発言において批判されるべきは、その発言の中身というよりも、それを語る「必然性」が誠に薄弱だということにある。要するに、「橋下市長は、自らの歴史認識を開陳することで、何をしようとしたのか」が、曖昧なのである。橋下市長は、一連の発言を通じて、第二次世界大戦の「敗戦国」としての日本の立場を弁護しようとしたのであろう。
 目下、特に米国、英国を含む欧州諸国、さらには豪印両国や東南アジア諸国は、日本の「次の戦争」における盟邦であると期待されているし、その故にこそ、安倍首相は、第2次内閣発足以後、これらの国々との「提携」を加速させている。しかし、橋下市長の発言のように、「従軍慰安婦」の解釈を含めて日本が「敗戦国」としての立場の弁明に走ることは、これらの国々との「提携」を進める際の妨げになる。
 というのも、これらの国々の多くは、結局は、「戦勝国」であるからである。「歴史認識」のような「互いに妥協できない」案件を不用意に持ち出し、「敗戦国」と「戦勝国」の立場の違いを結果として際立たせるような言動は、果たして賢明であるのか。橋下市長に問われているのは、その言動の当否ではなく、その言動を披露する際の「賢明さ」なのである。
 ≪中朝韓の対日批判資格を問え≫
 因(ちな)みに、中朝韓3カ国からの対日批判への対応は、そもそも「戦勝国」ですらない韓朝両国、さらには「戦勝国」の地位を継いだだけの中国が何故、あたかも自ら「戦勝国」であるかのように装って、対日批判に走っているかという「資格」を問い質(ただ)し続ければ、それで十分であろう。
 「正義」は、「戦争」や「競争」に勝ってから語るべきものである。しかし、勝ってから語られる「正義」は、大概、白々しいものでしかない。政治における「正義」とは、そうしたものである。当代日本の政界やその周辺には、「正義」、即(すなわ)ち「自らにとっての『正しいこと』」を口にしていれば、必ず受け容(い)れられると信じている「政治活動家」は、政治的スペクトラムの左右を問わず、至るところに盤踞(ばんきょ)している。
 政治家は、国家・社会にとって「必要なこと」よりも自らにとって「正しいこと」を優先させる言動に走れば、瞬時に「政治活動家」に変貌する。橋下市長の一連の発言に因(よ)る騒動の顛末が示すのは、彼もまた、その「政治活動家」の一例であったという事実であろう。(さくらだ じゅん)
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中国の奥の手は「敵国条項」中西輝政 月刊WiLL:2013年2月号 2012年12月20日発売
p32~
【1】売国的経済人の所業
■なぜか「中国側」の姿勢
■不当に扱われる日本企業
■企業見殺しの外務省
■岡田克也は「政経吻合」
■「中国市場は日本の生命線」
■世界一盲目な商売人
■カモ、東方より来る
■中国進出は狂気の沙汰(~p42)
p42~
【2】「敵国条項」という最終兵器
 アメリカ上院は11月29日、尖閣諸島に関して「日米安保条約第5条に基づく責任を再確認する」ことを国防権限法案に追加修正する案を全会一致で確認した。これは日本として大変、心強い動きである。
 とりわけ、アメリカの認識においても尖閣諸島が単に日米同盟の重視と言うに留まらず、アジア太平洋における戦略的要衝であることをこの決議は示している。
 仮に中国が尖閣を制圧し、同島に対艦ミサイルを配備すれば、日米は与那国島から石垣・宮古島の線にはもはや近寄ることができなくなる。
 となれば、東・南シナ海の結節点である台湾も落ちたも同然となり、アジアの戦略状況は一変する。また、南シナ海での米中の戦略バランスも一気に中国優勢に傾くとともに、日中対立の最前線として、尖閣だけでなく沖縄、南西諸島自体にまで一気に火が付きかねない。
 中国の狙いは、必ずしも領土や東シナ海の海底資源ばかりではない。中国にはどうしても沖縄全体を政治的に支配しなければならない理由がある。
 沖縄本島と宮古島の間の宮古水道は200キロほどの幅があるが、戦術ミサイルの発達した今日、このような狭いところを通らなければ太平洋に出られないという現状は、中国の海洋戦略にとっては決定的に不利な状況と言える。しかも、本島には強大な米空軍が基地を置いている。まさに沖縄、南西諸島周辺が中国の世界戦略にとって決定的な要地なのである。
p43~
 そのことを考えれば、中国の長期的な展望として、尖閣を陥し、沖縄を政治的に支配して駐留米軍を揺さぶり、自国の海洋戦略の拡大を目論んでいることは間違いない。
 アメリカ上院もこの中国の狙いを理解しているからこそ、この時期に尖閣について先のような決議を行ったのだろう。こうした壮大な構図に全く気が付いていないのは、「尖閣問題で事を荒立てるな」「経済を重視せよ」と叫ぶ日本の経済界のリーダーをはじめとする単なる「平和ボケ」以上に罪深い、国益よりも「経済優先」の日本人である。
■「三戦」ははじまっている
 しかも、中国はいきなり軍艦やミサイルで一気に事を荒立てるのではなく、いわゆる「三戦」、つまり心理戦、世論戦、法律戦を使う「超限戦」をすでに開始している。すでに述べたように、海洋戦略の障害である沖縄基地の米軍を撤退させるべく、日本のマスコミを使って盛んに行っているのは、まさに「対日心理戦」であり「世論戦」であろう。普天間問題に加えて、例の「オスプレイ配備反対」などもこれに当たる。
 また、日本の経済人をいま以上に骨がらみにするため、「依然として中国市場は魅力的である」と思い込ませる「心理戦」がはじまっており、「法外な”手切れ金”を払うのが中国のルールである」と突きつけるのは「法律戦」と言っていい。そして、これが一番恐ろしいことを知るべきだ。
 戦場で軍事兵器を使うだけが戦争ではない。「超限戦」や「三戦」と中国自ら称している。”戦火を交えない戦争”は、すでにはじまっているのである。
 対する日本は、こういった工作にめっぽう弱い。大正時代から、日本は中国による反日デモや暴動、国際連盟での対日宣伝活動、日本国内に手を突っ込んでの与党や世論の切り崩し工作など、軍事によらない、そして遥かに効果的な「対日攻撃」に悩まされ続けた。
 中国は相手の論理を逆用し、巧みに正面衝突を避けながら相手の動きをも利用して自国の優位をもぎ取る「水平思考」に長けており、これは当然、現在も変わらない。
 尖閣問題でも、この「水平思考」は発揮されている。たしかに、アメリカが尖閣で日米安保を発動することは疑いがない。それは、アメリカ自身の国益にとっても決定的に重要であるからだ。
p44~
 にもかかわらず、日本のメディアや識者のなかには、元外務省国際情報局長孫崎享氏のように、端的に「アメリカは尖閣問題で日本を助けることはない」という論者がいるが、こうした主張は大きな認識違いなのだ。
 だが、中国の超限戦的発想においては警戒すべき点が一つだけある。
 日本がそれを見過ごせば、日米安保を一撃で仕留める”必殺兵器”を中国に与えてしまうことになる。中国の「三戦」には、それほどの威力を秘めた「奥の手」がある。
 それは何か。
■中国が巡らせた「伏線」
 手がかりは、9月27日に楊潔篪外相が行った国連総会での一般討論演説である。楊外相は演説で、「日本は尖閣を盗んだ」と発言し、日本中を驚かせた。
 中国がこのような発言をしたときに注意すべきなのは、この発言に注目を集めておいて、他方で後々、重要となる伏線を用意していることが多いことだ。それゆえ、虚心に全体を見て本質的に何を意図しているのかに常に留意しなければならないのである。
 この演説も、一部をみれば「中国が自らの振る舞いも省みず、勝手なことを言っている」と呆れるだけの演説だが、全体を見れば実にポイントを押さえた恐ろしいほどの戦略的布石を打っているのである。
 楊外相演説のポイントは、次の3点だ。
 1、日本による尖閣国有化は、日本が再び中国の主権を侵害せんとする侵略行為である。
 2、日本のこのような行動は、第2次世界大戦後に生まれた国際秩序を破壊する行為である。
 3、日本の行為は、国連憲章の原則と精神に違反する挑戦である。
 もう、おわかりだろう。中国は国連憲章第53条、107条の「敵国条項」を使おうとしているのである。このことに気づいた時、「しまった」と私は思った。と同時に、つくづくこの国の「危うさ」を痛感した。
 過去十数年にわたって、私は敵国条項でけは一刻も早く撤廃すべき、と各種メディアで繰り返し訴えてきたが、その敵国条項がいまこの瞬間、いわば最悪の時に最悪の形で中国に利用されようとしていることが分かったからである。
p45~
 実際、中国の伏線は周到に敷かれている。その後、11月6日にもラオス・ビエンチャンで開催されたアジア欧州首脳会議(ASEM)の場に集まった世界50か国の首脳を前にして、楊外相は再びこう述べている。
「尖閣問題に関する中国政府の立場は私が国連総会で明確にした通りであるが、重ねて次の点を強調しておきたい。(尖閣国有化によって)日本は中国への侵略を行っている」
「日本は反ファシズム戦争の結果を否定してはならない」
「日本の行動は、戦後の国際秩序と原則への重大な挑戦だ」
 中国が敵国条項を使い、日本を追い込もうとする方針を固めたとみていいだろう。
■抵抗許さぬ敵国条項
 すでに周知の人もあろうが、国連憲章の該当の2条にはこう書かれている。
〈第53条
 1、安全保障理事会は、その権威の下における強制行動のために、適当な場合には、前記の地域的機関を利用する。但し、いかなる強制行動も、安全保障理事会の許可がなければ、地域的取極に基いて又は地域的機関によってとられてはならない。
 もっとも、本条2に定める敵国のいずれかに対する措置で、第107条に従って規定されるもの又はこの敵国における侵略政策の再現に備える地域的取極において規定されるものは、関係政府の要請に基いてこの機構がこの敵国による新たな侵略を防止する責任を負うときまで例外とする。
 2、本条1で用いる敵国という語は、第2次世界大戦中にこの憲章のいずれかの署名国の敵国であった国に適用される〉
〈第107条
 この憲章のいかなる規定も、第2次世界大戦中にこの憲章の署名国の敵であった国に関する行動でその行動について責任を有する政府がこの戦争の結果としてとり又は排除するものではない〉
 要するに、第2次世界大戦中、国連加盟国(中国は原加盟国、つまり創設メンバーとされる)の敵国であった日本とドイツに対して、この「敵国条項」が適用される(イタリアなどは大戦末期に連合国に寝返っているので、適用については論争がある)。
p46~
 この2国が「再び侵略戦争の動きを見せた時」、あるいは「第2次世界大戦で出来上がった国際秩序に対して、それを棄損する行為に出た時」には、国連加盟国は安保理の決議や承認がなくても、自国の独自の判断によって日本やドイツに対しては軍事的制裁を行うことができる、とされているのである。
 そして安保理やアメリカを含むいかなる加盟国も、それに対抗したり阻止したりすることはできない、とわざわざ念が押されているのである。
■照準は「日米同盟」瓦解
 この「敵国条項」を以て、中国のいう「超限戦」が貫徹されるシナリオはすでに早くから出来上がっていると見るべきだろう(日本とソ連=ロシアとの間では、91年4月の日ソ首脳会談の共同声明で「敵国条項」を適用しないことを合意しているが、中国との間にはその合意はない)。
 おそらく、中国の描く有力なシナリオはこうだ。中国が尖閣に漁民を装った特殊部隊を上陸させる。取締りのために日本が海保の巡視船を出すが、衝突が起こり、中国海軍の軍艦が沖合に姿を現す。
 これにより、後方から監視していた海上自衛隊も動き、実質、軍事衝突一歩手前までの事態になる。しかし、戦争を意味する「防衛出動」の発令は難しいから、北の工作船を追いかけた時の「海上警備行動」止まりであろう。
 アメリカの存在を頼みにしながら、日本政府が海上自衛隊に「海上警備行動」を発令し、動き出した瞬間、中国当局が次のような声明を発表する。
「中国は、国連憲章の定めを破り、再び侵略行動を開始した日本を制裁するため、国連憲章の『敵国条項』に則って軍事行動に入る」
 これにアメリカはどう反応するだろうか。上院で「尖閣諸島には日米安保が適用されるべき」と決議されたとはいえ、アメリカといえども国連憲章を無視することはできず、憲章に拘束されて、少なくとも初動が鈍るか、もしくは動きを封じられるだろう。こうなると、日本中はパニックに陥るだろう。
 そうでなくても、アメリカは尖閣で日中が揉めることを望んでいない。当然のことだが、他国の領土のためにアメリカ兵士の血が流れることも、アメリカ国民には受け入れがたい。ましてや、敵国条項を突きつけられれば、国際法を重んじるアメリカ世論の風向きは一気に「尖閣に介入すべきでない」との方向に傾く可能性が強い。
p47~
 しかしそうなれば、日本人の日米安保への信頼は根底から揺らぐかもしれない。そして、これこそがまさに中国の真の狙い、つまり日米分断が一挙に達成される瞬間である。
 それは大げさに言えば、「戦後日本が終わる時」と言えよう。いずれにせよ、中国によって敵国条項を持ち出された時点で、日本国内も総崩れになりかねない。そしてその瞬間、「尖閣は中国のもの」となる。
 ここで分かるのは、中国が尖閣を歴史問題化しようとしていたのは、必ずしも韓国の竹島問題やロシアの北方領土問題と足並みを揃えるためだけではなかった、ということだ。日本の尖閣への実効支配の強化を「再侵略」と位置づけ、アメリカを国際法的に抑止し、日本を決定的に孤立させる中国の秘密兵器それが敵国条項なのである。
■何と愚かな日本外交か
 それにしても、なぜいまだに、第2次世界大戦当時の敵国条項が存在しているのか。
 実は1995年、国連創立50周年の年に日本とドイツが共同提案国となり、この条項を憲章から削除すべしという決議案を国連総会に提出している。そして、総会では賛成多数で採択されたが、批准書を寄託した国は定数に達しなかった。
 ここに国際社会の本音と建前を見る思いがするが、いずれにしても、この敵国条項は時代遅れ(obsolete)であり、削除に向けて作業を開始すると謳われていても、総会の決議だけでは何の効力も有しない。つまり、17年が経過した現在でも、この条項はいまだに効力を保っているのである。(略)
 当時、私は「常任理事国入りなど中国が賛成するわけがないから、動くだけ無駄である。その余力を、一刻も早い敵国条項の撤廃に向けるべきだ。そうしないと、この条項の放置は日本の安全保障にとって大きな脅威となるから」と多くの論文に書き、いくつかの論壇誌でも発表したのだが、外務省関係者は「中西さん、知らないんですか。この敵国条項はもう完全に死文化しているんですよ」と安易至極な態度であった。
p48~
 こうした姿勢は、戦後の外務省の体質に深く根ざしている。外務省出身で国連大使にまでなった小和田恆(ひさし)氏が「ハンディキャップ国家論」を説いたが、そのよって立つ思想は憲法前文、9条であるとともに、敵国条項の放置もこの思想と共鳴し合うものだったのである。なぜなら、「諸国民の公正と信義に信頼して」日本の安全保障を委ねるのだから、あの侵略戦争をした日本は敵国条項の非を訴えるべきではない、というわけである。
 この思想の流れが、現在も日本の外務省に通底しているのではないか。「常任理事国入り」にはあれほど熱心に取り組みながら、敵国条項の問題は外務省内ではいまだに「タブー」扱いされているからである。しかし、この条項を放置しての「国連中心主義」の外交など、もともと成り立ちえないものだったのである。何と愚かな日本外交であったことか。
■外交の機先を制すべし
「中国が敵国条項を使って日本を危機に陥れようとしている」---実は、このことを活字にすることにはこの数か月、大いに悩んだ。
 第一に、中国に逆利用されはしないか、と危惧したためである。
 第二に、中国だけでなく、かねてより「尖閣は日本固有の領土ではない」「アメリカは尖閣問題では決して動かない」と言い続けてきた前出の孫崎享氏ら、親中派に論拠の補強材料を与えることにもなりかねないからだ。
 だが11月以降、ここまであからさまに中国が動いてきた以上、もはや一刻の猶予もない。(略)
 外交は機先を制さなければならない。外務省、政府、そして官邸が一体となって、早急に敵国条項の実質的空文化を再確認する決議を国連の場で強力に推進し、あわせてアメリカ政府や国際社会に対し、「敵国条項を中国が持ち出す可能性がある。総会で、撤廃に向けたより強い失効決議に賛成してもらいたい」と働き掛け、「このままでは中国に国連憲章を悪用されることになり、アジアの平和は瓦解する」と広く、そして大きな声で国際世論に訴えるべきだ。多くの欧米紙に一面広告を出してもいい。
p49~
■「国連主義」の虚妄
 事態は一刻を争う。経団連会長のように、経済活動の停滞だけを心配して中国のご機嫌伺いをしている場合ではさらさらないのである。急がなければ、戦後日本が「平和の理想」と崇め奉ってきた国連憲章によって、日本が武力による攻撃を受け、しかも同盟国のアメリカも手が出せないという絶体絶命の危機に追い込まれかねないのである。
 「国連」の名のもとで中国の「軍事制裁」を受け、多くの日本人が血を流し、領土も奪われる事態を迎えることになれば、日本にとってそれは何という悲劇であろうか。「戦後日本」という虚妄を、これほど劇的に示す例はないだろう。
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石原慎太郎著『新・堕落論』 新潮選書2011/7/20発行  
p29~
 さらにその結果、あの戦争を起こした日本だけを一方的に悪人とした、いわゆる東京裁判史観が、戦後において日本の近代史、現代史を考える基準にされてしまったのです。
 東京裁判でも外国人を含めて一部の弁護人が、あの戦争の中でアメリカが行った戦争における非道、つまり戦争の在り方を既定したジュネーブ条約違反を列挙してみせたが相手にはされなかった。
p30~
 ジュネーブ条約では戦闘によって意識的に非戦闘員を殺してはならぬとありますが、アメリカの原爆投下は一瞬にして20万人を超す日本人を殺戮してしまった。
 その他の例としても(中略)制空権を失っていた首都東京に、アメリカの空軍司令官のルメイは、それまで高射砲の届かぬ亜成層圏を飛んでいたB29を超低空の2、3百㍍を飛ばせ、焼夷弾による絨毯爆撃をさせ一晩で十万人を超す都民を殺戮してしまった。
 これは相手側の記録にもあるが、その計画に一部のスタッフはこれはあきらかにジュネーブ条約違反だと反対したが、ルメイは「日本は薄汚い国だから、焼いて綺麗にするのだ」と公言しことを行ってしまったのです。その相手に日本は戦後、航空自衛隊の創立に功あったとして勲章を贈ったのだから馬鹿みたいに人のいい話だ。
 日本及び日本人が真に自立するために絶対に必要な精神的要件とは、連合軍が勝利者として一方的に行った東京裁判の歴史観を払拭することです。
p31~
 そのための格好のよすががあります。敗戦後日本を統治君臨したマッカーサー元帥は、帰国後アメリカ議会で、日本が引き金を引いた太平洋戦争は、歴史的に、あくまで自衛の戦争だったということがわかった、と証言しているのです。その訳は、その頃になって、日本を開戦に追い込んだ悪名高いハル・ノートは国務長官だったコーデル・ハルが書いたものではなく、実は彼のスタッフだったホワイトという男がものしたということがわかり、さらにマッカーシー上院議員による赤狩りの中でホワイトがなんとコミンテルンの隠れたメンバーだったことが露見しホワイトは自殺に追い込まれた。
 モスクワの密命を受けたスパイが、ソヴィエトの南進の野心を遂げさせるために日本を戦争に追い込み、実際にソヴィエトは敗戦のどさくさに南下して日本の北方領土をかすめとってしまったのです。
 ハル・ノートとは、日本が近代化以来行った戦争、日清戦争、日露戦争、第1次世界大戦での勝利の結果獲得した海外領土と種々権益を一切放棄して返さぬ限り、アメリカ、イギリス、フランスの国々は一切の物資の供給を停止するという過酷なものでした。戦争に反対し続けていた昭和天皇もそれを見て、ここまでいわれるのなら覚悟せざるを得まいと決心をされたのです。
p32~
 アメリカ議会における、かつて占領時代の統治者マッカーサー元帥の重要な証言は、東京裁判を行わしめた当事者としての画期的な認識を示したものなのに、なぜか日本の政府、特に文部省はその重要な史実を教科書に載せることは禁止してきました。これは敗者の卑屈とか弱腰などというよりもまさに売国的な指導でしかありはしない。
 日本は売られた喧嘩をやむなく買ったのに、有色人種ゆえに野放図な侵略者として位置づけられそれを一方的に断定した東京裁判のトラウマから未だに抜けきれずにいるのです。自らのことながら、情けないというより哀れといわざるを得ない。 *強調(太字・着色)は来栖
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