<死刑廃止> 被害者や遺族のために、死刑維持より未解決事件の捜査を優先して

2009-03-23 | 死刑/重刑/生命犯
<死刑廃止>犯罪被害者遺族、未解決事件の捜査優先を…米国
3月23日13時9分配信 毎日新聞
死刑廃止法案について話し合う犯罪被害者遺族のハワード・モートンさん(左)とシェリー・バート会長=小倉孝保撮影
 米国で肉親を殺された犯罪被害者遺族が、死刑廃止を求める法案作りを主導し、来月、コロラド州議会で審議が山場を迎える。未解決事件が殺人事件の2割にも及ぶ中で、死刑維持の高額な予算を捜査に回すことを求めている。遺族は「被害者や遺族のために、死刑維持より未解決事件の捜査を優先してほしい」と話している。【コロラド州デンバーで小倉孝保】
 死刑廃止を求めているのは、長期未解決殺人事件の遺族らで作る「殺人被害者・行方不明者家族の会」(約1400人)。
 同会によると、コロラド州では過去40年間の殺人事件(約7000件)のうち約2割が未解決。同会は7年前から、州や州議会に未解決事件の集中捜査のために予算を増やすよう求めてきたが、財源不足で実現しなかった。このため同会は、死刑を廃止し、その予算を捜査に充てるよう求めることを決めた。
 米国では死刑の可能性のある裁判では、ほかの事件に比べ被告の権利を重視し、弁護士費用や再審のための経費が高くなる。施設など死刑を維持、執行するための経費がかかり、同州では重大事件1件につき年約300万ドル(約2億9000万円)の予算が充てられている。一方、州警察全域に長期未解決事件のための部署を設置するには年150万~300万ドルが必要と試算されている。
 同州には、保釈の可能性のない終身刑がある。同州の死刑確定囚は現在2人。執行は連邦最高裁が死刑を合憲とした76年以来、1件だけだ。
 法案提出者のポール・ワイズマン州下院議員(民主)によると、同様の法案は07年に司法委員会で否決されたが、今回は法案への賛同が増えており、4月議会で成立する可能性もあるという。同議員は「死刑で人を殺すより、容疑者を捕まえ、生きている人の安全を確保すべきだとの主張は多くの議員に理解されつつある」と語る。
 39年前に一人娘(当時15歳)を殺されたシェリー・バート家族の会会長(73)は「逃げている容疑者を逮捕するために予算を使えば、死刑を維持するよりも治安効果は高い」と話している。
 ◇家族の苦しみ、もう十分 家族の会創設者
 家族の会を創設したハワード・モートンさん(78)の息子ガイさん(当時18歳)は75年6月、ヒッチハイクの旅に出たまま戻らなかった。生きていると信じモートンさん家族はガイさんを捜し続けた。アリゾナ州警察から同州の砂漠でガイさんとみられる遺骨が発見されたとの連絡が入ったのは87年。行方不明から12年後だった。検視の結果、殺人事件と判断されたが、容疑者は見つかっていない。
 「息子はどんな状況で殺されたのかさえわからない。死亡日も知らず、誰を憎んでいいのかもわからない」とモートンさんは話す。
 暮らしているデンバー郊外には自分のように、身内が殺されながら未解決のまま苦しみ続ける家族が多い。しかし、州警察には未解決事件専門部署もない。「こんな苦しみを味わうのは私たちだけで十分」。モートンさんは02年、「家族の会」を創設した。
 家族の会のシェリー・バート会長の一人娘マリリーさんも70年2月24日に行方不明になった。学校から帰って来ないことを不審に思い、近所の人たちの助けも借りて捜した。翌日、近くの山中でマリリーさんの遺体が見つかったが、容疑者はいまだ不明だ。

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