花耀亭日記

何でもありの気まぐれ日記

2016年プラド美術館「ジョルジュ・ド・ラ・トゥール展(Georges de La Tour. 1593 - 1652)」サクッと感想(1)

2021-02-02 23:15:35 | 展覧会

超遅ればせながら、2016年プラド美術館「ジョルジュ・ド・ラ・トゥール展(Georges de La Tour. 1593 - 1652)」を観た感想をサクッと書きたい

https://www.museodelprado.es/en/whats-on/exhibition/georges-de-la-tour-1593---1652/c5c86bb6-04fa-4bd5-9847-912ba0081d8b

ジョルジュ・ド・ラ・トゥール(Georges de La Tour, 1593 - 1652年)は、仏ロレーヌ地方で17世紀前半に活動した画家である。初期の作風は貧民などを描いた写実的傾向の強い風俗画(昼の絵)が多いが、1630年代にロレーヌ地方を襲ったペストやルイ13世のロレーヌ侵攻後作風が変化し、明暗の対比の強い宗教的作品(夜の絵)が多くなり「夜の画家」とも言われる。

ラ・トゥールはカラヴァッジョと同じように一時期忘れられた画家であり、現存する作品も少ない。現在真作と見なされているのは40点余り、失われたオリジナルのコピー作品も28点ほどで、併せても70数点である。その中で真作とされる作品(研究者によって異なるだろうが)を世界各地から31点も集めたのがこの展覧会だった。尽力したキュレーターたち:Andrés Úbeda(プラド美術館)とDimitri Salmon(ルーヴル美術館)は素晴らしい仕事をしたし、展覧会場には彼らの情熱が静かに満ちていた。

最初の展示室には、正面に《金(税)の支払い》、左の壁には聖人たち、右の壁には《豆を食べる人々》などの貧しい人々を描いた初期作品が並んでいた。ちなみに、ラ・トゥールの描く聖人たちはカラヴァッジョの流れを汲んで身近な庶民をモデルにし、それでいて非常に個性的でもある。

※ご参考:プラド美術館 Youtube画像

https://www.youtube.com/watch?v=1m8yGyh6ioI&feature=emb_logo

聖人像作品の中には初見の2つの《手紙を読む聖ヒエロニムス》が展示されていた。プラド作品はラ・トゥール作品らしさに満ちており、緋色の衣装と手紙の白のコントラストの美しさと陰影が素晴らしかった。で、ロイヤル・コレクション作品は光を通す手紙の透け具合が印象的だった。

ジョルジュ・ド・ラ・トゥール《手紙を読む聖ヒエロニムス》(1627-29年頃)プラド美術館

ジョルジュ・ド・ラ・トゥール《手紙を読む聖ヒエロニムス》(1621-23年頃)英国ロイヤル・コレクション

しかし、フランス版Wikipediaをチェックしたら、なんと!ロイヤル・コレクション作品をスルバランに帰属する研究者もいる??or 帰属されていた??。もしもスルバラン作品だとしたら、それはそれで非常に興味深いのだが(スルバランとの関連性に於いて)、最新の研究ではどうなっているのだろう?? カタログ読んでもコピー作品が多そうだということは了解できるのだけど

で、久々に再会したベルリンの《豆を食べる人々》は、なんだか旧知の友に会ったような懐かしさを覚えた。当時の貧しい人々の食べるという営みが、昼の陽光の中でリアルに描写されているのだよ。

ジョルジュ・ド・ラ・トゥール《豆を食べる人々》ベルリン国立絵画館

一方、貧しい盲目の辻音楽師は音楽家仲間と争っている(いぢめられてる?)。それも、またひとつの現実なのだ。

ジョルジュ・ド・ラ・トゥール《辻音楽家の喧嘩》(1625-30年頃)J.P.ゲッティ美術館

貧しく悲哀が漂うハーディガーディ弾きを描いた一連の作品群もだが、初期の作品は当時の風俗とともに、人々の貧しさと生きる困難さをリアルに垣間見せてくれる。画面からラ・トゥールの透徹した眼差しが伝わって来るようだ。