頭前はほとんど寝ることが出来なかった。
住田もそうなのだろう、台所で朝食を作っている。
居間から流れるTVの映像をぼーっとした目で眺めている。
布団を折り畳み着替えを済ませた。
台所に居る住田に声をかける。
その時、信じられないことを聞く。
『昨夜10時ごろ、兵庫県豊岡市竹野町の長原正一さんの遺体が、自宅から発見されました。殺害したのは正一さんの父親である、長原喜助さん58歳。殺害の動機はまだわかっていません。正一さんは祈祷師という仕事をされており、県外からも多数の信者がおられたとか」
『父親が子供を殺すというのは余程のことでしょうが、殺害方法がナタで頭を割ったということで、残虐な事件ですね』
『現場に高倉アナウンサーがいます。中継で繋ぎます』
頭前は呆然とTVを見ていた。
何時来たのか、住田も立ち尽くしている。
「なんということだ・・・」
「同じです。頭を遣られている。。。。もしかして、私と出合ったことで彼は・・・」
「仕方ないことだ。しかしあの男の力でも無理ということか・・・」
「もっと注意しなきゃならなかった」
「得体の知れないものだ。注意のしようもなかろう」
「自分も守れないかもしれない。。。彼はそう言いました。私が連れて来てるとも。だとしたら、なぜ我々が死なない。。。。変ですよね」
「それだけあいつの方が、真相に迫っていたのかもな。能力があるというのは・・・恐ろしいことだ」
住田もそうなのだろう、台所で朝食を作っている。
居間から流れるTVの映像をぼーっとした目で眺めている。
布団を折り畳み着替えを済ませた。
台所に居る住田に声をかける。
その時、信じられないことを聞く。
『昨夜10時ごろ、兵庫県豊岡市竹野町の長原正一さんの遺体が、自宅から発見されました。殺害したのは正一さんの父親である、長原喜助さん58歳。殺害の動機はまだわかっていません。正一さんは祈祷師という仕事をされており、県外からも多数の信者がおられたとか」
『父親が子供を殺すというのは余程のことでしょうが、殺害方法がナタで頭を割ったということで、残虐な事件ですね』
『現場に高倉アナウンサーがいます。中継で繋ぎます』
頭前は呆然とTVを見ていた。
何時来たのか、住田も立ち尽くしている。
「なんということだ・・・」
「同じです。頭を遣られている。。。。もしかして、私と出合ったことで彼は・・・」
「仕方ないことだ。しかしあの男の力でも無理ということか・・・」
「もっと注意しなきゃならなかった」
「得体の知れないものだ。注意のしようもなかろう」
「自分も守れないかもしれない。。。彼はそう言いました。私が連れて来てるとも。だとしたら、なぜ我々が死なない。。。。変ですよね」
「それだけあいつの方が、真相に迫っていたのかもな。能力があるというのは・・・恐ろしいことだ」
頭前の思惑ははずれ、楢先と言う名字は1件も無かった。
「もしかして、この土地で暮らしていないんじゃないか?一旦ここに来ただけで、違う場所に行ったとか」
「違う場所ですか・・・」
「そうだな・・・待てよ。九重桜と言ったよな。ここのえざくらって、奈良公園も有名だよな。もしかしてあの看護師が、勝手に常照皇寺だと思い込んだのかもしれない。」
「奈良公園ですか。。。行ってみますか?」
「今からだと夜の公園を徘徊することになる。とりあえず家に戻ろう。練り直しだ」
住田の家で、もう一度考え直す。
「とりあえず明日もう一度確認するが、今日の夜勤で下田というやつがいる。あいつに奈良公園近辺の病院に、楢先という先生がいないか調べさせる」
「いいんですか?」
「あぁいいさ。こう言う時に後輩は使わないとな」
「もしもし・・・・」
住田が電話をしている間に、頭前はもう一度京都の九重桜の周辺を調べた。
病院はすべて聞いてまわった。
住所も調べたが、該当も無い。
では他に何を知らべればいいのか。。。
もう一度、清浄師に聞いてみよう。
携帯を握りしめた。
20回近い呼び出し音が響く。
しかし清浄師は出なかった。
少し胸騒ぎがする。
「住田さん。清浄師に連絡がとれない」
「清浄師?もう寝たんじゃないのか」
「23時ですからね。。。でも親父さんぐらい出てもいいと思うのだけど」
「そうだな。最初は親父さんが出たしな。明日もう一度電話するしかないだろう」
「そうですね。ここからどうのとは言えないし」
どこか落ち着かないが、寝ることにした。
全く寝れそうにないが、目を瞑るといろいろなことが目まぐるしく浮かんでくる。
ただ恐怖はまだなかった。
「もしかして、この土地で暮らしていないんじゃないか?一旦ここに来ただけで、違う場所に行ったとか」
「違う場所ですか・・・」
「そうだな・・・待てよ。九重桜と言ったよな。ここのえざくらって、奈良公園も有名だよな。もしかしてあの看護師が、勝手に常照皇寺だと思い込んだのかもしれない。」
「奈良公園ですか。。。行ってみますか?」
「今からだと夜の公園を徘徊することになる。とりあえず家に戻ろう。練り直しだ」
住田の家で、もう一度考え直す。
「とりあえず明日もう一度確認するが、今日の夜勤で下田というやつがいる。あいつに奈良公園近辺の病院に、楢先という先生がいないか調べさせる」
「いいんですか?」
「あぁいいさ。こう言う時に後輩は使わないとな」
「もしもし・・・・」
住田が電話をしている間に、頭前はもう一度京都の九重桜の周辺を調べた。
病院はすべて聞いてまわった。
住所も調べたが、該当も無い。
では他に何を知らべればいいのか。。。
もう一度、清浄師に聞いてみよう。
携帯を握りしめた。
20回近い呼び出し音が響く。
しかし清浄師は出なかった。
少し胸騒ぎがする。
「住田さん。清浄師に連絡がとれない」
「清浄師?もう寝たんじゃないのか」
「23時ですからね。。。でも親父さんぐらい出てもいいと思うのだけど」
「そうだな。最初は親父さんが出たしな。明日もう一度電話するしかないだろう」
「そうですね。ここからどうのとは言えないし」
どこか落ち着かないが、寝ることにした。
全く寝れそうにないが、目を瞑るといろいろなことが目まぐるしく浮かんでくる。
ただ恐怖はまだなかった。
京北の中を無闇に探すわけにはいかない。
まずは病院を幾つか当たった。
京北病院など、大きな病院からだ。
しかし楢先と名乗る人物は存在しない。
個人病院か小さな診療所も当たったが、連絡がついたところには居なかった。
「こりゃなかなか骨が折れるな」
住田が髭をなでる。
京都の街は、盆地のため日が沈むのも早い。
「もう今日は諦めるか。。。。」
住田がそう言っている。
地図を眺めながら、頭前は疑問にもうことを告げた。
「京都ってほんと神社仏閣が多いですよね。この場所にも八坂神社と金刀比羅宮が近い場所にある。」
「あぁなんせ京都だからな。昔は日本の中心だ。そりゃ神も仏も集まるさ」
確かにそうかもしれない。
多くの信者を集めるには、人が集まる場所に存在感を示さねばならない。
信者が崇めてくれるには、信者の住んでいる場所に分社を置く必要もある。
「しかしこれだけあると、どの神を崇めたらいいのかわからなくなりますよね」
「そりゃそーだが、おまえだっていろんな神社に行くだろう。別にこっちの神社に行ってあっちに神社に行ったって構わん。その時その時に人は崇めるのは違うもんだ」
「そうですね。でも。。。氏神様というのはいるだろうし、お寺だと菩提寺というのもあるから、必ず決まった場所には戻るんじゃないですか」
「そうだな。。。なかなか良いとこ衝いているな。ちょっとまてよ。楢先の故郷を調べてみる」
住田はどこかに電話した。
「菩提寺はわからんし、故郷もわからんな。。。そうだ!」
もう一度住田はどこかに電話した。
「楢先先生と言うのは、もう高齢だそうだ。もしかして引退したのかもしれないらしい。さっきの診療所の看護師に聞いた」
「そうですか。高齢者ならやはり、自分の地元に帰った可能性も捨てきれませんね」
「そうだな。歳をとってから引っ越しするとなると、患者として病院に入るか介護施設に入るか、実家に戻るかか」
「とりあえず電話帳を調べましょう」
「電話帳に載ってるかな」
「高齢者ならたぶん家電話は着けてますし、下の名前はわからなくても電話帳に載せている可能性は大です」
まずは病院を幾つか当たった。
京北病院など、大きな病院からだ。
しかし楢先と名乗る人物は存在しない。
個人病院か小さな診療所も当たったが、連絡がついたところには居なかった。
「こりゃなかなか骨が折れるな」
住田が髭をなでる。
京都の街は、盆地のため日が沈むのも早い。
「もう今日は諦めるか。。。。」
住田がそう言っている。
地図を眺めながら、頭前は疑問にもうことを告げた。
「京都ってほんと神社仏閣が多いですよね。この場所にも八坂神社と金刀比羅宮が近い場所にある。」
「あぁなんせ京都だからな。昔は日本の中心だ。そりゃ神も仏も集まるさ」
確かにそうかもしれない。
多くの信者を集めるには、人が集まる場所に存在感を示さねばならない。
信者が崇めてくれるには、信者の住んでいる場所に分社を置く必要もある。
「しかしこれだけあると、どの神を崇めたらいいのかわからなくなりますよね」
「そりゃそーだが、おまえだっていろんな神社に行くだろう。別にこっちの神社に行ってあっちに神社に行ったって構わん。その時その時に人は崇めるのは違うもんだ」
「そうですね。でも。。。氏神様というのはいるだろうし、お寺だと菩提寺というのもあるから、必ず決まった場所には戻るんじゃないですか」
「そうだな。。。なかなか良いとこ衝いているな。ちょっとまてよ。楢先の故郷を調べてみる」
住田はどこかに電話した。
「菩提寺はわからんし、故郷もわからんな。。。そうだ!」
もう一度住田はどこかに電話した。
「楢先先生と言うのは、もう高齢だそうだ。もしかして引退したのかもしれないらしい。さっきの診療所の看護師に聞いた」
「そうですか。高齢者ならやはり、自分の地元に帰った可能性も捨てきれませんね」
「そうだな。歳をとってから引っ越しするとなると、患者として病院に入るか介護施設に入るか、実家に戻るかか」
「とりあえず電話帳を調べましょう」
「電話帳に載ってるかな」
「高齢者ならたぶん家電話は着けてますし、下の名前はわからなくても電話帳に載せている可能性は大です」
白尾山に付くと、もう夕暮れだった。
一旦家に戻るかという話も出たが、やはり二人ともさっきの清浄師の行動が気になる。
事は急ぐ必要があると感じていた。
住田が調べていた住所近辺を探したが、それらしい家もない。
「確か先生と言ってたな」
「そうですね。。もしかして学校とか・・・」
藁葺き屋根の大きな家が、小さな集落を構えている。
周りは山ばかりで、田んぼや畑しか他にはない。
ここはかやぶきの里という名でも呼ばれているらしい。
地図で調べるとすぐ近くに小学校があった。
もしかしてここの先生なのだろうか。
学校を訪ねてみるが、楢先という人物は知らないらしい。
今居る場所よりも少々離れてはいるが、中学校も高校もあるらしい。
とりあえず電話で尋ねてみるが、やはり楢先はいない。
「他に先生と言えば、医者だな」
幾つかの診療所が目に付いた。
しかし医者は、どちらかというと非科学的なことに否定的なはずだ。
でも・・・数々の奇跡を目撃する立場でもあるだろう。
「ここまで来たんだ。尋ねてみよう」
近くの診療所を訪ねた。
年配の看護士が、見知らぬ客に警戒しているようだった。
名刺を差し出して尋ねる。
「あぁ、その人ならお医者さんですよ。でももうここには居ません。今はもう少し南の九重ザクラがある町にいるらしいですよ」
「九重ザクラ・・・あの常照皇寺のあるところですか?」
「そうです」
医者だと言うことに間違いない。
二人は礼を言うと、すぐさま京北に向かった。
一旦家に戻るかという話も出たが、やはり二人ともさっきの清浄師の行動が気になる。
事は急ぐ必要があると感じていた。
住田が調べていた住所近辺を探したが、それらしい家もない。
「確か先生と言ってたな」
「そうですね。。もしかして学校とか・・・」
藁葺き屋根の大きな家が、小さな集落を構えている。
周りは山ばかりで、田んぼや畑しか他にはない。
ここはかやぶきの里という名でも呼ばれているらしい。
地図で調べるとすぐ近くに小学校があった。
もしかしてここの先生なのだろうか。
学校を訪ねてみるが、楢先という人物は知らないらしい。
今居る場所よりも少々離れてはいるが、中学校も高校もあるらしい。
とりあえず電話で尋ねてみるが、やはり楢先はいない。
「他に先生と言えば、医者だな」
幾つかの診療所が目に付いた。
しかし医者は、どちらかというと非科学的なことに否定的なはずだ。
でも・・・数々の奇跡を目撃する立場でもあるだろう。
「ここまで来たんだ。尋ねてみよう」
近くの診療所を訪ねた。
年配の看護士が、見知らぬ客に警戒しているようだった。
名刺を差し出して尋ねる。
「あぁ、その人ならお医者さんですよ。でももうここには居ません。今はもう少し南の九重ザクラがある町にいるらしいですよ」
「九重ザクラ・・・あの常照皇寺のあるところですか?」
「そうです」
医者だと言うことに間違いない。
二人は礼を言うと、すぐさま京北に向かった。
どこか吹っ切れないものはある。
死ぬ覚悟なんて、出来ているわけがない。
目標しか見えていないときは大丈夫だろう。
しかし一旦息を抜いたり、周りを見渡した時に逃げたくなる。
それをなんとか押しとどめて、今日までやってきた。
これは住田も頭前も同じだ。
遺書なんてかっこつけて書いたとも言える。
しかし、現実に何かの渦に巻き込まれているとすると、本当のことになるかもしれない。
清浄師の言葉に。。。
『良くない者を連れて来た・・・』
なんだろう。
「頭前。さっきの清浄師が自分よりも上だといった3名のうち、2名はわかってる。このどちらかにこれから直ぐに会いに行こう。何かわかるかもしれないし、、、何より俺達も危機から救われるかもしれないしな」
「清浄師の言葉を信じるんですか?」
「信じるも何も、災いは早めに断ち切るほうがいいからな:
二人はまず白尾山の楢先という人物に会うことにした。
この人物は住田の資料にも載っていたが、さほど注目をしていなかった人物だ。
「とりあえず現地でアポとろう」
先程清浄師が消えていった方角と、反対に車を走らせる。
何かから逃げる清浄師とは逆。
何かに向かっている自分達がいる。
特別な能力が無いということは、幸せなのかもしれない。
つくづくそう思った。
死ぬ覚悟なんて、出来ているわけがない。
目標しか見えていないときは大丈夫だろう。
しかし一旦息を抜いたり、周りを見渡した時に逃げたくなる。
それをなんとか押しとどめて、今日までやってきた。
これは住田も頭前も同じだ。
遺書なんてかっこつけて書いたとも言える。
しかし、現実に何かの渦に巻き込まれているとすると、本当のことになるかもしれない。
清浄師の言葉に。。。
『良くない者を連れて来た・・・』
なんだろう。
「頭前。さっきの清浄師が自分よりも上だといった3名のうち、2名はわかってる。このどちらかにこれから直ぐに会いに行こう。何かわかるかもしれないし、、、何より俺達も危機から救われるかもしれないしな」
「清浄師の言葉を信じるんですか?」
「信じるも何も、災いは早めに断ち切るほうがいいからな:
二人はまず白尾山の楢先という人物に会うことにした。
この人物は住田の資料にも載っていたが、さほど注目をしていなかった人物だ。
「とりあえず現地でアポとろう」
先程清浄師が消えていった方角と、反対に車を走らせる。
何かから逃げる清浄師とは逆。
何かに向かっている自分達がいる。
特別な能力が無いということは、幸せなのかもしれない。
つくづくそう思った。