神無月下旬から神楽月初旬の10日間、岡崎から南信州座光寺の果樹農家に逗留し援農奉仕の為に、奥三河は豊川水系、遠州・南信濃は急峻な天竜川水系の川の流れに沿って、ダム湖畔に沿って短いトンネルを穿ちトボトボと走行する愛する飯田線で最寄り駅の元善光寺まで往復した。自然に畏敬の念を持って共生する先人の知恵が随所に存在する。
万物の霊長の驕りで自然を破壊し、科学技術の粋を集め一刻も早く目的地に到達する新幹線とは異質の極めて日本的な乗り物、地元民に対する義理人情に配慮したが故に多くの秘境駅が誕生した。
湯谷温泉から元善光寺までの間、約96キロに実に138のトンネルが存在する。湯谷温泉駅を発車すると湯谷一番トンネル、元善光寺の手前の黒田神社の下を潜る上郷トンネルが最終の百三十八番目。
城西~向市場間に向皆外(むかがいと)トンネルを計画したが自然の逆鱗に触れる地滑りが故に断念、天竜川水系水窪川の河原を迂回する「渡らずの鉄橋」を建設する。
天竜川河岸段丘の田切川・松川の上流に位置する飯田駅に至る為に川岸を遡り切石で短い鉄橋を渡り、再び天竜川岸に戻るからΩループが発生し、最短距離の下山村~伊那上郷間は2キロ、鼎・切石・飯田・桜町の各駅に停車する6.4キロ迂回する電車に健脚の若者なら下山村で乗り遅れてもダッシュすれば乗車可能。
10年後には東京~名古屋間を長大トンネルの連続する時速500キロの超電導磁気浮上リニア中央新幹線が名称未定の飯田市の長野県駅に停車する。
地元民は都会人に表定時速30数キロの飯田線との速度落差体験を目玉商品にするオモテナシをしようと張り切っている。