板の庵(いたのいおり)

エッセイと時事・川柳を綴ったブログ : 月3~4回投稿を予定

エッセイ:「軍歌・月月火水木金金(9)」2017.04

2017-04-30 21:45:02 | エッセイ
エッセイ:「軍歌・月月火水木金金(9)」2017.04

 日本の宅配便のサービスには本当に愕く。こんなサービスが全国を席巻しているのは日本だけだろう。首都圏であれば通販で購入した物品は翌日には届けられる。せっかちな人には、インターネットで物流の所在位置が逐一確認できるのだ。しかも不在の時は、郵便ポストにお届け通知で再配達の希望日時まで指定することができるのだ。
 夜間に再配達をしてもらうのは気の毒でドライバーに対して「ありがとうございました。ご苦労さまでした」と、つい感謝と声が高くなる。こんな時間に宅配とは、本当にこの人たちの生活は大丈夫なのかと余計な心配をする。

 
 半世紀前には、早朝に重いゴルフバッグを担いで電車で送迎のクラブバスが待つ最寄の駅まで行っていたことを思い出した。なで肩の私は、担いだバッグが肩から滑り落ちそうになりずいぶん難儀をした。昨今ゴルフバッグを担いで電車に乗ったり、通りを歩いている人を見かけたことがない。 
 このこんな便利な宅配便を今日にいたらせたのは、クロネ・コヤマト(故・小倉昌男社長)の努力があったことは周知の事実である。
 
 ところが宅配ドライバーが受取人不在の配達物を蹴飛ばし、路上に投げつけるという行為がテレビで放映されて問題となった。人々から非難されたことは当然である。
 と同時に、日本の毛細血管あるいはリンパ管ともいえる宅配業のドライバー不足と慢性的な長時間労働が問題点としてさらけ出されたのだ。本当にグッドタイミングであったように思う。
  
 サービス残業が社内で常態化していることを大手企業ヤマトが事実上認め、全社的に未払い残業代を精算して支払うのは極めて異例である。サービス残業や長時間労働が常態化している企業の労務管理に一石を投じることにもなった。
 企業側にも顧客の側にも犠牲的なサービスを要求するのが当たり前であり、それを美徳とするような風潮がありはしないだろうか。
 同社では、社員(7万6千人)の時間外労働の未払賃金を100数十億円を支払う。そのために同社は27年ぶりに宅配料金を平均15%値上げすることになったと。値上げ分は待遇改善に振り向けるという。
 
 早速、現行安い料金で契約をしている大手通販などは再契約を打ち切りにすると通告されて困っているらしい。
 
 記憶が薄くなっておられるかもしれないが、かってこんな事件があった。
 1979年には創業以来の取引先である三越の天皇と言われた岡田茂社長とその愛人竹下みちが就任以後運送費の大幅引き下げ・映画チケットの大量購入など理不尽な要求を繰り返す様子に耐えかね、同社に対し取引停止を通告したこともある。
 この様子は両社のシンボルマークに引っ掛けて「ネコがライオンにかみついた」として話題を呼んだ。

 大卒者に人気の就職希望企業と言われている最大手広告代理店・電通の女子社員が自殺した原因が長時間労働を強いられたことによるとされた。あの電通がと、国民は一応に唖然としたはずだ。
 未だに、大日本帝国海軍の軍歌「月月火水木金金(げつげつかすいもくきんきん)」と同じで、土日返上で働くということを美化しているのである。
 実際に労働基準法を守らず、長時間労働が野放し的に行われ、しかも時間外賃金が未払いの企業は相当数ある。しかも犬死的な過労死は全国通津浦々で散見されるという。
 3Kとも言われる宅配ドライバーの待遇改善に遅ればせながら取り組むヤマトの改革に拍手を贈りたい。

 了
 
 


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