「民主政治の根本を破壊した野田政権」平野貞夫/官邸前4万5千人【反原発】デモ~大手メディア報道せず

2012-06-26 | 政治

「日本一新運動」の原点―115
 日本一新の会・代表 平野貞夫妙観
 6月23日(土)の早朝、知人の電話で眼を覚ました。前夜、BS・フジの「プライムニュース」に出演した私の発言への感想だった。布団に戻るにも中途半端な時間になったので庭に出たところ、季節の花「あじさい」が咲いていた。小ぶりの花を採り仏壇に供えると携帯電話が鳴った。利根川を越えた常総市で、思想信条に筋を通して活動している染谷正圀氏からだった。日本一新の会の重鎮維持会員である。
 いきなり「紫陽花(あじさい)革命を知っているか」という。「紫陽花はいま仏壇に供えたばかりだ」というと「やっぱり縁があるんだ」と言って、前夜、首相官邸前で結集した4万5千人の原発再稼働抗議行動の状況を説明してくれた。「60年安保以来初めての民衆の自発的行動だ。民主主義の危機を民衆は気がつきはじめた。紫陽花革命といわれている。この動きが日本を変えるかも!」と興奮した聲が聞こえてきた。
■民主政治の根本を破壊した野田政権
 野田政権は、6月20日に「消費増税関連法案」をめぐる民主・自民・公明3党の修正合意を了承した。22日には「関西電力大飯原発の運転再稼働」を決定した。この2つの問題は、21世紀のわが国のあり方を決める重大な政策課題である。野田首相は「決められない政治から脱却する」といって、「決めてはならない国策」を決めた。しかも、民主主義の原理と手続きを冒涜したうえである。
 野田政権の面々だけではなく、事実上の連立政治を始めた自民党も公明党も、自分たちの行動が民主主義だと思い込んでいる。民意が尊重されない政治に国民は危機感を募らせるようになったのだ。「消費税増税」と「原発再稼働」の2つの問題に共通するのは、国民の生命と生活に直結する問題があることだ。民・自・公三党合意による「消費税増税」が約3千万人の生活困窮者の中から、孤独死や自殺者を増やすことは必至である。
 福島第一原発事故の原因究明をはじめ、根本対策も放置し、被災地域の放射能除染は環境省と原研(日本原子力研究開発機構)の指導で、税金で新しい放射能廃棄物をつくっているのが現実だ。さらに除染利権の発生に被災地の人々の怒りは頂点に達している。その最中で野田首相は「大飯原発の運転再稼働」を決めた。
 日本列島が異常な地殻変動期に入り、新しい知見で稼働原発の直下に活断層があることが判明したにもかかわらず、政府関係機関責任者の忠告も無視し、仮の安全基準というまやかしで再稼働とは、民主政治以前の問題である。国民の生命を無視する原発資本主義を優先させる野田政権をこのまま放置してよいだろうか。これまでの民主党の理念「国民の生活が第一」は十分ではない。「国民の生命と生活を守る政治」の確立が必要である。この実現こそが「紫陽花革命」ではなかろうか。
■野田政治の主役3人の危険な政治家
 誰がどんな屁理屈をいおうとも、消費税増税をめぐる民・自・公の三党合意は、わが国の議会政治を崩壊させたものだ。多くの国民は本能的に理解して、民主政治の危機感を募らせている。肝心の政治家たちの多くが、このことがわかっていない。これがわが国の悲劇だ。誰のどこが問題なのか、代表的な例を挙げて説明しておこう。
①野田首相 国民と約束した社会保障の改革や国会議員の身を切る改革を放棄して、10%の消費税増税を「民・自・公」で合意した根本原因は何処にあるのか。BSフジでもいったとおり、野田佳彦という政治家は、選挙区では民主党の理念や政策で選ばれていないことだ。千葉県第4区の船橋市議会議員定員50人のうち、民主党議員3人、うち野田首相の弟は民主党員だが何故か公認を受けていない。船橋市から選出されている県議会議員の定員7人のうち、民主党所属議員は1人だけだ。因みに千葉県下には17名の民主党県議会議員がいる。要するに民主党の党勢はどうでもよく、自分が当選することだけを至上課題とした政治家なのだ。その結果、自民党と公明党の支持層の票で当選しているといえる。
 平成21年3月の千葉県知事選挙で、民主党県連の野田選対委員長は、当時の古賀誠自民党選対本部長のシナリオに従い、富田公明党衆議院議員の誘いに乗り白石候補を民主党県連推薦と決めた。政権交代を訴えて全国で同志が頑張っている時、平気で自公民統一候補をつくろうとした。この裏には羽田空港埋め立ての山砂をめぐる利権問題があった。財界人と有名ジャーナリストなどからの再三の注意をうけ、私が長浜県連代表に提出した公開質問状が新聞で報道され、白石氏を自公民統一候補とすることを潰したことがあった。野田首相にとって、民主党を潰す方法で、消費税増税で自公と連携することに何のためらいもない異常心理の人間なのだ。
②長妻昭 政権交代の功労者の一人だ。厚労大臣就任式でマニフェストを手で掲げて挨拶した勇士を国民の多くは忘れてはいない。3党協議のメンバーとなった頃、長妻議員だけは政治家として真っ当な主張をすると私は期待していた。ところが、合意ができた直後のテレビなどでの言い訳は、政治家失格では済まされない人間失格だ。まず、嘘をついてはいけない。「社会保障の改革理念は譲っていない」と幾ら力んでも、自民党の社会保険制度に逆戻りしたことは明らかだ。このことは、25日(月)の衆議院社会保障・税特別委員会で、一方の当事者である町村委員がはっきりと述べているから、民主党側の「嘘」は自明である。
 さらに、「参議院がねじれているので、あゝなるのは仕方がなかったんだ」とは呆れたものだ。参議院がねじれているから魂を売ってよいのか。野党の自民党マニフェストの消費税増税を実現し、与党民主党のマニフェストで約束した社会保障などの改革を放棄するとは、どう考えても政党政治とはいえない。長妻議員は政治の本質を理解していないのだ。妥協してよい部分と、してはならない心臓部の区分を知らないようだ。形式論理だけで政治がやれると思い込んでいるところに問題がある。残念ながらこれでは「バージョン落のコンピュータ」と変わりはない。政治家を辞めて欲しい。
③前原誠司 無責任さと論理の軽薄さで論評には値しないが、二つだけ指摘しておく。まず「両院議員総会は政策を論議決定するところではないので、議員懇談会で自由に意見をいってもらう」と放言したことだ。「党大会に次ぐ党の議決機関を両院議員総会とし・」と党規約にある。党大会は政策を論じ決める最高機関だ。これに反論しない国会議員もどうかしている。
 もう一つ、人間の行う会議で、議長職の自分に一任を得るため、「自分で提案し自分で宣言する」ことを2度もやった。これは会議に参加した人間に対する冒涜である。最小限、形だけでも第三者が一任動議を出し、例えそれが混乱しても諮ることが必要だ。よって前原氏が招集した会議はその体をなしていず、絶対的無効である。
 この他にも、岡田克也副総理が「総理が生命を賭けるといったことに、党員が反対するのはおかしい」とテレビで発言している。総理の判断が、議会政治の原理に反し、国民との約束を破り、自民党に身売りして国民生活を困窮させることがわかっている問題だ。江戸時代の有能な家老なら、野田首相を座敷牢に入れて国民を守る側にたつだろう。民主政治とは「阿呆ども」が牛耳るとこんなことになる。
■政治学者の阿呆さにも呆れる!
 政治学者で最高の見識を持つと、私が日頃から尊敬している山口二郎北大教授が、6月24日の東京新聞で『さようなら小沢一郎』というコラムを書いていた。「政治の世界の最終的な判断基準は、だれが大きな敵かを見極めることである」と論じ、野田首相は最大の敵ではなく、自民党だと指摘し、民主党を割ろうとする小沢氏を批判している。狙いは消費税増税への反対者を抑えることにあるようだ。野田佳彦という政治家のテレビで見えるところしか研究していないようだ。政治学というのは政治家や政治現象の深層部分、真実を究明することにある。山口教授は幽体分離している野田首相の実態が見えていないようだ。原子力基本法で「核武装」に道を開く改正や、ダウンロード法で「ネット世論」を弾圧しようとしていることもお気づきではないようだ。
 実は、5月末に日本の政治学者が集結したある学会に出て討議をしてきた。その時に感じたのは政治学者の見識・人間的レベルの劣化だ。これでは日本の政治が良くなるはずはない。彼らに学んだ人たちが政治家になり、マスコミなどで活躍しているわけだ。私はこの日から「松下政経塾出身政治家」を批判することを少なめにしている。
追記
 ☆本号は無限拡散希望につき、転載許諾を必要としませんので、お取り扱いをよろしくお願い申し上げます。2012年06月25日
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官邸前4万5000人の衝撃 野田首相にトドメ刺す市民デモ地獄 
日刊ゲンダイ2012年6月25日 掲載

        

「アラブの春」にそっくり
 スゴいことになってきた。先週末の22日夜、首相官邸前で行われた反原発デモのことだ。夕方から始まった抗議活動に、仕事を終えた一般市民が次から次に参加。4万5000人の巨大なうねりが官邸を包囲し、「原発再稼働反対!」「野田やめろ!」の大合唱が永田町を揺るがしたのだ。
  実は、この官邸前デモは3月にスタートして以来、毎週実施されてきた。ツイッターやフェイスブックで情報が拡散。回を重ねるごとに参加者が増え、今回、ついに4万5000人――。政治に無関心だった若者たちも熱くなっている。
  国民が怒るのも当然だ。大マスコミの世論調査でも「再稼働を急ぐな」の声は7割に達している。それなのに、野田首相は「国民生活を守るため」とヘリクツをこねて、勝手に再稼働に突っ走った。おまけに、稼働準備が始まっている大飯原発では、不気味なトラブルが頻発している。19日には発電機の冷却水の水位が下がって警報音が鳴り響いたばかりだが、24日も、送電異常を知らせる警報が26回も鳴った。官邸前デモに参加したジャーナリストの田中龍作氏が言う。
 「このデモは組織の動員ではなく、一般の市民がツイッターなどを通じ、草の根で集まっています。その人数は毎回、記録を更新し続けている。次回はさらに増えるでしょう。エジプトやリビアで市民がネットを通じてデモを呼びかけ、政権を転覆させた『アラブの春』にそっくりです。あのときも、新聞やTVがウソばかり報じていることに国民が怒り、ネットで革命の火が広がっていった。今回のデモを、国内メディアの多くは無視していますが、神経を疑ってしまいますよ」
  実際、海外メディアもデモを報じたのに、日本でまともに報じたTVはテレビ朝日くらい。4万5000人が官邸を包囲したのに、NHKも報じないのだからア然だ。
  しかし、いつまでも見て見ぬふりができるものか。国民の怒りのノロシはあちこちで上がっている。23日には新宿でも再稼働反対のデモ行進が起きたし、東京・明治公園では2万4000人が集まり、デモを行った。
<地元・千葉でも「NOだ!ヤメロ」の大合唱>
 極め付きは24日、野田の地元の千葉・船橋で開かれた抗議デモだ。2200人が「野田はNOだ!」のプラカードを掲げ、原発再稼働や消費増税反対を訴えた。かつての支持者が「09年の衆院選では野田に投票したが、裏切られた。あのときの票を返せ!」と叫んだほか、「地元の恥だ!」の声も飛び交った。デモ参加者らとハイタッチしていく通行人の姿も目立った。
  野田は26日に消費増税法案の衆院採決を強行するつもりだが、今週末にも、再び官邸前で大規模デモが行われる。再稼働と増税に激怒する市民であふれかえるのは必至だ。国民をナメたら、とんでもないことになる。
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「民主党批判は逮捕/言論・思想の弾圧/沈黙するマスメディア」=今、この国(日本)で起きていること 2012-01-20 | メディア 
 民主党批判で逮捕。言論思想弾圧ここに極まれり
対日戦略が虚構の上でエスカレートさせる反日ムーブメント~西村幸祐氏
JBpress 2012.01.20(金) 「マット安川のずばり勝負」1月13日放送
マット安川 今回のゲストは評論家・西村幸祐さん。くすぶり続ける日韓・日中間の外交問題をはじめ、民主党が掲げる各政策の課題などについてうかがいました。
■反日ムーブメントの背後にうごめく中国共産党の対日戦略
西村 現在の東アジア情勢を考える上で、まず思い出してもらいたいのが2004年に北京で行われたサッカー・アジアカップの決勝戦です。日本が優勝した時の反日のムーブメントはすごいものでした。
 あの後、反日の動きは収まっていたように見えます。実際、数年間は収まっていたんですけれども、去年からは違います。つまり本質的な問題は何一つ変わっていないということです。
 今、中国では、チャン・イーモウ(張芸謀)監督の南京大虐殺を扱った映画(『ザ・フラワーズ・オブ・ウォー(金陵十三釵)』)が興行成績ナンバーワンです。去年の暮れからですが、その映画が流行りだしてから、ネット上では「小日本人なんかみんな殺せ」といった声が飛び交っています。
 最近の反日ムーブメントの特長は、官制ではないものがネットなどでどんどん出てきていることですが、ただチャン・イーモウにそういう映画を作らせたというのは、中国共産党の戦略があります。
 アジアカップの頃も、実はそういう背後の戦略がありました。あの時は国連の常任理事国に日本が立候補するという問題がクローズアップされていた。その時にアメリカにある中国の反日組織、世界抗日戦争史実維護連合会という団体が裏でバックアップし、世界的に署名を集めて日本の常任理事国入りに反対した。
 去年の暮れからの動きを見ていると、チャン・イーモウの映画や、一昨年の尖閣衝突事件、台湾の総統選挙なども含めて、そういった共産党の戦略という裏も見えてきます。
■マトリックス(仮想現実空間)上に築かれた中韓の反日感情
 もう1つ加えると、2007年にアメリカの下院で、日本に対しての非難決議案が上程され決議されました。121号決議と言いますが、日本の従軍慰安婦はけしからん、世界史的に例を見ないような犯罪を日本は行ったということが書かれています。
 それはほとんど政治的効力はない決議案ですが、非常に宣伝効果があるわけです。その決議案を一生懸命通そうと頑張っていたのがカリフォルニアの議員で、選挙区には中国人や韓国人が多い。その当時と今は若干似ていて、韓国の日本大使館の前に急に慰安婦の銅像ができました。
 しかし、今日本を取り巻いている反日というのは、実は「マトリックス」であることに日本人は気がつかなければいけません。日本大使館前の慰安婦の像はまさにバーチャル。仮想現実、虚構です。
 先日の靖国神社に火をつけたという男の事件も、「マトリックス」としての反日が一番極端に出た例です。虚構、バーチャルな仮想現実から日本が憎くなってとんでもない野蛮なことを行った。
 ちなみにKBS(韓国放送公社)が、この男が日本大使館に火炎瓶を投げるところを撮っている。おそらくKBSは日本大使館に火炎瓶を投げることを知っていて取材したのでしょうが、大事な点は、この男が靖国神社に火をつけたことをKBSに言っているということです。
 そうするとKBSは取材行為として犯罪者を泳がせていたことになる。韓国の公営放送がですよ。これに対して日本政府はどういう対応を取るのかというと、何一つ取っていない。
■進行する文化的虐殺。深刻さを増すチベット弾圧
 今日どうしても言いたいのは、今チベットがひどい状況になっているということです。本当にひどい状況です。去年1年間で、十数人のチベット僧が焼身自殺しました。その中には尼さんもいます。今年になってからもありました。かなり高僧な方です。
 結局、それが何を意味しているのか。80年代末期の銃や武力による弾圧ではなく、そういったものが終わった上で、ダライ・ラマ法王がいつも言っている文化的虐殺というものが進行しているということです。
 チベット語は教えない、ダライ・ラマの写真を見ることもできない。領土の侵略だけではなく、言葉や文化の抹殺が進行している中で、それだけ追い詰められているからこそ、仏教では禁じられている自殺を僧侶がしているわけです。
 そういった文化的虐殺はチベット自治区だけではなく、もともとチベットだった青海省などでも行われています。四川省も半分はチベットです。だからパンダは中国のものじゃない、チベットの動物です。このチベットの問題は非常に大きいです。
民主党批判は逮捕。言論・思想の弾圧と沈黙するマスメディア
 今、民主党本部前で日の丸を持って歩いていると捕まってしまいます。スタジオの中が一瞬凍りついたように、みんなエッて顔をしてますけど、冗談じゃありません。一体どこの国なんだろうと思いますが、ネット上では常識です。
 実際に捕まった人が動画を撮っていて、警官とのやり取りなどが全部保存されています。その人は普通の人です。民主党に抗議をするために国旗を持っていたというだけで捕まったんです。
 それから昨年12月に新橋で民主党の立会演説会があったんですが、駅前に集まった人の中で「民主党が地上から無くなりますように」というプラカードを掲げて持って歩いていただけの人が逮捕されました。
 プラカードを掲げて民主党の議員が演説している街宣車の方に近づいていったら、民主党の職員らに取り囲まれて、警官のいるところに連れていかれた。そんなことをされたら、警官とのやり取りでちょっとイザコザになるじゃないですか。その時のささいな言動で逮捕されてしまった。(YouTube)
 それで2泊3日拘留された。しかも国選弁護士もつけられなかったんです。実刑にはならなかったですが、それでも2泊3日なんて考えられないことです。これはたいへんな弾圧であって、北朝鮮のことを笑えません。
 それなのに、マスコミは報道しない。こうした出来事のような言語道断な、とても言論の自由、思想の自由があるとは思えないような危険な状況をマスコミが報道しないというのは、本当に深刻です。
「マット安川のずばり勝負」1月13日放送
西村 幸祐(にしむら・こうゆう)氏
ジャーナリスト、作家。音楽雑誌編集などを経て、主にスポーツをテーマに作家、ジャーナリストとしての活動を開始。2002年の日韓ワールドカップ取材以降は拉致問題や歴史問題などにも分野を広げ、執筆活動を行っている。2011年4月『JAPANISM』を創刊、編集長を務める。
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この国が恐ろしいのは、総ての権力が同じ方向を向いて走り、正義より自分たちの足元ばかり気にしている点だ2011-10-03 | 政治/検察/裁判/小沢一郎/メディア
 小沢「抹殺裁判」わが国はいつからこんなに恐ろしい国になったんだ
【これでいいのか暗黒ニッポン】秘書3人の「とんでもない有罪判決」に誰もが口をつぐんだ

 ならば、小沢一郎を贈収賄で逮捕したらどうか。秘書3人に対する東京地裁判断によれば、小沢はゼネコン談合の元締めで、見返りに1億円の闇献金を受け取った重罪人だ。しかし、判事も検察も、「アイツは大悪人」と吠え立てる新聞・テレビや野党でさえも、そうはいわない。「法と証拠」に基づく公正な裁判だと誰も信じていないからだ。目的は「小沢の政界退場」のみ。日本は恐ろしい国になった。
*裁判長は「検事の身内」
 小沢一郎・民主党元代表の元秘書3人の判決内容は1週間も前から司法記者クラブにリークされていた。
 「全員有罪で禁固刑が出される。判決文は相当長いものになる」
 という内容で、もちろん政界にも広く伝えられていた。日本の司法が、いかに政治勢力、行政権力、報道権力と癒着し、最初から出来レースで進められているかを示す“証拠”だ。
 情報通り、9月29日、登石郁郎裁判長は3時間以上にわたって判決文を読み上げ、石川知裕被告以下3人全員に執行猶予付きの禁固刑を下した(3人はただちに控訴)。
 「異例の法廷」だった。検察が提出した証拠のうち、石川被告らの調書11通を「不正な取り調べが行われた」と認定して不採用にしており、一時は「無罪判決確実」とみられた。なにしろ、もともと物証のほとんどない裁判で、検察の頼りは、脅しや不正によって作り上げた調書ばかりだったのだから当然である。村木事件で証拠のFDをを改竄して冤罪事件を起した前田恒彦元検事が取り調べを担当し、石川知裕は別の検事が不正な取り調べを行った模様を録音していた。
 この奇怪な判決文を書いた裁判長の経歴に、ヒントがあるかもしれない。
 登石裁判長は93年から3年間、法務省刑事局付検事として勤務した経験を持つ。裁判所と法務・検察の人事交流(判検交流)は毎年、数十人規模で行われており、かねてから「99・9%有罪」という日本の「検察負け知らず裁判」の温床だと批判されてきた。
 そうした声も意識したのだろう。裁判官が法務省に出向する場合、ほとんどが民事局で、刑事局は少ない。法廷で顔を合わす検事と隣の席で仕事をするのは、いかにも癒着に見える。が、登石氏はその数少ない1人だった。その“貴重な人材”が検察の威信をかけた裁判うを担当し、現場の検事からは「これで勝った」と喝采が出たのは偶然なのか。
 結果を見て思えば、登石裁判長は最初から判決を決めていたのではないか。だからこそ証拠不採用で「検察に対しても厳しい姿勢」を演出し、癒着との批判をかわそうと考えたなら筋は通る。
 判決のおかしさは、「小沢は大悪人」と呼ぶマスコミや野党、そして検察にもよくわかっている。だから、はっきりと「談合の見返りに裏献金を受け取った」と認定されているのもかかわらず、これを「贈収賄事件」という者が出てこない。
 新聞の論調も判決直後は威勢がよかったが、その後は「野党が証人喚問を要求」などと、ずいぶん及び腰である。
 「さすがに判決文を読んで、社内やクラブ内でも、これはヤバイんじゃないかという声が多かった。報道も慎重にしている」
 民法司法クラブ記者は声を潜めて語る。そう思うなら、「慎重に小沢批判」ではなく、堂々と裁判所批判」をすればいいが、そんな度胸はどこにもない。
*「同じ罪状」は枚挙に暇なし
 裁判とは、「法と証拠」に基づいて進められるべきものだ。それをしないのは独裁政権か、民主主義以前の社会である。日本はどちらだったのだろうか。
 「法」の観点から、専門家は判決に強い疑義を提起している。
 小林節慶応大学法学部教授(憲法)は刑事裁判の原則に反すると指摘する。
「判決は憲法31条に基づく『推定無罪』の原則をないがしろにしている。今回は逆に、『疑わしい』ことを理由に有罪判決が出ている」
 判決文には「推認される」「~と見るのが自然」など、裁判官の心証だけで重要な争点が事実と認定されている箇所が非常に多い。
 落合洋司弁護士は、その推定のずさんさに、元検察官らしい視点で大きな危険を見出す。
 「裁判官が石川、池田両被告の調書11通を不採用にしたことで、3被告の共謀を示す証拠と証言が何もなくなった。ところが、判決は『会計責任者だから知っていたはず』『強い関心を持っていたはず』といった程度の推論を重ねて共謀を認定している。『合理的で疑い得ない立証』は不十分です。こういった手法が採用されれば、冤罪が生み出される危険が懸念されます」
 次々と発覚する冤罪事件の共通する原因は、検察の「自白調書主義」と裁判官の「検察絶対ドグマ」だった。それが全く改められなかったのだから、検察関係者たちが「画期的判決」と膝を打ったのも道理だ。
 法律論でいうなら、もうひとつ完全に無視されたのが「法の下の平等」だ。
 公判では、陸山会の土地購入が正しく報告されていたかという容疑(これ自体が形式犯罪でしかないが)とともに、西松建設からのダミー献金事件も併せて審理された。
 ここでも検察側の立証は完全に腰砕けになり、検察自身が証人に立てた西松建設元部長が、「政治団体はダミーではなく実体があった」と証言した。ところが判決は、「政治団体としての実体はなかった」とし、違法献金だったと認定した。
 では百歩譲ってそれが正しいとしよう。
 問題の西松建設の政治団体からは、小沢氏以外にも自民党の森喜朗・元首相、二階俊博・元経済産業相、尾身幸次・元財務相、民主党の山岡賢次・国家公安委員長、国民新党の自見庄三郎・金融相をはじめ多くの政治家が献金やパーティ券購入を受けている。当然、彼らも小沢氏と並んで違法献金を立件されなければならないはずだ。
 ところが検察は、森氏や尾身氏ら自民党実力者には捜査さえ行なわず、二階氏については会計責任者を事情聴取しただけで不起訴にした。
 それに、このケースのような企業や業界が作る政治団体は、どこも同じような運営をしている。これがダミーというなら、恐らく政治家の9割以上が違法献金を受けていることになる。
 また、陸山会(小沢氏の政治資金管理団体)が違法だと断じられた政治団体による不動産取得についても、町村信孝・元官房長官は政治資金で不動産を購入し、堂々と政治資金収支報告書に記載していた。しかも町村氏の場合、買った不動産は後に自宅として格安で買い取ったのである。さらに、みんなの党の江田憲司・幹事長はじめ、素知らぬ顔で小沢批判を繰り返す政治家のなかに、20人以上の「不動産購入者」がいる。
 今回、大問題のように論じられている収支報告書への「期ずれ記載」や「不記載」に至っては、まさに枚挙に暇がない。2011年の政治資金収支報告書の修正は現在までに約500件にも達している。すべて会計責任者を禁固刑にすべきだ。
 そもそも、小沢氏が問われた個人的な運転資金の貸付など、どの政治家も報告書に記載していない。小沢氏だけが正直に書き、それが「書き方が違う」と断罪されているのである。
*「4億円の原資」真相証言
 「証拠」の面では、判決はもっとデタラメだ。
 登石裁判長は、水谷建設から小沢氏側への1億円闇献金を認定した。
 ダム建設工事に参入するため、当時の社長が04年10月5日、石川被告にホテルの喫茶店で5000万円を渡し、さらに05年4月19日に、大久保被告に5000万円を渡したという。
 そう推定された根拠は、当時の社長が「渡した」と証言したことと、当日の喫茶店の領収書があっただけ。一方で、元社長の運転手の業務日誌にはホテルに行った記録はなく、社長から報告を受けていた同社の元会長も、「会社から裏金が出たことは事実だが、渡されたとは確認していない」と証言し、元社長による横領の疑いを強く匂わせた。
 例によって裁判長は、元社長の証言と領収書を「信用できる」、受け取りを否定する被告らの証言は「信用できない」として、あっさり裏金を認定した。
 よく考えてもらいたい。表ざたにできない違法な献金を、社長が1人で紙袋に入れて持っていき、政治家本人もいない、しかも衆人環視の喫茶店で、秘書に「はい、どうぞ」と渡すことなど考えられるだろうか。
 「裏献金を渡す場合、渡すほうも受け取るほうも、カネが行方不明になることを1番恐れる。あとから、“そんなカネは知らん”となっても誰も真相解明できないからだ。だから受け渡しの際には双方とも複数の幹部が同席して秘密を共有し、相互監視する。密室でやることはいうまでもない」
 自民党のベテラン秘書はそう解説する。この通りの場面がバレた珍しいケースが、自民党を揺るがした日歯連事件だった。
 ところで、そもそも検察は、土地購入に充てられたとされる「4億円」の原資に闇献金が含まれていたかどうか立証していない。それなのに地裁が無理に闇献金を認定した理由は、この4億円を「原資を明確に説明することが困難」(判決文)としないと、なぜ収支報告書に記載しなければならないか、という動機が説明できなくなるからだ。
 それにしても、不記載とされたのは「4億円」を借り直したり、返済したりした1部のやり取りだけで、現に報告書には「小澤一郎借入金 4億円」と記載されている。検察や裁判所の見解によれば、小沢氏の事務所では、表に出せないカネを報告書に堂々と記載するのだという。どう繕っても無理筋の解釈なのだ。
 本誌は検察もマスコミも明らかにできなかった4億円の原資について、10年2月12日号で明らかにした。小沢氏の父・佐重喜氏の代から取引していた旧安田信託銀行(現・みずほ信託銀行)神田支店の当時の担当者への直接取材に成功し、小沢氏が父から相続した個人資金を「ビッグ」という貸付信託で運用し、解約時には元利合わせて少なくとも3億6000万円の払い戻しを受けていたという証言を得た。しかも、当時の貸付信託では利息分の記録が残らず、検察が「4億円の原資が足りない」と考えたのは、利息を見落としていたからだろう、というプロならではの指摘もあった。
*小沢の罪状は国家反逆罪か
 今回の事件が小沢事務所ぐるみの贈収賄であるなら、ただちに小沢氏本人を含めて容疑者を逮捕すべきだ。それこそが政治浄化につながる。が、第1章でも触れたように、新聞・テレビもこれが本当に贈収賄だとは思っていない。「ゼネコン裏金 認定」(朝日)などと報じながら、なぜか政治資金規正法違反より重大な公共事業をめぐる贈収賄事件を独自に検証しようとしないのがその証拠だ。
 わかりやすいのがTBSである。同局は検察が小沢氏への事情聴取に乗り出した昨年1月、「ウラ金献金疑惑、居合わせた人物が核心証言」と銘打って、水谷建設元社長が石川被告に5000万円を手渡した場に同席したという人物の証言を“スクープ”した。ところがその後、この証言は2度と放映されていない。以前、本誌が「放映しないのか」と問い質した際も、「何ともいえない」と尻込みした。つまり、ガセネタだという自覚があるのだろう。
 今回、思いがけず裁判所がそれを追認してくれたのだから、今こそTBSは封印した“スクープ”をまた出せばいい。今度はお墨付きがあるのだから、「これが真相だ」と押し切れるかもしれない。が、そうはしようとしない。
 ここに、この事件の最もどす黒い裏がある。
 つまり、マスコミ、政界、そしていまやそれらを完全に掌握してコントロールする霞が関の巨大権力の目的は、政治浄化でもなければ犯罪の立件でもない。「小沢の政界退場」さえ実現できれば、あとはどうでもいいのである。
 新聞や野党の言葉をよく見ればわかる。「小沢は議員辞職せよ」とはいっても、「贈収賄で逮捕せよ」とは決して言わない。小沢氏が、それら既存権力に20年にわたって嫌われ続けてきた経緯と理由は、ここで述べる紙数はない。が、小沢氏を支持する国民も、そうでない国民も、同氏がマスコミ、既存政党、官僚から恐れられ、嫌われていることは否定しないだろう。
 かのロッキード事件での「コーチャン証言」をご記憶だろうか。検察は、田中角栄元首相に賄賂を渡したとされたロッキード社元会長のコーチャン氏に、免責と引き替えに調書を取る「嘱託尋問調書」という超法規的手段を用い、田中氏を有罪に導いた。さすがに最高裁は同調書には証拠能力がないとしたが、田中氏は公判の長期化で復権の機会がないまま死去し、公訴棄却された。
 一方、後に発覚したグラマン事件では、米国証券取引委員会が岸信介元首相、福田赳夫元首相らに賄賂が渡されたことを告発したが、日本の検察は政界捜査を断念した。
 官僚出身で親米派だった岸、福田氏らは当時の「国家権力」にとって重要な人物であり、一方で「叩き上げ」「列島改造」の田中氏は時のエスタブリッシュメントにとっては目障りで、アメリカからも脅威とみられて警戒されていた。
 裁判は「法と証拠」に基づくものだとすでに述べたが、その根拠にあるべき最も重要なものは「正義」である。国家権力が法を曲げて個人に牙をむくことは、あってはならないが起こりうることだ。しかし、先進国家では誰かが「正義」を奉じてそれを暴き、止めようとするものである。
 この国が恐ろしいのは、すべての権力が同じ方向を向いて走り、正義より自分たちの足元ばかり気にしている点だ。これは一政治家に対する好悪、一事件の真偽を超えた問題である。
 恐らく、このような裁判がまかり通り、誰も「おかしい」と口を開かなくなれば、小沢氏自身も「有罪確定」とみて間違いない。その罪状は何だろう。「国家反逆罪」だといわれればわかりやすいが、そんな気の利いた言葉は、荒涼とした今の権力からは出てこない。
 その法廷で裁かれるのは、この国の「正義」なのかもしれない。
※週刊ポスト2011年10月14日号
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