秋葉原無差別殺傷事件〈加藤智大被告〉第4回公判 2010.3.9 〈被害者〉証人尋問 -上-

2010-03-09 | 秋葉原無差別殺傷事件

【秋葉原無差別殺傷事件 第4回公判】2010.3.9 証人尋問(前半)
 産経ニュース2010.3.9
 裁判長「それでは始めます」
 裁判長「本日はCさんについての書証の同意部分を調べた上で、尋問を行うことになっています」
 《Cさんは友達のAさん、Bさん、川口隆裕さん=当時(19)=とともに秋葉原を訪れた際、加藤被告が運転するトラックにはねられ、腰に打撲を負った被害者だ。Aさんと川口さんは、その後命を落としている》《まず、弁護側が同意したCさんの供述調書を読み上げるために、向かって右手に座っていた検察官の1人が立ち上がった》
 検察官「甲17号証は、Cさんの供述調書です。では読み上げます」
 「平成20年6月8日は、私のこれまでの人生で最悪の日でしたし、これからの生涯の中でも、最悪の日になると思います」
 検察官「A君は、私やB君がなかなか物事を決められないのに対し、何事においてもきっぱりと決めることができるので、頼りがいがある存在でした」
 「川口君はB君の友達で、B君を通じて仲良くなりました。B君は、川口君のことを『いつも一緒にいることが当たり前の親友だ』と言っていました。川口君は物静かで人当たりがよく、遊びに誘うといつも来てくれる、人付き合いのいい人でした」
 「私とA君、B君は夏休みにどこかへ遊びにいく約束をしていました。当然話をすれば川口君も来たと思います。しかし、その旅行もなくなってしまいました」
 検察官「(平成20年)6月8日午前7時ごろ、私たちはアニメの映画をみるために、JR新宿駅東口に集まりました。映画を見てから、電車に乗って秋葉原に行きました」
 「私と川口君は格闘ゲームをやっており、どっちが強いか決めようと言っていました。私が『川口、今日決着つけようぜ』と言ったら、川口君は『分かった』と言っていました」
 「A君が『マンガを買いたい』と言ったので、マンガを買いに行き、A君とB君が行ったことがあるという、つけ麺屋に行きました」
 検察官「私とB君が前を歩き、A君と川口君が後ろを歩いていました。私たちとA君たちの距離は1メートルもありませんでした。バラバラに歩いていたというわけではありません。振り向きはしませんでしたが、顔を横に向けて、(後ろの2人にも)話していました。横を向くと、後ろの2人が視界に入ってきました」
 「私たちは、その日の朝見た映画の感想を話したり、せりふを言ってみたりしながら、今回の現場に到着したのです」
 「後ろを歩いていたA君と川口君を見て『眠い』と言いました。2人がすぐ後ろを歩いていることが分かりました」《ここまで読み上げた検察官は「以下不同意です。同意したところから、再開します」と告げた。どうやら、はねられた様子を描写した部分の調書については、弁護側が不同意としたようだ。調書の読み上げは4人がはねられた後の部分から再開した》
 検察官「私は右足を引きずりながら、B君とともにA君のそばに近づきました。A君の周りにはべっとりと血がついており、口からは食べたばかりの麺や血が出ていました」
 「胸はひどくはだけていました。素人目にも重体であることが分かりました。私は体がガタガタ震えてしまいました」
 「A君の名前を呼びました。しかし、A君の口からは、ゴフッ、ゴフッと血が流れてくるものの、呼び掛けには、答えてくれませんでした」
 「どうしたらいいか分からず、名前を呼ぶだけしかできませんでした」
 検察官「B君が、『向こうに川口がいる』と言ったので、川口君のところへ行きました。口からは、やはり食べたばかりの麺や血が出ていました。直前まで履いてきた靴がなくなっていました。瞳孔が開いていました」
 「私は、川口君に何度も『川口、川口』と呼びましたが、やはり反応してくれませんでした」
 検察官「救急隊の人たちが『家族と連絡はとれませんか』と言ったので、川口君のそばに落ちていた携帯電話で川口君のお母さんに電話をかけ、『川口君が事故にあいました』と言いました」
 検察官「3、4日は、腰にじんじんとした痛みが残りました」
 検察官「私もB君(一命を取り留めたCさんの友人)もトラックをよけるのが遅れたら、亡くなったA君や川口(隆裕)君=当時(19)=のようにはねられていたはずです。私は事件を思いだすのがいやで、あれ以来、秋葉原には行っていません。また、信号はたとえ青でも、『トラックがきたらどうしよう』と思うと怖くなってしまいます」
 「私は事件の後、川口君とA君のお葬式に参列させていただきましたが、川口君のお母さんは葬儀の間はずっと泣いていて、とても悲しそうでした。A君のご両親もずっとうつむいていて、とても悲しそうでした」
 「トラックが突っ込んでくるまでは、4人はいつも遊んでいた“アキバ”で、いつもと同じように遊んでいました。こんなにもあっさりと大切な友達を亡くすなんて、想像もしていませんでした」
 検察官「A君と川口君に会いたいと伝えたい…。夏休みには旅行に行きたいし、川口君と約束だったゲームの決着をつけたい。大勢の命を奪った犯人は、絶対に死刑にしてください」
 検察官「死刑にしてほしいけど、犯人には簡単には死んでほしくないです。A君や川口君、そのほかの被害者が味わった苦しみと同じ分の苦しみを味わわせたい。そのために私が犯人をぶん殴ってやりたいです。以上です」
 《Cさんの希望で、Cさんの姿が傍聴席からは見えないように、法廷と傍聴席の間に遮蔽用のカーテンが置かれることになった。傍聴席の前には、大きな板のカーテンが準備された。証言台は傍聴席からは見えないが、検察官や被告人、弁護人の席からは見える状態だ》《村山浩昭裁判長の合図で、Cさんが入廷してきた。まずは、検察官による尋問が始まった》
 検察官「それでは質問を始めます。あなたは、被害者のCさんですね」
 証人「はい」
 検察官「それでは、秋葉原に行った経緯を教えてください。事件が起きた平成20年6月8日、友人4人で映画を見に行くために午前7時ごろ集合したんですね?」
 証人「はい」
 検察官「新宿で映画を見た後、午前11時ごろに秋葉原に行ったのですね?」
 証人「はい」
 検察官「被害にあわなければ、どうする予定だったのですか」
 証人「ほかにお店を回ったり、ゲーセン(ゲームセンター)に行ったりする予定でした」
 検察官「それはなぜですか」
 証人「私と川口君は同じゲームが好きだったのですが、どっちがうまいかゲーセンで決着をつける約束をしていたからです」
 検察官「それでは図面を見てください」
 検察官「この図面がどこか分かりますか」
 証人「はい、事件のあった交差点です」
 検察官「4人がどのように事件現場にさしかかったか、図面に書き込んでください」
 証人「はい」
 検察官「そこで、どうしたのですか」
 証人「横断歩道を渡りました」
 検察官「4人が渡ったとき、信号は何色でしたか」
 証人「青信号でした」
 検察官「4人の位置関係はどうでしたか」
 証人「前後に2人ずつ並んでいて、私とB君が前で後ろにA君と川口君が歩いていました」
 検察官「何か話をしていたのですか」
 証人「朝に見た映画の話をしていました」
 検察官「周りには人はいましたか」
 証人「あまり覚えていませんが、それなりにいたとは思います」
 検察官「(加藤被告が運転する)大型トラックに気づいたとき、トラックからどのくらい離れていましたか」
 証人「4~5メートルぐらいだったと思います」
 検察官「どんな様子でしたか」
 証人「かなりスピードが出ていて、エンジンの大きな音も聞こえました」
 検察官「トラックが向かってきたとき、どう思いましたか」
 証人「死ぬかと思いました」
 検察官「そのときどうしましたか」
 証人「とっさに、前に飛ぶようにして避けました」
 検察官「避けてどうなりましたか」
 証人「トラックが自分の体をかすめました」
 検察官「どの辺りをかすめましたか」
 証人「右の腰の辺りです」
 検察官「そのときに衝撃がありましたか」
 証人「衝撃はかなり大きかったです」
 検察官「その後は?」
 証人「手をついて倒れ、四つんばいのようになりました」
 検察官「そのとき、証人の右にいたB君はどうなりましたか」
 証人「トラックはB君もかすめたように見えました。自分と同じ腰のあたりを」
 検察官「近づいてくるトラックに『死ぬかと思った』わけですよね。それを避けてどう思いましたか」
 証人「死線をぎりぎりすり抜けたと思いました」
 検察官「すぐに立ち上がれましたか」
 証人「少し腰に痛みがあり、立ち上がれませんでした」
 検察官「B君の様子はどうでしたか」
 証人「B君も腰に手を当て、立ち上がれない様子でした」
 検察官「その後どうなりましたか」
 証人「南西のほうで、男性が『刃物を持った男がいる』と言って…。男が走っているのが見えました」
 検察官「交差点はどうなりましたか」
 証人「北寄りの人は北に、南寄りの人は南に行く様子が見えました」
 検察官「どのような様子でしたか」
 証人「かなりパニック状態でした。自分も何が起きているか分かりませんでした」
 検察官「そのとき何をしましたか」
 証人「(いずれも亡くなった)A君と川口(隆裕)君を探していました」
 検察官「2人は見つかりましたか」
 証人「A君はソフマップの南の横断歩道にいました」
 検察官「そのときのAさんの様子は」
 証人「かなりぐったりしていました。血が散乱して服がはだけていて、耳や口も血が出ていて…昼に食べた麺のようなものも口から逆流していました」
 検察官「そのとき証人はどう思いましたか」
 証人「すごいやばいな、なんとかしなきゃと思いました」
 検察官「それでどうしましたか」
 証人「名前を呼び続けました」
 検察官「返事はありましたか」
 証人「返事はありませんでした。時折、口から空気のようなものがボコボコと出ていました…。血も一緒に出ていました」
 検察官「川口さんはどこにいましたか」
 証人「ソフマップの西側に倒れていました」
 検察官「どのような様子でしたか」
 証人「とてもぐったりしていて…。靴が脱げていて耳からも血が出ていました。目に光がなく瞳孔が開いた感じになっていました」
 検察官「あなたはどう思いましたか」
 証人「やばいな、何とか助けなきゃと思いました」
 検察官「名前を呼んで、返事はありましたか」
 証人「返事はありませんでした…」
 《その後、救急隊が到着。Cさんは川口さんに、BさんはAさんに付き添った。Cさんは川口さんの携帯電話で川口さんの母親に連絡を入れる》
 証人「『川口君が事故にあいました』と伝えました」
 検察官「そのときお母さんはどんな様子でしたか」
 証人「急なことだったので混乱した様子がありました」
 検察官「ここで証人に写真を見ていただきます」
 検察官「写真の向かって左側に右手をついてしゃがんでいる人はだれですか」
 証人「僕です」
 検察官「この写真では黒く塗りつぶしていますが、倒れている人が誰かわかりますか」
 証人「…はい、それはA君です」
 《検察官は現場の写真をもう1枚Cさんに見せ、同じように川口さんとBさんが写っているのを確認した》
 検察官「証人は1週間の治療を要する腰部打撲のけがをしていますね?」
 証人「はい」
 検察官「一歩間違えばどうなったかと思いますか」
 証人「確実に死んでいたと思います」
 検察官「事件前と後で変わってしまったことはありますか」
 証人「車が正面からきているのを見ると、突っ込んでくるのではという恐怖感を持つようになりました。後ろから来る車も自分の方に来るんじゃないかと警戒するようになりました」
 検察官「また同じようなことが起こるのではないのかと思いますか」
 証人「はい」
 検察官「事件をどんなときに思いだしますか」
 証人「何もしていないときに思いだします。特に寝る前に」
 検察官「どんなことを思いだしますか」
 証人「2人のあのときの表情や状態を思いだします」
 検察官「思いだしてどんな気持ちになりますか」
 証人「とても怖い事件だと思うし、悔しいという気持ちもあります」
 検察官「証人にとって事件はどんなものですか」
 証人「生涯で一番忘れられない事件です。最悪の日だったと思うし…何でこういう目にあったのか…」
 検察官「今、目頭を押さえているのですか」
 証人「大丈夫です」
 証人「こういうことはもう起こらないでほしいと思います」
 検察官「今回、証人の話を聞いたとき、『Aさんと川口さんに会いたい』といっていましたね?」
 証人「はい。A君とは同じ大学で帰り道も同じだったので、プライベートや飼っているペットの話もしてもらいました。夏休みの旅行の計画も立てていたので、旅行にも行きたいです」
 検察官「川口さんと会えたら何がしたいですか」
 証人「対戦ゲームをやり合えたら、決着をつけたいです」
 検察官「被告から手紙が来ましたね?」
 証人「はい」
 検察官「読みましたか」
 証人「はい」
 検察官「どう思いましたか」
 証人「反省の意をくみ取ろうと思って読んだわけでもなく、なんでこんな事件が起きたか少しでもわかるかと思って読んだのですが、わかりませんでした」
 検察官「被告人に対してどんな気持ちですか」
 証人「死刑は絶対だと思います。誰でもよかったというのは許せないし、死刑だとしてもA君や川口君が味わった恐怖や痛みを味わって死んでいってほしいと思います」
 《検察側は質問を終えた。続いて弁護側質問》
 弁護人「交差点の真ん中あたりでトラックに気づいたといっていましたが、どんな風に走っていましたか」
 証人「蛇行していたような記憶があります。自分がみたときは、自分たちからみてこういうコースを…」
 裁判長「右にふくらむような感じということですか」
 証人「蛇行していたみたいな…」
 裁判長「トラックも外側にふくらむような様子があったということですか」
 証人「はい」
 弁護人「トラックが走ってきたときにエンジン音がしたということでしたが、どんな音でしたか」
 証人「ゴーっというかドーっというか…」
 弁護人「交差点の中にいた人が声を発したことはありましたか」
 証人「記憶にありません」
 弁護人「あなたが前に飛ぶような感じで逃げたということでしたが、トラックがあなたのどの部分に当たりましたか」
 証人「右の腰の部分です」
 弁護人「トラックは、あなたとBさんとどちらが先にぶつかりましたか」
 証人「B君です」
 弁護人「『ナイフを持っている人がいる』という声が聞こえたといっていましたが、ナイフを持った人を見ましたか」
 証人「見ていません」
 弁護人「先ほど、被告の手紙を読んだとのことでしたが、あなた自身で想像して、どうしてこんな事件を起こしてしまったと思いますか」
 証人「特にないです」
 弁護人「あなたの後ろをトラックがすぎたときに、友達がはねられた音は聞きましたか」
 証人「聞いた記憶がありません」
 弁護人「そのあと、トラックはどう動いていましたか」
 証人「覚えていません」
 弁護人「(被告人に)やっぱり反省してほしい思いはありますか」
 証人「まあ、どちらかといえばそうかもしれませんが、反省したからそれで何になるっていうと…」
 弁護人「なぜ事件を犯したのかを知りたい気持ちは変わっていませんか」
 証人「まあ、経緯というかなぜ事件を起こしてしまったのかということをですね」
 裁判長「それでは、終わりました。証人、お疲れ様でした。証人に退廷してもらいますので、壁を…」
 裁判長「では証人、お疲れさまでした」
 裁判長「このあとも証拠調べを予定していますが、休廷を入れたいと思います。午後3時に再開して、次の方の調書を調べて、尋問を行います」

 ◎上記事は[産経新聞]からの転載・引用です

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2 コメント

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秋葉原無差別殺傷事件 (イッセイ)
2010-04-27 09:37:59
この事件は私が今までで一番衝撃的な事件でした。私はこの記事を読んで、楽しいはずの一日が一瞬にして最低最悪の一日に変わる光景が想像できました。私は現場に居合わせた人間ではありませんが、証人の証言やmixiでの日記を読むたび、涙がとまりません。自分大切な人の死を突然目の当たりにすることがどれだけ悲しいことか、事件のことを忘れたくても忘れられずに生きていくことがどんなに苦痛なことか、私も大切な人が突然亡くなったという経験があるので、身に染みて気持ちがわかります。また、亡くなられた被害者がどんな苦しみを味わって、どんな気持ちで亡くなったのかを考えるだけで心苦しいです。まだやりたい事、夢や希望などたくさんあったと思います。まだまだ書きたいことはありますが、思っていることが上手く表現できません。被告はこの先の裁判にて、被害者や遺族に対してどんなに反省し、どんなに誠意をみせてお詫びをしても良くも悪くも当然死刑であってほしいです。私の個人的な意見として、そもそも自己中心的な動機で、無差別に多くの人を殺傷したこの被告に裁判をする意味がわからない!裁判なんかしなくても死刑確定だろ!いやむしろ死刑でも軽いだろ!という気持ちです。今後このような事件はもう決して起こってほしくないです。
Unknown (ゆうこ)
2010-04-27 23:30:52
イッセイさん。
>私も大切な人が突然亡くなったという経験があるので、身に染みて気持ちがわかります。
>思っていることが上手く表現できません。
 言葉に尽せない経験をなさいましたね。辛いことが人生の途上にはあるものですね、本当に、このような哀しみの前には、何と言ってよいのかわかりません。
>裁判なんかしなくても死刑確定だろ!いやむしろ死刑でも
>今後このような事件はもう決して起こってほしくないです。
 刑事司法は誰のためにあるのでしょうか。量刑を下すためにあるのでも、被害感情に応える(被害者の損害回復)ためでもないのです。犯罪抑止とともに、犯罪を犯した人の更生を実現するためにあります。「今後このような事件はもう決して起こ」らないよう、事件の因って起きた真実を私たちは一つでも拾い上げてゆかなければならない、そのように思います。
 が、司法制度改革の流れの中で、整理手続や被疑者参加とも相俟って、法廷が感情横溢した場に変容したように思います。本事件でも、「結果」(被害者側証人)から始まり、情状証人は恐らく僅かになるのではないでしょうか。かつては被告人の生い立ちから解明する精密な司法でした。現在の司法の状況では、悲しい事件を抑止する機能は果たしにくいのでは、と憂慮します。

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